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蝋面博士 [読書・ミステリ]


蝋面博士 (角川文庫)

蝋面博士 (角川文庫)

  • 作者: 横溝 正史
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2022/09/21
  • メディア: 文庫

評価:★★☆


 横溝正史・ジュブナイル復刊シリーズ。
 中編1作と短編3作を収録。


「蝋面博士」

 主人公は大手新聞・新日報社で給仕(下働き/雑用係)として働く御子柴進(みこしば・すすむ)。社用のために車で日比谷を走っていたところ、トラックが街灯に衝突する事故に遭遇する。

 トラックから降りてきたのは異様な老人だった。蝋細工の面のように白く光る顔、灰色の髭、度の強そうな鼻眼鏡、そしてシルクハットに燕尾服。
 老人が逃げ去った後に残された積み荷には、洋服姿の女の蝋人形。しかしその中には、人間の死体が・・・。この事件以後、老人は "蝋面博士" と呼ばれるようになった。

 とっさの機転で蝋面博士を追跡した進は、郊外のアトリエに辿り着く。そこでは、人体を融かした蝋に浸して蝋人形に仕立て上げる作業が行われていた。蝋面博士には逃げられてしまうが、進は彼の残した手帳を発見する・・・。

 はじめは病院から死体を盗んで蝋人形にしていた博士だったが、やがて生きた人間を求め始める。最初の標的は銀座の花売り娘・高杉アケミ。
 前半はアケミを巡る博士と進たちの攻防が描かれ、後半では『オリオンの三姉妹』と呼ばれるミュージカルの美少女スターが狙われる。

 探偵役は金田一耕助なのだが、事件発生時には海外にいたので、登場は後半から。彼の活躍で蝋面博士の正体が明らかになるが、そちらよりも動機の方が意外性がある。


「黒薔薇荘の秘密」
 主人公の富士夫は14歳の中学2年生。伯父の小田切博士とともに黒薔薇荘へやってきた。そこは元子爵・古宮一麿(ふるみや・かずまろ)の屋敷なのだが、主人である古宮は一年前に謎の失踪を遂げていた。
 古宮夫人と娘の美智子に迎えられた二人は黒薔薇荘に宿泊するが、その夜富士夫は、泊まった部屋の大時計から現れたピエロの扮装の男に麻酔薬を嗅がされてしまう。
 しかし、その大時計の裏側は廊下になっていて、人が出てこられる抜け穴など存在していなかったのだ・・・
 ピエロの出現は、あるアイテムを使ったトリックなのだが、これがいかにもジュブナイル作品らしくて微笑ましくなってしまう。


「燈台島の怪」
 伊豆半島南端のS漁港から500m沖に浮かぶ小島には燈台(とうだい=灯台)があって、”燈台島” と呼ばれている。そこへ金田一耕助と立花滋(たちばな・しげる)少年がやってきた。二人は燈台守から不思議な話を聞く。
 一週間前、野口清吉という青年が「燈台を見せてほしい」と島を訪れた。海が荒れて帰れなくなったので燈台守の宿舎に泊まったが、その夜のうちに姿を消してしまったのだ。
 しかしそれ以来、燈台守はどこか遠くの方から聞こえるような声を時折聞くようになった。ひょっとすると島の地底にいるのかも知れない・・・
 物語はこの後、野口青年の発見と死、S村の寺に奉納された意味不明の文書の解読へと続き、燈台島に隠された秘密へと迫っていく。


「謎のルビー」
 高名な名探偵・藤生俊策(ふじお・しゅんさく)の息子・俊太郎(しゅんたろう)は、銀座の花売り娘・深尾由美(ふかお・ゆみ)と知り合う。
 時価数千万円のルビーが盗まれ、所有者の従兄弟が殺された。由美の兄・史郎(しろう)は、現場にいたために殺人容疑をかけられ、逃亡していた。
 盗まれたルビーが隠された場所を巡り二転三転する推理、そして意外な真犯人。なかなか密度が濃い。


 短編三作はいずれも文庫で30ページに満たない。それでいて物語はけっこう濃密。でもダイジェスト感は皆無。さすがはストーリーテリングの名手だ。


 さて、ここからはちょっと余計な話を。

 終戦から昭和20年代を描いた作品にしばしば登場するのが、本書にも登場する「花売り娘」なるもの。ちょっとネットで調べたら、終戦後の混乱期、貧しい家庭の娘が道ばたの花を摘んで売り歩いていたという、文字通り「花を売る娘さん」を指す場合と、"裏の意味" を指す場合があるようだ。”裏” のほうについてはここに記さないけど、興味のある方は調べてみていただきたい。ちなみに本書はジュブナイルだから、もちろん前者の意味だろう。

 あと『蝋面博士』冒頭で、進が自動車を運転するシーンがあるのだが、彼は中学校を卒業したばかりのはず。こちらもネットで調べたら、この作品の発表時(昭和29年)では、一部の小型車・軽自動車は16歳から運転免許が取れたようだ。

 考えたら昭和20年代って80年くらい前。リアルタイムでその頃のことを体験して覚えてる人なんて90歳くらいだろう。そういう意味では、横溝正史の作品は "時代/歴史ミステリ" の分野に入りつつあるのかも知れない。



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ドミノ in 上海 [読書・その他]


ドミノin上海 (角川文庫)

ドミノin上海 (角川文庫)

  • 作者: 恩田 陸
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2023/02/24

評価:★★★☆


 高価な "お宝" が上海へと密輸されたが、ある手違いから "お宝" は別の場所に届いてしまい、地下組織の一味は必死にその行方を追う。
 それに東京から来たOL、寿司デリバリーを営む日本人夫婦、映画撮影にアメリカからから訪れた制作陣一行、上海警察署長たちが巻き込まれ、さらには動物園を脱走したパンダまでが "参戦" して、"お宝" をめぐる大騒動が上海の夜を駆け巡る・・・


 『蝙蝠』(こうもり)というコードネームで呼ばれる "お宝" が、闇ルートを通じて上海に持ち込まれた。輸入される動物の胃の中に隠すといういつもの方法だったが、今回は輸送中に予想外の "手入れ" が入り、とっさに近くの檻の中にいたイグアナに飲ませてしまった。

 そのイグアナは、アメリカ人映画監督のペットで、上海での映画撮影に同行させようとしていたもの。彼の宿泊していたホテル・青龍飯店に届けられたが、檻から逃げ出して厨房に入り込み、それを新たな食材(笑)と勘違いしたコックによって "調理" されてしまったのだった(おいおい)・・・
 中国の人は、足が四つあればテーブル以外は何でも食べるっていう話を聞くけど、ホントのところはどうなんだろう。

 地下組織は『蝙蝠』の行方を血眼になって探し始めるが、その動向を香港警察の潜入捜査官たちも追っていた。

 そして "お宝" のことなど全く知らない一般人たちも、その騒ぎに巻き込まれていく。

 東京からやってきたOL二人組が訪ねたのは、上海で寿司デリバリーを営む日本人夫婦。二人の店は迅速な配達がウリで、スピード制限など無視してオートバイでかっとぶ。それを目の敵にするのが、マスコミ受けを気にする上海警察の新署長だ。

