プリンセス刑事 弱き者たちの反逆と姫の決意 [読書・ミステリ]
評価:★★★
2000年以上もの間、”女王” によって統治されてきたパラレルワールドの日本が舞台。
現女王の妹宮の娘(つまり姪)にして、王位継承権第5位のプリンセス・白桜院日奈子(はくおういん・ひなこ)殿下が、なんと刑事となって若手刑事の芦原直斗(なおと)とバディを組み、凶悪事件と対峙していくシリーズの第3巻。
とは言っても、なるべく王族には危険な現場には出てほしくないのが警察上層部の本音。2人は「特務捜査班」という位置づけだが、要するに通常の捜査班とは別行動になってる。
今回、2人が捜査に加わるのは、ショッピングモールで起こった無差別殺傷事件。外国人の2人組が買い物客に襲いかかり、4人が死傷した。事件後、犯人の1人は死亡したがもう1人はまだ逃走中だ。
犯人はどちらも東南アジアにある北アンプチア共和国の出身。犯行時の状況から、何らかの錯乱に陥っていたと推測されるものの、死んだ犯人の体内からは既知の薬物は検出されなかった。
日奈子は未知の新種薬物の存在を感じ取り、捜査を進める。さらに、事件の背後には外国人排斥を唱える政治家と政治団体も見え隠れするが・・・
後半に入ると、新薬物 ”ステロイドX” の存在が明らかになり、その合成と流通経路を追って、さらなる惨劇を防ごうと奔走する日奈子と直斗の活躍が描かれる。
元薬学系研究者だった著者らしく、薬物関係の描写は手堅いし、得意分野だろう。しかし本書の最大の魅力はやはりヒロイン・日奈子さんのキャラクター。
王族という最高級セレブにして、大学時代に分子生物学を専攻していたという理系女子。才色兼備を絵に描いたような ”お嬢様” なのだが、「国民の生命財産を守りたい」という使命感から刑事となった。
かと言って自分の身分をひけらかすこともなく、特別扱いされることも断るという、ある意味ストイックな行動をしてきたのだけど、シリーズ3巻目となる本書において彼女の行動に変化が起こり始める。
捜査の現場においては、一般人と同じであろうと努めてきた。しかし、王族が捜査に加わっていることが、犯人の逮捕あるいはさらなる凶悪犯罪の予防について有利に働くのであれば、自分の ”身分” の利用を躊躇わなくなってきた。
具体的にどんな行動を起こすかは本書を読んでもらうとして、このシリーズは彼女の ”成長” を描く物語になってきたのだと思う。
一話完結の ”サザエさん時空” ではなく、キャラたちの成長・変化を描いていくのであれば、当然ながらパートナーである直斗もまた変わっていくのだろう。
ならば、シリーズの終着点もまた作者の頭の中には既に構想されているようにも思うが・・・。どのような着地点を迎えるのかは想像できないが、いつの日かそれが語られる日まで、このシリーズにはつきあっていこうと思う。
「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 後章 ーSTASHAー」感想・・・のようなもの その5 [アニメーション]
※ネタバレを含みます。未見の方はご注意を。
■前章時点での予想(個人的な妄想です)
前章の記事で、デザリアムの正体を「並行世界における、時間断層を放棄しなかった地球の未来」が「並行世界(あちらの世界)のイスカンダルによってこちらの世界へ飛ばされてきた」のではないか、ついでに時間も何百年か過去に跳んでしまって・・・という予想(妄想)として書き散らした。
後章が公開され、さらにいくつかの情報が明らかになったことで、この予想をもう一度検証してみようと思う。
■後章で明らかになったこと
デザリアムの皆さんの台詞などからいくつか拾ってみよう。
○イスカンダルは「忌むべき星」
「一刻も早くイスカンダルを持ち帰るのだ。
○イスカンダルが持つ「呪われし力」=波動エネルギー
「その呪われし力が何をもたらすかも知らずに・・・」(第5話)
イスカンダルが「忌むべき星」なのは、「呪われし力」を秘めているから。
そして「波動エネルギー」が「何をもたらすか」をデザリアムは知っている。それは「宇宙そのものを破滅へと導く」こと。
○デザリアムの歴史には断絶がある?
「おそらくは ”大喪失” に含まれる記録・・・あれは何者だ」(第5話)
過去のある時点で「大喪失」なるもの(おそらくは何らかの災厄)があり、そこで記録の喪失が起こって歴史に断絶が生じている。大喪失の時期のみの歴史が失われたのか、それ以前全ての歴史が失われたのかは不明だが。
○デザリアムは歴史を俯瞰して語る
「今という時を生きることしか知らない貴様たちには
未来人が過去の世界を見て言ってる台詞のようにも聞こえるが、単にデザリアム人が長命であることを示す台詞ともとれる。
「既に次元潜航を実現していたとはうかつだった。
こっちの台詞こそ、デザリアムが未来人であることを示しているように思えるが。
○デザリアムは過去、イスカンダルと何らかの関わりがありそう
「忌むべき星イスカンダル。
デザリアムはこの時空で初めてイスカンダルと出くわしたのではなく、かつて何らかの関わりがあったように思われる。
しかも「対をなす」という意味深な単語。「光のデザリアム」と「闇のイスカンダル」は、過去のある時点で ”対等な関係” にあったか、あるいは ”もともと1つだったものが2つに分かれた” という解釈も可能だろう。
○デザリアム人は完全な機械ではなく、人間の感情を残したサイボーグ?
「揺らぎを感じます。お前の内深く生じた揺らぎを・・・」
この辺の台詞の意味はよくわかりません。
○デザリアムのエネルギーは波動エネルギーと相性が悪い
「たった一発の爆弾がなぜ・・・」
ゴルバ内部の誘爆が続くことからも、これは確からしく思える。ここは旧作の設定を引き継いでいるのか。
■潘恵子さんの起用
後章で一番のサプライズは潘恵子さんの起用。しかもデザリアムの「女帝」(?)役ともとれる立ち位置。
旧作「ヤマトよ永遠に」でサーシャ、同じく「ヤマトIII」ではシャルバート星のルダ王女を演じていましたね。
[理由その1]
という可能性もありそうに思えます。
とは言っても、案外、旧作からのファンのための ”サービス出演” に過ぎなかったのかも。
■デザリアム再考
さて、後章で得た情報を付け加えて、さらなる妄想を組み上げてみよう。
[1] デザリアムの誕生
かつてイスカンダルとデザリアムはひとつで、過去のある時点で分かれたと仮定すると、ありそうなのはイスカンダルが武力路線(波動砲で大マゼラン銀河に覇を唱えた)を放棄することに決めた頃かと。
[2] シャルバート星
イスカンダルは天の川銀河の惑星をひとつ選び、コスモリバースでイスカンダルの環境を再現、その星に好戦派の者たちをエレメント化して封印した。その際、波動エネルギー技術も奪っておいた。これがシャルバート星。
[3] ”大喪失” 発生
一方、時間断層を放棄しなかった地球では際限ない軍拡が続き、やがて内戦が勃発する。このとき、時間断層とともに歴史の記録の大部分が喪われてしまう。「波動エネルギーを弄んで破滅を招いた」わけだ。このとき、歴史/記録とともに波動エネルギー技術も失ってしまう。
[4] デザリアムによる併合
地球が内戦に明け暮れていた頃、デザリアムは数千年の眠りから覚めて自ら封印解除に成功する。行動の自由を取り戻した彼らは新たなエネルギー源を開発して内戦後の地球に侵攻、機械化した地球人を支配下に置く。
[5] 並行世界への追放
地球を手始めにデザリアムは天の川銀河の征服に乗り出すが、それを知ったイスカンダルによって阻止されてしまう。
[6] そして「2205」へ
ヤマト2205世界においても、デザリアムはイスカンダルへの怨みを忘れず、波動エネルギーの奪還を目的にリベンジマッチを挑むことに。それが「新たなる旅立ち」の物語。
・・・この設定だと、”2205年のヤマト宇宙” のどこかにはシャルバート星があって、そこには古代イスカンダルの好戦派の方々が覚醒を待ってる、ってことになりそう。ただ、彼らが目覚めた世界には時間断層を放棄した地球があるわけだが・・・
うーん、とりあえず書いてはみたものの、いろいろしっくりこないところがあるなぁ。まあ所詮は一個人の妄想ですからね。
■「3199」予想
すでに「新たなる旅立ち」には旧作「ヤマトIII」の要素が多分に盛り込まれているので、「3199」もそうなると思われる。つまり「永遠に」にも「III」の要素が盛り込まれる。
さて、実際にはどんなストーリーになるのか全く予想がつかないけれど、いつも書いているとおり、ヤマトの新作について予想や妄想を展開できるなんて幸せな時代になったものです。
■終わりに
今回の記事は難産でした。最初の予定ではイベント上映の終了する頃に合わせて2月終わりくらいのアップを考えていて、2月中旬くらいから少しずつ下書きも始めていたのですが、途中からパタッと手が止まってしまいました。
いちばん大きな原因は私の怠慢なのですが、やはり影響が大きかったのはロシアのウクライナ侵攻のニュースでした。
そのくせ、読書録の記事は普通に書けてしまうのですから、なんとも自分の心理に不思議さを感じたり。ミステリだって人が死んでるのにねぇ・・・
いっそのこと記事のアップを止めてしまおうかとも思ったのですが、いやここで止めたら、それはそれで ”負け” なのではないか、とも思って何とかここまでこぎ着けました。
つくづく思ったのは、カルチャー(サブカルチャー含む)は、平和があってこそ花開くし、心置きなく楽しめるということ。
「3199」については公開時期さえ未だ明らかになっていませんが、早くても年末、下手すれば来年の春~夏頃じゃないかとも思ってます。旧作でも「新たなる-」と「永遠に」の間には1年ありましたからね。
ここまで、長い長い駄文にお付き合いくださり、ありがとうございました。
m(_ _)m
花嫁首 眠狂四郎 ミステリ傑作選 [読書・ミステリ]
評価:★★★
「眠狂四郎」について私が知ってたことは少ない。おぼろげな記憶では、最近亡くなった田村正和がTVドラマで演じてて、「円月殺法」って ”必殺技” を持ってることくらい。
本書を読むに当たってwikiでちょっと ”予習” をした。
そもそもこの本を読もうと思った理由はタイトルにある。このシリーズの中には、眠狂四郎が探偵役となって怪事件を解決するものもある、という触れ込みに引かれて手に取ったという次第。
