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南極。 [読書・その他]

南極。 (集英社文庫)

南極。 (集英社文庫)

  • 作者: 京極 夏彦
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2011/12/15
  • メディア: 文庫



評価:★★★

勘違いしそうだが、本書のタイトルは、
ペンギンが大挙して歩いている、あの氷の大陸のことではない。

本書の主人公(?)、人気最低の四流小説家・南極夏彦のことなのだ。
(文庫の表紙でソフビの人形になってる、
 バカボンのパパの弟みたいなキャラだ。)

さらに敏腕編集者・椎塚有美子、売れないライター・赤垣廉太郎、
心霊研究家・中大岡百太郎といった "胡散臭い" 面々を
レギュラーメンバーとする "ギャグ小説" の連作集である。

内容はあるようでないような。
「がきデカ」とか「マカロニほうれん荘」とか「こち亀」みたいな
不条理ギャグ漫画を小説にしたようなものと思えば、
たぶんあまり違わないのではないか。

内容も、有名作品をもじった脱力感満載なタイトルと、
それに見合ったバカバカしいお話。

宍道湖に出現するUMA(未確認生物)を
女子高生と一緒に探す「宍道湖鮫」とか。

生放送中に放屁を連発して芸能界から消えた
女子アナウンサーをめぐる「ガスノート」とか。

猛毒を持ち、棘を使って動き回る海胆が
タケノコを煮る老婆の幽霊と対決する
「毒マッスル海胆ばーさん用米糠盗る」とか。

本書には、この手のギャグ小説が8編も(!)収録されてる。
しかも短いものでも文庫で60ページ、
長いものは100ページを超えるというボリューム。
8編合わせると700ページを超えるのである。
堂々とした厚みを誇る本で、さすがは京極夏彦なのである。

しかし。

読んでて思ったが、この手の小説は
普段の読書の合間に "ちょっと" 読むぶんにはとても面白い。
だが、まとめて読むのはいかがなものか。

いくら "世界の三大珍味" でも、三度三度の食事で
キャビアやフォアグラやトリュフばかり食べさせられたら苦痛だろう。
(どれも食べたことないけど)

いくら好きでも映画「フーテンの寅さん」シリーズを
48本まとめて見せられたら身体を壊すだろう。
(やったことないけど)

本書だって、不条理ギャグを700ページにわたって
延々と読まされるのは "苦行" の範疇に入るのではないか。


そして読後の空虚感。

他の地方ではどうか知らないが、関東地方では日曜の午前中に
TBSで「サンデージャポン」という番組を放送している。
司会は爆笑問題で、その週に起こった事件やニュースに
スタジオにいるテリー伊藤とか西川史子とかが
テキトーにツッコミを入れて笑い飛ばすバラエティである。
けっこう面白がって観てるんだが、終わった後にふと思う。
「貴重な日曜の午前中に、いったい私は何をしてたんだろう・・・」

"時間を無駄使いした" 感が半端ない。
そういう番組だとわかってはいるんだけど、
何だか観ちゃうんだよねー。

本書もそれに似たところがある。

読んでる最中はそれなりに面白いんだけど
読み終わった後、ふと思う。
「700ページもこの手の話を読む時間があったら、
 普通のミステリかSFが、2~3冊読めたなあ・・・」

いや、ホント読んでる最中は面白いんだよ。
でもねえ・・・

もし本書を読むなら、1週間に1編ずつ、
8週間(2ヶ月)くらいかけて読むと、いい案配なんじゃないかなァ。


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