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むかしむかしあるところに、やっぱり死体がありました。 [読書・ミステリ]


むかしむかしあるところに、やっぱり死体がありました。 (双葉文庫 あ 66-04)

むかしむかしあるところに、やっぱり死体がありました。 (双葉文庫 あ 66-04)

  • 作者: 青柳 碧人
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2023/11/15
  • メディア: 文庫

評価:★★★


 日本昔話の世界で本格ミステリを展開させる、という突飛な発想で話題になった前作に続く第二弾。

* * * * * * * * * *

「竹取探偵物語」
 堤重直(つつみ・しげなお)は、竹を取って暮らしている。ある日、相棒の有坂泰比良(ありさか・やすひら)とともに竹取に出かけたところ、光る竹を見つけた。それを切ったところ、中から親指ほどの女の子・かぐやが現れた。
 かぐやは美しい娘に成長し、やがて五人の求婚者が現れた。かぐやは五人それぞれに異なる「ゆかしき物(不可思議な力を持つ宝物)」を持ってくるように命じる。期限は来年8月15日。
 そして8月14日。求婚者たちが「ゆかしき物」を手に入れて帰ってきた。しかしその夜、泰比良が火事に遭って焼死してしまう・・・
 「ゆかしき物」の力を行使して不可能犯罪を起こしたのではないか、という視点もユニークだけど、かぐやの正体もひと味違う。


「七回目のおむすびころりん」
 隣の米八(よねはち)じいさんが、昼飯のおにぎりをうっかり落としてしまう。しかしそれが転がりこんだ穴に住んでいた鼠たちから、お礼として金銀財宝をもらってきた。
 それを聞いた欲深い惣七(そうしち)じいさんは、米八のまねをしておむすびを転がし、首尾良く鼠たちの暮らす穴に入り込むが、何故かその途中で時間が巻戻り、おむすびを転がす前の時点に。
 二度目におむすびを転がし、再び鼠の穴に入り込んだところ、今度は密室の中で鼠が殺される事件に遭遇してしまう。そして再び時間は巻戻り・・・いわゆるタイム・ループものの展開へ。ループするたびに状況が変化していくのはお約束だが・・・
 状況がだんだん複雑化していくのに私のアタマがついていけず、途中でほとんど脱落状態に(おいおい)。そういう読者のためか、途中でまとめの表がでてくるのはありがたい(笑)。
 本書の中ではいちばんミステリ的に凝った作品なのだろうけど、結局よくわかりませんでした。スミマセン。


「わらしべ多重殺人」
 行商人・八衛門(はちえもん)のDVに悩む妻は、夫の顔をぬか床に押しつけ、窒息死させてしまう。
 主の娘と旅に出た壮平(そうへい)は、襲ってきた山賊・八衛門を谷底に突き落としてしまう。
 原口源之助(はらぐち・げんのすけ)は、自分を侮辱した高利貸し・八衛門を撲殺してしまう。
 三人の人物に殺された "八衛門" という人物が登場するが、この謎自体は、作中に登場する、ある "アイテム" がカギとなって説明される。それよりはタイトルにある「わらしべ長者」の話とどうつながっていくのかがメインのように思う。


「真相・猿蟹合戦」
 「猿蟹合戦」で栗・蜂・臼・牛の糞に殺された猿の息子、栃丸(とちまる)。
 「カチカチ山」で兎に殺された狸の弟、茶太郎(ちゃたろう)。
 父の仇をとるつもりの栃丸は、茶太郎を仲間に引き入れようとするのだが、その前に茶太郎の知恵の程度を確かめたい。そこで茶太郎に改めて「猿蟹合戦」の”真実” を語り、「俺が殺したいのは誰か当ててみろ」と問いかける・・・
 栃丸の語る ”真説” がなかなか斬新。ファンタジー的お伽噺が、複数犯による殺人(殺猿?)計画に姿を変えてしまう。そして主犯の凶悪さにも驚かされる。


「猿六とぶんぶく交換犯罪」
 「真相・猿蟹合戦」とは前後編となっている。
 猿たちが暮らす赤尻平。そこの猩々(しょうじょう)屋敷の敷地内には沼があり、中に浮かぶ小島に住んでいた南天丸という猿が絞殺死体となって発見される。
 解明に立ち上がったのは頭脳明晰な猿六(さるろく)。語り手は医者の猿で綿(わた)さんと呼ばれていて・・・とくればもうおわかりの展開だろう。
 猿六はきっちり事件を解明してみせるのだが、最後に至ってもうひとひねり。伏線は「真相-」から既に張られてあったんだけど、気づかなかったよ。



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