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襲名犯 [読書・ミステリ]

襲名犯 (講談社文庫)

襲名犯 (講談社文庫)

  • 作者: 竹吉優輔
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/09/11

評価:★★★☆

第59回(2013年) 江戸川乱歩賞受賞作。

茨城県の地方都市・栄馬(えいま)市で起こった無差別猟奇連続殺人事件。
犯人は ”ブ-ジャム” という異名で呼ばれるようになり、
一部に熱狂的な信奉者を産み出したが、ある事故をきっかけに
殺人犯・新田秀哉があっけなく逮捕される。

14年後、獄中にあった新田の死刑が執行され、
事件は名実ともに終結したかと思われたが
それと時を同じくして、”ブージャム事件” をなぞるような
猟奇殺人事件が栄馬市で発生する。

主人公は、栄馬市の図書館で司書を務めている南條仁(じん)。
14年前の ”事件” では、当時13歳だった
双子の兄・信(しん)を喪っていた。

茨城県警で刑事となっている三上律子、
人気小説家となった霜野襄一(しもの・じょういち)。
この2人も、かつて南條兄弟とは同級生だった。

物語は仁・律子・襄一の3人が、再び起こった ”ブージャム事件” に
巻き込まれ、翻弄されながら真相に近づいていく様が綴られていく。

”ブージャム事件” の資料ばかりを漁る図書館利用者、
かつて新田秀哉と獄中結婚していた女など
怪しげな人物が次々と現れてなかなか真相は見通せないが
登場人物自体はさほど多くはないので、
終盤に向けて犯人はけっこう絞られていく。

しかし、犯人当ての興味以上にページをめくらせる原動力となったのは
主人公・仁の造形だった。

両親の経済的な苦境を救うために養子に出された兄・信。
しかし ”事件” で信が亡くなってしまうと、
養母だった女性は次に仁を養子に欲しいといいだす。

それに応えたものの、養母の扱いはあくまで ”信の身代わり”。
信の通っていた中学へ転入するが、既に信と友情を結んでいた
クラスメイトたちから見れば、仁は ”信の代わり” でしかない。

そんな中でも、律子や霜野は仁と厚誼を結んでくれたが
それでも彼らとの間には「信」という見えない壁が厳として存在する。

「周囲の人間は、自分を『仁』という人間として見ているのではなく、
 自分を通して『信』を見ているのではないか」
そんな思いが、常に仁を悩ませてきた。

本書は、再び起こってしまった ”ブージャム事件” を通して
仁が自らに取り憑いた ”『信』の呪縛” から解放され、
人生の新たな一歩を踏み出すまでの成長の物語でもある。

特にラストシーンが感動的で素晴らしい。
最終ページまできたら、一気に涙腺が崩壊してしまったよ。


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クーリエ:最高機密の運び屋 [映画]

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実話に基づく映画化だという。

以下、「映画.com」に載っている《あらすじ》を引用するが、
一部編集してあることをお断りしておく。

表向きは平凡なセールスマン。
しかし裏の顔は、英国の密命を受けたスパイ――
ただし、特別な訓練を受けたわけではない “素人” だった。

1962年10月、東西冷戦下。
アメリカとソ連の核武装競争による対立は頂点に達し、
世界中が「核戦争が起きる」恐怖に怯えていた。

 世界中のあちこちに「核シェルター」が作られたのも、
 この頃のことらしい。

そんな折、米CIAと英MI6は、1人の英国人に目をつける。
名はグレヴィル・ウィン、東欧諸国に工業製品を卸すセールスマンだ。
彼が依頼されたのは、販路拡大と称してモスクワへ渡り、
ソ連の機密情報を持ち帰ってくる “スパイ任務” だった。

用意された計画は完璧だった。
ただ “ウィンにスパイの経験など一切ない” という一点を除いて。

当然ウィンは「危険すぎる」と拒否。
それでもCIAとMI6は「君ならできる」と謎の自信を押し付け、
彼をほぼ強制的にモスクワへ向かわせた。

 この手の物語の常だが、「君ならできる」「君にしかできない」
 「家族を核兵器から守るためだ」・・・
 スパイの元締めたちはウィンに対してあの手この手の説得をしてくる。

モスクワに到着したウィンは、商談を続ける中で
GRU(ソ連軍参謀本部情報総局)の高官ペンコフスキーと接触する。
彼はソ連の指導者フルシチョフの性格を危険視しており、
あえて国に背いて、核兵器に関する機密情報を
ウィンを通じて西側へと流し続ける。

やがて、彼の情報によってソ連がキューバへ核ミサイルを
持ち込んだことが明らかになり、米ソの対立は決定的となる。
いわゆる “キューバ危機” の勃発である。

同じ頃、モスクワ内部でも、西側に情報を漏洩しているスパイが
いるのではないかと疑う者が現れていた・・・

核戦争一歩手前までいったと言われている
”キューバ危機” の陰で行われていたスパイたちの戦いを描く。

なにしろ ”素人” が始めるスパイのまねごとだから、
その緊張感はハンパなく、ハラハラさせられる。
しかも、その内容もストーリーが進むにつれて
どんどん複雑になっていくので、
いつまで経ってもウィン君の気苦労は絶えない。

そんなスパイ・スリラーとしての魅力と並行して、
見る者を引き込むのは主役となる二人の友情だ。

はじめはいやいやながらスパイ活動を始めることになったウィンだが、
ペンコフスキーの人となりや胸に秘めた平和への思いを知るうちに
いつしか二人は強い絆で結ばれていく。

CIAは、いざとなったらペンコフスキーを亡命させる予定だったが
”キューバ危機” によって彼は行動の自由を制限されてしまう。
スパイであることが露見したら、彼の命はない。
ウィンは彼を救出することを強く主張し、CIAも同意するが
ペンコフスキーに連絡する手段がない。
そこでウィンは、初めて自分の意思でモスクワへ赴くことを決める。
かけがえのない ”友” を救うために・・・

ウィン役はベネディクト・カンバーバッチ。
大袈裟に言えば世界の命運を背負っているのだが
それは最愛の家族にも言えない。しょっちゅうモスクワに行くので
妻からは浮気しているのではないかと疑われる始末。
そんな映画前半部のウィンをユーモアとペーソスをもって演じている。

もう名優としての評価は定まっていると思うのだけど
それでも、共産主義国家・ソ連の闇が描かれる
終盤での彼の演技は鬼気迫るものがある。
どうスゴいのかは未見の方のために書かないが、一見の価値はある。


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暗色コメディ [読書・ミステリ]

暗色コメディ (双葉文庫)

暗色コメディ (双葉文庫)

  • 作者: 連城 三紀彦
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2021/04/15
  • メディア: 文庫

評価:★★★★

「序章」では4人の人間の、半ば狂気に取り憑かれたような幻想、
あるいは直面した謎の事態が語られていく。

主婦・古谷羊子は、ある日デパートに行ったおりに自分を呼び出す
アナウンスを耳にし、それに応じてエスカレーターで正面玄関へ向かう。
そこには夫・征明(まさあき)が待っていたが、彼はなぜか
エスカレーターで羊子の前に立っていた女とともに
立ち去ってしまう。その日以来、羊子は ”もう一人の自分” が
存在するという妄想に悩まされ始める。

スランプに苦しむ画家・碧川(あおかわ)宏は、夜の道で
トラックに衝突された・・・と思った次の瞬間、無傷である自分に気づく。
そして車は何事もなく、彼の体を通り抜けたように去って行った。
この日から、彼は周囲のものの消失現象に悩まされることになる。

葬儀屋の惣吉は、ある日突然、妻の芳江から
「あんたは1週間前に事故で死んだ」と言われ始める。

外科医の髙橋充弘は、いつの頃からか妻・由紀子が
別人にすり替わっているとの妄想に苛まれるようになっていた。

物語のかなり早い段階で、この4人がみな都内にある藤堂病院に
何らかの関わりをもっていることが明かされる。

さらに病院内では、衆人環視のエレベーターからの人間消失事件が
発生したりと、不可解な事象てんこ盛りの展開が続く。
後半に入ると、過去に起こった(かも知れない)殺人事件の存在が
浮上してくるとか、事態はどんどん混迷していく。

読んでいて、「これほんとにミステリかいな」とか
「幻想小説じゃないの」とか「これ絶対説明できないだろ」とか
思ってたのだけど、中盤あたりから少しづつ謎の解釈が示されはじめ、
終盤までには、ほぼきっちりと合理的な解明がなされてしまう。

まあ、かなり苦しい(笑)部分や、強引な力業な部分も垣間見えるけど
不可解なものを ”本人の見た幻覚” と切り捨てることなく、
全ての事象にとりあえずの説明がついていくのはたいしたもの。

さらにスゴいのは、バラバラに見えたこの4人の状況が
実は裏で一つのつながりを持ち、最終的に ”真犯人” となる
一人の人物に収束していくこと。

冷静に考えてみると、かなり無理矢理な部分が存在することも
否めないのだけど、これを ”超絶技巧を駆使したミステリ” ととるか、
”広げた風呂敷を畳むのに四苦八苦してる” とみるかで
本書の評価は変わってくるだろう。

「いくらなんでもそれはないだろう」って感じてしまえば
”破綻した作品” になってしまうだろうし。

私は「ギリギリのバランスのところで踏みとどまった」
って思うんだけど、他の人はどう感じるだろう。


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髑髏城の花嫁 [読書・その他]

髑髏城の花嫁 (創元推理文庫)

髑髏城の花嫁 (創元推理文庫)

  • 作者: 田中 芳樹
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2021/03/19
  • メディア: 文庫

評価:★★★

19世紀半ば、ヴィクトリア朝の英国を舞台にして
エドモントとメープルの叔父姪コンビが遭遇した
怪奇な事件と冒険を描く、その第2作。

1856年、クリミア戦争は終結した。
英国軍人として従軍していたエドモントは
除隊の条件として、負傷で衰弱したライオネル・クレアモント少尉を
ワラキア(ルーマニアの南部)まで送り届けることを命じられ、
戦友のマイケル・ラッドとともにダニューブ河のほとりにある
”髑髏城” へ向かう。そこは文字通り髑髏のような形の怪異な城だった。

翌1857年。復員したエドモントはメープルとともに
ミューザー良書倶楽部(セレクト・ライブラリー)で働いていた。

フェアファクス伯爵家で代替わりがあり、
それに伴って図書室を改装するという。
社長命令でフェアファクス家に赴いた二人を迎えたのは
ライオネル・クレアモント。伯爵家を継いだのは彼だったのだ。

太古から続く一族の末裔で、巨大な野望を持つライオネルを軸に
エドモントの悪友で胡散臭さ満開のラッド、
メープルの寄宿学校時代の同級生ヘンリエッタ・ドーソンと
賑やかなメンバーが登場して大混戦を繰り広げる。

前作に引き続き文豪ディケンズも登場し、ドタバタ劇に花を添える。

いちおうホラーに分類されるのだろうが、怖い雰囲気はほぼ皆無。
例によって、キャラクター同士の軽妙な掛け合いが
いちばんの ”売り” だろう。
(まあ田中芳樹に純粋な恐怖ものを期待する人はいないだろうけど。)


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面影はこの胸に [読書・ミステリ]

面影はこの胸に (講談社文庫)

面影はこの胸に (講談社文庫)

  • 作者: 赤井 三尋
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/03/13
  • メディア: 文庫

評価:★★★

昭和4X年。齢80になろうという早稲田大学名誉教授の井上健吉は、
校友誌『早稲田学報』の取材に応じて、数十年前のことを回想する。
それは、名探偵として名を馳せた早稲田大学の言語学教授・等々力のもと、
助手として奔走し、解決に関わった3つの事件のことだった。
井上の妻・牧江とも、事件の捜査を通じて知り合ったことが
語られており、どこで彼女が登場するのかも興味を引く。

