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葉山宝石館の惨劇 梶龍雄 驚愕ミステリ大発掘コレクション3 [読書・ミステリ]



評価:★★★★


 帆村財閥の御曹司・建夫が私財を投じて葉山に建設した宝石館。そこに長女・光枝の結婚相手候補と目される青年たちが集まっていた。
 しかし宝石館の警備を担当していた探偵が殺害され、現場は三重の密室となっていた。さらに密室殺人は続き、惨劇は終わらない・・・

* * * * * * * * * *

 帆村財閥の御曹司に生まれた建夫は、一族の営む事業を嫌い、大ゲンカの末に絶縁してしまう。生まれつき芸術家肌だった建夫は長い放浪生活の末、宝石の取引を始めて資産を築いた。そして私財を投じ、葉山(神奈川県の三浦半島にある町)に自らのコレクションを収めた宝石館を建設した。

 7月の終わり、宝石館に集まってきたのは建夫の長女・光枝の3人の男友だちと次女・伊津子の恋人を含む一行。彼らは宝石館の本館に宿泊し、毎夜パーティーに興じるなど、優雅な休暇を過ごしていた。

 しかし31日の夜、宝石館の防犯アラームが鳴り響く。姉妹と男たちが一階の展示室ホールに駆けつけると、そこには胸に短剣の刺さった男の死体が。被害者は宝石館の防犯担当の探偵・萩原幸治。そして現場は三重の密室状態だった。

 凶器は "トプカプの短剣" と呼ばれる、ダイアモンドとエメラルドで装飾された宝物で、宝石館の収蔵物だった。
 さらに "バントラインのピストル"、"メソポタミアの黄金闘斧(とうふ)" という、これも宝石で飾られた宝物が盗まれていた。
 この三つはいずれもレプリカだったが、それゆえ "実際の使用に耐える(凶器として使える)" ものばかり。

 被害者の萩原は、建夫の仕事のパートナーでもあった。そのため、建夫は光枝の結婚相手の候補の一人として考えていたという。

 盗まれた二つの宝物を凶器として、さらに密室殺人は続いていく・・・


 本編の合間に《鶴山芳樹少年の日記》というパートが挿入される。
 芳樹は夏休みを葉山で過ごしている小学生。滞在先の祖母の家が高台にあり、宝石館が見下ろせた。さらにはその屋上で夜ごと開かれるパーティーの様子まで窺うことができる。
 それがきっかけで芳樹は帆村伊津子と関わりを持つようになっていくのだが、彼の見聞したことももちろん、伏線の一部となっていく。

 彼の家庭教師として同行してきているのが、女子大生の諸田久美子。好奇心旺盛なお嬢さんで、宝石館で起こった事件に興味津々。そのうち見ているだけでは収まらなくなり、ついに独自の行動を起こしていってしまうのだが、このへんは読んでのお楽しみだろう。


 ミステリとしてみると、まず "三重密室" ってのがドーンとぶち上げられているのだけど、トリックそのものよりも、「なぜ犯人は密室を作らなければならなかったのか?」という疑問の答えのほうにサプライズがある。

 今までこの作者の復刊された作品を読んできたけど、伏線回収に力を入れてるのが特徴のように思う。つまり個々の事件のトリックよりも、全体の構成の方に重きを置いているのがわかる。

 本作でも、密室殺人が続いたり正体不明の人物が登場したりと、ストーリーは錯綜していく。しかし終盤になって "ある事実" が明らかになると、そこをきっかけにいままでの伏線が綺麗に組み上がって、事件の様相が一変していく。このあたりの展開はやっぱり流石だと思う。

 いかにも "お嬢様" っぽい長女・光枝、気が強い次女・伊津子。美人姉妹だが性格は対照的だ。
 女子大生の久美子はメガネっ娘で、外すと美人という ”お約束の設定(笑)” だが、その行動力には「そこまでやるか」と驚かされる。
 メインの女性陣も三者三様でそれぞれ魅力的。楽しい読書の時間が過ごせると思う。



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夜歩く [読書・ミステリ]


金田一耕助ファイル7 夜歩く<金田一耕助ファイル> (角川文庫)

金田一耕助ファイル7 夜歩く<金田一耕助ファイル> (角川文庫)

  • 作者: 横溝 正史
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2012/10/01

※本記事中、人権擁護の観点から不適切な単語・表現を使用していますが、対象の小説(初出は1948~49年)中で用いられた内容をそのまま引用しています。
 差別的な意図はないことをご理解ください。


 資産家・古神(ふるがみ)家の美貌の令嬢・八千代。彼女の元へ舞い込んだ手紙には「われ、近く汝のもとへ赴きて結婚せん」と記され、顔の部分が映っていないせむしの男の写真が同封されていた。やがて彼女の結婚相手を巡る連続殺人事件が始まる・・・

* * * * * * * * * *

 岡山県と鳥取県の境あたりを領していた古神家は、明治の世になって華族に列せられた。他の貴族の多くが没落していく中、古神家は家老として代々仕えてきた仙石(せんごく)家の才覚で、いまだに多くの資産に恵まれていた。

 古神家の先代当主・織部(おりべ)は数年前に亡くなり、先妻の息子・守衛(もりえ)と、後妻のお柳(りゅう)とその娘・八千代が残された。
 現在、家老として古神家の諸事万端を取り仕切っているのは仙石鉄之進(てつのしん)。

 ストーリーの中心となるのは鉄之進の息子・直樹(なおき)と、彼の学生時代からの友人で探偵小説作家の屋代寅太(やしろ・とらた)。
 屋代は本作の記録係兼語り手でもある。

 冒頭、銀座での銃撃騒ぎが語られる。キャバレー『花』に素敵な美人がやってきた。三人の取り巻きと共にさんざん飲んでいた彼女の前に、新進画家の蜂屋小市(はちや・こいち)がやってきた。彼の顔を見た美女は顔色を変え、ハンドバッグから取り出した拳銃で小市を撃ってしまう。さいわい、小市は怪我はしたが命に別状はなかったが。

 撃った美女は逃げきってしまったのだが、直樹によるとこれが八千代だったという。彼女には生来、夜中に歩き回る習性(いわゆる夢遊病)があり、その間のことは全く覚えていないのだという。
 本書のタイトル『夜歩く』はここに由来する。

 この事件の直前に、彼女のもとに「われ、近く汝のもとへ赴きて結婚せん」と記された手紙が届き、そこには顔の部分が映っていないせむしの男の写真が同封されていた。蜂屋小市もまたせむしであったことから、八千代はこの事件を起こしたのではないかと直樹は言う。

 さらに、古神家はせむしが多く生まれる家系であり、八千代の兄の守衛もまたせむしだという。彼女自身はせむしではないが、これには理由があって、実は直樹の父・鉄之進と織部の妻・お柳の間の不義の子が八千代なのだという。

