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日本SF短編50 I [読書・SF]

日本SF短篇50 I (日本SF作家クラブ創立50周年記念アンソロジー)

日本SF短篇50 I (日本SF作家クラブ創立50周年記念アンソロジー)

  • 作者: 光瀬龍
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2013/02/22
  • メディア: 文庫



評価:★★★

日本SF作家クラブ創立50周年を記念して編纂された
全5巻のアンソロジー、その第1弾。

良いか悪いかは別として、この編集方針はユニークだ。

1963年から2012年までの50年間、
その年に発表された短編SFから1編ずつ選ぶ。
しかしその作者は、2012年12月現在で日本SF作家クラブに
所属している作家に限り(故人も含める)、
しかも全50作の作者は重複しない。

つまり50人の作家による、50年間での、50作というわけだ。

日本SF作家クラブ会長(2013年1月現在)の瀬名秀明による
「巻頭言」の中で触れられているが、
作品選定についてはかなり難航したらしい。まあそうだろうね。
"難解なパズル" って形容されてるがその通りだろう。

でも、第1巻の作品名を見る限り、
さほど的外れな選考はされてないようだ。
収録されている作品がその作家の代表作か? 
と言われると「全部がそうだというわけではない」だろうけど、
それなりに知名度がある作品が選ばれているように思う。

収録作の紹介と共に、作家さんに関する四方山話とかを綴ってみる。


1963「墓碑銘二〇〇七年」(光瀬龍)
 おお、しょっぱなから<年代記>シリーズだよ!
 広漠とした宇宙に広がる無常感がたまらない作品群だった。
 「百億の昼と千億の夜」とか「喪われた都市の記録」とか。
 「百億-」は萩尾望都の漫画版も読んだ。
 NHKの少年ドラマシリーズも懐かしい・・・

1964「退魔戦記」(豊田有恒)
 これ、長編版のほうを読んだよ。
 作者は「宇宙戦艦ヤマト」(1974年)の原案・設定にも参加していて
 "宇宙もの" つながりで読んだ「地球の汚名」が滅法おもしろかった。
 それから「モンゴルの残光」とかの歴史SFにも手を伸ばして・・・
 ところで「ヤマトタケル」シリーズって完結してたかな?

1965「ハイウェイ惑星」(石原藤夫)
 "ヒノシオ" シリーズだねえ。ハードSFなんだけど、
 作品の雰囲気はソフトでユーモアたっぷり。
 これもシリーズはほとんど読んだはず。

1966「魔法つかいの夏」(石川喬司)
 作家というよりは評論家だったよね、この人。
 収録作もよくわからない。ファンタジーといえばそうなのかな。

1967「鍵」(星新一)
 生涯で1000編以上ものショートショートを書いた人。
 とても全部は読んでないんだけど、この収録作は読んだ。
 最後の台詞がすごく印象的なんで記憶に残ってたよ。

1968「過去への電話」(福島正実)
 この人も作家というよりは編集者か翻訳家のイメージ。
 収録作も今ひとつよくわからない。
 でもこの人の訳した「夏への扉」はいい!
 使われてる訳語があまりに古くなりすぎて
 何年か前に新訳が出た。それはそれでよかったんだけど
 ラスト近くのヒロインの台詞は旧訳の方が断然好きだ。

1969「OH! WHEN THE MARTIANS GO MARCHIN' IN」(野田昌宏)
 このころの大元帥閣下はこの手のユーモアSFを書いてたんだよねえ。
 「銀河乞食軍団」が始まるのはこの13年後かあ・・・

1970「大いなる正午」(荒巻義雄)
 収録作は、今読んでもやっぱり全く理解できないなあ。
 初期の荒巻義雄はこんな感じのワケのわからない作家、ってイメージ。
 「白き日旅立てば不死」とかタイトルからして難解だったし・・・
 それから一転、「空白の○○」って伝奇SFシリーズを
 書き出したと思ったら、突然「ビッグ・ウォーズ」なんて始めるし。
 それも完結しないうちに「○○要塞」シリーズとか
 「紺碧」とか「旭日」とかの艦隊シリーズを怒濤のペースで執筆、
 あれよあれよという間に遙か彼方へ飛んでいってしまいました。
 途中でついて行けなくなってやめたのが90年代初め頃だったか。

1971「およね平吉時穴道行(ときのあなのみちゆき)」(半村良)
 この人「戦国自衛隊」がたぶん一番有名だけど、
 原作ってすんごく短いんだよね。文庫で200ページくらいだっけ。
 でもホームグラウンドは伝奇SFだったよね。
 「妖星伝」はなかなか完結編が出なくてやきもき。
 でも、直木賞をもらったせいかわからんが、
 だんだんSFから離れていってしまった人なんだよねえ・・・

1972「おれに関する噂」(筒井康隆)
 初期の短編集はよく読んだなあ。
 「ベトナム観光公社」とか「東海道戦争」とか。
 この作品もその頃に読んだ。
 「ビタミン」とか「ホルモン」とか「デマ」とかの
 実験小説群も超絶的に可笑しかった。
 大学卒業の頃から、なぜかぱたりと読まなくなってしまったのは
 どうしてなんだろう・・・。


巻末の解説には、63~72年にかけての日本SF界の動向が
まとめられていて、資料価値という面でも貴重かと思う。
その中で驚いたのは、71年に少年少女向けのSF入門書である
「SF教室」(筒井康隆・編)が発行されていたこと。

私、この本読んだよ!
親父が買ってきてくれたのか、自分で買ったのかは覚えてないけど
家にあって、中学生の頃に読んでたのを思い出したよ。

71年だと私は中1か。
まさに私がSFの洗礼を受けたのは中学時代だったんだねえ。

74年の「宇宙戦艦ヤマト」からSFを読み始めたと思ってたけど
すでにその前から下地はあったわけで
「ヤマト」が本格的にのめり込むきっかけになった、
ということだったのだろう。


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