「秋の日のヴィオロンの溜息」
大正11年。世界的物理学者アインシュタイン博士が来日した。
博士は神戸で客船を下り、鉄道で東京へ移動してホテルに着いた夜、
持参してきたヴァイオリンが贋物とすり替わっていたことに気づいた。
楽器自体は安物だったが、ノーベル賞受賞者の持ち物なので
欲しがる者は多いだろう。
等々力を訪れた博士は、ヴァイオリン盗難の解決を依頼するが・・・
犯人当てと言うよりは、等々力教授の命のもと
調査に奔走する若き日の井上くんの奮闘がメインで
「少年探偵団」(江戸川乱歩)の大人版みたいな趣き。
等々力は明智小五郎の役回りだが、井上くんは
残念ながら小林少年ほど機転が利かないのはご愛敬。

「蛙の水口」
作中の描写から、大正13年の出来事と思われる。
等々力のもとを訪れたのは外務省の幣原喜重郎。
2日前、外務省電信課の職員・伊東潤一が事故死し、
その遺体のポケットから謎の文字列を記した紙が見つかった。
最近、外務省の使用する暗号が某国によって解読されている節がある。
伊東もまた、暗号機密流出に絡んでいたのかも知れない。
幣原の依頼内容は、外務省に潜むスパイの摘発だった。
等々力の命を受けた井上くんは、伊東の葬儀に参列していた
外務省の女性職員・浅見静枝の尾行を始めるが・・・
スパイの正体をあぶり出す、終盤の逆転が鮮やか。

「ジャズと落語とワン公と」
今回の主役は、落語家にして喜劇俳優として名を馳せた柳家金語楼。
作中での金語楼師匠は29歳。wikiによると1901年生まれとあるので
この短篇は1930年、昭和5年の話だろう。
ラジオに出演したことがきっかけで寄席組合と軋轢が生じ、
高座へ上がれなくなってしまった金語楼だが、
寄席以外にも活躍の場をたくさん持っていたので意気軒昂。
ある日、金語楼の事務所を訪れた男・名倉は、料金を全額前払いして
隅田公園で、一晩のジャズ落語(ジャズをバックに小噺や踊りを見せる)の
興業を打つことを依頼をしてきた。さらに、入場料はタダにして
誰でも観覧できるようにする、とも。
隅田公園を見下ろすことのできる言問橋(ことといばし)病院に
名倉の軍隊時代の恩人が入院しているのだが、余命幾ばくもない。
最後に金語楼のジャズ落語を見せてやりたいのだ、という。
しかし、興業の準備のさなかに当の病院を訪ねた金語楼だったが、
そのような患者はいないことがわかる。
等々力は金語楼から相談を受け、井上とともに調査に乗り出すが・・・
ここまで読んできた人の中には分かってしまう人もいるだろうが
某古典ミステリのバリエーションの一つだ。
金語楼の他にも、有名になる前の忠犬ハチ公も登場するなど
実在の人物や風物を取り入れているのも楽しい。
柳家金語楼師匠は、私も幼い頃にTVで見た記憶がある。
wikiによると没年は1972年なので、私は ”間に合った” のだろう。


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からくり探偵 百栗柿三郎 [読書・ミステリ]

からくり探偵・百栗柿三郎 (実業之日本社文庫)

からくり探偵・百栗柿三郎 (実業之日本社文庫)

  • 作者: 伽古屋 圭市
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2015/05/15

評価:★★★☆

発明家にして名探偵の百栗柿三郎が活躍するシリーズ、第1作。

「序章」で描かれるのは、大正12年(1923年)の
関東大震災によって灰燼に帰した浅草の街。
そして倒壊してしまった自宅『百栗庵』(ももくりあん)の前で
立ち尽くす主人公・百栗柿三郎の姿。

そこから9年前の大正3年へと時代が戻り、
彼が遭遇した4つの探偵譚が語られていく。

「第一話 人造人間(ホムンクルス)の殺意」
科学者・真壁達巳博士の絞殺死体が発見される。
彼の自宅兼研究所にいた3人の助手の証言によると、
現場である研究室に出入りした者はいないという。
しかも、研究室に安置してあったホムンクルスの標本が消え、
裏庭の藪から発見される。その手には凶器と覚しき紐が握られていた。
”ホムンクルス” とは錬金術師がつくり出したといわれる人造人間。
真壁家で働いていた女中・千代は、殺人の容疑をかけられそうになり、
柿三郎のもとに駆け込んできたのだが・・・