本書には21作が収録されている。タイトルを挙げると
収録作全部について書くのは大変なので、いくつかについて。
「禁苑の怪」
「湯殿の怪」
「疑惑の棺」
「家康騒動」
「謎の春雪」
「消えた兇器」
「花嫁首」
ミステリとしてみると、真相解明に必要な情報の提示などの ”お約束ごと” に則っていないとか、(現代の目で見れば)トリックが陳腐だったり、実現可能性に問題があったり、いろいろ不満も出てくるだろう。でもまあ「これはミステリです」とは銘打っていないので、それは仕方がないだろう。
あと気になるのは、いわゆるエロ描写。女性が読んだらいささか不愉快に感じるところも多々あるように思う。
良いところも挙げなくてはね。
「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 後章 ーSTASHAー」感想・・・のようなもの その4 [アニメーション]
※ネタバレ全開です。未見の方はご注意を。
最終話「こんにちは サーシャ」
なんとも大胆なタイトルです。スペースオペラの表題とは思えませんね。
■波動砲発射態勢
全てを達観したかのようなデスラーの表情、
しかし、発射3秒前に停止ボタン(そんなものあったんだ)を押す土門。
■ゴルバにて
多脚戦車がデウスーラに取り憑く。さらに後方ではさらに降下してくる。
■艦内を走る土門
「力を貸してください 全員を助ける方法があるんだ」
土門が試作機の性能を知っていたがゆえに思いついた作戦か。これも前章で伏線があったね。さすがに防大主席はダテじゃない。
藪+新人クルーを招集、内火艇には既に古代が待機。
■譲れないもの
古代は語る。
「もっと早くこうするべきだった。お前は正しい。
「でもそれでも、絶対に譲れないものが人にはある。
かつて、イスカンダルへの旅で沖田から言われたこと。
「忘れていた・・・ずっと俺は」
忘れていた、わけではないだろうと思う。彼はそんな忘れっぽい人間ではないよ。そんな大事なことを忘れられる人間だったら今までこんなに悩んでない。
まっすぐに物事に向き合う土門の行動を見ていて、自分を貫く勇気を取り戻した、というのが本当のところだろう。
■副長・島
「そう、古代艦長がそう決めたのね。分かりました。直ちに準備します」
モニター越しに会話してるのは島。古代不在の今、ヤマトの指揮を執ってるのは彼。このあとの戦闘中でも指示を出してる。
■演説キャラ・真田
ヒュウガの艦長席から真田が檄を飛ばす。
「全艦、反転180度! 連合艦隊全艦に告ぐ!
「2205」最終話でもそうだったけど、リメイク版の真田さんは演説が実に上手い。これを聴いたらみんな奮い立ってしまうだろう。
■暗号通信
イスカンダルで戦いを見守る姉妹のもとへ通信が。
■連合艦隊vsデザリアム艦隊
山本玲とメルダのツーショット。こういう、見たかったシーンを見せてくれるのがニクいね。しかもBGMがハマってる。
■コスモハウンド発進
旧作のコスモハウンドが、次元潜航艇としてこんなに大活躍するとはね。
「地球軍初の次元潜航艇。三度に一度は動作不良を起こすバカ犬だけどな」
潜航し、イスカンダル王宮地下に出現するコスモハウンド。
■「ねえさん!」
「イスカンダルではどうだか知らない。
この台詞は藪くんにはことさら響くよねぇ・・・
「義姉(ねえ)さん!」
この台詞にはびっくりだったが、古代の必死の思いを伝えるという意味では、変に回りくどい表現をするよりこっちのほうがよかったと思う。
「あなたが脱出しないとデスラー総統も引き上げられないんだ。
このあたり、福井節満開。
「行きましょう、お姉様。過去を繰り返す亡霊じゃない。私たちも命。
過去に縛られて永遠に生き続けるよりも、例えそれがどんな短い時間であっても、自分の意思で未来を生きたい。
■コスモハウンド攻防戦
発進したコスモハウンドを、ゴルバから放たれた ”網” が襲う。
「ソナーに感! 反応増大!」「こいつがガミラスの潜航艇を飲み込んだ」
指揮官席に座る土門。各メンバーに指示を飛ばす。
土門は作戦指揮、古代は一段上の視点から全体を統括。
それにしても「勇ましいのは名字だけか? キャロライン」とか、古代は各メンバーのことをよく知ってるようだ。指揮官たる者、各クルーのデータはしっかり頭に入ってるのか。
■「ターゲット捕獲完了」
コスモハウンドの一部を内部に取り込んだゴルバ。
「敵機内に波動エネルギー反応」
波動掘削弾が爆発し、要塞内に誘爆が広がる。
■デウスーラ脱出
「デスラー総統、スターシャ女王は救出した。至急脱出されたし」
スターシャからの「アベルト・・」という呼びかけにも、なぜかデスラーの表情は晴れない。彼女がイスカンダルなしには生きられないと知っていたのだろう・・・なぁ。
■断末魔のゴルバ
「記録が歪む・・・デザリアム千年の夢が揺らぐ・・・」
この台詞の意味が不明。何かの伏線になってるのか?
「たった一発の爆弾がなぜ・・・」
要塞砲の発射態勢に入るが、スターシャが自爆スイッチを押す。
そしてデスラーの後ろ姿・・・この後起こることを知ってたのだろう。
■別離の時
デスラーと対面するスターシャ。デウスーラ艦内か。
「その目・・・ずっと私を見ていてくれた
同時に、光となって消えていく。
古代とデスラー以外のメンバーは驚く。やはり2人は知っていたようだ。
「私たちはイスカンダルの記憶。星とともに消えるのが定め。
カプセルをみやこに渡すユリーシャ
「サーシャ、地球で楽しく、ね・・・」涙を流しながら消えるユリーシャ
「知っていたんですか? なぜ・・・こうなるって知っていたのならなんで!?」
「これで救われた心もある。たとえ一瞬でも最後に愛する人に会えて・・・
第一話の回想シーン。この時の土門の父の笑顔について前章の時の記事にいろいろ書きましたが、私の気の回しすぎだったみたいですね。至ってシンプルな理由だったようで。
最近、自分の人生の残り時間が少なくなってきたせいか、自分の臨終のことを考えたりする。不慮の事故で死ぬなら仕方がないが、ベッドか畳の上で死ぬとしたら、自分が最後に見る顔は誰だろう? って。
「人が・・・人にできるのは・・・それくらいしか」
■「おかえりなさい」
アスカに帰還したコスモハウンドを出迎える雪
輝く球体が広がり、やがて赤ん坊の姿へ。
「サーシャ・・・」赤ん坊を抱く雪
古代の指を掴むサーシャ。「2202」最終話で登場した指はてっきり美雪の化と思ってたけど、サーシャだったのかも知れない。
微笑む古代。本作の中で、古代が笑ったのはここが初めて。
「おかえりなさい。こんにちは、サーシャ」
雪のもとへ、やっと ”彼女が愛する古代” が還ってきた。
■すばらしいこと
避難船の中で、家族と再会する藪。
「知ってるか? どん底の次にはもっとすばらしいことが・・・」
同時に主題歌「愛は今も光」が流れ出す。
■別れを告げる古代とデスラー。
「ガミラスの出自もいずれは民の知るところとなるだろう」
情報統制はしない模様。
「だが、我々はこれからもガミラスという名に誇りを持ち続ける。
ガミラス人の将来を悲観しない。可能性を信じる。
「デスラー総統・・・」
「スターシャに会わせてくれたこと、礼を言う。ほんのひとときでも、
男なら、誰でも1人くらいは心の中に ”永遠の女性” を棲まわせている。
「彼女の子を頼む。古代、手放すなよ。お前の愛する者を」
去って行くガミラス船団、地球へ帰還するヤマト艦隊。
■そして「3199」へ
「これが敵要塞の中に?」
そして『ヤマトよ永遠に REBEL3199』のロゴが。
デザリアムについて、また少し考えたことがある。それは次の記事で。
発現 [読書・その他]
評価:★★☆
大河ファンタジー『八咫烏』シリーズで有名な著者のノンシリーズ作品。今回はホラーだ。
平成30年。
大樹は異様に憔悴していた。”ありえないもの” が見えるようになったのだという。精神科医の治療を受けても改善せず、性格も行動も一変してしまった兄を見ていたさつきは、かつて母が同じような状態になったことを思い出す・・・
昭和40年。
葬儀に参列した省吾は兄の様子を訊いて回る。仕事では優秀で人望もあり、家庭も円満。そんな兄が妻子を残して自ら命を絶つはずがない。
かつて清孝と省吾の2人は揃って満州にいた。清孝は軍人として、省吾は開拓団の一員として。終戦後、清孝はシベリアに抑留され、省吾は清孝以外の家族全員を喪ったが、ともに九死に一生を得て帰国を果たしていた。
物語は平成30年と昭和40年、二つの時代を交互に描いていく。もちろん終盤では一つにつながり、大樹の幻覚や清孝の自殺の理由もまた明らかになる。
私は怪談とかホラーというものが今ひとつ好きになれない。小野不由美の『悪霊』シリーズみたいに、けっこう楽しめるものもあるので、ホラー作品全部がダメというわけではないのだけど。
以下の文章はネタバレに属することかと思うので、未読の方はご注意を。
本書の後半に入ると、ヒロインであるさつきにも兄と同じような ”幻覚” 症状が現れる。だが、彼女がそんな目にあわなければならない理由はないのだ。一言で言えば ”とばっちり” である。
もし本当に祟りが存在するのなら、祟りを発生させるような悪行を為した者をきっちり呪い殺して、そこで終わりにするべきだと思うし、数十年後の無関係な人間にまで祟りを降らしたら、完全な ”八つ当たり” だよねぇ。そんな理不尽がまかり通る物語はやっぱり好きになれないんだなぁ。
ホラー好きな人からしたらトンデモナイ奴だと思われるかも知れないが、それが私の正直な感覚。
まあ本書においては、上記のような描写を通じて作者が訴えたいものがあるのは分かるし、それにはホラーという形式が効果的だと考えたのだろう。
「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 後章 ーSTASHAー」感想・・・のようなもの その3 [アニメーション]
第7話「イスカンダル 滅びゆくか哀の星よ」
■スターシャは語る
「イスカンダルは長男。
まあ、ガミラスの扱いを見れば古代イスカンダル人の性格の悪さはよくわかるよねぇ(笑)。
ここで唐突にキーマンが登場。
アケーリアス人はどこかへ旅立ったという。滅びたんじゃないんですね。
「彼らに追いつくにはこの宇宙の法則全てが足枷になる」
それに対してイスカンダルは、記憶によって世界を変える力を手に入れた。
しかしその結果、イスカンダル人は ”大いなる停滞” に陥ってしまったのだろう。
■サンクテルにて
入り口から吹き上がる炎?のような者を見たとき、女王プロメシューム様が出てくるのかと思ったよ(笑)。
「あらゆる星のエレメントを保管する大記憶庫サンクテル。
古代の兄・守が、アベルトの伯父・エーリクが語る。
「コスモリバースシステムは記憶の中の文明を現実世界に再構築するシステム。
イスカンダル人がサンクテルに身を沈めた後、儀式という名の虐殺を行うために手に入れた奴隷がガミラス。
ガミラス星は、ガルマン星の原住民を自らの双子星に住まわせた。ガミラス星はコスモリバースシステムによってガルマンの環境を再現していた。
ん? ガミラス星にガルマン星の環境を再生させるなら、予めガルマン星をエレメント化(&ガルマン星の破壊)しておかないとできないのでは? でもガルマン星は残ってる。
「奴隷の名はガミラス。その意味は ”ガルマンの人猿”」
自らの民族の名が、人間扱いされない蔑称だったとは。ガミラス人にとっては最大級の屈辱だろう。
■「これでも私を救いますか?」
すべては、イスカンダル人がガミラス人を奴隷として使役するために仕組んだこと。そしてそれが、ガミラス星を喪う遠因ともなっていた。
「イスカンダルはもう何千年も前にエレメント化をやめた。
徹底的に利己的なんだね、イスカンダルは。
寿命が近づいたガミラスに成り代わる星を求めて宇宙に侵略の手を伸ばしたガミラス。地球がガミラスの侵略を受けたのも、元をたどればその理由はイスカンダルに行き着く。
「なぜだ!? かつて君は早く大人になれと私に言った。
「だとしたらとんだ自惚れ者だよ君は。
「贖おうとしたことなんかない。
「独善で暴虐の限りを尽くしたイスカンダルの末裔として
「あなたもそうでしょう?
もうこのあたりは論評を超えてますね。戦闘シーンを除けば、今作『新たなる旅立ち』の、ある意味いちばんのクライマックス。
旧作から43年。スターシャとデスラーがこんなふうに、お互いの本音をさらけ出して対峙する日が来ようとは。長生きはするものだ(笑)。
■古代守が教えてくれたこと
「生きることは変化し続けること。
「変化を拒むことは死んでいるのと同じ」・・・深い言葉ではある。
■「古代艦長から個別通信です」
「雪・・・雪・・・俺は・・・俺はもう分からない 何も分からなくなった」
この時の古代は、スターシャたちがイスカンダルを喪うとどうなるかを知ってたのだろうか?
■第一艦橋
「どうして! 引きずってでも連れてこなかった!?」島が激高する。
■「別離」
ここで堀江美都子さんの歌声が聞けるとは思いませんでしたよ。
「けれど終わりがあるというのはとても大切なこと」
実は後章を観にいく何日か前(1月末頃)に、ネット配信で『銀河鉄道999』(映画版)を観たんだよねえ。
でも「999」を見た後にこの台詞を聞くと、とても気になった。
■ユリーシャの実年齢
ユリーシャは地球への使者として「サンクテルから急遽引き出された命」なのだという。
■デウスーラIII世、反転
イスカンダルの移送を再開したゴルバから離れていく連合艦隊。
「すまん」
まさに忠臣タラン。彼はいいとして、その他のクルーはどう感じてるのかとも思ったが、
デウスーラに配属されてるのは、デスラーに身も心も捧げている者ばかりなんだろう。
デスラー砲を発射。BDに同封されている冊子によると
■「古代 私ごと撃て!」
「このデウスーラに波動砲を撃ち込め! これしかないのだ、古代!」
旧作でも名シーンと謳われる場面。今回は、サンクテルでの対決を通して、より2人の結びつきが深く描かれている分、心に響くものになってる。
「反転180度! 波動砲、発射準備! 引き金は・・・俺が引く!」
第8話へ続く。
炎舞館の殺人 [読書・ミステリ]
評価:★★★☆
ロシアの血を引く(と覚しき)クールビューティなメイド・栗花落静(つゆり・しずか)さんが活躍する『使用人探偵シズカ』シリーズ第5作、って思って読み始めたのだけど、ちょっと話が違うみたいで・・・。
時代は明治。陶芸で財を築いた夏季屋肇(かきや・はじめ)は、山陰地方の山間に館を築いた。炎舞館(えんぶやかた)と呼ばれたその建物は、耐火煉瓦を積上げて造られ、窓は一切なく、狭い2つの通用口といくつかの通風孔を除けば外界への出口はない。
夏季屋はそこへ籠もって製作に打ち込んでいたが、齢50を超えて病を得、余命幾ばくもない状態にあった。彼には妻子はなく、若い弟子たちの中から後継者を選ぶことになったのだが、指名する前に失踪してしまう。
夏季屋の6人の弟子は、彼が自ら選んで連れてきた者たち。彼らにはある共通点があった。体の一部に何らかの ”欠損” を抱えていたのだ。
後継者の座を巡って葛藤の中にある6人。亜希人が野心を示しているが巴を押す者もおり、どちらが後を継いでも、弟子たちのうち何人かは館を出ていくことになるだろう。
そんなとき、夏季屋の手紙を持った少女が新しい弟子として炎舞館にやってきた。一見して明らかに異国の血が入っていると分かるその少女は「しずか」と名乗るが、日本語が話せない(ロシア語は話せるようだ)。そして何より、彼女の身体にはどこにも欠損がなかった。
師匠の意図を訝しみながらも、しずかを受け入れて生活を始めた矢先、事件が起こる。
死体を切断するというのはミステリの定番だけど、それだけの合理的な理由がなければならない。本書で示されるのは充分に納得できる必然性だ。
身体に欠損を抱えた人物が大量に登場するのだが、こういう演出があまり好きでない人もいるだろう。私もそうだ。
「しずか」と名乗る、異国の血が入った少女。作者のシリーズキャラクター「栗花落静」との関係は明らかにされないまま、ストーリーは進行していく。
「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 後章 ーSTASHAー」感想・・・のようなもの その2 [アニメーション]
※ネタバレ全開です。未見の方はご注意を。
第6話「移民船団救出作戦・次元の壁を越えて行け!」
■ゴルバ登場
「デザリアム軍指揮官に告ぐ!・・・」呼びかける古代。
しかし、デウスーラIII世はデスラー砲をぶっ放す。
蛮行を繰り返す相手に対し、まず一発殴って止めてから話を始めようとする古代。そして、殴りだしたら止まらなくなったデスラー(笑)。
しかし、デスラー砲をあっさり無効化するゴルバ。
「波動エネルギーをもてあそぶ愚か者どもよ。
「ふふふふふ。そんな石ころのようなエネルギー弾が
ゴルバの発生する重力場に翻弄される連合艦隊。
「忌むべき星イスカンダル。
もう余裕というか歯牙にもかけないとはこのことですな。
■デスラー謝罪?
「ヤマトの諸君、いささか敵の力を見誤ったようだ」
デスラーが自らアヤマチを認めることは珍しい。
■作戦会議
イスカンダルにいる者たちの救出優先を訴える地球側。
古代にスターシャの説得を要請するメルダ。しかしそれを断ってしまう。
『2199』において、波動砲の封印を約束した沖田。しかし『2202』において、それを反故にした地球政府。そして古代自身もまた波動砲の使用を受け入れた。
もともと、今回のヤマト艦隊のサレザー恒星系訪問には、波動砲解禁についてスターシャへ説明(謝罪?)することも含まれていたと思う。
「大人になるということは、できることとできないことの区別がつくようになるということだ」昔の某アニメにあった台詞だ。
しかし「相手が受け入れないから説明に行かない」という態度は、大人(社会人)として如何なものか。説明なり謝罪なりが必要なら、まず相手のもとに赴いて素直に頭を下げるべきだよねぇ。相手がそれを受け入れるかどうかはまた別の話になる。とにかくそれを行わないことには次に進めない。
「古代 お前は何をしにここに来たのだ?
デスラーが皮肉るのも無理はないとも思う。ただまあ、彼に一般的な社会人としての常識があるかどうかは疑問だが(おいおい)。
■ハイニ、臨時艦長へ
生存者リストを眺める藪。慰めるハイニ。
■グレート・エンペラー登場?
ゴルバ内で何者かに報告するメルダーズ。
「揺らぎを感じます。お前の内深く生じた揺らぎを・・・
驚きの潘恵子さんの起用です。初見のとき、心の中で「えーっ!?」て叫んでしまいましたよ。
とはいっても敵の親玉を演じたのは、旧作の「新たなる旅立ち」では木村幌さん、「ヤマトよ永遠に」では大平透さんというように、声優さんは異なりましたからね。彼女がそのままデザリアムの支配者であるかどうかは不明。
ここでもデザリアムは「光」、イスカンダルは「闇」、しかもこの2つは「対」と表現するなど、意味深な台詞が。
■「そのように飼い慣らしたから」
パレスにたたずむスターシャとユリーシャ。
ユリーシャさん、キツい物言いですな。
■ヒルデ・シュルツさん
「関係ないでしょそんなこと! 私には父親が2人います。
『2199』で登場し、予想外の人気を獲得したヒルデさん。
考えたら、沖田、土方、徳川、シュルツ、ドメル、ヒス、多くの者たちがみな逝ってしまった。それでも、次の世代が物語を引き継いでいく。
■暗号通信
「ガミラスの同胞たちよ 脱出の時が来た
ここで流れるBGM「ドッグ・ファイト」がたまらなくいい。
■救出作戦
瞬間物質移送機で地球・ガミラスの航空隊が出現。これは胸熱なシーンだ。
坂本「どうせならデカブツの腹ん中に運んでくれりゃいいのに」
これは最終話への伏線だろうなぁ。
次元潜航艇が避難船の救出を行うが、メルダーズの戦況ディズプレイにはしっかり光点が出現する。
連合艦隊の砲撃が始まる。ヤマトとデウスーラが轡を並べて主砲の斉射するのが見られるとはね・・・
「同胞たちよ くじけるな 運命に抗え
前章の時にも書いたけど、旧作といちばん異なるのが避難民の存在。
■ハイニ受難
次元潜行艦を追う謎の光が ハイニの2号艇を捕らえ、ゴルバの内部へ。
デザリアムの多脚戦車が襲来。「3199」でも雲霞のごとく大量に出てきて地球を占領するのかな?
「これが最後のノイズ・・・既に次元潜航を実現していたとはうかつだった。
地球/ガミラスの科学技術体系に詳しそうな台詞。これも伏線か。
■要塞砲vs波動防壁
ゴルバの要塞砲がエネルギー反応を示す。狙いは海上の移民船団。
要塞砲に対して、波動防壁が保つのかという不安がよぎるが、BGM(元祖ヤマトのテーマ)が大丈夫だと教えてくれる(笑)。実際、要塞砲を遮ることに成功する。
ネットには ”ユニコーンバリアー” なんて揶揄する声もある。私も最初は「いくらなんでも都合良すぎではないか」とも思ったのだが・・・
でも、よく考えたらゴルバの目的は海上の移民船団を一掃することで、イスカンダル星本体に損傷を与えることは極力避けるはず。
もっとも、古代や土門が切羽詰まった状態でここまで予想できるとも思えないのだけど・・・こうなることを読み切っていたらそれこそスゴい。
とはいっても、第一撃を食らった段階で「波動防壁出力23%まで低下!」
■猊下の介入
「やめてっ!」中空に浮かぶ巨大なスターシャの姿。
「観音様みたいね」とはかみさんの弁。
「真実を伝える時が来ました。ガミラスの・・・青い血の真実を・・・。
第7話へ続く。
潮騒のアニマ 法医昆虫学捜査官 [読書・ミステリ]
評価:★★★☆
「法医昆虫学」とは、死体を摂食するハエの幼虫(いわゆるウジですね)などの昆虫が、人間の死体の上に形成する生物群集の構成や、構成種の発育段階、摂食活動が行われている部位などから、死後の経過時間や死因などを推定する学問のこと。 (by wiki)
しかし日本ではまだまだ発展途上の分野らしい。
彼女が捜査一課の岩楯祐也警部補とコンビを組んで、難事件に取り組むシリーズの第5作。
伊豆諸島の新島の沖合20kmに浮かぶ「神の出島(かみのでじま)」。
しかし、現場へやってきた赤堀はそれとは異なる解釈を見いだす。しかし当初は捜査陣の誰も彼女の言うことを信じないのは、もうお約束のパターン(笑)。
すっかり ”赤堀のお守り役” になってしまっている岩楯刑事だが、今までの事件で示されてきた彼女の能力をよく知るが故に、彼女の推定を信じて捜査を進めていくことになる。
遺体の身元は西峰果歩(かほ)、29歳。幼稚園の教員をしていたが1年前に辞め、無職となっていた。
赤堀のほうも、毎回披露される奇矯な行動は健在(笑)。登場そうそう、フナムシを手づかみで捕まえ始め、周囲の度肝を抜いたりとか(おいおい)。
赤堀と岩楯、この2人の協力関係が絶妙で、新たな事実を次々と突き止めて真相へと導いていく。
最終的には今回の事件を引き起こした ”犯人” へと至るのだけど、今回読んでいて思ったのは、作者のストーリーテラーとしての才能。
余り詳しく書くとネタバレかと思うが、遺体の状況には、ある侵略的な外来生物も絡んでいるなど、昆虫に関する蘊蓄も豊富。毎度のことながらこのあたりもとても面白い。
「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 後章 ーSTASHAー」感想・・・のようなもの その1 [アニメーション]
※ネタバレ全開です。未見の方はご注意を。
第5話「緊急指令! ヤマト、イスカンダルを撃て!!」
■「そなたたちに名を与えよう ”ガミラス” と」
たぶん、ガミラス人の間で語られている ”創世の神話”。こういうものを幼少の頃から聞かされていれば、イスカンダルを崇拝する気持ちも芽生えようというものか。これも洗脳の道具なのか。
しかし、ここで与えられた ”ガミラス” の意味がアレとはねぇ。
■「ヤマト・・・イスカンダルと罪を分け合う地球の艦・・・」
いちいち台詞が重いよね、猊下は。
「あなたが呼んだの? サーシャ・・・」
そうだよねぇ・・・君が呼べば、ススム叔父さんもアベルトおじさんも、宇宙の彼方からだって駆けつけてくれるよ・・・きっと。
■主砲一閃、交戦開始
冷静に考えると警告なしで砲撃を開始してるのはどうなのか、とも思うが、億単位の人間が住む惑星を破壊し、いままた避難民を虐殺しようとしているんだから、こういう形での介入は仕方がないとも思う。
地球とガミラスは安保条約を結んでいるので、それも攻撃理由になるのかと思ったんだが、この時点でヒス首相をはじめ首脳陣はお亡くなりになってるみたいだから、ガミラス民主政府は消滅しているんだよねぇ、たぶん。
どちらにしろ、ここではまず一発ぶちかまして避難民への脅威を除くことが優先されると古代は判断したのだろう。
■「しっかり見届けろ! そのためにここにいるんだろうが!」
土門も当然のように第一艦橋に。これは古代が残したんだろう。
■コスモパイソン
三段変形する戦闘機ときたらバルキリーを思い出す。今作の監督はマクロスシリーズもつくってたんだよね。
■移民船団を波動防壁で守るアスカ
こういうこともできるんだなぁ。今回、波動防壁はあちらこちらで大活躍。
■「ヤマトです!」「ランハルトの・・・艦が・・・」
この時点では、まだ「古代」という固有名詞は出てこないのですね。
■「仁科、挨拶できるか?」
主砲を北極上空の巻他に向けて撃つ。こりゃいらぬ挑発のような気もするが、意外とメルダーズは冷静。
「落ち着け。お前のその感情がノイズをよりひどいものにする。
■「ここから殴り返すだけよ、ヤマトと一緒にな」
バーガーに対して意外と素っ気ない古代。ため息をつく雪。何が古代をそうさせたのか。この後の作戦のことを考えていたのかな・・・とも思ったり。
■作戦会議
デザリアムハンマーの機能を真田が解明。惑星ガルマリオを破壊、そのエネルギーでイスカンダルを運び去る。
「天文規模のビリヤード。今デザリアムは再びキューを動かそうとしている」
艦長・副長・隊長クラスが集まる作戦会議になぜか参加している土門。もちろんオブザーバーなんだろうけど。これも古代が許可したんだろう。
ガルマリオを波動砲で破壊するが、スターシャの面前で波動砲の使用することの是非が問題になるが、「星間常識に照らしてあらゆる反攻手段が容認される」と古代は言う。
ここでかみさんから私に質問。「セーカンジョーシキって何?」
真面目に考えれば、地球人と異星人との間に共通の価値観や倫理観が見いだせる可能性の方が小さいのだろう。そこの違いを描く ”ファースト・コンタクトもの” はSFのサブジャンルの一つだけど、こちらはスペースオペラだからね。
「スタートレック」や「スターウォーズ」でもそうだが、人間型の知的生物には(細かいところで差はあっても)おおもとのところは同じメンタリティーを持つというのが、これらのエンタメ作品世界の暗黙のお約束。
本来、未知の異星人の行動はこちら側の常識で判断することはできない。相互理解が完全に不可能な敵との戦いを描いたSF作品もあるけど、そういう風に描いたらそれは ”ヤマト” ではなくなってしまうだろう。
・・・なんてことをかみさんに話したんだが、分かったような分からないような顔をしていたので、それ以上の説明はしませんでした(笑)。
■「生き物もいねえ死んだ星だ。神もスターシャもお許しになるでしょうよ」
イスカンダルを救うためとはいえ、惑星を一つ破壊することの是非は問われよう。考えようによってはデザリアムと同じ振る舞いともいえる。
■「古代進って男は、そういう理屈を拒み続けてここにいる」
よくわかってるじゃないか土門、って思ったが、ヤマトの二度の航海のことは広く人口に膾炙してるんだろうなぁ。
■「彼らとの邂逅は記録になかった」
ゴルバ内で独白するメルダーズ。
「おそらくは ”大喪失” に含まれる記録・・・あれは何者だ。
デザリアムは、イスカンダルもガミラスも知っていたのに、ヤマトのことは知らないようだ。そしてそれには彼らの記録(歴史?)が関わっているらしい。
■デザリアムvs連合艦隊 その1
連合艦隊の攻撃は、デザリアム艦隊を波動砲の射線上に誘導する。
転進するアスカとヒュウガ、波動掘削弾と防壁弾の同時発射。
イスカンダルから「波動エネルギーに似た何か」が噴出、キルゾーンを離脱。
デーダーは波動砲発射態勢のヤマトに猛攻を懸ける。
「血が滾るというのはこのことか。
意外と頭に血が上りやすいタイプなんだね。しかしこの台詞の意味はよく分からない。
■土門vs古代
土門は作戦中断を具申するが、古代は受け入れない。
「敵に狙いを知られた以上 二度目のチャンスはない」
山崎からの提案を受け入れるが土門は
「あんた一人のヤマトじゃないだろう・・・」
古代の理屈も分かるが、「艦の安全、乗員の命を守り、そのうえで敵を倒すことこそが艦長の手腕だ」って『サブマリン707』で小沢さとるも言ってる。
波動砲は発射され、デーダーもハンマーも消滅。しかしガルマリオの破片がヤマトを襲う。
■「思い上がるな! 古代進!」
「俺の・・・俺のせいで・・・」「私たちよ!」
アスカの展開する防壁がヤマトを救う。
あんなに威勢の良かった古代が、雪の一喝でしゅんとなってしまう。
こんな台詞、旧作の雪だったら決して言わなかっただろうなぁとも思う。21世紀のリメイクならではの森雪さん。素晴らしいキャラになった。
アスカからのエネルギー転送で再起動する波動エンジン。
■「忌むべき星を守るは、やはり忌むべき者どもか」
この発言は、ヤマト、ヒュウガ、そしてデウスーラの3隻が波動エネルギーを利用した兵器(波動砲&デスラー砲)を使ったのを見てのことか。
「その呪われし力が何をもたらすかも知らずに・・・」
この辺の言葉も、デザリアムの正体を知る手がかりか。
「その2」(第6話)に続く。