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怪盗ニック全仕事1 [読書・ミステリ]

怪盗ニック全仕事(1) (創元推理文庫)

怪盗ニック全仕事(1) (創元推理文庫)

  • 作者: エドワード・D・ホック
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2014/11/28
  • メディア: 文庫



評価:★★★

ニック・ヴェルヴェットは一風変わった泥棒。
彼が盗むのは貴金属や宝石の類いではない。
"価値がないもの" や "誰も盗もうと思わないもの" に限るのだ。

短編ミステリの名手である作者が残した
「怪盗ニック」シリーズは全87編。
そのうちの何割かは邦訳され、日本独自編集の短編集も出ていたが
この「全仕事」は、87編すべてを発表順に全6巻にまとめるもの。
その第1弾が本書で、1966~71年にかけて発表された15編を収録。

フォーマットはほぼ決まっている。

まず依頼人がニックに接触し、盗むものを示す。
当然、価値のないものがターゲットになるのだが、
依頼人がそれを盗んで欲しい理由を語ることはまずない。
ニックは報酬2万ドルで引き受ける。
(危険なものなどの場合は割り増しをするが)
盗むものの下調べに出向き、盗難計画を練る。
そのとき、新たな関係者が登場する。
(たいていは若くて美しい女性だが)
その後、ニックが盗みを実行するのだが、
ほとんどの場合、実行後に何らかのトラブルが生じ、
そして推理と機転で窮地を脱する・・・

こう書いてくると、なんだかワンパターンなような印象を
持つかも知れないが、依頼される盗みの対象は
"プールの水" とか "おもちゃのネズミ" とか
"使い古しのカレンダー" とか "博物館の恐竜の尻尾の骨" とか・・・
中には "野球チーム" とか "湖の怪獣" みたいな奇想天外なものまで
まさに、「何でも盗んでみせるぜ!」って感じ。

もちろんこれらを盗む手口もよく考えられていて
"プールの水" を盗む方法なんて、よく考えたなあって思う。

そして、"価値のないもの" を盗むことにこだわる、
依頼人の "意外な目的" も。

フォーマットは決まっていても内容はバラエティに富んでいて
読んでいて飽きさせない。
しかも、それを文庫で30~40ページほどに収めているんだから
まさに "短編の名手" といって間違いはないだろう。

同じ作者の「サム・ホーソーン」シリーズは不可能犯罪ものだったが、
「怪盗ニック」シリーズもそれに劣らず面白いシリーズだ。

あと5巻、これからしばらく楽しみが続きそうである。


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