宇宙戦艦ヤマト2199でわかる天文学 [アニメーション]
宇宙戦艦ヤマト2199でわかる天文学
: イスカンダルへの航海で明かされる宇宙のしくみ
- 作者: 半田 利弘
- 出版社/メーカー: 誠文堂新光社
- 発売日: 2014/12/09
- メディア: 単行本
著者は、「ヤマト2199」の科学考証を担当した
鹿児島大学理学部の教授。専門は電波天文学。
wikiに載ってる略歴によると、私と同学年だ。
この人、HPも持っていて、覗いてみると面白い。
研究はもちろんだが、科学の普及啓蒙活動にも熱心なようだ。
いろんな雑誌に連載も持っていたみたいで、そのタイトルも
「懐かしのヒーローロボット列伝」とか「SFの舞台裏」とか。
その内容の一部がHPで読めるんだけど、
たしかに「オタク第一世代」に間違いない。
さて本書の内容だが、ヤマトに登場した天文学用語・SF用語を
見開き2~4ページで1つずつ解説してある。
全ページがフルカラーで、本編での画像に加え、図や写真も豊富で
ページをぱらぱらめくって眺めていくだけでも楽しい。
お馴染みの言葉もあれば、そうでない言葉もある。
「MACHO」なんて知らなかったよ。
面白いのは、用語それぞれに「実在」「架空」と
きっちり切り分けてあるところで、
このへんはやはり現役の研究者らしいと思った。
「浮遊大陸」「波動砲」「次元断層」とかヤマト世界の用語も
もちろん取り上げて丁寧に説明されている。
意外なところでは「絶対銀経・絶対銀緯」とかの定義も。
これ、専門用語ではなく作品用に設定されたものだとのこと。
また、作中の描写に対して
著者が独自の見解・解釈を示している部分もある。
たとえば「VLBI望遠鏡」の項目では、
本編と同程度の地球の画像を得るためには、
「ヤマトの周囲3000kmほどの範囲に、
集光用望遠鏡を搭載した衛星を配置していたはずだ」とか。
「波動防壁」についても、実在する量子力学的な "ある現象" を
応用したものではないか、とか。
いちばん興味深かったのはイスカンダル人に関する考察。
ここは著者の専門分野の研究とは全く関係なく、
本人も "勝手な妄想" って断ってるけど、
内容は充分納得できるもので、劇中の描写をうまく説明できる。
いやあ良くできてるよ、これ。
案外、森雪の正体もこれが正解だったりして。
"ヤマトへの愛" と "天文学への愛" にあふれた本で
「ヤマト2199」の設定資料集としても楽しいし、
天文学への手軽な入門書としても面白い。