SSブログ

いま語るべき宇宙戦艦ヤマト ーロマン宇宙戦記 40年の軌跡ー [アニメーション]

いま語るべき 宇宙戦艦ヤマト

いま語るべき 宇宙戦艦ヤマト

  • 作者: M.TAKEHARA
  • 出版社/メーカー: 竹書房
  • 発売日: 2014/12/04
  • メディア: 単行本



まず、表紙に注目である。
これは "宇宙戦艦ヤマト" ではない。
たぶん、旧日本海軍の "大和" だろう。

そして「ヤマト」のロゴも、
あの独特の、力まかせに筆を走らせたような
独特な字体ではなく、活字体っぽい。

そのあたり、読む前に疑問を持ったのだが
「あとがき」に、その答えが書いてあった。
本書はもともと同人誌の企画で、
それを商業用に作り直したもののようだ。

たぶん、著作権者(いまは誰が持ってるのだろう?)から
発行の許可はもらったのだろうし、
たぶん、利益は一部はそちらにも支払われるのだろう。
でも、版権の絵もイラストも一切使わないという、
公式から一定の距離をとってつくられたところに、
本書の存在価値があると思う。

内容は、1974年の「宇宙戦艦ヤマト」(いわゆるPart.1)から
最新の「2199」まで、シリーズ全般にわたって網羅し、
その概要を伝えようとするものだ。

全体の1/4弱がPart.1で占められているのはまあ仕方がないが
それ以外の作品も比較的ページを割いて紹介している。

特筆すべきは、作品ごとに、かなり細かく
編集のバージョン違いに至るまで着目してるところか。

例えば「Part1」ならTV版、再編集された劇場版(上映版)、
それとは結末の異なる劇場版(TV放映版)。

「ヤマト2」や「ヤマトIII」では
TV放映版以外に、スペシャル番組用の総集編まで。

「完結編」に至っては35mm版と70mm版があるのは有名だが
それ以外にも、ラストシーンや
ソフト化される際のトリミングの違いなどで
総計8バージョンが存在する、なんてトリビアが披露されている。

さらには途中で頓挫した「2520」や、
企画はされたものの映像化されることなく終わった
「デスラーズ・ウォー」とかの幻の作品群も
資料を発掘して紹介している。


40年が過ぎた今も、ヤマトのファンは熱心に活動しているし、
資料的なデータをまとめたwebサイトもある。
おそらく、本書に記載されている内容ならば
ほとんどはネットを探せばどこかに載っていると思う。
しかし、ヤマトシリーズ全体を新書版210ページという
手頃でコンパクトなサイズにまとめたものは珍しいのではないか。

本書は人によっていろいろな読み方をされるだろう。

古くからのファンならば、
懐かしみながらも記憶を新たにする拠り所として。
実際、私も忘れていたり勘違いしていたところが随所にあった。

「2199」等で、新たにファンになった人なら、
40年前から始まった「ヤマト」という作品が
どんなものであったかを知るためのガイドブックとして。

どんな人でもそれなりに役立つようなつくりになってるかと思う。


ヤマトは、Part.1から続く長大な続編群が存在し、
40年の歴史を持つ作品でもある。
当然、ファンもいろいろである。
「"Part.1" しか認めない人」もいれば
「"さらば" で終わったと思う人」もいるし、
「シリーズ全部を認める人」もいるだろう。
ヤマトファンが100人いれば、
"その人の認めるヤマト" も100通り存在するのだろう。

本書の著者は、極力、客観的に作品を見ようとしていると思う。
賛否が分かれる続編群についても、
褒めるべき点があれば取り上げるし、苦言を呈することも忘れない。
このあたりは、やはり公式と距離を取っているからこそ
書ける部分だろう。

ただ、著者の評価と私の評価は一致するわけではない。
同意できる部分もあるし、異議を唱えたくなる部分もある。
そしてそれは、本書を読む誰にも当てはまることだろう。
上にも書いたが100人のヤマトファンがいれば、
評価も100通り存在するだろうから。

でも、評価が異なるからといって
読み続けることに抵抗や支障は全くなかった。
それはやはり、著者の姿勢というか文章に
"ヤマト愛" が感じられるからだろう。

新書で200ページを超えるという、
決して少なくない文章を、情熱を込めて書き上げている。
これは決して容易なことではないからね。

本書で取り上げている最後の作品は「2199 追憶の航海」である。
発行が2014年12月11日だから仕方がないのかも知れないけど、
もし間に合っていたら「星巡る方舟」はどのように書かれたのか
気になるところではある。
いつの日か増補改訂版が出ることを期待しよう。

「復活編」「実写版」「2199」と、近年再びヤマトが映像化されてきて
それがあってこその本書の出版なのだろうが、
40年の時を経ても「ヤマト」シリーズを扱った本が出る。
そのこと自体は素直に嬉しいと思う。
願わくば、今後も本書のような "研究本" が
どんどん出てくるといいなあ。

何だかだらだらと書いてしまったなあ。
ヤマトがらみだとついつい長くなってしまう・・・


nice!(1)  コメント(1)  トラックバック(0) 
共通テーマ: