SSブログ

オーパーツ 死を招く秘宝 [読書・ミステリ]


オーパーツ 死を招く至宝 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

オーパーツ 死を招く至宝 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 蒼井 碧
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2019/01/10
  • メディア: 文庫

評価:★★☆


 大学生・鳳水月(おおとり・すいげつ)の前に現れた男・古城深夜(こじょう・しんや)は、なぜか鳳と瓜二つの風貌をしていた。
 自らを "オーパーツ鑑定士" と名乗る古城は、鳳と共にオーパーツがらみの事件に関わっていく。
 第16回(2017年)『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。

* * * * * * * * * *

 日本最高峰のS大学法学部の学生・鳳水月は、なぜか自分と瓜二つの風貌を持つ男・古城深夜と出会う。彼は鳳の同級生であり、なおかつ自らを "オーパーツ鑑定士" と名乗った。

 オーパーツ(OOPARTS)とは、Out Of Place ARTificalS の略で、「古代に製作されたものでありながら、当時の技術や知識では実現することが不可能だった工芸品」のこと。
 例えばペルー南部にあるナスカの地上絵とか、イースター島の巨大な人面石像とかを指す。オカルト系の雑誌などで "超古代文明が産みだした物" とか "宇宙人の遺物" とか言われているアレ、といえば想像はつくだろう。

 大学にはろくに顔を出しもせずに鑑定の仕事に走り回っている古城に巻き込まれる形で、鳳も怪事件に関わることになっていく。


「第一章 十三髑髏の謎」
 有名なオーパーツのひとつでである ”水晶髑髏”。
 文字通り水晶を切り出して造られた "水晶髑髏" は全部で13個ある。古代の叡智が宿った水晶髑髏を13個すべて集めたとき、"真の地球の歴史と超古代文明の全貌" が明らかになる、という伝説があるらしい。
 財前龍之介(ざいぜん・りゅうのすけ)博士は、すべての水晶髑髏を集めることに成功したという。その真贋を鑑定するために、古城と鳳は長野県の北部にある博士の別荘へやってきた。
 しかしその財前博士が密室の中で殺されてしまう。しかも遺体の周囲の床の上には、13個の水晶髑髏が円形に配置されていた・・・
 密室トリックは面白いけど、そんなに上手く○○○ものなのかなぁ。


「第二章 浮遊」
 "黄金シャトル" とは、南米でインカ帝国が栄える前の『プレ・インカ』と呼ばれる時代に作られた黄金製の工芸品で、ほとんどは鳥や魚をかたどったものと思われているが、その中のいくつかはジェット機やスペース・シャトルにそっくりの形状をしている。しかも、航空力学的にも問題ない形をしているという。
 考古学者・相馬公博(そうま・きみひろ)とその妻ミランダが自宅で殺された。さらに、博士たちが発掘してきた "黄金シャトル" も盗まれていた。
 現場は施錠された部屋で、二つある部屋の鍵は、遺体が着ていた服から見つかっていた。しかも犯行時刻と思われる時間帯に、現場周辺ではUFOの目撃証言まで出てきた・・・
 こちらの密室は、UFOとの合わせ技で一本と言うところか。
 本作で登場してくるのが古城深夜の姉・古城まひる。職業はなんと警視庁捜査一課の警部補。弟と鳳を取り違えてしまうギャグシーンがあるのだが、この二人はそんなに似ているのか?


「第三章 恐竜に狙われた男」
 鳳は、突然警察に捕まって留置場に入れられてしまう。
 北海道三笠市郊外の別荘で、古生物学者・榊原玄司(さかきばら・げんじ)が殺された。防犯カメラの映像から、出入りした人間はひとりだけ。それが鳳にそっくり(つまり古城深夜)だったことから、彼に疑が掛けられたのだった・・・
 今回のオーパーツは恐竜土偶。遙か昔に絶滅した恐竜を象った土偶を人間が造っていた、というもの。熱狂的な恐竜オタクである古城まひるさんが、延々と蘊蓄を語るシーンがあるのだが、あまり本編に関係しないような気も。
 今回の、人目につかずに現場に出入りするトリックはバカミスに近いだろう。


「最終章 ストーンヘンジの双子」
 ストーンヘンジのような巨石遺跡を再現した『巨石庭園』。私有地のため外部の人間は入れないが、近く園内の鑑賞会が開かれるという。ただし、"双子であること" が参加条件だ。これは所有者の筒井川(つついがわ)亮介・亮平(りょうすけ・りょうへい)兄弟が双子であるかららしい。
 そこで古城と鳳は双子を装って『巨石庭園』にやってくるが、敷地内に建つ本館に見学者一行が宿泊した夜、別館が火災になり、本館では筒井川亮介の死体が発見される・・・
 巨大な○○○○○○○○○ともいうべきトリックには、島田荘司もビックリだろう。


「エピローグ」
 連作短編において、最後に来るとすべての話がつながって一つの大きな絵が見えてくる、という展開はよくある。本書でも・・・といいたいところなんだがよくわからない。
 つなげるならちゃんとつなげてほしいし、つながらないなら変に匂わせたりせずに、別個の話として独立させたままにしておいたほうがいいんじゃないかな。ちょっと中途半端な気がする。
 あと、鳳と古城が他人の空似を超えて瓜二つなところにも、てっきり ”裏がある” って思ってたんだが、どうやらそうでもないような。
 もっともこれは、(あるとすれば)続巻に持ち越しなのかも知れないけど。



nice!(5)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 5

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント