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プリンセス刑事 弱き者たちの反逆と姫の決意 [読書・ミステリ]


 

プリンセス刑事 弱き者たちの反逆と姫の決意 (文春文庫)

プリンセス刑事 弱き者たちの反逆と姫の決意 (文春文庫)

  • 作者: 喜多 喜久
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2021/08/03

 


評価:★★★

 


 2000年以上もの間、”女王” によって統治されてきたパラレルワールドの日本が舞台。

 


 現女王の妹宮の娘(つまり姪)にして、王位継承権第5位のプリンセス・白桜院日奈子(はくおういん・ひなこ)殿下が、なんと刑事となって若手刑事の芦原直斗(なおと)とバディを組み、凶悪事件と対峙していくシリーズの第3巻。

 


 とは言っても、なるべく王族には危険な現場には出てほしくないのが警察上層部の本音。2人は「特務捜査班」という位置づけだが、要するに通常の捜査班とは別行動になってる。

 

 

 


 今回、2人が捜査に加わるのは、ショッピングモールで起こった無差別殺傷事件。外国人の2人組が買い物客に襲いかかり、4人が死傷した。事件後、犯人の1人は死亡したがもう1人はまだ逃走中だ。

 


 犯人はどちらも東南アジアにある北アンプチア共和国の出身。犯行時の状況から、何らかの錯乱に陥っていたと推測されるものの、死んだ犯人の体内からは既知の薬物は検出されなかった。

 日奈子は未知の新種薬物の存在を感じ取り、捜査を進める。さらに、事件の背後には外国人排斥を唱える政治家と政治団体も見え隠れするが・・・

 

 



 後半に入ると、新薬物 ”ステロイドX” の存在が明らかになり、その合成と流通経路を追って、さらなる惨劇を防ごうと奔走する日奈子と直斗の活躍が描かれる。

 


 元薬学系研究者だった著者らしく、薬物関係の描写は手堅いし、得意分野だろう。しかし本書の最大の魅力はやはりヒロイン・日奈子さんのキャラクター。

 


 王族という最高級セレブにして、大学時代に分子生物学を専攻していたという理系女子。才色兼備を絵に描いたような ”お嬢様” なのだが、「国民の生命財産を守りたい」という使命感から刑事となった。

 


 かと言って自分の身分をひけらかすこともなく、特別扱いされることも断るという、ある意味ストイックな行動をしてきたのだけど、シリーズ3巻目となる本書において彼女の行動に変化が起こり始める。

 


 捜査の現場においては、一般人と同じであろうと努めてきた。しかし、王族が捜査に加わっていることが、犯人の逮捕あるいはさらなる凶悪犯罪の予防について有利に働くのであれば、自分の ”身分” の利用を躊躇わなくなってきた。

 


 具体的にどんな行動を起こすかは本書を読んでもらうとして、このシリーズは彼女の ”成長” を描く物語になってきたのだと思う。

 一話完結の ”サザエさん時空” ではなく、キャラたちの成長・変化を描いていくのであれば、当然ながらパートナーである直斗もまた変わっていくのだろう。

 


 ならば、シリーズの終着点もまた作者の頭の中には既に構想されているようにも思うが・・・。どのような着地点を迎えるのかは想像できないが、いつの日かそれが語られる日まで、このシリーズにはつきあっていこうと思う。

 

 


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「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 後章 ーSTASHAー」感想・・・のようなもの その5 [アニメーション]



※ネタバレを含みます。未見の方はご注意を。


■前章時点での予想
(個人的な妄想です)

 前章の記事で、デザリアムの正体を「並行世界における、時間断層を放棄しなかった地球の未来」が「並行世界(あちらの世界)のイスカンダルによってこちらの世界へ飛ばされてきた」のではないか、ついでに時間も何百年か過去に跳んでしまって・・・という予想(妄想)として書き散らした。

 後章が公開され、さらにいくつかの情報が明らかになったことで、この予想をもう一度検証してみようと思う。


■後章で明らかになったこと

 デザリアムの皆さんの台詞などからいくつか拾ってみよう。


○イスカンダルは「忌むべき星」

「一刻も早くイスカンダルを持ち帰るのだ。
 この忌むべき星を我らの故郷に」(第5話)


○イスカンダルが持つ「呪われし力」=波動エネルギー

「その呪われし力が何をもたらすかも知らずに・・・」(第5話)
波動エネルギーをもてあそぶ愚か者どもよ」(第6話)
「貴様たちには過ぎたる力だ。
 いたずらにもてあそび宇宙そのものを破壊へと導く」(第6話)

 イスカンダルが「忌むべき星」なのは、「呪われし力」を秘めているから。
 そしてその「力」とは、波動エネルギーのこと。スターシャの発言からも、デザリアムの目的が「波動エネルギー」を我がものにすることだとわかる。

 そして「波動エネルギー」が「何をもたらすか」をデザリアムは知っている。それは「宇宙そのものを破滅へと導く」こと。
 デザリアムは波動エネルギーが引き起こす惨禍を見たことがあるようだ。あるいは、それは自分たち自身に起こったことなのかも知れない。


○デザリアムの歴史には断絶がある?

「おそらくは ”大喪失” に含まれる記録・・・あれは何者だ」(第5話)

 過去のある時点で「大喪失」なるもの(おそらくは何らかの災厄)があり、そこで記録の喪失が起こって歴史に断絶が生じている。大喪失の時期のみの歴史が失われたのか、それ以前全ての歴史が失われたのかは不明だが。
 デザリアムが地球の未来だとして、ヤマトのことを知らないのはこれで説明できるのだが・・・


○デザリアムは歴史を俯瞰して語る

今という時を生きることしか知らない貴様たちには
 しょせん理解できまいが・・・」(第6話)

 未来人が過去の世界を見て言ってる台詞のようにも聞こえるが、単にデザリアム人が長命であることを示す台詞ともとれる。
 デザリアム人が旧作のように機械化されているなら、たしかに長命になってるだろうが。

「既に次元潜航を実現していたとはうかつだった。
 しかし潜航中の艦を捕らえて釣り上げる技術は
 まだこの時空間にはあるまい」(第6話)

 こっちの台詞こそ、デザリアムが未来人であることを示しているように思えるが。


○デザリアムは過去、イスカンダルと何らかの関わりがありそう

「忌むべき星イスカンダル。
 その呪われし力は我らデザリアムの手で管理されねばならぬ」(第6話)
「忌むべきものを遠ざけるのではなく身の内に取り込む。
 それでこそ我らは完全になれる
 我ら光と対をなす闇・・・イスカンダルを」(第6話)

 デザリアムはこの時空で初めてイスカンダルと出くわしたのではなく、かつて何らかの関わりがあったように思われる。
 ”忌むべき星” 呼ばわりしてるくらいだから、過去にイスカンダルから ”ひどい目” に遭って、それには波動エネルギーが関わっていたのかも知れない。

 しかも「対をなす」という意味深な単語。「光のデザリアム」と「闇のイスカンダル」は、過去のある時点で ”対等な関係” にあったか、あるいは ”もともと1つだったものが2つに分かれた” という解釈も可能だろう。


○デザリアム人は完全な機械ではなく、人間の感情を残したサイボーグ?

「揺らぎを感じます。お前の内深く生じた揺らぎを・・・」
「直ちに修正を」
「慌てずともよい。
 その揺らぎこそ、デザリアム千年の夢が夢でないことの証し
 制御するのです」(第6話)

 この辺の台詞の意味はよくわかりません。
 私が考えたのは上に書いたけど、違う解釈もありそう。


○デザリアムのエネルギーは波動エネルギーと相性が悪い

たった一発の爆弾がなぜ・・・」
波動エネルギー・・・呪われた力よ」(第8話)

 ゴルバ内部の誘爆が続くことからも、これは確からしく思える。ここは旧作の設定を引き継いでいるのか。


■潘恵子さんの起用

 後章で一番のサプライズは潘恵子さんの起用。しかもデザリアムの「女帝」(?)役ともとれる立ち位置。

 旧作「ヤマトよ永遠に」でサーシャ、同じく「ヤマトIII」ではシャルバート星のルダ王女を演じていましたね。
 その彼女を起用したのは何故なんでしょうか。

[理由その1]
 デザリアムの正体がサーシャ(イスカンダル)と何らかの関わりがあることを示す伏線?
[理由その2]
 デザリアムの正体がルダ(シャルバート)と何らかの関わりがあることを示す伏線?

 という可能性もありそうに思えます。

 とは言っても、案外、旧作からのファンのための ”サービス出演” に過ぎなかったのかも。


■デザリアム再考

 さて、後章で得た情報を付け加えて、さらなる妄想を組み上げてみよう。

[1] デザリアムの誕生

 かつてイスカンダルとデザリアムはひとつで、過去のある時点で分かれたと仮定すると、ありそうなのはイスカンダルが武力路線(波動砲で大マゼラン銀河に覇を唱えた)を放棄することに決めた頃かと。
 武力放棄に反対した好戦派が、イスカンダルと袂を分かった、それも、反乱を企てたが失敗し、追放されたのかもしれない。
 イスカンダルへ並々ならぬ敵意を抱いていることから考えると、後者の方がありそう。


[2] シャルバート星

 イスカンダルは天の川銀河の惑星をひとつ選び、コスモリバースでイスカンダルの環境を再現、その星に好戦派の者たちをエレメント化して封印した。その際、波動エネルギー技術も奪っておいた。これがシャルバート星。
 その後、シャルバート星を訪れた異星人たちがエレメント化された超文明の一端に接し、神格化して敬うようになる。これがシャルバート教。


[3] ”大喪失” 発生

 一方、時間断層を放棄しなかった地球では際限ない軍拡が続き、やがて内戦が勃発する。このとき、時間断層とともに歴史の記録の大部分が喪われてしまう。「波動エネルギーを弄んで破滅を招いた」わけだ。このとき、歴史/記録とともに波動エネルギー技術も失ってしまう。
 地球は滅亡寸前まで人口が減り、人々の機械化・長寿化が進む。


[4] デザリアムによる併合

 地球が内戦に明け暮れていた頃、デザリアムは数千年の眠りから覚めて自ら封印解除に成功する。行動の自由を取り戻した彼らは新たなエネルギー源を開発して内戦後の地球に侵攻、機械化した地球人を支配下に置く。
 内戦で疲弊した地球はあっという間に併合されてしまう。ゴルバ内にあったアンドロメダの残骸は、このときに接収したもの。


[5] 並行世界への追放

 地球を手始めにデザリアムは天の川銀河の征服に乗り出すが、それを知ったイスカンダルによって阻止されてしまう。
 デザリアムは未来の地球人共々、並行世界の過去(ヤマト2205世界の過去)へ追放されてしまう。


[6] そして「2205」へ

 ヤマト2205世界においても、デザリアムはイスカンダルへの怨みを忘れず、波動エネルギーの奪還を目的にリベンジマッチを挑むことに。それが「新たなる旅立ち」の物語。
 デザリアムの目的は、”こちらの世界” を征服することか、”あちらの世界” へ帰還して ”本来のイスカンダル” に復讐することなのかは分からないが・・・

 ・・・この設定だと、”2205年のヤマト宇宙” のどこかにはシャルバート星があって、そこには古代イスカンダルの好戦派の方々が覚醒を待ってる、ってことになりそう。ただ、彼らが目覚めた世界には時間断層を放棄した地球があるわけだが・・・

 うーん、とりあえず書いてはみたものの、いろいろしっくりこないところがあるなぁ。まあ所詮は一個人の妄想ですからね。


■「3199」予想

 すでに「新たなる旅立ち」には旧作「ヤマトIII」の要素が多分に盛り込まれているので、「3199」もそうなると思われる。つまり「永遠に」にも「III」の要素が盛り込まれる。
 上に書いた予想で、デザリアムの正体をシャルバートと絡めてみたのも、この流れを頭に置いて考えてみたもの。

 さて、実際にはどんなストーリーになるのか全く予想がつかないけれど、いつも書いているとおり、ヤマトの新作について予想や妄想を展開できるなんて幸せな時代になったものです。


■終わりに

 今回の記事は難産でした。最初の予定ではイベント上映の終了する頃に合わせて2月終わりくらいのアップを考えていて、2月中旬くらいから少しずつ下書きも始めていたのですが、途中からパタッと手が止まってしまいました。

 いちばん大きな原因は私の怠慢なのですが、やはり影響が大きかったのはロシアのウクライナ侵攻のニュースでした。
 連日の報道に心が痛み、フィクションとはいえ戦争を扱った記事を書くのに躊躇を憶えたことは否定できません。


 そのくせ、読書録の記事は普通に書けてしまうのですから、なんとも自分の心理に不思議さを感じたり。ミステリだって人が死んでるのにねぇ・・・


 いっそのこと記事のアップを止めてしまおうかとも思ったのですが、いやここで止めたら、それはそれで ”負け” なのではないか、とも思って何とかここまでこぎ着けました。
 とはいっても、今までの記事と比べて、いささか切れ味の悪い内容になっているようでちょっと心残りではありますが・・・
 それでも、何とか年度内には決着をつけたかったので、今はちょっとホッとしています。


 つくづく思ったのは、カルチャー(サブカルチャー含む)は、平和があってこそ花開くし、心置きなく楽しめるということ。
 1日も早く、世界に平和がもたらされることを願っています。


 「3199」については公開時期さえ未だ明らかになっていませんが、早くても年末、下手すれば来年の春~夏頃じゃないかとも思ってます。旧作でも「新たなる-」と「永遠に」の間には1年ありましたからね。
 多少時間はかかっても、しっかりストーリーとシナリオを練ってもらって完成度の高いものを見せてほしいと思ってます。
 それまで、健康に気をつけて元気に長生きしなければね(笑)。

 ここまで、長い長い駄文にお付き合いくださり、ありがとうございました。
 m(_ _)m



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花嫁首 眠狂四郎 ミステリ傑作選 [読書・ミステリ]


花嫁首 (眠狂四郎ミステリ傑作選 ) (創元推理文庫)

花嫁首 (眠狂四郎ミステリ傑作選 ) (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2017/03/18
  • メディア: 文庫

評価:★★★

 「眠狂四郎」について私が知ってたことは少ない。おぼろげな記憶では、最近亡くなった田村正和がTVドラマで演じてて、「円月殺法」って ”必殺技” を持ってることくらい。

 本書を読むに当たってwikiでちょっと ”予習” をした。
 転びバテレン(棄教したキリスト教宣教師)と日本人女性との間に生まれたこと、その生い立ちのためか平然と人を斬り捨てる残虐性を持つこと、「円月殺法」を繰り出す愛刀は「無想正宗」と呼ばれること、などだ。

 そもそもこの本を読もうと思った理由はタイトルにある。このシリーズの中には、眠狂四郎が探偵役となって怪事件を解決するものもある、という触れ込みに引かれて手に取ったという次第。

 本書には21作が収録されている。タイトルを挙げると
「雛の首」「禁苑の怪」「悪魔祭」「千両箱異聞」「切腹心中」「皇后悪夢像」「湯殿の怪」「疑惑の棺」「妖異碓氷峠」「家康騒動」「毒と虚無僧」「謎の春雪」「からくり門」「芳香異変」「髑髏屋敷」「狂い部屋」「恋慕幽霊」「美女放心」「消えた兇器」「花嫁首」「悪女仇討」
 文庫で480ページほどの中に21作だから、1作あたり平均23ページほど。これは週刊誌に一話完結で連載されていたため。
 wikiでわかるだけでも単行本で十数巻分書かれたらしいから、たいしたものだ。


 収録作全部について書くのは大変なので、いくつかについて。


「雛の首」
 シリーズ第一作。スリの金八や、後に狂四郎の愛人となる美保代など、レギュラーメンバーが登場する。一話完結ながら、”サザエさん時空” ではなく、狂四郎を取り巻く人間関係はゆっくりとだが変化していく。

「禁苑の怪」
 大奥に出没する幽霊の正体を暴くため、狂四郎は江戸城に潜入する。なんでそんなことができるかというと、老中・水野忠邦の側用人・武部仙十郎がしばしば狂四郎に怪事件の探索を依頼している、という設定があるため。
 現代から見れば陳腐かも知れないが、意外な物理トリックが登場する。

「湯殿の怪」
 水野忠邦の屋敷にある湯殿で、続けて3人の女性が不審死を遂げる。外では付き人が待っていたわけで、人の出入りが不可能な密室殺人だ。
 とは言っても、このトリックはなぁ。エロチック・バカミスだね。

「疑惑の棺」
 棺をかついで進む葬儀の列を見て、棺桶の中はカラだと見抜いた狂四郎。列に突進してその場で中身を暴いてしまう。思い立ったら止まらない人なんだね(笑)。
 文化文政時代の怪僧・河内山宗俊がゲスト出演、狂四郎と腹の探り合いをする。

「家康騒動」
 駿府に隠居した家康が描いた思われる絵が発見される。しかし、時を同じくしてそっくりな絵が3枚も現れてしまう。
 狂四郎は、古美術品蒐集マニアの心理にも詳しい(笑)。

「謎の春雪」
 刺青(入れ墨)師の刺殺死体が発見されるが、現場周辺に積もった雪に犯人の足跡はない。いわゆる ”雪の密室”。このトリックはなかなか。

「消えた兇器」
  3000石の旗本が湯殿の中で刺殺された事件。衆人環視の中、凶器を持ち出すことができない不可能犯罪。なんとも古典的なトリック。有名なわりに、実際に作品中で使われたのを読んだのは初めてかも。

「花嫁首」
 新婚初夜に新婦が殺された。首は切断されて持ち去られ、代わりに小塚原(処刑場)に晒されていた罪人の首とすげ変わっていた。表題作あって、提示される謎も魅力的。結末では意外な展開が待っている。


 ミステリとしてみると、真相解明に必要な情報の提示などの ”お約束ごと” に則っていないとか、(現代の目で見れば)トリックが陳腐だったり、実現可能性に問題があったり、いろいろ不満も出てくるだろう。でもまあ「これはミステリです」とは銘打っていないので、それは仕方がないだろう。

 あと気になるのは、いわゆるエロ描写。女性が読んだらいささか不愉快に感じるところも多々あるように思う。
 でも60年以上前の作品だし、読者のほとんどは男性だったろうし(『週刊新潮』での連載だから、男性サラリーマンが通勤車内で読んでたんだろう)、これも読者のニーズに沿っていたとは言える。

 良いところも挙げなくてはね。
 登場人物が交わす会話の軽妙さとかは群を抜いてるんじゃないかな。
 講釈師の長口上なんて、韻を踏んだ言葉遊びにシャレを効かせて、次から次へと流暢かつ変幻自在に単語が繰り出されてくる。さすがはシバレン、昭和の文豪なんだなぁと、そこのところは素直に感心した。



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「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 後章 ーSTASHAー」感想・・・のようなもの その4 [アニメーション]



※ネタバレ全開です。未見の方はご注意を。


最終話「こんにちは サーシャ」

 なんとも大胆なタイトルです。スペースオペラの表題とは思えませんね。


■波動砲発射態勢

 全てを達観したかのようなデスラーの表情、
 そして宙空に手を伸ばすスターシャ。

 しかし、発射3秒前に停止ボタン(そんなものあったんだ)を押す土門。
 古代に銃を向けて
「もっと早くこうするべきだった」


■ゴルバにて

 多脚戦車がデウスーラに取り憑く。さらに後方ではさらに降下してくる。
 「3199」でもこんなシーンが見られるのでしょうか。


■艦内を走る土門

「力を貸してください 全員を助ける方法があるんだ」

 土門が試作機の性能を知っていたがゆえに思いついた作戦か。これも前章で伏線があったね。さすがに防大主席はダテじゃない。

 藪+新人クルーを招集、内火艇には既に古代が待機。


■譲れないもの

 古代は語る。

「もっと早くこうするべきだった。お前は正しい。
 でもその正しさが報われるとは限らない。現実は複雑で残酷だ。
 理不尽なことでも受け入れた方が傷は少なくて済む。
 それもひとつの正しさだ」

「でもそれでも、絶対に譲れないものが人にはある。
 それを譲れと言われたら抵抗しろ。立場なんか気にするな。
 お前がお前であり続けるために徹底的に戦い抜け」

 かつて、イスカンダルへの旅で沖田から言われたこと。
 そして、テレザートへの旅で古代自身が貫いたこと。

「忘れていた・・・ずっと俺は」

 忘れていた、わけではないだろうと思う。彼はそんな忘れっぽい人間ではないよ。そんな大事なことを忘れられる人間だったら今までこんなに悩んでない。
 時間断層の消滅、それに値する人間であるためには、失敗は許されない。
 だから、そうならなように自分を押し殺していた。
 あえて自分で自分を狭い枷の中に閉じ込めていた。

 まっすぐに物事に向き合う土門の行動を見ていて、自分を貫く勇気を取り戻した、というのが本当のところだろう。


■副長・島

「そう、古代艦長がそう決めたのね。分かりました。直ちに準備します」

 モニター越しに会話してるのは島。古代不在の今、ヤマトの指揮を執ってるのは彼。このあとの戦闘中でも指示を出してる。
 旧作「III」でも副長だったはずだが、彼が指揮を執ってるシーンは記憶にない。ただ私が忘れてるだけかも知れないが(笑)。


■演説キャラ・真田

 ヒュウガの艦長席から真田が檄を飛ばす。

「全艦、反転180度! 連合艦隊全艦に告ぐ!
 これより地球艦隊はデスラー総統の救出作戦を敢行する。
 志あるものは我に続け!
 敵の陽動に貴官らの協力が不可欠だ。
 移民船団は可能な限り遠くに退避せよ。
 賛同する艦底は反転を以てその意を示せ!」

 「2205」最終話でもそうだったけど、リメイク版の真田さんは演説が実に上手い。これを聴いたらみんな奮い立ってしまうだろう。


■暗号通信

 イスカンダルで戦いを見守る姉妹のもとへ通信が。
 地球からのものと気づくユリーシャ。ヤマトで旅した経験から、だろう。


■連合艦隊vsデザリアム艦隊

 山本玲とメルダのツーショット。こういう、見たかったシーンを見せてくれるのがニクいね。しかもBGMがハマってる。


■コスモハウンド発進

 旧作のコスモハウンドが、次元潜航艇としてこんなに大活躍するとはね。
 このあたりのアレンジも上手いなぁ。

「地球軍初の次元潜航艇。三度に一度は動作不良を起こすバカ犬だけどな」
「マジか」「いいじゃんあんたに似合いだよ」

 潜航し、イスカンダル王宮地下に出現するコスモハウンド。


■「ねえさん!」

「イスカンダルではどうだか知らない。
 でも地球では自分の兄弟を愛してくれた人は家族になるんです。
 兄を愛してくれたのなら、あなたは私の姉ということになる。
 ほかのことはどうだっていい。一緒に地球に来て下さい。
 私は・・・もう二度と家族を失いたくない!」

 この台詞は藪くんにはことさら響くよねぇ・・・

「義姉(ねえ)さん!」

 この台詞にはびっくりだったが、古代の必死の思いを伝えるという意味では、変に回りくどい表現をするよりこっちのほうがよかったと思う。

「あなたが脱出しないとデスラー総統も引き上げられないんだ。
 ばかみたいでしょう? バカなんです人間って。
 大切なもののためなら、割に合わないことも平気でしちゃうんです。
 スターシャさん、あなたも人間ならバカになってください!
 全てを捨ててこの墓場から抜け出す勇気を!」

 このあたり、福井節満開。

「行きましょう、お姉様。過去を繰り返す亡霊じゃない。私たちも命。
 予想のつかない明日に向かって生きる命のはずです。
 1分でも1秒でもいい ただ一度の本当の命を私も生きたい!」

 過去に縛られて永遠に生き続けるよりも、例えそれがどんな短い時間であっても、自分の意思で未来を生きたい。


■コスモハウンド攻防戦

 発進したコスモハウンドを、ゴルバから放たれた ”網” が襲う。

「ソナーに感! 反応増大!」「こいつがガミラスの潜航艇を飲み込んだ」
「土門、お前の作戦だ。お前が指揮を執れ」

  指揮官席に座る土門。各メンバーに指示を飛ばす。
 古代も要所要所で命令を出す。

 土門は作戦指揮、古代は一段上の視点から全体を統括。
 コスモハウンドのコクピットは、いままさにヤマトの第一艦橋の縮図になってる。古代がそこにいて指揮を執っていれば、そこがヤマトだ。
 かつての沖田の位置に古代が、古代のポジションに土門がいて。
 これは彼ら新人クルーが成長した数年後のヤマトの姿なのかも知れない。

 それにしても「勇ましいのは名字だけか? キャロライン」とか、古代は各メンバーのことをよく知ってるようだ。指揮官たる者、各クルーのデータはしっかり頭に入ってるのか。


■「ターゲット捕獲完了」

 コスモハウンドの一部を内部に取り込んだゴルバ。

「敵機内に波動エネルギー反応」
「罠だ! 早くゴルバの外に出せ!」

 波動掘削弾が爆発し、要塞内に誘爆が広がる。
 デザリアムの使うエネルギー源と波動エネルギーとでは相性が悪そうなのだが、そこら旧作の設定を引き継いでいるのか?


■デウスーラ脱出

「デスラー総統、スターシャ女王は救出した。至急脱出されたし」

 スターシャからの「アベルト・・」という呼びかけにも、なぜかデスラーの表情は晴れない。彼女がイスカンダルなしには生きられないと知っていたのだろう・・・なぁ。


■断末魔のゴルバ

「記録が歪む・・・デザリアム千年の夢が揺らぐ・・・」

 この台詞の意味が不明。何かの伏線になってるのか?

「たった一発の爆弾がなぜ・・・」
「波動エネルギー・・・呪われた力よ・・・」
 メルダーズ、デザリアムに殉ぜよ! 悪魔の艦を沈めよ!」

 要塞砲の発射態勢に入るが、スターシャが自爆スイッチを押す。
 イスカンダルの爆発で破壊されるゴルバ。
 このときのスターシャも、全てを達観した表情。

 そしてデスラーの後ろ姿・・・この後起こることを知ってたのだろう。


■別離の時

 デスラーと対面するスターシャ。デウスーラ艦内か。
 手を伸ばし、デスラーの頬に触れるスターシャ。

「その目・・・ずっと私を見ていてくれた
 忘れません ありがとう・・・」

 同時に、光となって消えていく。
  腕を伸ばすデスラー、しかし抱くことは叶わず。
 嗚咽が漏れる。

 古代とデスラー以外のメンバーは驚く。やはり2人は知っていたようだ。

「私たちはイスカンダルの記憶。星とともに消えるのが定め。
 でもこの子は違う。あなたたちの星のエレメント。
 古代守とお姉様の間に生まれた命だから」

 カプセルをみやこに渡すユリーシャ

「サーシャ、地球で楽しく、ね・・・」涙を流しながら消えるユリーシャ

「知っていたんですか? なぜ・・・こうなるって知っていたのならなんで!?」

「これで救われた心もある。たとえ一瞬でも最後に愛する人に会えて・・・
 それだけで人は救われるんだ」
「最後に・・・父さん・・・俺を見て・・・」

 第一話の回想シーン。この時の土門の父の笑顔について前章の時の記事にいろいろ書きましたが、私の気の回しすぎだったみたいですね。至ってシンプルな理由だったようで。

 最近、自分の人生の残り時間が少なくなってきたせいか、自分の臨終のことを考えたりする。不慮の事故で死ぬなら仕方がないが、ベッドか畳の上で死ぬとしたら、自分が最後に見る顔は誰だろう? って。
 順当に考えたらかみさんの顔なんだろうが・・・「これが俺の人生で最後に見る顔か」と思うと、不思議な感慨が・・・うーん、湧きそうで湧かないのは何故だ(おいおい)。

「人が・・・人にできるのは・・・それくらいしか」
「十分です きっと・・・それだけで十分なんです」


■「おかえりなさい」

 アスカに帰還したコスモハウンドを出迎える雪
「これがスターシャさんの・・・」
「まずは検疫に回すべきだろうが・・・」

 輝く球体が広がり、やがて赤ん坊の姿へ。

「サーシャ・・・」赤ん坊を抱く雪
「スターシャさんと兄さんの・・・」

 古代の指を掴むサーシャ。「2202」最終話で登場した指はてっきり美雪の化と思ってたけど、サーシャだったのかも知れない。

 微笑む古代。本作の中で、古代が笑ったのはここが初めて。

「おかえりなさい。こんにちは、サーシャ」

 雪のもとへ、やっと ”彼女が愛する古代” が還ってきた。


■すばらしいこと

 避難船の中で、家族と再会する藪。

「知ってるか? どん底の次にはもっとすばらしいことが・・・」

 同時に主題歌「愛は今も光」が流れ出す。


■別れを告げる古代とデスラー。

「ガミラスの出自もいずれは民の知るところとなるだろう」

 情報統制はしない模様。

「だが、我々はこれからもガミラスという名に誇りを持ち続ける。
 誇りとは与えられるものではなく、自らの中に見いだしていくもの」

 ガミラス人の将来を悲観しない。可能性を信じる。
 これから国家を再興しようという指導者なら、そうあるべき。

「デスラー総統・・・」

「スターシャに会わせてくれたこと、礼を言う。ほんのひとときでも、
 この先生きていくのに十分なものを受け取ることができた」

 男なら、誰でも1人くらいは心の中に ”永遠の女性” を棲まわせている。
 その女性を思い出すとき、同時に蘇る感情は様々だろう。
 しかしすべては過ぎたこと。この思いは墓場の中まで持っていく。

「彼女の子を頼む。古代、手放すなよ。お前の愛する者を」

 去って行くガミラス船団、地球へ帰還するヤマト艦隊。


■そして「3199」へ

「これが敵要塞の中に?」
「波動掘削弾を送り込んだ際 撮影に成功した映像です」
「アンドロメダ級・・・」
「あるいは捕獲されたのか。最初はそう思いましたが
 実際に製造されたものよりはるかに桁が多いのです」
「デザリアム・・・一体 何者なのか・・・」

 そして『ヤマトよ永遠に REBEL3199』のロゴが。

 デザリアムについて、また少し考えたことがある。それは次の記事で。




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発現 [読書・その他]


発現 (文春文庫 あ 65-8)

発現 (文春文庫 あ 65-8)

  • 作者: 阿部 智里
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2021/08/03
  • メディア: 文庫

評価:★★☆

 大河ファンタジー『八咫烏』シリーズで有名な著者のノンシリーズ作品。今回はホラーだ。


 平成30年。
 主人公・村岡さつきは大学1年生。一回り年の離れた兄・大樹(だいき)とその妻・鞠香(まりか)との間には5歳の娘・あやねがいる。
 ある日、彼女が通っている大学まであやねが訪ねてきた。両親がケンカをしたのだという。そしてその夜、大樹は妻子を置いて実家に戻ってきてしまう。

 大樹は異様に憔悴していた。”ありえないもの” が見えるようになったのだという。精神科医の治療を受けても改善せず、性格も行動も一変してしまった兄を見ていたさつきは、かつて母が同じような状態になったことを思い出す・・・


 昭和40年。
 地方で農業を営む山田省吾のもとへ、東京で暮らす兄・清孝の訃報が届いた。
 死因は自殺だった。立体交差橋の欄干を自ら乗り越えて、下の道路へ転落したのだという。

 葬儀に参列した省吾は兄の様子を訊いて回る。仕事では優秀で人望もあり、家庭も円満。そんな兄が妻子を残して自ら命を絶つはずがない。
 警察から得た情報によると、兄は死ぬ直前、泣いていたらしい。そして自ら欄干に上がり「彼女が、追いかけてきた」と言って身を投げたのだという。

 かつて清孝と省吾の2人は揃って満州にいた。清孝は軍人として、省吾は開拓団の一員として。終戦後、清孝はシベリアに抑留され、省吾は清孝以外の家族全員を喪ったが、ともに九死に一生を得て帰国を果たしていた。
 省吾は清孝が自殺した理由を調べようとするが、清孝の妻・京子はなぜかそれに反対し、兄が戦時中のことを記録したノートを燃やそうとするのだった・・・


 物語は平成30年と昭和40年、二つの時代を交互に描いていく。もちろん終盤では一つにつながり、大樹の幻覚や清孝の自殺の理由もまた明らかになる。

 私は怪談とかホラーというものが今ひとつ好きになれない。小野不由美の『悪霊』シリーズみたいに、けっこう楽しめるものもあるので、ホラー作品全部がダメというわけではないのだけど。
 好き嫌いは多分に感覚的なもので、作品ごとに異なる。理由なんてあってないようなものなのだが、本書に関しては理由がハッキリしてるように思う。


 以下の文章はネタバレに属することかと思うので、未読の方はご注意を。


 本書の後半に入ると、ヒロインであるさつきにも兄と同じような ”幻覚” 症状が現れる。だが、彼女がそんな目にあわなければならない理由はないのだ。一言で言えば ”とばっちり” である。
 さらに言えば、兄弟がこの ”幻覚” から解放される描写もない。つまりこの兄妹はこのあとの人生で、ずっと ”幻覚” を抱えていかなければならない。
 本来責めを負う必要がない者にまで ”業” を背負わせる。これは理不尽としか言い様がない。

 もし本当に祟りが存在するのなら、祟りを発生させるような悪行を為した者をきっちり呪い殺して、そこで終わりにするべきだと思うし、数十年後の無関係な人間にまで祟りを降らしたら、完全な ”八つ当たり” だよねぇ。そんな理不尽がまかり通る物語はやっぱり好きになれないんだなぁ。

 ホラー好きな人からしたらトンデモナイ奴だと思われるかも知れないが、それが私の正直な感覚。

 まあ本書においては、上記のような描写を通じて作者が訴えたいものがあるのは分かるし、それにはホラーという形式が効果的だと考えたのだろう。
 でもね、やっぱりホラーは私の好みのジャンルではないと再確認しました。



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「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 後章 ーSTASHAー」感想・・・のようなもの その3 [アニメーション]


※ネタバレ全開です。未見の方はご注意を。


第7話「イスカンダル 滅びゆくか哀の星よ」


■スターシャは語る

「イスカンダルは長男。
 たゆまぬ向上心と知識欲を持つ一方、貪欲で支配的で極めて利己的な長男」

 まあ、ガミラスの扱いを見れば古代イスカンダル人の性格の悪さはよくわかるよねぇ(笑)。

 ここで唐突にキーマンが登場。
 なぜキーマン? ファンサービスなのかとも思ったが、神谷ボイスには否応なく納得させられてしまいそうな力を感じるので、そのへんが理由かな。

 アケーリアス人はどこかへ旅立ったという。滅びたんじゃないんですね。
 超古代文明を築いた民が別の次元・別の世界へ去ったというのはSFではよくある設定ではある。パッと思い出すのは、アニメ『ヒロイック・エイジ』の ”黄金の種族” か。

 「彼らに追いつくにはこの宇宙の法則全てが足枷になる」
 肉体をはじめあらゆる物理的な拘束を逃れたテレザート人は、アケーリアス人に追いつくことを目指していたのか?

 それに対してイスカンダルは、記憶によって世界を変える力を手に入れた。
 他の世界へ向かうのではなく、今いる世界を自分たちの思いのままに作り替える方を選んだ、ということか。

 しかしその結果、イスカンダル人は ”大いなる停滞” に陥ってしまったのだろう。


■サンクテルにて

 入り口から吹き上がる炎?のような者を見たとき、女王プロメシューム様が出てくるのかと思ったよ(笑)。

「あらゆる星のエレメントを保管する大記憶庫サンクテル。
 無数の記憶が息づき、永遠の幸福を生きている」

 古代の兄・守が、アベルトの伯父・エーリクが語る。

「コスモリバースシステムは記憶の中の文明を現実世界に再構築するシステム。
 エレメントに収めるには現実世界に於ける存在を消し去る必要がある。
 これが儀式。イスカンダルによる虐殺」

 イスカンダル人がサンクテルに身を沈めた後、儀式という名の虐殺を行うために手に入れた奴隷がガミラス。

 ガミラス星は、ガルマン星の原住民を自らの双子星に住まわせた。ガミラス星はコスモリバースシステムによってガルマンの環境を再現していた。

 ん? ガミラス星にガルマン星の環境を再生させるなら、予めガルマン星をエレメント化(&ガルマン星の破壊)しておかないとできないのでは? でもガルマン星は残ってる。
 まあ、(都合良く解釈するなら)そのせいでガルマン星のエレメント化が不十分だったので、環境改造されたガミラス星の不安定さにつながったのかなぁとも思ったり。

「奴隷の名はガミラス。その意味は ”ガルマンの人猿”」

 自らの民族の名が、人間扱いされない蔑称だったとは。ガミラス人にとっては最大級の屈辱だろう。


■「これでも私を救いますか?」

 すべては、イスカンダル人がガミラス人を奴隷として使役するために仕組んだこと。そしてそれが、ガミラス星を喪う遠因ともなっていた。

「イスカンダルはもう何千年も前にエレメント化をやめた。
 過ちに気づいたからではありません。外界への興味を失ったからです」

 徹底的に利己的なんだね、イスカンダルは。

 寿命が近づいたガミラスに成り代わる星を求めて宇宙に侵略の手を伸ばしたガミラス。地球がガミラスの侵略を受けたのも、元をたどればその理由はイスカンダルに行き着く。
 ガミラス人へガルマン星の情報を流したのもイスカンダル。
 地球にコスモリバースシステムの情報を与えたのはイスカンダル。
 いわば自分でつけた火を、自分で消しに回っている。いわゆるマッチポンプという奴か。



■スターシャvsデスラー

「なぜだ!? かつて君は早く大人になれと私に言った。
 いつかこうして真実を伝えるためにか!?
 私に自分自身を討たせるためにか!?」

「だとしたらとんだ自惚れ者だよ君は。
 イスカンダルの女王一人の地で贖えるほど
 ガミラスの民は矮小な存在ではない」

「贖おうとしたことなんかない。
 地球に救いの手を差し伸べたのも
 あなたがたにガルマン星のことを伝えたのも
 全てわたくし自身を救うためにやったこと」

「独善で暴虐の限りを尽くしたイスカンダルの末裔として
 サンクテルの管理を任された王族として
 永遠に存在し続けることを定められた身が苦痛を紛らわすためにしたこと」

「あなたもそうでしょう?
 ガミラス星を救えなかった痛みと苦しみを紛らわすために
 あなたは私を救おうとしている。
 それであがなえるものなど何もない。
 わたくしたちは自分を慰めるためにお互いを必要としただけ」


 もうこのあたりは論評を超えてますね。戦闘シーンを除けば、今作『新たなる旅立ち』の、ある意味いちばんのクライマックス。

 旧作から43年。スターシャとデスラーがこんなふうに、お互いの本音をさらけ出して対峙する日が来ようとは。長生きはするものだ(笑)。


■古代守が教えてくれたこと

「生きることは変化し続けること。
 あなたのお兄様からそう教わりました。
 ここにあるのは変化を拒んで幸せな過去に浸る記憶の群れ。
 もう死んでいるのと同じです」

「変化を拒むことは死んでいるのと同じ」・・・深い言葉ではある。
 特に現代は「変化に適応できないものは、生き残れない」って言われてしまうしね。
 でも、変化に適応できる度合いは、ひとそれぞれ異なる。変化できないものはどうしたらいいのか。最近、アタマが固くなってきて、新しいものを取り入れることが億劫になりつつある私なんかまさにそれ。


■「古代艦長から個別通信です」

「雪・・・雪・・・俺は・・・俺はもう分からない 何も分からなくなった」
「何があったの? 古代艦長・・・古代くん!」

 この時の古代は、スターシャたちがイスカンダルを喪うとどうなるかを知ってたのだろうか?
 でもまあ、この段階で古代が何を言ってもスターシャは聞き入れなかっただろうが・・・


■第一艦橋



「どうして! 引きずってでも連れてこなかった!?」島が激高する。
「あの人の決意は・・・固い」坦々と答える古代。
「いいんですか? それで・・・それでいいんですか?」
 敢然と異を唱える土門。
 そう、今回の彼は徹底して古代に楯突き、正論を吐く役回り。


■「別離」

 ここで堀江美都子さんの歌声が聞けるとは思いませんでしたよ。
 これ、「ヤマトIII」のエンディングだったよねぇ。
 やっぱり「デザリアム編」は、旧作の「暗黒星団編」+「III」の路線なんでしょうかね。

「けれど終わりがあるというのはとても大切なこと」
「ただ一度の人生だからこそ、全うしようという強い意志が生まれるのです」
「終わるべき時に終わるもの、それが命」

 実は後章を観にいく何日か前(1月末頃)に、ネット配信で『銀河鉄道999』(映画版)を観たんだよねえ。
 ぽっかりと半日ほど予定が空いたので、家で映画でも見ようと Netflix を漁ってたら見つけたので。全くの偶然でしたが。

 でも「999」を見た後にこの台詞を聞くと、とても気になった。
 「999」に登場する「機械化人(機械の体になって永遠の命を得た人々)」って、旧作の暗黒星団帝国人に通じるイメージだし。考えたら、旧作の「新たなる旅立ち」と映画版「999」って、同じ1979年の夏なんだよね。「新たなるー」が7月31日に放映され、「999」は8月4日の公開だ。


■ユリーシャの実年齢

 ユリーシャは地球への使者として「サンクテルから急遽引き出された命」なのだという。
 ユリーシャは2198年には地球へ来ているわけだから、2205年現在では肉体を得てから7~8年くらいというところ?
  2199年の段階では ”あの体” になって1~2年だった? だとしたら、当時の「不思議ちゃん」キャラも不思議ではなかったのかも。


■デウスーラIII世、反転

 イスカンダルの移送を再開したゴルバから離れていく連合艦隊。
 しかしデウスーラのみが反転する。

「すまん」
「いいのです。あなたはもう十分、人のために生きた。
 最後くらいわがままにおやりなさい」

 まさに忠臣タラン。彼はいいとして、その他のクルーはどう感じてるのかとも思ったが、
デウスーラに配属されてるのは、デスラーに身も心も捧げている者ばかりなんだろう。

 デスラー砲を発射。BDに同封されている冊子によると
「ゴルバを守る位相変換装甲は装甲そのものの位相を変換し、逆相波を発生させることでエネルギーの波を打ち消すシステム。
 デスラー砲のエネルギーを相殺している間ならこれを突破できると考えたデスラーは、座乗艦であるデウスーラIII世をゴルバに突撃させた」


■「古代 私ごと撃て!」

「このデウスーラに波動砲を撃ち込め! これしかないのだ、古代!」
「幻でも・・・ガミラスを謀ってきた悪魔の手先でも構いはしない。
 私は・・・スターシャを愛しているのだよ」

 旧作でも名シーンと謳われる場面。今回は、サンクテルでの対決を通して、より2人の結びつきが深く描かれている分、心に響くものになってる。
 実際、見ていて涙腺が緩んでしまったよ。旧作の時はそこまで感情は高ぶらなかった記憶が。

「反転180度! 波動砲、発射準備! 引き金は・・・俺が引く!」


第8話へ続く。




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炎舞館の殺人 [読書・ミステリ]


炎舞館の殺人 (新潮文庫)

炎舞館の殺人 (新潮文庫)

  • 作者: 月原 渉
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2021/07/28
  • メディア: 文庫

評価:★★★☆

 ロシアの血を引く(と覚しき)クールビューティなメイド・栗花落静(つゆり・しずか)さんが活躍する『使用人探偵シズカ』シリーズ第5作、って思って読み始めたのだけど、ちょっと話が違うみたいで・・・。


 時代は明治。陶芸で財を築いた夏季屋肇(かきや・はじめ)は、山陰地方の山間に館を築いた。炎舞館(えんぶやかた)と呼ばれたその建物は、耐火煉瓦を積上げて造られ、窓は一切なく、狭い2つの通用口といくつかの通風孔を除けば外界への出口はない。

 夏季屋はそこへ籠もって製作に打ち込んでいたが、齢50を超えて病を得、余命幾ばくもない状態にあった。彼には妻子はなく、若い弟子たちの中から後継者を選ぶことになったのだが、指名する前に失踪してしまう。

 夏季屋の6人の弟子は、彼が自ら選んで連れてきた者たち。彼らにはある共通点があった。体の一部に何らかの ”欠損” を抱えていたのだ。
 巴(ともえ)は右手、亜希人(あきと)は左手、京介は右足、摩季(まき)は左足、大和(やまと)は視力、透子(とうこ)は声をそれぞれ失っていた。

 後継者の座を巡って葛藤の中にある6人。亜希人が野心を示しているが巴を押す者もおり、どちらが後を継いでも、弟子たちのうち何人かは館を出ていくことになるだろう。

 そんなとき、夏季屋の手紙を持った少女が新しい弟子として炎舞館にやってきた。一見して明らかに異国の血が入っていると分かるその少女は「しずか」と名乗るが、日本語が話せない(ロシア語は話せるようだ)。そして何より、彼女の身体にはどこにも欠損がなかった。

 師匠の意図を訝しみながらも、しずかを受け入れて生活を始めた矢先、事件が起こる。
 工房の床に血だまりがあるのが見つかった。そこから窯の一つにまで血痕が続いている。窯の口は耐火煉瓦で塞がれていたが、しずかがその煉瓦を打ち壊す。その中にあったのは大和の死体。しかも手・足・首とバラバラにされて、胴体だけが持ち去られていた。
 さらに殺人は続いていく。館は外界と孤絶しており、犯人は弟子たちの中にいると思われるのだが・・・


 死体を切断するというのはミステリの定番だけど、それだけの合理的な理由がなければならない。本書で示されるのは充分に納得できる必然性だ。
 思わず「そうか、なるほど」って呟いてしまったよ。

 身体に欠損を抱えた人物が大量に登場するのだが、こういう演出があまり好きでない人もいるだろう。私もそうだ。
 しかしラストの謎解きでは、これも単なるミステリ的雰囲気を盛り上げるお飾りではなく、本書の根幹を成すものであったことが明かされる。すべての事象・描写は伏線のためにあった。まさに脱帽です。

 「しずか」と名乗る、異国の血が入った少女。作者のシリーズキャラクター「栗花落静」との関係は明らかにされないまま、ストーリーは進行していく。
 本書がシリーズの中でどういう位置づけにあるのか。そこもまた本書の読みどころだろう。



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「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 後章 ーSTASHAー」感想・・・のようなもの その2 [アニメーション]



※ネタバレ全開です。未見の方はご注意を。


第6話「移民船団救出作戦・次元の壁を越えて行け!」


■ゴルバ登場

「デザリアム軍指揮官に告ぐ!・・・」呼びかける古代。

 しかし、デウスーラIII世はデスラー砲をぶっ放す。
「すまんなランハルト 虚しかろうと人には許せぬことが・・・」

 蛮行を繰り返す相手に対し、まず一発殴って止めてから話を始めようとする古代。そして、殴りだしたら止まらなくなったデスラー(笑)。
 まあ、目の前で母星を破壊されれば頭に血が上るのも無理はないが。

 しかし、デスラー砲をあっさり無効化するゴルバ。
 公式サイトによると、「波動砲の直撃を無力化できるクラスの位相変換装甲を有する。位相変換装甲はエネルギー波を逆相波によって打ち消す」とある。アクティブノイズキャンセラの巨大版というところか。

「波動エネルギーをもてあそぶ愚か者どもよ。
 今という時を生きることしか知らない貴様たちにはしょせん理解できまいが・・・」

 「ふふふふふ。そんな石ころのようなエネルギー弾が
  このゴルバに通用するものか」という台詞はなかったですね(笑)。
 ちょっぴり期待してたんですが。

 ゴルバの発生する重力場に翻弄される連合艦隊。

「忌むべき星イスカンダル。
 その呪われし力は我らデザリアムの手で管理されねばならぬ。
 貴様たちには過ぎたる力だ。
 いたずらにもてあそび宇宙そのものを破壊へと導く。
 もう関わるな、立ち去れ。
 貴様たちにできることはない。デザリアムの調律に全てを委ねよ」

 もう余裕というか歯牙にもかけないとはこのことですな。
 しかし「忌むべき星」「呪われし力」とか意味深なフレーズ。このへんもデザリアムの正体に絡むところか。


■デスラー謝罪?

「ヤマトの諸君、いささか敵の力を見誤ったようだ」
「あれで謝っているんだよ」

 デスラーが自らアヤマチを認めることは珍しい。


■作戦会議

 イスカンダルにいる者たちの救出優先を訴える地球側。
 デスラー砲(波動砲)が通用しない相手を武力で追い払うなんてことは、ほとんど不可能になってしまったからね。

 古代にスターシャの説得を要請するメルダ。しかしそれを断ってしまう。
「恩人との約束を破り、目の前で波動砲を使った者の言葉に
 スターシャ女王が耳を貸すとは思えない」
「イスカンダルの理念を自分の心を裏切るよう仕向けてしまったのは自分だ」

 『2199』において、波動砲の封印を約束した沖田。しかし『2202』において、それを反故にした地球政府。そして古代自身もまた波動砲の使用を受け入れた。

 もともと、今回のヤマト艦隊のサレザー恒星系訪問には、波動砲解禁についてスターシャへ説明(謝罪?)することも含まれていたと思う。
 芹澤あたりがそれを行うはずだったと推察するが、彼は途中で置いてきてしまったからね。この段階において地球側の最高責任者は古代なのだから、(スターシャが受け入れるかどうかは別にして)彼には説明する責任があったはずだ。
 


「大人になるということは、できることとできないことの区別がつくようになるということだ」昔の某アニメにあった台詞だ。
 要するに ”先の見通しがつく” ようになるということなのだろうが、先が見えてしまうと、「やる前から諦めてしまう」ということも起こりうる。この場合の古代がそうだろう。

 しかし「相手が受け入れないから説明に行かない」という態度は、大人(社会人)として如何なものか。説明なり謝罪なりが必要なら、まず相手のもとに赴いて素直に頭を下げるべきだよねぇ。相手がそれを受け入れるかどうかはまた別の話になる。とにかくそれを行わないことには次に進めない。

「古代 お前は何をしにここに来たのだ?
 我らを救いにか? それとも逃げるためか?」
「ランハルトが未来を託したのがかくも小さい男であったとはな・・・」

 デスラーが皮肉るのも無理はないとも思う。ただまあ、彼に一般的な社会人としての常識があるかどうかは疑問だが(おいおい)。


■ハイニ、臨時艦長へ

 生存者リストを眺める藪。慰めるハイニ。
 二号艇の指揮を執ることになるが、これが死亡フラグだった。



■グレート・エンペラー登場?

 ゴルバ内で何者かに報告するメルダーズ。

「揺らぎを感じます。お前の内深く生じた揺らぎを・・・
 その揺らぎこそ、デザリアム千年の夢が夢でないことの証し。
 制御するのです。忌むべきものを遠ざけるのではなく身の内に取り込む。
 それでこそ我らは完全になれる。
 我ら光と対をなす闇・・・イスカンダルを 早く・・・」

 驚きの潘恵子さんの起用です。初見のとき、心の中で「えーっ!?」て叫んでしまいましたよ。
 旧作で言うところの「グレート・エンペラー(emperor)」いや、女帝なら「グレート・エンプレス(empress)」ですかね。

 とはいっても敵の親玉を演じたのは、旧作の「新たなる旅立ち」では木村幌さん、「ヤマトよ永遠に」では大平透さんというように、声優さんは異なりましたからね。彼女がそのままデザリアムの支配者であるかどうかは不明。

 ここでもデザリアムは「光」、イスカンダルは「闇」、しかもこの2つは「対」と表現するなど、意味深な台詞が。


■「そのように飼い慣らしたから」

 パレスにたたずむスターシャとユリーシャ。
「誰かを待ってるみたい。同胞を救うためだけじゃない。
 デスラーは必ず私たちを救いに来る。それが彼らの本能。
 そのように飼い慣らしたから」

 ユリーシャさん、キツい物言いですな。
 このあたりから第7話への伏線が始まる。


■ヒルデ・シュルツさん

「関係ないでしょそんなこと! 私には父親が2人います。
 ザルツ人とガミラス人、2人の父親が。生まれなんて関係ない。
 愛されたから。たくさん愛されたから、それを少しでも返したくて」

 『2199』で登場し、予想外の人気を獲得したヒルデさん。
 世の中の単身赴任/中間管理職のお父さん方が涙した存在(笑)。
 素晴らしいお嬢さんに育ったねぇ。シュルツもヒスも以て瞑すべし。

 考えたら、沖田、土方、徳川、シュルツ、ドメル、ヒス、多くの者たちがみな逝ってしまった。それでも、次の世代が物語を引き継いでいく。


■暗号通信

「ガミラスの同胞たちよ 脱出の時が来た
 これは時間との戦いである 以下の指示に速やかに従え
 各船の損傷を再確認 機密が保てない船は放棄せよ
 霧に紛れて迅速に行動せよ  
 恐れるな 敵の目は決して下に向くことはない」

 ここで流れるBGM「ドッグ・ファイト」がたまらなくいい。


■救出作戦

 瞬間物質移送機で地球・ガミラスの航空隊が出現。これは胸熱なシーンだ。

坂本「どうせならデカブツの腹ん中に運んでくれりゃいいのに」
沢村「そう便利なものじゃねえんだってよ」

 これは最終話への伏線だろうなぁ。

 次元潜航艇が避難船の救出を行うが、メルダーズの戦況ディズプレイにはしっかり光点が出現する。

 連合艦隊の砲撃が始まる。ヤマトとデウスーラが轡を並べて主砲の斉射するのが見られるとはね・・・

「同胞たちよ くじけるな 運命に抗え
 新天地ガルマン星で 我らは生きる」

 前章の時にも書いたけど、旧作といちばん異なるのが避難民の存在。
 彼らがイスカンダルにいることで、デスラー/ガミラス艦隊の戦いにも大義が与えられるし、こんなにドラマ的に盛り上がるんだから。


■ハイニ受難

 次元潜行艦を追う謎の光が ハイニの2号艇を捕らえ、ゴルバの内部へ。

 デザリアムの多脚戦車が襲来。「3199」でも雲霞のごとく大量に出てきて地球を占領するのかな?

「これが最後のノイズ・・・既に次元潜航を実現していたとはうかつだった。
 しかし潜航中の艦を捉えて釣り上げる技術はまだこの時空間にはあるまい。
 ここまでだ」 

 地球/ガミラスの科学技術体系に詳しそうな台詞。これも伏線か。


■要塞砲vs波動防壁

 ゴルバの要塞砲がエネルギー反応を示す。狙いは海上の移民船団。
 土門の献策を受け入れ、ヤマトは敵要塞の射線上に定位し最大出力で波動防壁を展開する。ヒュウガとデウスーラIII世も追随、3隻で移民船団の盾となるが・・・

 要塞砲に対して、波動防壁が保つのかという不安がよぎるが、BGM(元祖ヤマトのテーマ)が大丈夫だと教えてくれる(笑)。実際、要塞砲を遮ることに成功する。

 ネットには ”ユニコーンバリアー” なんて揶揄する声もある。私も最初は「いくらなんでも都合良すぎではないか」とも思ったのだが・・・

 でも、よく考えたらゴルバの目的は海上の移民船団を一掃することで、イスカンダル星本体に損傷を与えることは極力避けるはず。
 ならば、要塞砲の出力はかなり絞ってあるはずで、戦艦の主砲レベルよりは大きいだろうが、波動砲と比べたら2桁くらい小さな出力だったんじゃなかろうか。ならば波動防壁で防ぐことができてに不思議ではないかな。

 もっとも、古代や土門が切羽詰まった状態でここまで予想できるとも思えないのだけど・・・こうなることを読み切っていたらそれこそスゴい。
 案外、真田さんあたりは分かってたりするかも。

 とはいっても、第一撃を食らった段階で「波動防壁出力23%まで低下!」
 やっぱり要塞砲の威力は半端ない。しかも要塞砲の第2射が迫る。


■猊下の介入

「やめてっ!」中空に浮かぶ巨大なスターシャの姿。

 「観音様みたいね」とはかみさんの弁。
 うーん、「スターシャ観音」はともかく、アベルト君ならガルマン星の総統府前広場に巨大なスターシャ像とか創りそう。

「真実を伝える時が来ました。ガミラスの・・・青い血の真実を・・・。
 両軍の指揮官はクリスタルパレスへ。お待ちしています」


 第7話へ続く。


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潮騒のアニマ 法医昆虫学捜査官 [読書・ミステリ]


潮騒のアニマ 法医昆虫学捜査官 (講談社文庫)

潮騒のアニマ 法医昆虫学捜査官 (講談社文庫)

  • 作者: 川瀬七緒
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/02/15

評価:★★★☆

 「法医昆虫学」とは、死体を摂食するハエの幼虫(いわゆるウジですね)などの昆虫が、人間の死体の上に形成する生物群集の構成や、構成種の発育段階、摂食活動が行われている部位などから、死後の経過時間や死因などを推定する学問のこと。  (by wiki)

 しかし日本ではまだまだ発展途上の分野らしい。
 本シリーズの主人公・赤堀涼子は、日本で法医昆虫学を確立させるべく、日夜捕虫網を振り回して研究に没頭する博士号を持つ昆虫学者。
 ちなみに36歳独身、小柄で童顔(笑)。

 彼女が捜査一課の岩楯祐也警部補とコンビを組んで、難事件に取り組むシリーズの第5作。


 伊豆諸島の新島の沖合20kmに浮かぶ「神の出島(かみのでじま)」。
 そこでミイラ化した女性の遺体が見つかった。発見場所は道路脇の草むら。野犬がどこかから運んできたらしい。遺体の状態から死んだ場所は屋内、解剖医は首つりによる自殺と断定し、ミイラ化の状況から、死後3ヶ月以上と思われた。

 しかし、現場へやってきた赤堀はそれとは異なる解釈を見いだす。しかし当初は捜査陣の誰も彼女の言うことを信じないのは、もうお約束のパターン(笑)。

 すっかり ”赤堀のお守り役” になってしまっている岩楯刑事だが、今までの事件で示されてきた彼女の能力をよく知るが故に、彼女の推定を信じて捜査を進めていくことになる。

 遺体の身元は西峰果歩(かほ)、29歳。幼稚園の教員をしていたが1年前に辞め、無職となっていた。
 果歩の家族やかつての職場を訪ねた岩楯は、彼ら彼女らの言動から何か隠されたものがあることを感じる。
 さらに、800人の島民の中にも、さまざまな思惑が渦巻いていることにも気づいていく。

 赤堀のほうも、毎回披露される奇矯な行動は健在(笑)。登場そうそう、フナムシを手づかみで捕まえ始め、周囲の度肝を抜いたりとか(おいおい)。
 犬がどこから遺体を運んできたのかも解明するが、それがさらに謎を深めていくことになる。

 赤堀と岩楯、この2人の協力関係が絶妙で、新たな事実を次々と突き止めて真相へと導いていく。

 最終的には今回の事件を引き起こした ”犯人” へと至るのだけど、今回読んでいて思ったのは、作者のストーリーテラーとしての才能。
 文庫で約480ページとかなりの大部なのだけど、その長さが全く苦にならない。赤堀も岩楯も、そして今回限りの登場のゲストキャラも、みな個性が際立っていて物語の中で生き生きと活躍している。彼ら彼女らの行動を追っていけば、そのまま物語の中にどっぷり浸かることができる。
 特に主役の二人は、もう阿吽の呼吸というか信頼関係が確立しているというか、二人で一組の探偵役として、とても上手く機能している。

 余り詳しく書くとネタバレかと思うが、遺体の状況には、ある侵略的な外来生物も絡んでいるなど、昆虫に関する蘊蓄も豊富。毎度のことながらこのあたりもとても面白い。



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「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 後章 ーSTASHAー」感想・・・のようなもの その1 [アニメーション]



※ネタバレ全開です。未見の方はご注意を。


第5話「緊急指令! ヤマト、イスカンダルを撃て!!」


■「そなたたちに名を与えよう ”ガミラス” と」

 たぶん、ガミラス人の間で語られている ”創世の神話”。こういうものを幼少の頃から聞かされていれば、イスカンダルを崇拝する気持ちも芽生えようというものか。これも洗脳の道具なのか。

 しかし、ここで与えられた ”ガミラス” の意味がアレとはねぇ。
 古代イスカンダル人は性格が悪すぎる(笑)。


■「ヤマト・・・イスカンダルと罪を分け合う地球の艦・・・」

 いちいち台詞が重いよね、猊下は。

「あなたが呼んだの? サーシャ・・・」

 そうだよねぇ・・・君が呼べば、ススム叔父さんアベルトおじさんも、宇宙の彼方からだって駆けつけてくれるよ・・・きっと。


■主砲一閃、交戦開始

 冷静に考えると警告なしで砲撃を開始してるのはどうなのか、とも思うが、億単位の人間が住む惑星を破壊し、いままた避難民を虐殺しようとしているんだから、こういう形での介入は仕方がないとも思う。

 地球とガミラスは安保条約を結んでいるので、それも攻撃理由になるのかと思ったんだが、この時点でヒス首相をはじめ首脳陣はお亡くなりになってるみたいだから、ガミラス民主政府は消滅しているんだよねぇ、たぶん。

 どちらにしろ、ここではまず一発ぶちかまして避難民への脅威を除くことが優先されると古代は判断したのだろう。


■「しっかり見届けろ! そのためにここにいるんだろうが!」

 土門も当然のように第一艦橋に。これは古代が残したんだろう。
 反乱まで起こして突入しようとした戦場なのだから、そこがどんなところなのか、そこで何が起こるのかを、土門はその目で見て、感じて、知る必要がある。


■コスモパイソン

 三段変形する戦闘機ときたらバルキリーを思い出す。今作の監督はマクロスシリーズもつくってたんだよね。
 ただ、戦闘の見栄えという点では今ひとつかなぁ。艦載機が戦艦を沈めるのに説得力を持たせる必要があるのは分かるけど。
 このへんはもう一工夫ほしいかな、と思う。


■移民船団を波動防壁で守るアスカ

 こういうこともできるんだなぁ。今回、波動防壁はあちらこちらで大活躍。
 指揮を執る雪さんも堂に入ったもの。そういえば桑島さんは「ガンダムSEED」でも艦長役をやってなぁと思い出したり。残念ながらそのキャラはお亡くなりになってしまったけどね。


■「ヤマトです!」「ランハルトの・・・艦が・・・」

 この時点では、まだ「古代」という固有名詞は出てこないのですね。


■「仁科、挨拶できるか?」

 主砲を北極上空の巻他に向けて撃つ。こりゃいらぬ挑発のような気もするが、意外とメルダーズは冷静。
  彼が繰り返す ”忌むべき星” という言葉はどういう意味なのか。

「落ち着け。お前のその感情がノイズをよりひどいものにする。
 我らの目的を忘れるな。一刻も早くイスカンダルを持ち帰るのだ。
 この忌むべき星を我らの故郷に」


■「ここから殴り返すだけよ、ヤマトと一緒にな」

 バーガーに対して意外と素っ気ない古代。ため息をつく雪。何が古代をそうさせたのか。この後の作戦のことを考えていたのかな・・・とも思ったり。


■作戦会議

 デザリアムハンマーの機能を真田が解明。惑星ガルマリオを破壊、そのエネルギーでイスカンダルを運び去る。

「天文規模のビリヤード。今デザリアムは再びキューを動かそうとしている」

 艦長・副長・隊長クラスが集まる作戦会議になぜか参加している土門。もちろんオブザーバーなんだろうけど。これも古代が許可したんだろう。
 失敗したとはいえ、新人クルーをまとめて反乱にもっていったリーダーシップは卓越してるからね。英才教育のつもり?なのか。

 ガルマリオを波動砲で破壊するが、スターシャの面前で波動砲の使用することの是非が問題になるが、「星間常識に照らしてあらゆる反攻手段が容認される」と古代は言う。


 ここでかみさんから私に質問。「セーカンジョーシキって何?」
 うーん、わたしもこの言葉にはちょっと引っかかったので、考えてみた。

 真面目に考えれば、地球人と異星人との間に共通の価値観や倫理観が見いだせる可能性の方が小さいのだろう。そこの違いを描く ”ファースト・コンタクトもの” はSFのサブジャンルの一つだけど、こちらはスペースオペラだからね。

 「スタートレック」や「スターウォーズ」でもそうだが、人間型の知的生物には(細かいところで差はあっても)おおもとのところは同じメンタリティーを持つというのが、これらのエンタメ作品世界の暗黙のお約束。
 「ヤマト世界」でも、地球人/ガミラス人ではほぼ同じ価値観を有しているし、ザルツ人とか他の人間型異星人も同様なのだとすれば、彼らの間には「星間常識」という考え方が成立するのだろう。
 ただまあ、ここでこの言葉はちょっと唐突な印象。わざわざ断らなくてもよかったんじゃないかなとは思ったけどね。

 本来、未知の異星人の行動はこちら側の常識で判断することはできない。相互理解が完全に不可能な敵との戦いを描いたSF作品もあるけど、そういう風に描いたらそれは ”ヤマト” ではなくなってしまうだろう。

 ・・・なんてことをかみさんに話したんだが、分かったような分からないような顔をしていたので、それ以上の説明はしませんでした(笑)。


■「生き物もいねえ死んだ星だ。神もスターシャもお許しになるでしょうよ」

 イスカンダルを救うためとはいえ、惑星を一つ破壊することの是非は問われよう。考えようによってはデザリアムと同じ振る舞いともいえる。
 ハイニのこの台詞が救いか。


■「古代進って男は、そういう理屈を拒み続けてここにいる」

 よくわかってるじゃないか土門、って思ったが、ヤマトの二度の航海のことは広く人口に膾炙してるんだろうなぁ。
 23世紀のメディアがどうなってるのか知らないが、いろんな媒体で人々はヤマトのことを知ってるんだろうと思う。
 特に古代たちメインクルーの行動は、微に入り細にわたって報道されただろうし。


■「彼らとの邂逅は記録になかった」

 ゴルバ内で独白するメルダーズ。

「おそらくは ”大喪失” に含まれる記録・・・あれは何者だ。
 なぜ他人の命を救おうとする。命を懸けてまで・・・」

 デザリアムは、イスカンダルもガミラスも知っていたのに、ヤマトのことは知らないようだ。そしてそれには彼らの記録(歴史?)が関わっているらしい。


■デザリアムvs連合艦隊  その1

 連合艦隊の攻撃は、デザリアム艦隊を波動砲の射線上に誘導する。
 しかしメルダーズはイスカンダルを盾にしてガルマリオ破壊を阻止させる。
 そこへユリーシャからの通信。「イスカンダルを撃ってください」

 転進するアスカとヒュウガ、波動掘削弾と防壁弾の同時発射。
 今更だが、波動掘削弾は旧作の波動カートリッジ弾に相当するものなのだろう。

 イスカンダルから「波動エネルギーに似た何か」が噴出、キルゾーンを離脱。

 デーダーは波動砲発射態勢のヤマトに猛攻を懸ける。

「血が滾るというのはこのことか。
 デザリアム千年の夢、この身の内にも確かに・・・!」

 意外と頭に血が上りやすいタイプなんだね。しかしこの台詞の意味はよく分からない。


■土門vs古代

 土門は作戦中断を具申するが、古代は受け入れない。

「敵に狙いを知られた以上 二度目のチャンスはない」
「イスカンダルが身を切ってまで与えてくれたチャンスを、無為にはできない」

 山崎からの提案を受け入れるが土門は

「あんた一人のヤマトじゃないだろう・・・」

 古代の理屈も分かるが、「艦の安全、乗員の命を守り、そのうえで敵を倒すことこそが艦長の手腕だ」って『サブマリン707』で小沢さとるも言ってる。
 この決断はヤマトを危機に陥れるものだった。アスカが間に合ったからよかったものの・・・

 波動砲は発射され、デーダーもハンマーも消滅。しかしガルマリオの破片がヤマトを襲う。


■「思い上がるな! 古代進!」

「俺の・・・俺のせいで・・・」「私たちよ!」

 アスカの展開する防壁がヤマトを救う。


「一人のことじゃない ”私たち”のことでしょう!?」
「全員で背負う! みんなであの時そう決めた。なのになんで・・・
 自分一人で背負おうだなんて・・・思い上がるな! 古代進!」

 あんなに威勢の良かった古代が、雪の一喝でしゅんとなってしまう。
 古代という男の操縦法というか、何処を衝けばどう反応するのかとか、わかってる雪さん。それを狙った発言ではないのだろうが・・・

 こんな台詞、旧作の雪だったら決して言わなかっただろうなぁとも思う。21世紀のリメイクならではの森雪さん。素晴らしいキャラになった。

 アスカからのエネルギー転送で再起動する波動エンジン。
 衝撃波の第二陣はヒュウガとデウスーラによって防がれる。


■「忌むべき星を守るは、やはり忌むべき者どもか」

 この発言は、ヤマト、ヒュウガ、そしてデウスーラの3隻が波動エネルギーを利用した兵器(波動砲&デスラー砲)を使ったのを見てのことか。

「その呪われし力が何をもたらすかも知らずに・・・」

 この辺の言葉も、デザリアムの正体を知る手がかりか。


「その2」(第6話)に続く。



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