 最愛のペットを喪い、意気消沈した監督にやきもきする助監督、プロデューサー、配給会社の日本人スタッフたち。
 そこに現れた風水師は、なんとダリオの霊が "見える" ようだ。と思ったら、日本人スタッフの女性は神社の宮司の娘で、こちらも "見える" みたいだ(なんと!)。

 青龍飯店の最上階ギャラリーでは美術品の展覧会が催され、そこでは商談も交わされる。今回の目玉作品を出品する現代美術家は、実は借金で首が回らない。彼はこの展覧会に於いて、ある "企み" を実行しようとしていた。

 そして人間以外も "参戦" する。上海動物公園のジャイアントパンダ・厳厳(グヮングヮン)。過去にも逃げ出したことがあり、飼育員から目をつけられているが、本人(?)は再びの脱走を狙って虎視眈々と機会をうかがっており、ついに決行の時を迎える。
 厳厳のパートは本人(?)のモノローグの形で綴られる。このパンダは実に明晰な頭脳を持っており、自分の置かれた状況の把握も完璧で、そこから綿密な脱走計画を組み立てていく。
 このあたり、パンダを人間に置き換えれば、そのまんま囚人が脱獄を狙う話に読み替えられるのが笑える。


 とまあいろいろなキャラを紹介してきたが、ひとたび本を開くと、彼ら彼女らのストーリーが同時進行的に、あるときは単独で、あるときは他のストーリーラインに絡みあい、ドタバタ騒ぎが始まっていく。それはどんどんスケールアップしていき、事態は混迷の度を深めていく・・・


 本書の冒頭には「登場人物よりひと言」という、各キャラの紹介ページがあるのだが、そこに挙がっているだけで25人+3匹(笑)もいる。
 あまりに多すぎて覚えきれない人は、この紹介ページは重宝するだろう(私がそうでした)。


 2001年刊行の『ドミノ』の、いわば続編なのだけど、ストーリーは本書のみで独立している。前作と共通する登場人物もいるけど、前作を知らなければ困ることは何もない。
 何より、前作を読んでいたけど、内容をさっぱり忘れていた私でも充分楽しめたのだから、間違いない(おいおい)。



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観覧車は謎を乗せて [読書・ミステリ]


観覧車は謎を乗せて (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

観覧車は謎を乗せて (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 朝永 理人
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2022/05/10
  • メディア: 文庫

評価:★★★☆


 自然公園の中にある観覧車が、突然停止してしまう。ゴンドラ内に閉じ込められた6組の乗客たち、それぞれのドラマが進行していく。それぞれにワケありの親子、男女、女子高生。それに加えて幽霊、殺し屋、爆弾魔と賑やかな(?)登場人物たちの運命は・・・
 第18回『このミステリーがすごい!』大賞・優秀賞を受賞した『幽霊たちの不在証明』に続く第二作。


 市街地から車で20分ほどの水禰(みずね)自然公園にある観覧車が、営業中に突然停止してしまう。『安全装置の誤作動のため』とのアナウンスが入り、乗客たちはその間、各ゴンドラに閉じ込められてしまう羽目に。
 その中の6つのゴンドラの乗客の物語が、並行して展開される。作中では、便宜的に各ゴンドラにA~Fの符号が振られている。


ゴンドラA
 かつての恋人との回想にふけっていた青年・車田。ゴンドラが止まった瞬間、誰もいなかったはずの隣の座席に、見たことのない女性が現れたことに驚く。
 女はユウコと名乗り、このゴンドラに憑依している "地縛霊"。かつて、このゴンドラ内で殺されたのだ。彼女は心残りがあるという。
「あたしを刺した相手が、そのあとどうやってゴンドラを降りたか知りたい」
それが分かるまでは成仏できないと言い出すのだが・・・


ゴンドラB
 御館(みたて)は妻・陽子と別居中。今日は娘の菜々芽(ななめ)と自然公園にやってきた。
「お父さん、観覧車から降りたらどうするの?」
「ああ・・・この後は、山に行くんだ・・・」


ゴンドラC
 殺し屋の男が、依頼人と乗っている。依頼人はセーラー服を着た少女。ただし、なぜか手錠で両手両足を拘束されている。
 彼女の依頼は、ゴンドラが最高点に達したときに、そこから見えるマンションの最上階にいる、一人の男を狙撃することだった・・・


ゴンドラD
 大学生の小針は、5歳年上の女性に思い切って告白した。
「糸口さん、僕の恋人になってください」
「無理。だって君のことキライだもん」
 二人の関係は良好だったと信じていた小針はショックを受ける。何が悪かったのか。小針は彼女との出会いから現在までを回想していく・・・


ゴンドラE
 乗客はのっぽの渚(なぎさ)とちびの蝋子(ろうこ)の女子高生二人組。
 渚は、わざわざの休日に自分を呼び出した蝋子に、何かの意図を感じているのだが・・・
 ちなみにこの二人は、前作『幽霊たちの-』にも登場してる。


ゴンドラF
 酒に酔って寝ていた巴寿久(としひさ)が目を覚ましたとき、そこは観覧車のゴンドラの中だった。そして目の前には段ボール箱とトランシーバー。
 トランシーバーから聞こえてくるのは弟・仁弥(じんや)の声。観覧車近くの芝生の上にいて、そこから話している。そして段ボールの中には金属製の箱、その表面には文字盤があり、数字のカウントダウンが続いている。
 「これは何だ?」「爆弾だよ」
 解除コードを入力すれば爆弾は止まるという。コードは1から36までの数字のどれかだというのだが・・・


 A~Fまでの6組のエピソードはそれぞれ一編のミステリとして成立している。
 それぞれ謎解きであることは共通してるが、青春小説、ユーモア、サスペンスなど各ゴンドラごとに雰囲気が異なる話に仕上げてあるあたりが上手い。
 しかもそれを6つの短編として語るのではなく、それぞれを断片化して並列に綴っていくところに作者の企てがある。それが何なのか想像しながら読むのも楽しい。

 とまあ偉そうに書いてきたんだが、実はこの記事を書くために本書をところどころ読み返していたら、初読の時には気づかなかった "仕掛け" を見つけてしまった。しかも二つも(おいおい)。ひょっとして、まだあったりする?(えーっ)
 つくづく、私の目は節穴なんだねぇ・・・。



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大雪海のカイナ [TV] / 大雪海のカイナ ほしのけんじゃ [映画] [アニメーション]


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 「大雪海のカイナ」は、全11話のTVアニメ。そして映画「ほしのけんじゃ」は、その続編かつ完結編に当たる物語。

 TVシリーズを見ずに映画を観に来る人はほとんどいないと思ってたが、ネットの感想を読んでみると、そうでもないみたい。極端な話、TVシリーズを全くの未見でも映画は理解できないわけではないが、TVと映画を通しで観ることにより、ひとつの作品として完成するので、本作を充分に楽しむためにも、ここは観てからの鑑賞をお勧めしたい。


