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ルパンの絆 [読書・冒険/サスペンス]


ルパンの絆 ルパンの娘 (講談社文庫)

ルパンの絆 ルパンの娘 (講談社文庫)

  • 作者: 横関大
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2024/02/15

評価:★★★★


 "Lの一族" に生まれた三雲華(みくも・はな)は、刑事の桜庭和馬(さくらば・かずま)と夫婦になり、娘の杏(あん)とともに暮らしていた。
 しかし、和馬は女を尾行中に意識を失い、目覚めた時には女の死体が。彼には殺人の容疑がかかってしまう。
 一方、杏が何者かに誘拐され、華のもとには「娘を帰してほしければ10億円を用意しろ」との脅迫電話が。
 泥棒一家、警察一家、そして探偵一家が入り乱れる(笑)「ルパンの娘」シリーズ、第5巻。

* * * * * * * * * *

 代々泥棒を生業とする "Lの一族" に生まれた三雲華(みくも・はな)。警察官一家に生まれた刑事・桜庭和馬(さくらば・かずま)。縁あって二人は夫婦となる(諸々の事情で正式に籍を入れられないので事実婚状態だが)。娘の杏(あん)も9歳となった。

 某銀行の副頭取の不審死に関係すると思われる女・双葉美羽(ふたば・みう)を尾行中だった和馬は突如意識を失う。目覚めたのはホテルの一室。そして浴室には美羽の全裸死体が。
 何者かの陰謀にはめられたと感じた和馬は現場を脱出するが、警察からは追われる身に。

 一方、杏が何者かに誘拐され、華のもとには「娘を帰してほしければ10億円を用意しろ」との脅迫電話が。身代金を準備する猶与は三日間。

 名探偵と謳われた北条宗太郎(ほうじょう・そうたろう)の娘で、刑事の美雲(みくも)は、双葉美羽殺害事件を受けて警視庁捜査一課に異動、和馬の妹で交通課の婦警である香(かおり)と組んで和馬を追うことになるが・・・


 シリーズも巻を重ね、レギュラーメンバーも増えてきた。
 主役級である泥棒一家の華、警官一家の和馬、探偵一家の美雲に加え、それぞれの家族も登場する。さらに杏を誘拐した元プロレスラーの実行犯二人を加えると、本書の主要キャラは軽く10人を超えるのではないか。
 これだけの人数を登場させ、それぞれに役割を与え、各人に見せ場を作るのはなかなかたいへんだと思うが、そのあたりの作者の "交通整理" は巧みだ。

 逃亡する和馬、誘拐事件で身動きの取れない華。おのずと捜査の主体は美雲が担っていくことに。彼女の恋人で華の兄・渉(わたる)は引きこもりだが超一流のハッカーで、要所要所で "いい仕事" をする。

 そして物語の後半では、"シニア世代" のキャラたちが "大活躍" する。
 華の伯母で、モリアーティのような天才犯罪者の三雲玲(れい)、
 華の父で "Lの一族" の総帥・三雲尊(たける)、
 そして美雲の父で "日本のホームズ"・北条宗太郎。
 みな還暦超えなのだが、極めて元気だ(笑)。さすがは人生100年時代(おいおい)。

 その反面、華さんは今回あまりいいところがなかったように思う。
 まあ、娘を誘拐されているという途轍もないハンデを抱えていたし、終盤では三雲玲からの ”爆弾発言” もあったので無理もないのだが・・・。もともとは彼女が主役のシリーズだっただけに、今回の扱いはちょっと不憫かな。
 杏ちゃんも、泥棒一家と警察一家の血を引くハイブリッドなサラブレッドで、9歳にしては驚くほど気丈なのだが、今回に関しては犯人グループの方が一枚上手だ。

 ストーリー自体は本書の中で一区切り着くのだけれど、ここまま終わるのでは華さんも杏ちゃんも不完全燃焼ではないかなあ。
 もしも続編があるのならば、本作での鬱憤を晴らすような、二人が大活躍する物語が読みたいな。



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