「宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟」感想・・・のようなもの(3) [アニメーション]
あけましておめでとうございます。
新年最初の記事なんですが、2014年からの続きです。
※ネタバレ全開です。未見の方はご注意ください。
○ストーリー編・その3
■ホテルの七日間
"ストックホルム症候群" と言うわけでもないが
有限の空間に閉じ込められて一緒に過ごす。
否が応でもコミュニケーションをとらざるを得ない。
お互いの情報が増えてくれば理解も深まる。
食事も分け合い、労働も共にすれば
"仲間意識" も芽生えてこようというもの。
所見の時にはいささか冗長に思えたホテルのシーンも、
全体のストーリーを把握した上で見直せば、なるほどよくできている。
二回目に見たときには、全く長く感じかなったし、
それどころかキャラの掘り下げを楽しむこともできた。
壁に掛かる「貴婦人の肖像」。描いたのは末弥純さん。
私にとっては「魔界都市」シリーズのイラストの人かな。
「グイン・サーガ」シリーズを担当し始めたときには
私はもう栗本薫からは離れてたからなあ・・・
■絵本
ネレディアに案内された部屋で本を見つけた桐生さん。
彼女の目には「ヘレン・ケラー 奇蹟の人」。
そういえば小学校だか中学校の時に読んだような記憶が。
しかしネレディアが語るのは「さびしい魔女」の話。
童話のようでいて、実は自らの境遇を語っていた、
とわかるのは二度目の鑑賞以降。そして哀切さも倍増。
イラストは山田章博さん。
私にとっては「十二国記」のイラスト人かなあ。
■バーガーの追憶
バーレンが語る、バーガーの過去が悲しい。
目の前で恋人を失えば、そりゃ人も変わるだろう。
桐生さんにメリアの面影を見たときの驚き。
煙草の灰がぽろりとこぼれる演出もいい。
でも、ホテルでのバーガーの態度が
終始にわたって紳士なのが高ポイントだ。
桐生に対しても変に感情的になったりせず、
節度を持って接し続ける。うーん、大人だねえ。
■爆発
人間、腹が空いてくると怒りっぽくなる。
劇中の台詞ではないが、まさに人間というのはそういうもの。
「衣食足りて礼節を知る」って昔から言うしねえ。
メルヒがついにぶち切れる。そして彼に誘いをかける "魔女"。
■エレベーターと階段
一方、桐生さんはバーガーが床にこぼした水を始末しようとして
床に描かれた古代文字の存在に気づく。
彼女は言語学者の卵だからねえ。
そして何者かに導かれてエレベーターに乗り、最上階へ。
それを見ていた新見女史。
全員を呼んで一緒に上の階を目指すが、4階まで上がって息が切れる。
新見さんってまだ20代だよねぇ・・・
でも私は彼女を笑えないなあ。20代の終わり頃、5階建てで
エレベーターが使えないとこで働いたことがあるんだが、
階段の上り下りで膝を痛めたことを思い出す。
現在の職場でもけっこう階段は使うけど
若いつもりでも体力は落ちてる。
3フロア分くらい駆け上がろうものならかな~り堪える。
今回の新見さんは、桐生さんを厳しくこき使って(愛のムチ?)
すっかり職場のお局様みたいになってる。
そういえば2199ヤマトって、年配の男性はけっこう見かけるけど
年配の女性って見た記憶がないなあ・・・
ひょっとして新見さんって女性クルーでは最年長だったりする?
■大和
大和の艦橋最上部でホテル編のクライマックス。
咄嗟に銃を向け合う古代とバーガー。このシーンはカッコよかったねえ。
しかし古代は銃を下ろす。
「生まれた星は違っても、俺たちは理解し合える」
本編で提示された2199最大の作品テーマ「相互理解」。
それがさらに深化して再びここに登場する。
バーガーは「理想主義だな」って答えるが、
そのまま銃をネレディアへ向ける。
小説版では、ここでたっぷり尺を採って
名探偵バーガーの謎解きが楽しめる。
そんでまた、ここでの台詞がいちいちカッコいいんだなあ・・・
映画版でも、小説版よりは短いがバーガーの見せ場になってる。
ランベアに乗っていた少年兵たちを集めて、
「帝都バレラスの闇に巣くう怪人を追う、
名探偵バーガーとガミラス少年探偵団」なーんてスピンオフを
見てみたくなったぞ、私は。
■星巡る方舟
ついに実体を表したジレル人、そしてその指導者レーレライ。
そしてこの星はジレルの聖地・惑星シャンブロウ。
「ヤマト」でSFに目覚め、大学時代はSFばかり読んでた。
C・L・ムーアの「ノースウエスト・スミス」シリーズを
読んだのも、この頃だったなあ。
その第1話「大宇宙の魔女」に登場する謎の美女がシャンブロウ。
この本を手に取ったのは、もちろんイラストが松本零士だったから。
この頃の松本零士ってハヤカワSF文庫のイラストをけっこう書いてた。
アンドレ・ノートンの「太陽の女王号」シリーズもイラストに惹かれて読んだなあ・・・
いわばヤマトつながりでこの本を読んだ人は多かったと思うが
2199スタッフにも好きな人がいたんだろう。
ひょっとすると出渕総監督自身かも知れないが。
祖国が滅亡の折、巡礼に来ていた一行のみが生き残った。
以来、宇宙の片隅で身を潜めてきた。アケーリアスの遺産を守って。
このあたり、映画の台詞だけでは分かりにくいんだが
小説版を読むとこのあたりが理解しやすくなってる。
そういう意味でも小説版は必読だなあ。
しかし今、その封印は解かれ、最後の戦いの時が迫っていた。以下次号。