 とりあえず、まずはTVシリーズを振り返る。
 Wikipediaの記述をベースに一部編集したものを掲げる。

**************************************************
 舞台となるのは、地表が雪原(この世界では雪海[ゆきうみ]と呼ばれる)で覆われた世界。かつては高度な文明が栄えていたがそのほとんどは喪われ、断片的な技術が残るのみ。文字についても、ほとんどの者は見たことすらない。

 地上には巨大な樹木「軌道樹」が多数存在し、人間たちはそこで得られる水を求めて樹の根元に小都市を築いて暮らしている。ヒロインとなるリリハはそんな都市国家のひとつ、アトランドの王女だ。しかし「軌道樹」が産出する水は近年減少しており、近い将来に枯渇するのではないかと心配されていた。

 また「軌道樹」は、はるか上空にあって惑星全体を覆っている「天膜」をも支えていた。そこにもわずかな人間が集落を作って生活している。主人公のカイナはそこで暮らす少年だ。集落の老人から学んだことで、文字を読む力を身につけている。

 あるとき、アトランドの水を狙って移動戦闘国家バルギアが侵攻してきた。リリハはアトランドを救うべく、伝説の「賢者」を求めて「天膜」へと昇る。

 リリハと出会ったカイナは彼女と共に軌道樹を降りていき、初めて地上の雪海に降り立つ。だがそこでリリハはバルギア兵にさらわれてしまう。

 カイナはリリハの弟ヤオナとバルギアに乗り込み、リリハの奪還に成功するが、バルギアは古代兵器「建設者」(過去の超科学の遺物)を持ち出してアトランドへの侵攻を開始する。
 しかしカイナの働きで「建設者」は倒され、アトランドとバルギアの間に停戦が成立する。

 文字が読めるカイナは、アトランドの地下にある旗が巨大な軌道樹「大軌道樹」への地図になっていることに気づく。そこに行けば豊富な水が得られると考えたアトランドは、バルギアと協力して「大軌道樹」の探索を開始することになる。
**************************************************

 というのがTVシリーズのあらまし。
 こう書いてくると、よくできたシリーズのように見えるが、実際に観てみるとちょっとバランスの悪さを感じる。
 主役たるカイナもあまり見せ場はなく、クライマックスの「建設者」破壊の場面もいささか唐突であっけなく感じる。
 意地悪く捉えれば、TVシリーズは映画に向けての世界設定の説明とキャラの紹介を兼ねた、壮大な ”前日譚” になっているとも言える。


 ではそれを受けた映画の方はどうか。今度は映画公式サイトから。

**************************************************
文明が衰退し雪海(ゆきうみ)に沈んだ惑星。
人類は巨木「軌道樹」から広がる世界でかろうじて暮らしていた。
文字が読める少年・カイナと雪海の王女・リリハは
水源となる「大軌道樹」へと向かうが、
そこにあったのはビョウザン率いる独裁国家・プラナトだった。

「建設者」と呼ばれる兵器を自在に操り、
人類のためとして大軌道樹の破壊をもくろむビョウザン。
そして、失われた「文字」を読み解き、
滅びゆく世界の謎に迫るカイナとリリハ。

終末世界を舞台に展開するポスト・アポカリプスファンタジー超大作!
**************************************************

 こちらはもう、全編にわたってアクション/スペクタクル・シーンの連続で、TVシリーズを「静」とすれば映画が「動」だろう。
 後半では、カイナとリリハは世界の命運を賭けた戦いに巻き込まれていく。
 エンタメ作品としてはとても良くできていて、とても楽しむことができた。


 全編を通してみた私の第一の感想は
「これは 弐瓶勉版『未来少年コナン』だなぁ」
 だった。

 一応説明しておくと『未来少年コナン』とは、言わずと知れた宮崎駿の初TV監督作で、1978年にNHKで放映された全26話のアニメ作品だ。
 『未来少年コナン』を観たことのある人ならば、『カイナ』との間に多くの類似点を見いだすことができるだろう。

 誤解されないように書いておくと、それが悪いということでは全くない。物語には、いくつかの ”王道展開” と呼ばれるパターンがある。王道故に普遍的な感動とカタルシスを観客に約束する。だから古今東西、多くの作品にモチーフとして繰り返し用いられてきた。

 辺境に生まれ育った少年が一人の少女と出会う。
 少女によって少年は世界の存在を知り、人間たちの社会へ迎えられていく。
 やがて、人間たちの社会を危うくさせる脅威が出現、
 少年は少女とともに世界の命運を賭けた戦いに身を投じていき、
 そしてラストは大団円を以て幕を閉じる。

 本作で語られるのはそういう物語だ。冒険ファンタジーとしてはまさに ”王道展開” といえるだろう。

 日本で過去に例を探すなら、『太陽の王子 ホルスの大冒険』(1968年:高畑勲監督)にも共通点は見いだせるだろうし、西洋に目を向ければ『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(1978年:ジョージ・ルーカス監督)などもこのパターンに入るといえる。
 探せば、枚挙にいとまが無いくらい見つかるだろう。

 この『大雪海のカイナ ほしのけんじゃ』も、そういう物語群に列する存在になっているということだ。

 そしてもちろん、本作独自の要素もふんだんに盛り込まれている。
 雪海に覆われた地表、そびえ立つ巨大な軌道樹、空を覆う天膜。そんな世界に適応した人々の生活様式。要塞で移動する国家や過去の超文明の遺物。
 豊かなイマジネーションによって産み出された作品の世界観も、充分に鑑賞に値する素晴らしいものだ。

 そしてクライマックス。某ジブリ映画を思い出した人もいるかもしれないが、ファンタジーの衣の下に、骨太なSFの ”核” があったのが分かるシーンだ。
 そしてラストは、エンタメ作品のお手本のような、絵に描いたような大団円。お客さんは大満足で家路につけるだろう。


 ずいぶん長く書いてしまった。あとは、登場キャラについて書いて終わりにしよう。

 リリハはとても聡明だ。しかも一国の王女に収まらない視野を持っている。敵国だったボルギアの民の困窮を知ると、敵味方関係なく救おうと考える。ある意味「理想」を持っているのだが、そのぶん足下が留守になりがち。
 CVは高橋李依さん。若手の人気声優さんらしいが、気丈で果敢で凜としたリリハを好演してる。

 それに対して、カイナは地に足がついてるキャラ(TV第一話では地の上にいなかったがwww)。思慮深いというか、沈着冷静で状況判断は的確、できることとできないことを判別し、その場面での最善手を見つけ出す。
 CVは細谷佳正さん。この方も人気声優で多くの作品に出てるけど、私はもっぱらリメイク・ヤマト・シリーズの加藤三郎役でおなじみ。歴戦の猛者どもを束ねる航空隊長もよかったが、本作では打って変わってナイーブな少年を演じている。その演技の幅の大きさに驚かされる。