 ところが鉄之進は、八千代と直樹を結婚させようと画策しているらしいし、妹と血縁のないことに薄々気づいている守衛まで、八千代に触手を伸ばし始めているという。

 さらに古神家には、織部の異母弟の四方太(よもた)という男が、四十を超えても定職に就かずに居候している。それに加えて最近、鉄之進は酒乱の気が出てきている。
 直樹に言わせると古神家は "魑魅魍魎の巣窟" だというが、その直樹からして屋敷の離れに愛人を囲っているというから人のことは言えない。

 とにかく、よくまあここまで無茶苦茶な人間の集まりを設定した、というか思いついたものだ。横溝正史のミステリの舞台となる "旧家" はいろいろあるが、異様さという点ではピカイチだろう。

 そして殺人が起こる。最初の犠牲者は首のない死体。身体はせむしだったのだが、小市も守衛も背格好が似ており、二人とも姿を消してしまったため、これだけではどちらの死体か判別できない。そしてさらなる連続殺人が・・・


 本書は、屋代が事件をまとめた「手記」の形で進行していく。前半部では古神家の異様な実態や、連続する殺人の残虐さがこれでもかと強調されて綴られていく。
 金田一耕助の登場が中盤からと遅いのは、横溝がこの前半部をじっくり描きたかったからかも知れない。もちろん彼が登場してからは、もつれた糸が綺麗にほぐされて、真犯人の遠大な計画が明らかになっていく。

 横溝正史の作品の中ではマイナーな部類に入るかも知れないが、登場キャラのぶっ飛び度ではトップクラスだろう。



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嘘があふれた世界で [読書・その他]


嘘があふれた世界で(新潮文庫nex)

嘘があふれた世界で(新潮文庫nex)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2024/02/28

評価:★★☆


 平成生まれの作家6人+杉井光(『世界でいちばん透きとおった物語』作者)による7編を収録した短編集。

* * * * * * * * * *

「かわうそをかぶる」(浅倉秋成)
 カワウソをイメージしたキャラクターを "かぶって" 活動している人気VTuber・天露(あまつゆ)ゆゆ。彼女と交際しているという噂のあった人気音楽クリエイター「うみの」こと野村海斗(のむら・かいと)が刺殺されるという事件が起こった。犯人は22歳のフリーターで、ゆゆの熱狂的なファンだったらしい。
 幼少期から人気VTuberになるまでの屈折した半生が、ゆゆの独白によって綴られていくのだが・・・
 virtual と real の境目があやふやな現代だが、送り手にとってもそのギャップが苦痛になることもあるかもしれない。


「まぶしさと悪意」(大前栗生)
 15秒の動画が投稿、配信できるアプリ・TipShot。私立布川名和手(ぬのかわなわて)高校に入学してきた赤羽海荷(あかばね・うみか)は、TipShotに投稿した動画が一週間で100万回再生を突破し、一躍人気者となった。学校内では彼女に追随するものが続出し、布川名和手高校は「TipShot強豪校」と呼ばれるようになった。
 しかし3年生に進級した海荷は動画投稿を停止してしまう。若手教師・鮎田小恵子(あゆた・さえこ)は海荷からその理由を聞き出そうとするのだが・・・
 ネットの人気者は憧れの対象なのだろうが、身近な人がそれになってしまうと周囲の人間は平穏ではいられなくなってしまう。それもまた人の情。


「霊感インテグレーション」(新名智)
 霊能力者と相談者のマッチング・サービス(おいおい)を提供するアプリ『スピスタ』。しかしこのアプリによって霊能力者・天津琉依子(あまつ・るいこ)が複数のユーザーから誹謗中傷を受け、自殺したという。
 しかしその後、彼女のアカウントからプッシュ通知(ユーザーに対するお知らせ機能)が届くようになった。そこには誹謗中傷に加担した者の氏名や、その者に対する呪詛の言葉が書き連ねてあるらしい。
 主役は『スピスタ』のメンテナンスを請け負ったソフト会社ピーエム・ソリューションズの社員・多々良。若いが複雑な経歴を持つ彼女がこの謎を巡る騒ぎに巻き込まれていく。
 アプリの謎よりも、多々良さんの出自の方がよっぽど謎だったりする。彼女の話をもっと読みたくなったよ。彼女を主役にした連作とか、ないのかな?


「ヤリモク」(結城真一郎)
 40代のイケメンである ”僕” には、大学生の娘・美雪(みゆき)がいる。最近、外泊が多くなり、身の回りに派手で高価な物が増えてきた。ひょっとしたら何か良からぬことを・・・
 娘の素行を心配しながらも、"僕" はマッチングアプリで女を漁っている(おいおい)。今夜も女子短大生を "お持ち帰り" しようとしているのだが・・・
 ラストはいろんな意味で予想外の展開。


「あなたに見合う神様を」(佐原ひかり)
 主人公・亜子(あこ)は、クラスメイトの権藤(ごんどう)さんと親しくなった。彼女はダンス系YouTuberのWataruの大ファンで、それが高じて自分でもダンスの動画をアップし始めていた。
 亜子は、学校の友人関係では同調圧力に晒され、家庭内では父と妹の不和に板挟みになっている。唯一のよりどころだったのが権藤さんだったのだが・・・
 現代の女子高生って、オジサンには想像もできないたいへんな環境で生きているんだ・・・ってのが分かる一編。


「タイムシートを吹かせ」(石田夏穂)
 "私" は過去3年間、会社の給与システムに違法アクセスしてタイムシートを改竄し、残業代を水増ししていた。
 3年前、現場一筋だった「レジェンド」社員が65歳になったのを機に本社勤めとなり、"私" の隣の席となった。彼の長大な自慢話につき合い、セクハラ発言に耐え、IT音痴の彼がPCを扱うときはほとんどつきっきりで世話する "介護" 状態。その腹いせからタイムシートをイジるようになったのだが・・・
 作中の「レジェンド」はかなりデフォルメされてるが、程度の差はあれ、彼のような人物はどこにもいるだろう。退職直前の私もそうだったのかもなぁとちょっと反省。


「君がため春の野に」(杉井光)
 長編『世界でいちばん透きとおった物語』のスピンオフというか後日談。ストーリー的には独立しているけど、もちろん『世界で-』を読んでいた方が、より楽しめるだろう。
 父親の死をきっかけに巻き込まれた騒ぎを小説化し、作家デビューしてしまった "僕"。作家としての未来がかかった2作目だが、編集者の深町霧子さんの指導のもと、無事にアンソロジー用の新作短編を脱稿した。
 そのアンソロジーの選者から食事会に誘われた "僕" は、そこで奇妙な話を聞く。ミステリ好きで有名な人気アナウンサー・薗田芹香(そのだ・せりか)は、夫でベテラン推理作家だった橋爪錬太郎(はしづめ・れんたろう)を亡くした。
 しかし夫のSNSアカウントはまだ動いていて、未だに "つぶやき続けている" のだ。それも、いかにも "夫がつぶやきそうな内容" なのだという。アカウントのパスワードが分からないため、芹香の手で止めることもできない。
 "僕" をはじめ、会の参加者たちであれこれ推理を巡らすが決定打は出ない。しかしそれを聞いた霧子さんは・・・
 『世界に-』を読んで "僕" の行く末を心配した人(私もだ)は、本作を読んでちょっぴり安心するだろう。



