ミステリ・オールスターズ [読書・ミステリ]
評価:★★☆
「本格ミステリ作家クラブ」の所属する作家28人による
競作アンソロジーなんだけど、何せ総ページ数が
文庫で470ページくらいしかない。
"原稿用紙30枚を目処" って縛りがあったらしく、
一人当たり20ページほどの、
短編とも言いがたい長さの作品でまとめてあるのだ。
短いから悪いというわけではないが、皆さんこの分量に対して
かなり難儀したんじゃないかと推察する。
本来もっと長くなるはずの作品を
無理矢理ダイジェストしたような作品とか、
リアリティは二の次で、荒唐無稽さを売りにした
バカミス仕立ての作品とか。
バカミスが嫌いというわけじゃないんだが、
長さの制約からそういうオチにせざるを得なかったように思えたり。
要するに、「原稿用紙30枚」という縛りが、本格ミステリとしての質を
高める方向に行っている作品ばかりではないように感じたわけ。
何より、巻頭の序文で
「本格ミステリファンにはまたとないプレゼントとなるだろう」
「面白いよ! この本は」って自信満々に宣言している
辻真先会長(発行当時)自身の作品からして
"某○○○のパスティーシュ" 仕立てっていう "変化球" だし、
この密室トリックを読んで怒り出す、あるいは
がっかりする人だっているんじゃないかな。
ちなみに私は後者だった。
正直言って「なるほどこれが本格ミステリの神髄だ」って思える作品は
あんまり無いような気がする。
もちろんこれは私の独断と偏見に満ちた価値観によるので、
「この本を充分に楽しんだよ」って方も
たくさんいるとは思うけれども。
そんな中で、これは上手いと思ったのは次の2作。
「完全犯罪あるいは善人の見えない牙」(深水黎一郎)
短編集で既読だったけど、やっぱりオチは秀逸。
このアンソロジーの巻頭を飾るにふさわしい力作。
「羅漢崩れ」(飛鳥部勝則)
幻想的な雰囲気、怪奇性たっぷりの謎、
魅力的なキャラ、合理的な解決、余韻のあるオチ。
この長さでこれだけのモノを書くのはスゴイ。
本書に収録されたアイデアで、充分な枚数を与えてあげて
書かれたバージョンを読みたいなあ・・・
なんてことを思ってはいけないのかなあ。
あと、収録されてる作家さんの中には、超寡作な方とか、
ここ何年も作品を発表してないんじゃないかって方も散見する。
そういう方々に新作を発表する場を与える、
って目的もあったのかなあ・・・っていうのは考えすぎでしょうか。
だって、
有栖川有栖・光原百合・綾辻行人・法月綸太郎・西澤保彦
っていう(たぶん)売れっ子組は、5人でリレー小説1本。
一人当たり4ページしか書いてないんだよ!