 このリリハとカイナは、お互いに相手を補い合う存在であり、いわば二人一組の主役といえる。
 そしてどちらも、ファンタジーの主役には珍しく、戦闘能力という意味ではどちらもほぼゼロに近い。カイナはちょっと武器を扱うけど、それはあくまでも生活のために磨いた技術だ。
 「武」(戦う能力)ではなく、「文」(知識や思考)を武器にする。そういう意味でもこの二人組は異色だろう。
 リリハは「賢者」を見つけることはできなかったが、代わりにカイナと出会った。この物語の数十年後、あるいは数世紀後には、この二人が ”伝説の賢者” と呼ばれるようになるのだろう。

 ボルギアの武人アメロテ(CVは坂本真綾さん)は、TVシリーズでは敵だったが、アトランドとの停戦が成立したので映画では味方に。個人としての戦闘能力ではおそらく最強の彼女は、実に頼もしい。
 アトランドの親衛隊長オリノガ(CVは小西克幸さん)。TVシリーズでは何度もアメロテと剣を交えていくうちに、互いに認め合う存在になっていく。映画の終盤でも、アメロテと以心伝心というか阿吽の呼吸での素晴らしい連携プレーを見せてくれる。
 この二人、そのうち男女の仲に進みそうな気配も描かれたんだが・・・1分間だけでもいいから、もうちょっと二人の絡みを見たかったなぁ、・・・というのは私の願望です(笑)。

 そして、映画での ”敵役” となる独裁者ビョウザン(CVは花江夏樹さん)。カイナと同じく、彼もまた太古の文字を読む力を持っている。
 ビョウザンが太古の記録を ”誤読” したことから、彼の ”暴走” が始まったのだけど、そのおかげで古代遺跡の発掘が行われ、そこでカイナが正しい方法を見つけ出すことができたのだから、彼の行動も無駄ではなかったということだろう。


 最期に、この記事で触れた『未来少年コナン』についてちょっとだけ。

 1979年に『ルパン三世カリオストロの城』、そして84年からの『風の谷のナウシカ』、86年の『天空の城ラピュタ』、88年の『となりのトトロ』と、宮崎駿の怒濤の快進撃が始まるのだが、『未来少年コナン』はその直前、1978年のTVシリーズ作品だ。
 そしてその中には、後に上記の映画として花開くことになるモチーフというか原型を見いだすことができる。
 長編映画の監督として話題に挙がる宮崎駿だが、その彼の原点は、彼が初監督をしたTVアニメ『未来少年コナン』にあったと私は思っている。
 未見の人はぜひ一度観てほしい。観て絶対に損はない作品だと思う。


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歪んだ名画 美術ミステリーアンソロジー [読書・ミステリ]


美術ミステリーアンソロジー『歪んだ名画』 (朝日文庫)

美術ミステリーアンソロジー『歪んだ名画』 (朝日文庫)

  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2021/01/07
  • メディア: 文庫

評価:★★★


 掛け物、陶磁器、絵画など美術に関する作品を収めたアンソロジー。


「雪華弔刺し」(赤江瀑)
 かつて "彫経"(ほりきょう)と呼ばれた伝説的な彫師(ほりし)・大和経五郎が亡くなった。通夜に訪れた茜(あかね)は、11年前を回想する。
 愛した男のために、自らの身体に彫物をすることを決意した茜に、彫経は異様な条件をつけるのだった・・・
 ラストになって様々な事実が明らかになるのだけど、ミステリ要素よりも、刺青(いれずみ)というものに魅せられてしまった人々の、凄まじいまでの "業" が印象に残る。


「椛山訪雪図」(泡坂妻夫)
 趣味人の別腸(べっちょう:これは雅号で、いわゆるペンネーム)の留守中、家に賊が入り、住み込みの女性・かずらが殺害されてしまう。そして二幅の掛け物(掛け軸になった絵:”幅”[ふく]は掛け物を数える数詞)が盗まれていた。
 しかし後日、別腸が確認したところ、盗まれたはずの一幅が戻っており、代わりに別の一幅がなくなっていた。犯人が再び侵入したのだろうか・・・
 終盤に登場する宝井其角(たからい・きかく:松尾芭蕉の弟子)の句の解釈と、そこから真相に至る流れが見事。


「窯変天目の夜」(恩田陸)
 元裁判官の関根多佳雄(せきね・たかお)は、美術館で曜変天目の茶碗を見て、友人の司法学者・坂寄順一郎(さかより・じゅんいちろう)の死を回想する。当時、順一郎は徐々に体調を崩しており、自然死と思われたのだが・・・
 多佳雄は作者のデビュー作『六番目の小夜子』に、メインキャラの一人・関根秋(しゅう)の父親として登場している。本作では彼が順一郎の死について "ある可能性" に気づくシーンで終わる。確かにこういう状況なら、あり得ることかも知れない。
 関根一家は時折ミステリ作品に登場してるんだけど、読者としては秋くんと沙世子さんの "その後" が知りたいなぁ・・・でもまあ、それこそ "描かぬが花" なのかも知れない。


「老松ぼっくり」(黒川博行)
 大阪に店を構える古美術商・立石(たていし)のもとへ、蒲池(かまち)という男が現れる。彼は立石と長年に渡って付き合いがある横浜の資産家の代理人だ。資産家の孫が結婚することを契機に所有するコレクションを整理することになり、一部を売却することになった。その買い取りを依頼してきたのだ。しかし売買契約を交わした直後、立石の元に神奈川県警の刑事がやってくる・・・
 古美術という業界で、騙し騙される闇の世界を描いた作品。立石の反撃が読みどころ。


「カット・アウト」(法月綸太郎)
 無名だった画学生、桐生正継(きりゅう・まさつぐ)と篠田和久。やがて二人はモダン・アートの世界で大成するが、17年前に桐生が死んだばかりの妻・聡子の遺体に絵を描くという事件を起こし、それ以来交流を断っていた。その後桐生はアメリカに渡り、二度と絵を描くことなく亡くなった。
 桐生の墓参にきた篠田は、桐生の甥で高校の美術教師をしている岳彦と出会い、17年前の出来事の真相を知らされる・・・
 芸術家の考えることというのは俗人には理解しがたいのだけど、本人の中では首尾一貫しているのだろう。
 タイトルにもなっているが、作中にアメリカの画家ジャクスン・ポロックの「カット・アウト」という絵が登場する。どんな絵なのかが文章で説明されてるのだけど、どうにもイメージがわかないので(想像力が貧困なのです)、ネットで検索して見てみた。百聞は一見に如かず、ですね。
 この絵を知らない人は、本作を読む前に確認しておいた方がいいと思う。


「オペラントの肖像」(平山夢明)
 第三次世界大戦が起こり、かろうじて生き残った人々は、すべての人間に「条件付け(オペラント)」を義務づけることにした。これによって犯罪は激減したが、"芸術" に触れてしまうと「条件付け」が無効化されることが判明する。
 そのため、"芸術" は弾圧され、また "芸術" を隠し持つことも厳罰に処せられるようになっていた・・・
 ミステリとしての仕掛けもあるけど、「華氏451度」(レイ・ブラッドベリ)の芸術版という趣き。