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『ヤマトよ永遠に REBEL3199 第一章 黒の侵略』特報第二弾 [アニメーション]


 去る4月18日、公式サイトに特報第二弾が公開されました。


これを見て、つらつら考えたことを書いてみると

○宇宙の彼方から迫り来る謎の巨大物体。
・これが「グランドリバース」なるモノでしょう。
 旧作では「重核子爆弾」だったよね。

○何かの残骸の間を抜けて進む謎の巨大物体。
・残骸が緑色に見えるところから、第11番惑星付近の
 ガトランティス艦隊の残骸かな。地球艦隊のものかも知れんが。

○女性の瞳のアップ
・真田の姿が映っていることから、たぶんサーシャ。

[台詞]早紀「何かが地球に迫りつつある。とてつもない何かが」

○土門、南部のアップ

○攻撃する地球艦隊。しかし効果は無い模様。
・アスカか、その同型艦かと思われる。

[台詞]「拡散波動砲が効かないなんて」
・いやあ、ゴルバにデスラー砲(≒収束波動砲)が効かなかったんだから、
 拡散波動砲が効果がないのもむべなるかな。

○何かのコンソールを前にした島。
[台詞]島「最初からバグが仕掛けられていた?」
・これが今回いちばん謎の台詞。

○地球に降下していく巨大物体。
・こういうふうに機体が展開するんですねぇ。 

○巨大物体に向かう地球艦隊。指揮艦は北野兄?

[台詞]古代「予備役となったヤマトは一線から外され、クルーもバラバラに」
[台詞]早紀「でも、それには意味があった」
・来るべきデザリアムの地球侵攻に備えての布石・・・だよねぇ・

○攻撃するデザリアム艦。被弾する地球艦隊

○腕立て伏せ?してるキャロライン、森雪

○艦首を回す銀河。
・艦首の「銀河」の文字は「GINGA BBY-03」へと変更
 漢字は不評だったみたいだからか(笑)。

○都市部上空の巨大物体、見上げる人々の中には加藤真琴さんと翼くん。
・真琴さん、アホ毛が復活した?

[台詞]アナライザー「集結せよ、集結せよ」
・おお、アナライザーも復活ですね

○防衛軍本部? 藤堂、芹沢、森雪、星名とその嫁さん、

○古代のアップ、そして太陽、タイトル
・この太陽、ぱっと見で普通じゃなく感じるのは気のせい?

○最後は、いずこかにいるヤマト。
・小惑星イカルスでしょうか?

[台詞]アナライザー「ヤマト艦隊クルーは集結せよ」


 全体的に、旧作『ヤマトよ永遠に』の流れを汲んでいるみたいですけど、わずか30秒ばかりではなんとも言えませんね。何らかの新要素、新展開を入れてくることは間違いないところ。期待しましょう。


 今更ですが、3月24日にも公式サイトが更新され、「CHARACTERS」「MECHANIC」に情報が追加されてますので、こちらについてもちょっと書いてみる。


「CHARACTERS」

■新キャラ

○北野誠也
 北野哲の兄さん。2199年には負傷していて「ヤマト計画」へ参加できず、いまは防大の教官。
 CVは鳥海浩輔さん。「シドニアの騎士」の弦打攻市とか「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」の名瀬・タービン役を演じてた人だね。

○揚羽武
 飛行科トップの天才ながら、防大を中退して姿を消す。なんか行方不明者多くないですか「3199」(笑)。
 CVは上村祐翔さん。「ダーリン・イン・ザ・フランキス」の主役・ヒロを演じた人ですね。実はそれくらいしか知らない(おいおい)。

○アルフォン
 「3199」でも一、二を争う重要キャラでしょう。旧作での野沢那智さんの美声は忘れられない。
 リメイク版でのCVは古川慎さん。「機動戦士ガンダム 水星の魔女」のシャディクを演じた人ですね。こっちも女たらしキャラだったからぴったり?

○イジドール
 オリジナルキャラ。CVは堀江瞬さん。うーん、人気声優なんでしょうけど、残念ながらこの人の出演作品は一本も見てないなぁ。ごめんなさい。

○ランベル
 オリジナルキャラ。なんとあの戦艦グロデーズの艦長さん。デザリアム軍のキャラが増えてるということは、彼らの側のドラマもけっこう描かれるということでしょう。
 CVは江口拓也さん。この人はNetflixアニメ「ULTRAMAN」の諸星弾で知ったけど、何といっても「SPY×FAMILY」のロイド役で有名でしょう。


■未発表

 肝心の二人、サーシャスカルダートがまだ未発表ですね。

 旧作でのサーシャ役の潘恵子さんは「2205」に出てたけど、あれはファンサービスだったのでしょう。
 今作でのサーシャ役は誰になるのかな。潘めぐみさんか井上ほの花さんだったら話題にはなるんだろうけど、さて。

 旧作のスカルダートは大平透さん。『マグマ大使』のゴア、『科学忍者隊ガッチャマン』の南部博士とかが思い浮かぶなぁ。トシが分かってしまうが(笑)。
 『スター・ウォーズ』でのダース・ベイダーの吹き替えもやってたよねぇ。かと思えば『ハクション大魔王』とか、シリアスもギャグも硬軟両面を自由自在に演じ分けるスゴい声優さんだった。
 平成の終わりあたりから、昭和の時代から活躍していた重鎮クラスの声優さんの訃報が相次いで淋しい限り。さて、令和のスカルダートを演じるのは誰だ。


「MECHANIC」

○ヤマト
 ”予備役艦隊に編入され、その後、各種テストに用いられる予定だった。
しかし……” 旧作では小惑星イカルス内に隠匿されてましたが、さて。

○アスカ・ヒュウガ
 同型艦が作られているというのは想定内ではあるけど、問題は「3199」でのヤマトが単独行動をするのか、あるいは僚艦と共に艦隊行動をするのか、ですね。
 まあ、今作のヤマトがどこへ向かうのかにもよるかな。旧作みたいに40万光年の彼方にある二重銀河まで行っちゃうのかしら。

○アルフェラッツ
 初期アンドロメダ級の21番艦だとか。ガトランティス戦役を生き残った艦は少ないので大事にするのでしょう。
 でも、太陽系内にはガトランティスの戦闘艦がけっこう残っていそうな気もするけどね。11番惑星付近にはカラクルム級が腐るほど(笑)浮遊してそうだし。その辺を鹵獲して改装、ってわけにはいかないのかな。まあ異星文明の船だからそう簡単ではなさそうな気はするが。

○5式空間機動甲冑
 空間騎兵隊とデザリアム上陸部隊の戦闘は「3199」序盤の見せ場になりそう。

○無人艦隊コマンド艦 グラディエーター / 無人艦隊迎撃艦 エイジャックス
 ガトランティス戦役で人材が枯渇した地球防衛軍の苦肉の策なのか、将来へ向けた既定の路線なのか。
 旧作に出てきた無人艦隊は、暗黒星団帝国軍に秒殺されましたからねぇ。今回はもう少し意地を見せてほしいところ。


 さて、第一章公開まであと三ヶ月。これからもちょこちょこ情報が出てくるのでしょう。
 とにかく今シリーズは、145分映画を26本のTVシリーズにするんだから、時間だけでも(1回23分として)598分。単純計算でも4倍以上の尺があるので、いくらでも膨らませられそう。
 どんな「ヤマトよ永遠に」を見せてくれるのか、期待してます。



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オーパーツ 死を招く秘宝 [読書・ミステリ]


オーパーツ 死を招く至宝 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

オーパーツ 死を招く至宝 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 蒼井 碧
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2019/01/10
  • メディア: 文庫

評価:★★☆


 大学生・鳳水月(おおとり・すいげつ)の前に現れた男・古城深夜(こじょう・しんや)は、なぜか鳳と瓜二つの風貌をしていた。
 自らを "オーパーツ鑑定士" と名乗る古城は、鳳と共にオーパーツがらみの事件に関わっていく。
 第16回(2017年)『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。

* * * * * * * * * *

 日本最高峰のS大学法学部の学生・鳳水月は、なぜか自分と瓜二つの風貌を持つ男・古城深夜と出会う。彼は鳳の同級生であり、なおかつ自らを "オーパーツ鑑定士" と名乗った。

 オーパーツ(OOPARTS)とは、Out Of Place ARTificalS の略で、「古代に製作されたものでありながら、当時の技術や知識では実現することが不可能だった工芸品」のこと。
 例えばペルー南部にあるナスカの地上絵とか、イースター島の巨大な人面石像とかを指す。オカルト系の雑誌などで "超古代文明が産みだした物" とか "宇宙人の遺物" とか言われているアレ、といえば想像はつくだろう。

 大学にはろくに顔を出しもせずに鑑定の仕事に走り回っている古城に巻き込まれる形で、鳳も怪事件に関わることになっていく。


「第一章 十三髑髏の謎」
 有名なオーパーツのひとつでである ”水晶髑髏”。
 文字通り水晶を切り出して造られた "水晶髑髏" は全部で13個ある。古代の叡智が宿った水晶髑髏を13個すべて集めたとき、"真の地球の歴史と超古代文明の全貌" が明らかになる、という伝説があるらしい。
 財前龍之介(ざいぜん・りゅうのすけ)博士は、すべての水晶髑髏を集めることに成功したという。その真贋を鑑定するために、古城と鳳は長野県の北部にある博士の別荘へやってきた。
 しかしその財前博士が密室の中で殺されてしまう。しかも遺体の周囲の床の上には、13個の水晶髑髏が円形に配置されていた・・・
 密室トリックは面白いけど、そんなに上手く○○○ものなのかなぁ。


「第二章 浮遊」
 "黄金シャトル" とは、南米でインカ帝国が栄える前の『プレ・インカ』と呼ばれる時代に作られた黄金製の工芸品で、ほとんどは鳥や魚をかたどったものと思われているが、その中のいくつかはジェット機やスペース・シャトルにそっくりの形状をしている。しかも、航空力学的にも問題ない形をしているという。
 考古学者・相馬公博(そうま・きみひろ)とその妻ミランダが自宅で殺された。さらに、博士たちが発掘してきた "黄金シャトル" も盗まれていた。
 現場は施錠された部屋で、二つある部屋の鍵は、遺体が着ていた服から見つかっていた。しかも犯行時刻と思われる時間帯に、現場周辺ではUFOの目撃証言まで出てきた・・・
 こちらの密室は、UFOとの合わせ技で一本と言うところか。
 本作で登場してくるのが古城深夜の姉・古城まひる。職業はなんと警視庁捜査一課の警部補。弟と鳳を取り違えてしまうギャグシーンがあるのだが、この二人はそんなに似ているのか?


「第三章 恐竜に狙われた男」
 鳳は、突然警察に捕まって留置場に入れられてしまう。
 北海道三笠市郊外の別荘で、古生物学者・榊原玄司(さかきばら・げんじ)が殺された。防犯カメラの映像から、出入りした人間はひとりだけ。それが鳳にそっくり(つまり古城深夜)だったことから、彼に疑が掛けられたのだった・・・
 今回のオーパーツは恐竜土偶。遙か昔に絶滅した恐竜を象った土偶を人間が造っていた、というもの。熱狂的な恐竜オタクである古城まひるさんが、延々と蘊蓄を語るシーンがあるのだが、あまり本編に関係しないような気も。
 今回の、人目につかずに現場に出入りするトリックはバカミスに近いだろう。


「最終章 ストーンヘンジの双子」
 ストーンヘンジのような巨石遺跡を再現した『巨石庭園』。私有地のため外部の人間は入れないが、近く園内の鑑賞会が開かれるという。ただし、"双子であること" が参加条件だ。これは所有者の筒井川(つついがわ)亮介・亮平(りょうすけ・りょうへい)兄弟が双子であるかららしい。
 そこで古城と鳳は双子を装って『巨石庭園』にやってくるが、敷地内に建つ本館に見学者一行が宿泊した夜、別館が火災になり、本館では筒井川亮介の死体が発見される・・・
 巨大な○○○○○○○○○ともいうべきトリックには、島田荘司もビックリだろう。


「エピローグ」
 連作短編において、最後に来るとすべての話がつながって一つの大きな絵が見えてくる、という展開はよくある。本書でも・・・といいたいところなんだがよくわからない。
 つなげるならちゃんとつなげてほしいし、つながらないなら変に匂わせたりせずに、別個の話として独立させたままにしておいたほうがいいんじゃないかな。ちょっと中途半端な気がする。
 あと、鳳と古城が他人の空似を超えて瓜二つなところにも、てっきり ”裏がある” って思ってたんだが、どうやらそうでもないような。
 もっともこれは、(あるとすれば)続巻に持ち越しなのかも知れないけど。



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推理大戦 [読書・ミステリ]


推理大戦 (講談社文庫)

推理大戦 (講談社文庫)

  • 作者: 似鳥鶏
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2023/11/15

評価:★★★★


 日本の大富豪が発見したキリスト教の「聖遺物」。その獲得を目指し、世界各地から名探偵がやってくる。
 舞台は北海道。実施されるのは "競技としての推理"。
 しかし開幕早々、本物の死体が現れる。これもゲームの一環なのか、それとも想定外の "事件" なのか・・・

* * * * * * * * * *

 大富豪・救仁郷進(くにさと・すすむ)が見つけたのはキリスト教の「聖遺物」。天正少年使節団(1582年にヨーロッパへ向けて送り出された)が持ち帰り、のちに海路で函館へ渡ったものだという。
 ところが、かつて江戸川乱歩とも面識があり、ミステリマニアでもあった彼はその所有権を賭けて「推理ゲーム」を行うことを決める。
 それを知った各国のカトリック・正教会組織から選りすぐりの「名探偵たち」がやってくることに。

 本書の前半には4つの短編が置かれ、名探偵たちが紹介される。それぞれが難事件を解決し、それによって "代表" に選ばれていく。
 この4編もそれぞれ凝ったミステリで、それぞれの名探偵のキャラというか特徴を充分に活かした作品になっている。

 アメリカからは、「AI探偵」ユダとその助手(開発者でもある)・シャーロット。キャッチフレーズは "無限の情報量と超高速の演算能力"。

 ウクライナからは、「クロックアップ探偵」ボグダン。
 クロックアップとは、自分の思考能力を加速させる能力のこと。この能力を発動すると、相対的に周囲の時間の流れがスローモーションのように見える。サイボーグ009みたいだね。キャッチフレーズは "無限の思考時間と無制限の現場検証能力"。

 日本からは「五感探偵」高崎満里愛(たかさき・まりあ)。
 嗅覚をはじめ常人離れした五感を備え、現場に立つと犯人の残したあらゆる情報を感知できる。キャッチフレーズは "完全無欠の情報収集能力と犯行状況の再現能力"。

 ブラジルからは「霊視探偵」マチウス。嘘を100%見抜く「魔眼」をもつ。
 もちろんオカルトではなく、彼の持つ卓越した観察眼と推理能力がそれをもたらしている。

 この4人(4組)、能力もずば抜けているが、シリーズものの主役が務まるくらいそれぞれのキャラも十分すぎるくらい立っている。


 そして後半では舞台を北海道に移し、聖遺物争奪の推理ゲームが始まる。

 本編の語り手は、救仁郷進の孫の弘瀬廻(ひろせ・めぐる)。推理ゲームのために各国からやってくる探偵たちの世話役を、従兄弟の弘瀬大和(やまと)とともに務めることになっている。
 この大和くん、廻の目から見ても充分に名探偵の素質を持っているのだが、主催者側の人間ゆえにホスト役に徹している。ただまあ多くの読者が予想するだろうけど、終盤に至ると彼も推理合戦に加わってくる。


 会場は北海道上川郡筆尻村の山奥にある「レラカムイ筆尻」。コテージが数軒と本館からなるリゾートで、オーナーはもちろん救仁郷だ。
 折しも季節は冬。辺り一面は銀世界だ。

 本書の前半で紹介された名探偵たち4組、さらにシスター・リンという修道女を加えた5組がこのゲームの参加者となる。
 シスター・リンについては前半での紹介がなかったのだが、その理由も後半の中で明かされる。

 ゲーム参加者が揃ったのも束の間、早々と事件が起こる。
 ホスト役の一人で弁護士の山川が、コテージの一つで死体で発見される。人里離れた場所ゆえ、犯人は一行の中にいるはずだ。

 かくして名探偵たちの推理合戦が始まる。
 推理の結果、犯人に辿り着いた者から告発が始まるのだが、犯人と名指しされた側も名探偵。周囲にいるのも名探偵。
 それゆえに、出てくる推理は反論反証の集中砲火を浴び、次々に消えていく。はたして真犯人は・・・


 作者の持ち味のユーモアも大盛りだ。やたらおしゃべりで下世話なジョークを連発するAI探偵とか、北海道出身なのになぜかコテコテの関西弁でマシンガントークをかます満里愛さんとか、もう面白すぎである。ぜひ、独立した作品で主役を務めてほしいものだ。


 多重推理・多重解決ものは多いけど、登場人物のほとんどが名探偵というのは類例が少ないだろう。犯人指摘の論理もなかなか高レベルで、どれが真相でもそれなりに説得力がある。読んでるほうは感心してればいいが、書く方はたいへんだったろうなぁと思う。

 最終的に提示される真相は好みが分かれるかな。私はあまり好きになれないけど、そこに至るまでの積み重ね(前半の4短編、後半の多重解決)のレベルがものすごく高いので、許せる気分になってしまう(笑)。



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八万遠 [読書・ファンタジー]


八万遠 (新潮文庫nex)

八万遠 (新潮文庫nex)

  • 作者: 田牧 大和
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2017/12/23
  • メディア: 文庫

評価:★★☆


 創世神『天神』(てんしん)の子孫、上王(しょうおう)が統べる地、八万遠(やまと)。そこには自治を許された『直轄七州』があった。
 そのひとつ、雪州(せっしゅう)の嫡男・源一郎(げんいちろう)と墨州(ぼくしゅう)の長男・甲之介(こうのすけ)が出会ったときから、八万遠の地に戦乱が巻き起こる・・・
 異世界・八万遠を舞台に展開するファンタジー。

* * * * * * * * * *

 八万遠は、日本列島に似ていなくもない島国だ(かなりデフォルメされているが、モデルが日本というのはわかる)。

 太古の昔、創世神『天神』(てんしん)を信仰する一族が全土を統一、"上王" を名乗った。
 さらに北から順に氷州・墨州・雪州・陽州・炎州・藍州・碧州の七州を置き、ここの領主には自治を許した。『直轄七州』である。
 炎州の南には国内最大の湖・神湖があり、その南に上王の治める天領がある。

 ちなみに日本地図に無理矢理当てはめると、天領はおおむね紀伊半島全域、墨州は新潟あたり、雪州は関東あたりという位置関係になる。

 物語は、雪州の嫡男・源一郎の前に墨州の長男・甲之介
が現れたことから始まる。

 場所は炎州。源一郎は、故郷を離れて炎州に預けられていた。これには理由があった。
 八万遠は全土が天神信仰で統一されているはずなのだが、雪州だけはいささか事情が異なる。
 もちろん対外的には天神信仰を表明しているが、そこに暮らす者たちは、領内にそびえる美しき山・朔山(さくざん:モデルは富士山と思われる)に深い畏敬の念を示す「朔山信仰」が深く根付いていたのだ。このため、上王に対しての密かな叛意を疑う者は多かった。
 それがために雪州の世継ぎである源一郎は、他意なきことを示すため、天領近くの炎州に、いわば人質として預けられていたのだ。

 源一郎を訪ねてきた甲之介は墨州領主の長男だ。豪放磊落な言動を示し「俺が墨州を継いだら、戦を仕掛けて炎州を獲る」と豪語する。「だから俺の味方になれ」
 源一郎は好感を抱いたものの、同時に危うさをも感じるのだった。
 ときに源一郎・16歳、甲之介・18歳。

 やがて二人は対照的な道を辿っていく。

 甲之介の父は、次男・良之丞(りょうのじょう)を溺愛し、家督を継がせる構えを見せていた。甲之介は先手を打って弟を殺害し、父を幽閉して墨州の掌握に成功する。

 一方、父の病死によって帰国を許され、家督を継いだ源一郎は、幼馴染みで一歳年上の珠(たま)を正室に迎え、嫡子・徳之進(とくのしん)を儲ける。領民に対しても善政を敷き、雪州は平穏な時を過ごしていた。

 そして再び源一郎の前に現れた甲之介は、いよいよ領外進出を宣言、炎州攻略戦を開始する・・・


 物語は墨州vs炎州の戦いをメインに、雪州の模様が織り込まれていく。

 二人のメインキャラ以外のサブキャラがユニーク、かつ重要な役回りを担っている。

 まず東海林市松(しょうじ・いちまつ)。甲之介の懐刀で、彼の意を具現化していくためなら何でもやる。炎州攻略戦においても、実質的な前線指揮官を務める。

 源一郎の正室・珠。さして美人でもなく、小柄で華奢、受け答えも物静か。しかし源一郎はそんな彼女をことのほか大事にしている。夫婦仲も睦まじい。
 実は彼女は、朔山の "神" とは特別なつながりを持つ、いわゆる巫女のような存在で、"神意" を感じ取ることのできる唯一無二の存在なのだ。
 しかし、彼女の存在そのものが上王への忠誠を疑わせる要因となっていく。

 墨州と炎州の戦いをよそに中立を保とうとする雪州だが、世の情勢はそれを許さない。源一郎も巨大な戦乱の渦に飲み込まれていく・・・というところで幕。


 星の数が今ひとつ少ないのは、物語が完結していないから。これはどう考えても続巻があるはずだ。なにより、源一郎がほとんど動いてないんだから。
 この先、おそらく源一郎率いる雪州が立ち上がり、八万遠を二分する戦いに割って入っていくのだろう。ただ、そのとき雪州がどちらを敵に設定して闘うのかはまだ分からない(ひょっとして三つ巴の戦いになる可能性もある)。
 どう転ぶにしろ、遅かれ早かれ、いつかは甲之介と源一郎は雌雄を決するべく激突することになるだろう。本書の惹句にも「王は、二人いらない」とあるのだから。

 とはいっても、本書の初刊は2015年頃なので、もう10年近い昔。いままで続巻が出てないってことは、作者には書く気がないのか、それとも本書が全く売れなかったのか(笑)。
 だけど私は、とっても続きが読みたいぞ。何とかしてくれ(おいおい)。



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invert 城塚翡翠倒叙集 [読書・ミステリ]


invert 城塚翡翠倒叙集 (講談社文庫)

invert 城塚翡翠倒叙集 (講談社文庫)

  • 作者: 相沢沙呼
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2023/11/15

評価:★★★★


 『medium 神霊探偵城塚翡翠』は発売当時、各種ミステリランキングを総ナメにした話題作。その続編である本書は倒叙推理小説となった。
 城塚翡翠(じょうづか・ひすい)は相棒の千和崎真(ちわざき・まこと)と共に、完全犯罪を目論む犯人たちと対決する。

* * * * * * * * * *

 本書は中編3作を収録。

「雲上の晴れ間」
 ITベンチャー企業ジェムレイノルズ。そこで働くシステムエンジニア・狛木繁人(こまき・しげひと)は、社長の吉田直正(よしだ・なおまさ)を殺害した。
 二人は幼馴染みであったが、中学時代の "事故" によって狛木は吉田に対して負い目を感じるようになり、それ以後、長年にわたって吉田に顎で使われる身となってしまった。その間に積もり積もってきたものが爆発したのだ。
 その数日後、狛木のマンションの隣室に引っ越してきた美女は城塚翡翠と名乗り、自分には霊感があるのだと言い出す。不思議な魅力を持つ彼女に、次第に惹かれていく狛木だったが・・・


「泡沫の審判」
 元校務員の田草明夫(たぐさ・あきお)は盗撮常習犯だった。児童や教職員を盗撮した映像を売ったり、脅迫の材料にしていた。
 被害者のひとりだった小学校教師・末崎絵里(すえざき・えり)は、田草に協力する振りをして自分の勤務校に呼び出し、殺害してしまう。
 事件の数日後、絵里の学校に新たなスクールカウンセラーが着任する。白井奈々子(しらい・ななこ:正体はもちろん翡翠)と名乗るカウンセラーに、胡散臭いものを感じる絵里だったが・・・


「信用ならない目撃者」
 元刑事で探偵会社の社長・雲野泰典(うんの・やすのり)は、仕事上知り得た秘密を使って、不正行為を行っていた。その証拠を握る部下・曽根本(そねもと)を銃で殺害するが、現場となった部屋の窓から50mほど先の雑居ビルに人影を見つける。目撃されたかも知れない。
 数日後、雲野の探偵社に警察がやってくる。その中にひとり、若い女がいた。彼女は城塚翡翠と名乗り、捜査に協力しているという。
 警察から「顔は分からなかったが、拳銃を持った男を見た」という目撃証言があると聞いた雲野は、雑居ビルを訪ねて目撃者と接触する。それは涼見梓(すずみ・あずさ)という30代の独身女性だった。
 後半は、涼見を挟んでの雲野と翡翠の駆け引きが描かれる。
「拳銃を持っていたのは雲野だった」という証言を引き出したい翡翠、色仕掛けで涼見に迫り、証言をねじ曲げようとする雲野。最悪の場合には彼女を殺害することさえも海野は考えはじめる。
 元刑事ゆえに警察の動きを完璧に読んでいる雲野に常に先手を取られ、さすがの翡翠も苦戦を強いられるのだが・・・


 探偵役の翡翠が魅力的なのはもちろんなのだが、倒叙ものでは犯人もまた印象的だ。

「雲上の-」での狛木は、吉田のために常に日陰の人生を歩むことを強いられてきた。吉田を殺すことで開放感にひたり、さらに目の前に美女が現れるという、まさに「この世の春」状態。まあ、結末は哀しいのだが、彼に同情する人は多かろう(私もそうだ)。

「泡沫の-」での絵里は小学校教師。近年、SNSの発達のおかげか小中学校教員の労働環境のブラックぶりがすっかり世間に広まり、おかげで教員採用試験の倍率は下がる一方だ。
 絵里は自分の母親も小学校の教員で、ブラックぶりが分かっているのにあえて教師になったという、ある意味筋金入りの教師。作中でも多忙ぶりが描かれていて、そのたいへんさが伝わってくる。
 それに加えて、子どもたちへの愛情もひとしお。だからこそ盗撮という行為が許せない。殺人という方法は間違っていたが、彼女の思いに一定の理解を示す人はいるだろう。

「信用ならない-」の雲野は、本書の中ではいちばん冷酷非情なのだが、そんな彼にも意外な面がある。彼が不正行為に手を染めた原因のひとつが愛妻に先立たれたことだ。
 目撃者となった涼見に会った雲野は、彼女に亡き妻の面影を見いだす。犯罪隠蔽のために接近し、場合によっては彼女を排除(殺害)する必要性を考えながらも、同時に彼女と共に生きる未来をも夢想し始めるという、人間くさい一面を見せたりする。まあ当然ながらそんな未来は実現しないのだが。


 本書の特徴は「読者への挑戦」があること。どの犯人も逮捕につながる物証を残していない、あるいは見つけられていない。だから翡翠に追求されても、のらりくらりと逃げ回ってしまう。
 しかし、終盤になると彼女はついに "チェックメイト" が宣言できる証拠に辿り着く。「そこに至るまでの彼女の推理」の中身を当ててみよ、というわけだ。
 もちろん私は見当もつきませんでしたが・・・(笑)。


「雲上の-」「泡沫の-」はどちらも文庫で約140ページの中編。
「信用ならない-」に至ってはおよそ240ページと、ほぼ長編といってもいいボリューム。読み応えもミステリとしてのインパクトも抜群だ。



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円 劉慈欣短編集 [読書・SF]


円 劉慈欣短篇集 (ハヤカワ文庫SF)

円 劉慈欣短篇集 (ハヤカワ文庫SF)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2023/03/07

評価:★★★★


 長編SF『三体』で話題になった中国人SF作家・劉慈欣(りゅう・じきん)の、日本オリジナル短編集。作品選択は著者本人によるものだそうです。

* * * * * * * * * *


「鯨歌」
 検出技術の進歩で、麻薬の密輸ができなくなったワーナーおじさん。しかし息子が連れてきた男が、脳に電極を埋め込んで制御できるシロナガスクジラを使って麻薬を運ぶ方法を提案するが・・・
 ラストの展開は「なるほど」というべきか「やっぱり」というべきか。


「地火(じか)」
 炭鉱労働者だった父を亡くした劉欣(リウ・シン)は、地下の石炭をその場でガス化して地上に取り出すという新技術を、周囲の猛反対を押し切って導入するのだが・・・
 いつの時代も、技術の進歩は試行錯誤の連続なのだが、この話は哀しいなあ。


「郷村教師」
 私財をなげうち、辺境の村の子どもたちの教育に人生を捧げた男。しかし彼の寿命は尽きようとしていた。
 一方、遙か宇宙の彼方では炭素生命とケイ素生命の間で二万年も続いた星間戦争が終わろうとしていた。
 二つの物語を交互に語りながら、最後はひとつにつながっていく。なかなかの力業。


「繊維」
 "繊維" とは、この作品でいうところの「並行世界」のこと。F-18のパイロットだった "ぼく" は、飛行中に "繊維乗り換えステーション" に迷い込み、他のさまざまな "繊維" から来た人々と出会うが・・・
 ユーモア溢れるSF法螺話。


「メッセンジャー」
 田舎町ブリンストンに暮らす老人が、二階で毎夜、趣味のバイオリンを演奏している。あるときから、窓の下に青年が現れ、演奏を聴くようになるが・・・
 老人の正体は早々に見当がつく人が多いだろう。青年が老人に伝えようと携えてきたメッセージだが、発表時の2001年ならともかく、現在ではどうだろう。


「カオスの蝶」
 北京で蝶が羽ばたくとニューヨークで嵐が・・・で有名な "バタフライ効果" がテーマ。
 主人公は気象学者と思しきセルビア人アレクサンドル。彼は秘密裏にロシアのスパコンを利用してある計算をさせる。
 それは彼の妻子が住むベオグラードをNATOに空爆させないため、常にその上空を厚い雲で覆っておくには、世界のどこでどんな変化を起こせばいいかを計算させていたのだ。
 その結果を基に、世界中を駆けずり回るアレクサンドル。しかし彼の娘カーチャは難病を抱えていて・・・
 感動的な話なんだが、それゆえにこのラストが哀しすぎる。


「詩雲」
 異星人国家〈呑食帝国〉に侵略され、家畜化されてしまった人類。しかしその〈呑食帝国〉が "神" と崇める上位種族の異星人が現れる。
 その "神" が漢詩の存在を知り、その魅力に取り憑かれてしまう・・・
 なんとも壮大な法螺話なんだが、ここまで徹底してしまえるのは素直にスゴいと思う。
 ちなみに本作の前日譚(〈呑食帝国〉と地球人の戦い)は『呑食者』というタイトルで短編集『流浪地球』に収められている。


「栄光と夢」
 かつてスポーツが栄えていたシーア共和国。しかし17年前の戦争とその後の経済制裁で凋落の一途を辿る。
 そんなとき、シーア国内で細々と活動していたスポーツ選手たちが集められ、強制的に北京へ連れてこられた。そこでは第29回オリンピックが開かれるのだが、開催者はIOCではなく、国連だった・・・
 このテーマ(アイデア)の作品は過去にもあるが、現代的な状況で使われるのは珍しいだろう。


「円円(ユエンユエン)のシャボン玉」
 生後5ヶ月目にはじめてシャボン玉を目にした円円。その魅力に取り憑かれた彼女は、その思いを持ったまま成長していく。やがて非凡な能力を見せ始めた彼女はさらにシャボン玉にのめり込み、大学ではナノテクノロジーを専攻。彼女が開発した新技術で起業した会社は数年で奇跡的な成長を遂げるが・・・
 娘の天才ぶりに驚きつつ同時に心配もしながら成長を見守ってきた父親。そんな親子の "ちょっといい話"。


「二〇一八年四月一日」
 主人公の "ぼく" は、改延(遺伝子改造生命延長技術)を受けようかどうか迷っている。その処置を受ければ、寿命を300歳まで延ばすことができる。
 その費用はあまりにも高額で、一部の富裕層にしか手が出ないが、"ぼく" は会社の金を横領して資金を都合する目処がついていた。
 では何故迷うかというと、恋人の簡簡(ジェンジェン)の存在だ。改延をやめて彼女と共に生きるか、別れて長寿を手に入れるか・・・
 技術の進歩は格差を埋めるどころか、さらに広げていく・・・てのはこの作品に限らず、現実世界でもありそうだが。


「月の光」
 ある夜、主人公の携帯電話に掛けてきた声の主は "未来の自分" だと名乗る。その未来では、地球温暖化のために上海が海に沈んでいるという。
 画期的な新技術を送るから、それを今から普及させろ。そうすれば温暖化が防げる。主人公のもとには、新技術の内容を示すファイルが十数本届いていた。
 未来を救う決意をした主人公だったが、そこに再び携帯電話で "未来の自分" が連絡してきた・・・
 過去に干渉しようとする歴史改編SFなのだが、このパターンの話、どこかで読んだような気もする。それくらい、時間SFとしてはある意味 "王道" のつくりなのだろう。


「人生」
 大脳の未使用領域には、実は前世代(母親)の記憶が保存されていたことが明らかにになった。それを利用して、胎児の脳と会話する技術が開発された。要するに、胎児と普通の会話が交わせるということだ。その結果、胎児に起こったことは・・・
 これは皮肉が効きすぎていて可哀想。


「円」
 秦の始皇帝に仕える学者・荊軻(けいか)が、円周率を計算する話。
 計算機の無い時代。荊軻は300万人の兵士を使って、人力の計算機を実現する。要するに人間ひとりに1ビットを担当させ、”人間コンピュータ” を形成させるのだが・・・
 同様の発想の作品は複数存在するけど(『アリスマ王の愛した魔物』[小川一水]など)、さすが中国、スケールが半端ない。
 ちなみに本作は長編『三体』中のエピソードのひとつを改作したものだとか。


 中国製のSFというのを初めて読んだけど、意外に違和感がなかった。むしろ懐かしさみたいなものを感じた。
 日本の1970年代あたり、小松左京をはじめとするSF第一世代の作家たちが書いていた、スケールが大きくて「いかにもSF」な話が溢れていた頃の雰囲気をちょっぴり思い出したよ。

 かと言って、劉慈欣の小説が古くさいわけではもちろんなく、現代的なアイデアや世界情勢に合わせてアップデートされている。
 さらに、途轍もない発想の雄大さには甲を脱がざるを得ない。それはやはり大陸で生まれ育ったせいなのか? 国が広いと発想もそうなるのだろうか。



タグ:SF
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探偵少女アリサの事件簿 さらば南武線 [読書・ミステリ]


探偵少女アリサの事件簿 さらば南武線 (幻冬舎文庫 ひ 21-3)

探偵少女アリサの事件簿 さらば南武線 (幻冬舎文庫 ひ 21-3)

  • 作者: 東川 篤哉
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2023/11/09
  • メディア: 文庫

評価:★★★


 名探偵一家の娘、綾羅木有紗(あやらぎ・ありさ)。10歳にして探偵を名乗る。エプロンドレスに身を包み、なんでも屋の橘良太(たちばな・りょうた)を従えて、難事件解決に奔走する。
 シリーズ3作目にして最終巻。

* * * * * * * * * *

 溝の口に住む名探偵・綾羅木孝三郎(こうざぶろう)は事件を追って日本中を飛び回っている。その間、一人娘・有紗のお守り役を仰せつかるのが、なんでも屋の橘良太。
 父親不在の時に起こった事件を有紗&良太のコンビが解決していくシリーズ、第3巻。
 ちなみに有紗の母・綾羅木慶子は世界的名探偵。いつも世界中をまたにかけて走り回っているので、本編には一度も顔を出してない(笑)。


「第一話 便利屋、クリスマスに慌てる」
 クリスマスを過ごすために北関東の山中にある別荘に来た孝三郎と有紗、そして良太。
 孝三郎の代理として、別荘地の滞在客・高田浩輔(たかだ・こうすけ)と共に、高名なミステリ作家・鶴見一彦(つるみ・かずひこ)の別荘を訪問した良太。しかし玄関をノックしても反応がない。リビングの窓から中を覗いた二人は、鶴見が死んでいるのを発見する。現場は内部から施錠された密室状態だったことから、自殺と思われたのだが・・・
 孝三郎が本シリーズで初めて推理を披露するシーンがあるのだが、真相に至るのは有紗。犯人が弄したトリックの一部には、ちょっと無理っぽいものもあるのだが、まあご愛敬の範囲に収まるかな。


「第二話 名探偵、金庫破りの謎に挑む」
 資産家・芝山有三(しばやま・ゆうぞう)が殺された。現場にあった金庫が開けられ、芝山家に代々伝わる年代物の掛け軸が盗まれていた。
 容疑を掛けられた有三の娘婿・下村洋輔(しもむら・ようすけ)は、無実を証明してもらおうと孝三郎のもとへやってくるが、他の事件で出かけていて入れ違いに。
 代わりに下村の依頼を受けた有紗は、良太と下村とともに、以前から掛け軸を欲しがっていたという古物商・正木照彦(まさき・てるひこ)の店を訪れる。するとそこには盗まれた掛け軸が・・・
 犯人が容疑を逃れるために弄したトリックはよくできてる。いささか面倒だけど、金のためならこれくらいの手間はかけるかな。


「第三話 便利屋、消えた小学生に戸惑う」
 良太は有紗の同級生・宮園梨絵(みやぞの・りえ)から人捜しを頼まれる。公立の中央小の生徒で、腰まである長い髪の女の子だ。梨絵を不審者から救ってくれたのだという。
 良太が通う飲み屋『あじさい』のママさんの娘・美乃里も中央小に通っていた。近頃、不審者が出没していると聞いて、ママさんは美乃里のボディガードを良太に依頼する。
 翌日、良太は下校してくる中央小の児童たちを眺めていたが、梨絵の恩人らしき子は見つからない。仕方なく良太は美乃里のボディガードに切り替えて、彼女の後をついていくことに。
 しかし十字路を曲がった美乃里に続いて曲がったところ、彼女の姿が消えた。道の両側には高いブロック塀が続き、戸口の類いは一切ないのに・・・
 人間消失トリックは盲点をついたもの。それと不審者の目的と見つからない恩人がひとつの流れにつながるのは流石に上手い。


「第四話 名探偵、溝の口を旅立つ」
 壁のペンキ塗りを頼まれた良太は坂口家を訪れた。しかし依頼主の順三(じゅんぞう)は、密室状態の家の中で浴室に沈んで死んでいた。警察は単純な溺死と判断したが、納得できない有紗は良太と共に坂口家へやってくる・・・
 この手の密室トリックは絶滅したかと思ってたけど、使いようはあるものだね。


 第四話の最後で、孝三郎と有紗は母・慶子のいるイギリスへ旅立ってしまう。長ければ数年間の滞在になりそうということで、このシリーズもここで打ち止めとなる。
 でもまあ、ひょっとすると成長した有紗による新シリーズが始まる可能性もゼロではなさそう。その日までしばしのお別れかな。



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