「装飾評伝」(松本清張)
 42歳にして不慮の死を遂げた、異端の天才画家として知られる名和薛治(なわ・せつじ)。彼の評伝を書こうと思った「私」は、彼に関する資料がほとんど存在せず、芦野信弘という人物が書いた『名和薛治』という書物だけが、ほとんど唯一のものであることを知る。
 その芦野の訃報が新聞に載った。「私」は芦野の遺族を訪ねるのだが・・・
 ここにも芸術に魅せられ、それに絡め取られて人生を送った者の、愛憎入り交じった複雑な思いが綴られる。天才を親友にもった凡人。それは幸福なのか不幸なのか。


「火箭」(連城三紀彦)
 日本画の大家・伊織周蔵が54歳で急死する。美術誌の編集者・野上は、周蔵の妻・彰子から、彼が死の直前に完成させたという『火矢』を見せてもらうことに。
 しかしその絵は、生前の周蔵の華麗な作風とは大きく異なり、闇一色の中をただ一本の矢が飛翔する姿だけが描かれていた。
 その絵に対する違和感を抱えながら、野上は彰子と密かな逢瀬を重ねてきたこの10年間を回想するが・・・
 登場人物は野上・彰子・周蔵の三人のみ。彼らが繰り広げる濃密な心理劇、そしてラストで明かされる意外な真実。男女の情念をミステリと絡ませたら右に出る者はない、この作者さんならではの逸品。



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友が消えた夏 終わらない探偵物語 [読書・ミステリ]


友が消えた夏 終わらない探偵物語 (光文社文庫 も 25-1)

友が消えた夏 終わらない探偵物語 (光文社文庫 も 25-1)

  • 作者: 門前典之
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2023/02/14
  • メディア: 文庫

評価:★★★★


 西華(せいか)大学演劇部の一行が夏合宿に訪れた洋館。しかし折からの豪雨で道路が陥没、陸の孤島と化した洋館内では密室殺人をはじめ、次々に部員たちが殺されていった。そしてその直後、洋館は炎上焼失してしまった。
 後日の警察による捜査で結論は出ている事件だったが、一級建築士にして探偵の蜘蛛手啓司(くもで・けいじ)は、発見された部員の手記から意外な真相を引き出してみせる・・・


 本書は、二つのストーリーラインが交互に語られるという形式で進行する。

 まず一つ目は、舞台となった洋館・鶴扇閣(かくせんかく)での連続殺人事件のライン。

 三重県の英虞(あご)湾を望む半島に建つ鶴扇閣で行われた、西華大学演劇部の夏合宿。しかし折からの豪雨に襲われて外部へつながる道路が陥没、陸の孤島と化してしまう。そして洋館内では次々に部員たちが殺されてゆき、最後には火災によって建物は焼失してしまった。
 だが後日、警察による捜査が入って犯人も特定され、事件としては一応の決着がついていた。

 東京で探偵事務所を営む蜘蛛手啓司のもとへ、共同経営者の宮村達也からある記録書がもたらされる。それは鶴扇閣殺人事件の経緯を記述したものだった。

 "オクトパスマン" と呼ばれていた連続窃盗犯が逮捕され、彼の所持品の中にボイスレコーダーがあった。被害者となった演劇部員の一人が、鶴扇閣での合宿中の出来事を記録していたものらしい。
 オクトパスマンはそれを鶴扇閣の焼け跡近くで拾ったと供述し、事件への関与は一切否定していたが、レコーダーの内容を "記録書" として書き起こしたデータをPC内に保管していた。
 宮村は知り合いの弁護士からその記録書を入手し、蜘蛛手に渡したのだった。

 記録書を読んだ蜘蛛手は、警察の結論とは全く異なる、意外な真相を引き出してみせるのだが・・・


 そして二つ目は「タクシー拉致事件」のラインだ。

 御厨(みくりや)友子は、大手ゼネコンで働くキャリアウーマン。女性ながら建設工事では現場監督も務めている。

 東京本社への出張のため名古屋のマンションを出た友子は、駅に向かおうとタクシーを拾うが、車は本来の道を外れていく。やがて友子は、運転手があらかじめ自分のことを狙っていて拉致を行ったことを知る。

 内部からの脱出ができないように周到に細工されたタクシーの中で、相手の情報を得ようと、運転手との対話を続けていく友子だが・・・


 一見すると二つのラインは全く接点がないように思えるが、ストーリーの進行とともに関係が明らかになり、終盤ではひとつになっていく。


 あまり詳しく書くとネタバレになるので、そうならない範囲で書いてみる。

 まず、連続殺人事件のパートだけでも、よくできたクローズト・サークルもの。意表を突く物理トリックが炸裂したりと読み応え充分。
 拉致事件のパートについても、読者はある程度の推測が可能だろうが、それを上まわる展開を見せてくれる。ここも上手い。

 バラして使えば長編/短編が数本書けるようなアイデアを、惜しみなく投入しているのも読者としては嬉しいが、作者はネタ切れにならないのか心配してしまう。

 そして 蜘蛛手の推理=事件の解決 ではなく、"○○な○○の○○○" であることが分かるあたり、もう作者に良いように引っ張り回されていることを実感させられる。いやはやたいしたもの。

 そしてこのラストは、どう解釈したらいいのだろう。読者の想像に任せてるのかも知れないけど、「任せられても困る」んだよねぇ。
 うーん、気になって仕方がない。



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新任警視 [読書・ミステリ]


新任警視(上)(新潮文庫)

新任警視(上)(新潮文庫)

  • 作者: 古野まほろ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2023/03/29


新任警視(下) (新潮文庫 ふ 52-56)

新任警視(下) (新潮文庫 ふ 52-56)

  • 作者: 古野 まほろ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2023/03/29
  • メディア: 文庫

評価:★★★★


 1999年8月、警察キャリア・司馬達(しば・とおる)は警視に昇進、同時に愛予県警公安課長を拝命する。そこには日本最大のカルト教団の本部が存在していた。
 司馬に与えられた使命は、12月31日までに教団本部への強制捜査を実行すること。
 彼の前任の公安課長は県警本部内で暗殺され、同時に機密文書が奪取されていた。犯人は警察内部に潜む教団信者と思われた。
 司馬率いる公安警察 vs カルト教団。激闘の5ヶ月が始まる・・・


 1999年8月、東大法学部卒で25歳の警察キャリア・司馬達は警視に昇進、同時に愛予県警公安課長を拝命する。採用4年目にして、67人もの部下を抱える羽目となり、年齢も経験も遙かに上の彼らを束ねる場では戸惑うことばかり。

 愛予県には日本最大のカルト教団〈まもなくかなたの〉(警察内部では「MN」と呼称されている)の本拠地があった。
 折しも 1999年→2000年 の年号切り替えが起こる大晦日には、さまざまなコンピュータ関係の問題が発生することが予想されていた。いわゆる「2000年問題」だ。

 そしてMNはその混乱に乗じて、未曾有の重大テロの強行するとの情報があった。司馬に与えられた使命は、12月31日までに教団本部へ強制捜査を敢行、テロを事前に封圧することだった。

 司馬の前任の公安課長は県警本部内で暗殺され、同時に機密文書が奪取されていた。使用された毒物から、犯人は警察内部に潜む "教団への協力者" と思われた。
 司馬率いる公安警察は内外の敵を相手に困難な闘いを強いられる。

 年末へのタイムリミットが迫る中、懸命の捜査の結果、教団員の犯罪行為の証拠をつかむことに成功、強制捜査への突破口が開けていくのだが・・・


 文庫上下巻、併せて1000ページを超える大部。

 序盤では、タイトル通り新任警視となった司馬が、警察庁から愛予県警への異動に伴う顛末が綴られていく。受け入れ先県警の職員が上京してきての打ち合わせから始まり、司馬が愛予県に赴任してからは膨大な引き継ぎ事項やら幹部職員との引き合わせ、そして当然ながらMN(モデルはもちろんオウム真理教だろう)案件の現状についてのレクチャーも行われる。

 中盤ではいよいよMN本部への強制捜査へ向けて動き出す。それには裁判所の令状が必要で、そのためには裁判所を納得させるだけの教団の犯罪行為を立証しなければならない。
 愛予県の公安警察は何年も掛けて教団内部に "警察への協力者" を作り出し、一定の情報を得ることに成功していた。これには多くの読者が驚くだろう。
 しかしそれは相手も同じで、警察内部にも "教団への協力者" がいる。というわけで双方の調略活動は、スパイ合戦の様相を呈してゆく。

 そういう長年の努力が実を結び、教団員の犯罪行為の証拠をつかんだ公安警察は、ついに教団本部への強制捜査に踏み切るのだが・・・この後は読んでのお楽しみだろう。


 元警察官僚である作者ならではの、県警内部での描写は毎回ながら微に入り細を穿つよう。とくに公安警察の活動内容については驚くことばかり。本書で描かれるのは、"決して公にはできない" 彼らの捜査手法。まさに二重三重の騙し合いの世界である。

 刑事警察は、いわゆる ”刑事ドラマ” や、”○○警察24時” とかのドキュメンタリーとして様々に映像化されているので我々にもなじみがあるが、「国家体制を脅かし得る集団を専門に取り締まる」公安警察は、その活動が秘匿されているために実態がほとんど知られていない。小説では取り上げられることもあるけれど、メジャーなジャンルとは言い難い。そういう意味では本書は貴重な作品かも知れない。

 そして本書は本格ミステリでもある。ラスト近くでは、県警内にいる教団協力者(=前公安課長を暗殺した実行犯)を特定する推理が展開される。
 でもいちばん驚くのは、一連のMN案件への警察の取り組みが、(いろんな意味で)読者の予想をはるかに超えたレベルで進行していたと云うこと。いやはや「ここまでやるか」というのが正直な感想。

 フィクションであるから、例によって "盛ってある部分" もあるのだろうが、それでも「もしかして」って思わせる。
 そう読者に思わせた時点で、作者の "勝ち" なのだろう。



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親のお金は誰のもの 法定相続人 [映画]



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まずはあらすじ。「Movie Walker」から引用する。

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 東京のIT系外資企業に勤める大亀遥海(比嘉愛未)の元に、ある日、母・満代(石野真子)が亡くなったとの知らせが入る。
 遥海は父・仙太郎(三浦友和)との間に確執があり二度と故郷・伊勢志摩には戻らないつもりでいたが、母が生前に送ってきたハガキが気になり、母の通夜に出席するため久しぶりに帰省する。
 通夜会場の広間に集まった大亀家の長女・珠子(松岡依都美)、次女の浜子(山﨑静代)、遥海の三姉妹と父・仙太郎の前に、弁護士の城島龍之介(三浦翔平)が現れ、これからは仙太郎の成年後見人として大亀家の財産を管理すると告げた。珠子と浜子は仙太郎が認知症であることを家庭裁判所に申告しており、驚きを隠せない。
 管理業務にあたっていた龍之介は、やがて仙太郎が6億円の価値がある伝説の真珠を隠し持っていることを知り、真珠を売却すれば巨額の付加報酬を得られるため探し始める。
 父親の遺産を狙う珠子と浜子もまた真珠の存在を知り、龍之介よりも先に見つけようと必死に探し回っていく。
 一方遥海は、母を死に追いやった原因は真珠の養殖を手伝わせた父にあるとして恨みを募らせ……。
**************************************************

 ちょっと補足しておくと、仙太郎と満代はそれぞれ子連れ同士の再婚。長女の珠子、次女の浜子は仙太郎の子で、三女の遥海は満代の子。だから仙太郎と遥海には血のつながりはない。仙太郎が生前の母に過酷な労働を強いていたと感じた遥海は、そんな故郷を離れて上京し、就職してしまった。
 さらに付け加えるなら、仙太郎の財産について遥海には相続権がない。それ故に今回の騒ぎについては、彼女は大亀家からやや距離を取り、ちょっと醒めた視点から全体を眺められるというキャラになっている。


 これから感想を書くけれど、以下の文章ではこの映画のことをあんまり褒めてない。というかけっこう文句を書いてることをあらかじめ断っておく。
 なので、この映画が「大好きだ!」「感動した!」って人からすると甚だオモシロくない文章になっているので、そういう方は以下の文章を読まないことを推奨する。


 私も数年前に父親を亡くし、”相続” というものを経験した。言葉としては知っていたが実際に自分が体験するのは初めてで、いささか戸惑いもあった。もっとも、父はしっかり遺言書を用意してあったので、遺族間で争うなんてこともなく、平穏無事に相続を終えたが。

 そして今、母も80代後半となり、(あまり考えたくないが)そう遠くない将来にもう一度 ”相続” を経験するだろうし、さらには私自身も60代。私の財産(というほどたいしたものでもないが)の ”相続” も、これもいつかは必ず起こることになる。

 とまあ、「相続」という言葉が ”身近” になってきた高齢者としては、こういうタイトルで映画を作られては観に行きたくなるのが人情だろう。


 というわけで観てみたのだが・・・なかなか評価に困る映画のように思う。

 予告編を観てると、被後見人の財産を巡って弁護士と親族が角突き合わすコメディっぽい作品のように思えたんだが、実際フタを開けてみると、そう単純なものではないようだ。

 取り上げられている題材としていちばん大きいのは「成年後見制度」だろう。

厚生労働省のHPでは
「認知症、 知的障害、精神障害などの理由で、ひとりで決めることが心配な方々・・・(中略)・・・を法的に保護し、ご本人の意思を尊重した支援(意思決定支援)を行い、共に考え、地域全体で明るい未来を築いていく。それが成年後見制度です。」

 そしてそのために「成年後見人」が選定される。

再び同HPより
「成年後見人等は、ご本人のためにどのような保護・支援が必要かなどの事情に応じて、家庭裁判所が選任することになります。”ご本人の親族以外” にも、法律・福祉の専門家その他の ”第三者” や、福祉関係の公益法人その他の ”法人” が選ばれる場合があります。」(” ” は私がつけました)

  大事なことは、必ずしも親族が選任されるわけではないこと。そして、裁判所が決めた成年後見人に対しては、親族といえども不服申し立てはできないこと。選任・解任は裁判所のみが行えるのだ。
 まあ、親族で成年後見人に選ばれないのは、その親族の方に何かしらの問題点があるケースだろうけど。

 私自身、この映画を観るまで成年後見制度という言葉は知っていたけど、実際にどんなものか見当もつかなかった。

 では「成年後見制度」の啓蒙のための映画か? というと、そうとも言い切れないようだ。

 認知症と診断された仙太郎の成年後見人に選定された弁護士・城島がとんでもない男なのだ。腕利きらしく、多数の被後見人を抱えているのだが、彼らの財産を勝手に処分して付加報酬(手数料のことかと思うが)を得ている。
 今回の仙太郎の財産に含まれる「6億円の真珠」も、親族に先駆けて手に入れようと血眼になって奔走する。被後見人からいかに多くの金を引き出すかしか考えていない悪徳弁護士として描かれているのだ。
 まあ、彼がそのようになった背景もおいおい描かれていくのだが、親族(+観客)からしたらトンデモナイ話で、こんな奴に任せられるか、って思ってしまうよねぇ。
 (もっとも、映画の中で描かれる仙太郎の娘たちだって、親を金づるとしか見ない連中なのでその点は城島と五十歩百歩なのだけども。)

 ひょっとしてこの映画、成年後見人制度の欠陥をあげつらい、不信感を醸成するのが目的なのではないか・・・と疑ってしまう。

 基本的にはコメディなのだろうけど、城島の悪辣ぶりが際立っていて、笑うに笑えない雰囲気が横溢してる。
 終盤近く、ホテル内の劇場で、いかにも喜劇っぽいドタバタ/ダンス・シーンがあるんだが、これもとってつけたように思える。役者さんたちが熱演してるのは分かるんだが、それが観客に伝わらないように感じて、なんとももったいない。

 でもいちばん問題なのは、騒動の根源である仙太郎の描き方だと思う。
 妻が死んだショックで茫然自失状態になった仙太郎。それを認知症の症状と決めつけた娘たちが成年後見制度を悪用して父親の財産を自由にしようとすることから今回の騒動が始まってるのだが、その最中、彼がおかしな言動をし始めて「本当に認知症になったか」と周囲を慌てさせる。

 でも、遥海の機転で再検査を受け、正常と診断されたら、なぜか突然シャキッとなって一気に混乱を収拾してしまう。
 この展開はいささか唐突で、あんたが最初からちゃんとしてればこの大騒動は起こらなかったんだぜぇ~ってスクリーンに向かって叫びそうになってしまった(叫ばなかったけど)。

 仙太郎は無口な職人気質で、喋るより手を動かすタイプなのはよく分かるのだが、なんで唯々諾々と認知症扱いされるのを放置していたのかとか、中盤の錯乱はいったい何だったのかとか、内面やら心理やらがほとんど明かされないまま進行していってしまうのがなんとも消化不良な感じ。一から十まで全部説明せよとは言わないが、もうちょっと何とかならなかったのかな。

 成年後見制度をテーマに、家族の財産を巡る妄執も描きたい、壊れた家族の絆の再生も描きたい、幼児期のトラウマのせいで悪に染まってしまった弁護士の再生も描きたい、伊勢志摩の美しい自然も盛り込みたい、そんでもって爆笑もののコメディにしたい・・・たぶん製作陣はそういう映画にしたかったんじゃないかと思うのだけど、盛り込むものが多すぎたのかも知れない。

 取り上げる題材は面白いし、キャストの皆さんは達者な方が揃っているので、なんとももったいない映画だと思った。


タグ:日本映画
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SAKURA 六方面喪失課 山田正紀・超絶ミステリコレクション #6 [読書・ミステリ]



評価:★★★


 警視庁綾瀬署にある "喪失課" は、ダメ刑事の吹きだまり。しかし、所轄内で起こった自転車盗難や下着泥棒など、最底辺の事件を追っていたはずの彼らは、いつのまにか途方もない大事件に巻き込まれてしまっていたのだった・・・


 警視庁は、どうしようもない、あるいは使い物にならない、いわゆる "クズ" な刑事を、綾瀬署に新設した「失踪課」にまとめて放り込んだ。
 「失踪課」とは〈失踪人の捜査を重点的に行う部署〉というのは大嘘で、実は "問題刑事の一時保管場所" だった。そのうちまとめてクビにしてやろう、という魂胆だ。
 だから他の刑事たちは「失踪課」を揶揄して "喪失課" と呼んでいる。
 本書はこの "喪失課" に所属する ”はぐれ刑事” たちが遭遇する事件を描いた連作短編集だ。

 ちなみにタイトルにある「SAKURA」とは、本書に登場する、半ば都市伝説化した犯罪コンサルタントのコードネーム。
 そして「六方面」とは、警視庁が東京都を第一~第十まで区分したもののひとつ。綾瀬署は「第六方面」に含まれてる。


「プロローグ」
 綾瀬署の近辺で不発弾が発見されたとの情報が入り、陸上自衛隊の不発弾処理隊が現地へ向かう。周辺住民が避難して無人となった街へ、巡回警備に向かったパトカーから無線が入る。
 「街がない! 北綾瀬の街が消えてしまった!」・・・
 なんとも壮大な謎の出現。この謎解きは「第六話」で。


「第一話 自転車泥棒」
 北綾瀬駅前に放置された自転車は定期的に撤去される。その日も12台の自転車が撤去されたのだが、それを乗せたワゴン車が、運転していた職員ごと消えてしまった・・・


「第二話 ブルセラ刑事」
 ブルセラショップに何者かが侵入、大量のパンティを奪っていった。店へ聞き込みに行った綾瀬署喪失課の刑事・鹿頭(ししとう)は、なりゆきで○○○○○○を買わされる羽目になるが(おいおい)・・・。
 いやあ、○○○○○○をこんなふうに使った小説は初めてだろう(笑)。


「第三話 デリバリー・サービス」
 ピザ屋のアルバイト店員が、スクーターで宅配に出たまま帰らない。喪失課の刑事・年代(ねんだい)は調査を開始、まもなく解決するが、そこから別の誘拐事件の可能性が浮上してくる・・・


「第四話 夜も眠れない」
 不動産屋・野村の絞殺死体が発見される。やがて目撃者が見つかり、被害者は地下鉄の終電の車内で殺されたものと判明する。有力な容疑者が浮上するが、彼にはアリバイがあった・・・
 本書では、おそらくいちばんミステリらしい(?)事件。


「第五話 人形の身代金」
 喪失課課長・磯貝(いそがい)は、かつて同僚だった長谷(はせ)の妻に呼び出された。長谷は博奕で身を持ち崩し、借金取りのヤクザに追われているという。
 ヤクザは夫婦の9歳になる娘に目をつけたようだが、その少女は公園の遊歩道にある洞窟の中で姿を消してしまう・・・
 人間消失トリックはシンプルだけど、小道具の使い方が上手い。


 「第一話」~「第五話」では、それぞれ喪失課所属の別々の刑事たちが活躍する。
 "使い物にならない刑事" というのも、同人誌に論文を載せちゃうくらいのアニメオタクだったり(笑)、早朝からソープランドに通ったり(おいおい)、博奕大好き人間だったり、偏屈だったり怠け者だったり融通か効かなかったり協調性が皆無だったりなどが原因で "失格" の烙印を押されてはいるが、決して "刑事として無能" ではない。
 だから彼らが本気で取り組んだ事件は、謎は解けるしきっちりと解決もされる。
 そしてこの五つの話はほぼ同時進行していて、それぞれ単独の事件のように見えているが、根っこの部分で深く関係していることが判明していく。


「第六話 消えた町」
「エピローグ」
 最終話となる「第六話」では、すべてのつながりが明らかになり、壮大かつ意外な犯罪が浮上してくる。
 「プロローグ」の "街が消える" 謎の真相もここで判明するが、わかってみれば極めてシンプル。シンプルすぎる故に誰も思いつかなかった、というか使おうとすら思わなかったともいえる。これは本書内に登場するいくつかのトリックにも共通する特徴だろう。

 本職がSF作家なせいか、普通のミステリ作家とちょっと異なる感性というか、こういうトリックをさらっと使ってしまえるのが山田正紀なのだなぁと納得してしまう。



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沈黙の艦隊 [映画]



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まずはあらすじ。公式HPからの引用です。

**************************************************
 日本の近海で、海上自衛隊の潜水艦が米原潜に衝突し沈没した。艦長の海江田四郎(大沢たかお)を含む全76名が死亡との報道に衝撃が走る。だが実は、乗員は無事生存していた。事故は、日米政府が極秘に建造した高性能原潜〈シーバット〉に彼らを乗務させるための偽装工作だったのだ。米艦隊所属となったシーバット、その艦長に任命されたのが海自一の操艦を誇る海江田であった。
 ところが、海江田はシーバットに核ミサイルを積載し、突如反乱逃亡。海江田を国家元首とする独立戦闘国家「やまと」を全世界へ宣言した――。
 やまとを核テロリストと認定し、太平洋艦隊を集結させて撃沈を図るアメリカ。アメリカより先にやまとを捕獲すべく追いかける、海自ディーゼル艦〈たつなみ〉。その艦長である深町(玉木宏)は、過去の海難事故により海江田に並々ならぬ想いを抱いていた……。
**************************************************

 原作は同名の人気マンガ。連載開始は1988年だから、もう35年も前のことだ。潜水艦ものが大好きな私は当然ながらファンになり、単行本も買い込んでいた。職場に持って行ってみんなで回し読みとかもしたものだ。
 ところが連載も佳境に入った頃、私は結婚することになって式の準備やら新居への引っ越しやらてんてこ舞いの状態になり、新婚生活が始まれば毎日の生活だけで精一杯。なにせ2人ともフルタイムの共働きだったからねぇ。
 アパート暮らしで狭かったせいもあり、私物は大半が実家に置いたまま。けっこう持っていた漫画本もそのまま。だから『沈黙の艦隊』の単行本も途中まで(たぶん18巻くらいまで)買ったきり、いまでも実家の押し入れの奥に眠ってるだろう。だから後半のストーリーは正直よく知らない(おいおい)。たまに書店で立ち読みしてたので、だいたいのところは知ってるんだけどね(えーっ)。

 おっと、余計な話が長くなってしまった。

 単行本で32巻にもなるこの原作、まともに映画化したら三部作どころか、その倍くらいのボリュームが必要になるだろう。
 だから今回の映画化で一番気になったのは、原作のどこまでを映像化しているか、だった。駆け足ダイジェストになってたらイヤだなぁ・・・って思ってたんだが、結論から言うとそうはなっていなかったので一安心だった。

 2時間の尺の中で、無理のない範囲で切りのいいところまでを上手に映像化していると感じた。
 ストーリー進行のペースについても、思っていたよりゆったりと、けっこう丁寧に作られていたように思う。もちろん原作発表から30年以上の時間が経っていて、あちこちに改変部分はあるのだけど、観ていて気になることはなかった。

 監督は吉野耕平さん。彼がメガホンを取った『ハケンアニメ!』(2022)は、個人的には素晴らしい作品だと思ったんだけど、興収は今ひとつだったみたい。でも、こういう超大作に起用されたのは、業界内では評価されていたということなのだろう。それは素直に嬉しく思った。

 CGも進歩して、海中の戦闘シーンなども迫力充分、海上艦も大半はCGなのだろうけど、問題なく観ることができるレベルになってると思う。
 ただ、シーバットに向かってくる魚雷がことごとく外れるのは、(主人公補正があるにしろ)それなりの理屈づけはきちんとしてほしいところ。だいたいは説明されてるんだけど、一部「なんで外れたの?」ってシーンがあったと記憶してる。細かいところだけど、そういうところをきっちりしないとリアリティが薄れてしまう。

 それ以外で違和感を感じたのは、やっぱりキャラ設定かな。原作の海江田は、まさに ”若きカリスマ” という感じで明快・颯爽・敏腕というオーラを発散させていたかと思うんだが、大沢たかおの演じる海江田は、頭脳明晰なところは同じでも、つかみ所の無い、一種異様で不気味な雰囲気を醸し出している。
 海江田と対立する役どころの深町。原作ではけっこう無骨だったような気もするのだが、玉木宏ではちょっとスマートなイメージが強いような。
 でも、こういう二人の『沈黙の艦隊』もありかな、って思わせることはできているんじゃないかな。

 登場人物に占める女性の比率が上がっているのは、やっぱり35年という時の流れを感じた。防衛大臣が女性だし、女性の自衛隊員も多く登場してる。シーバットにも〈たつなみ〉にも女性乗組員がいる。現実の自衛隊でも令和2年から潜水艦に女性乗組員が誕生してる。
 本作で〈たつなみ〉副長・速水貴子を演じた水川あさみさん、とってもカッコよかった。

 日本側の配役で難点を挙げるなら、海原大悟を演じた橋爪功さん。ご高齢のせいか(現在82歳)、滑舌が悪くて台詞がよく聞き取れませんでした。
 『リボルバー・リリー』のときもちょっと感じたんですけど、今作はそれ以上だったような・・・。まあ、「お前の耳が悪いんじゃないか」って言われればそれまでなんですが。

 いちばん大きな問題点は、やはり外国人俳優さんが演じている部分が弱いところかなぁ。アメリカは今回、シーバットの敵に回るわけなんだが、あまり強そうに見えないんだよね。やっぱり有名どころがいないせいかな。
 もし続編が作られるならば、さらなる強敵が出現するわけで、それを演じる外国人俳優さんの比重も大きくなるはず。

 でも、この作品は Amazon の出資で作られてるようだから、もしもこの映画が好評で全世界公開/配信、なんてなったら外国人部分だけ名のある俳優さんを使って撮り直すんじゃなかろうか。
 そして続編は Amazon Prime Video での配信で、なんてことになるかも知れない。まあ、すべてはこの映画の興収しだいだけど。

 もし外国人俳優さん部分がもう少し何とかなるのなら、続編が見たいな。期待します。


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