雇い主を失った千代は、この事件がきっかけで
柿三郎の助手兼女中を務めることになる。

「第二話 あるべき死体」
隅田川のほとりの草むらで、男性のバラバラ死体が見つかる。
被害者は化粧品会社社長・秋儂富美男(あきの・ふみお)。
遺体の第一発見者だったのは千代。彼女のもとへ
秋儂の執事・坂巻が訪れ、柿三郎は事件の捜査を依頼される。
やがて、第二のバラバラ死体が発見される・・・
犯人が遺体をバラバラにする理由は古今いろんな作品で描かれてきたが
今作は意外に現代的な要素を含んでいる。もっとも、
およそ100年前のこの時代だからこそ成立する話、とも言えるが。

「第三話 揺れる陽炎」
室町時代の伝説の幻術師・果心居士(かしんこじ)の末裔と称する
”一斎(いっさい)居士” なる者が開いた道場が人気を集めていた。
要するに怪しげな新興宗教だ。
百栗庵を訪れた婦人・正子は、道場での共同生活に参加するために
家を出ていったまま還ってこない息子・寅丸(とらまる)を
連れ戻してほしい、と柿三郎に依頼する。
千代は、体験入門者を偽装して道場に入りこむのだが・・・

「第四話 惨劇に消えた少女」
質屋を営む音塚夫婦の家に賊が侵入した。
その夜、一人娘の玉緒(たまお)は友人・八重の家に滞在していたが、
手に入れた珍しい白粉を見せようと八重と二人で音塚家へ戻り、
そこで両親の死体を発見してしまう。
驚いた二人は現場から逃げ出すが、途中ではぐれてしまい、
そのまま玉緒も行方不明になってしまった。
百栗庵を訪れた梅松という男は、「音塚夫妻の遠縁の者から頼まれた」
と言って、玉緒の探索を依頼する。
柿三郎たちは、知人から借りてきた犬・トビィの力を借りて
玉緒探索に乗り出すのだが・・・

柿三郎の本業は発明家であり、作中でもいろんな機械を自作している。
当然ながら科学知識も豊富らしく、指紋採取や警察犬などの
操作技術についても一通りに知識はあるようだ。

とは言っても、作中の描写には首を捻る部分がある。
「科学的にそれはありえんだろ?」とか
「この時代の技術水準じゃ無理じゃん?」とか引っかかるのだが
実はそれも伏線になっていて、最後まで読むと綺麗に氷解してしまう。
特に○○○○については、「やられた~」って思ったよ。

柿三郎が事件の捜査に首を突っ込めるのは、
警視庁に兄が勤めているかららしいし、
どう見ても金にならない発明三昧の生活を送れるのも、
どうやら金持ちの後援者がいるかららしい。

 まあ、普通に考えたら名前からして三男坊なので
 長兄が資産家で、次兄が警視庁勤務、というところなのだろう。

本書には続編がもう一冊刊行されている。
そちらも読了済みなので近々記事に書く予定。


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浜の朝日の嘘つきどもと [映画]

asahi.jfif

映画の公式サイトから<Story>を引用すると・・・

福島県・南相馬に実在する映画館「朝日座」。
100年近い歴史を持ち、主に旧作映画を上映する名画座として
地元住民に愛されていたが、近年はシネコンと呼ばれる
複数のスクリーンを持つ複合映画館の台頭によって厳しい経営状況だ。

支配人の森田保造(柳家喬太郎)はサイレント映画『東への道』を
スクリーンに流しながら、意を決する。
35mmフィルムを一斗缶に放り込んで火を着けた瞬間、
森田の背後から水をかけて邪魔をする女性(高畑充希)が現れた。
経営が傾いた「朝日座」を立て直すために
東京からやってきたという彼女は、
自分の名前を「茂木莉子(もぎ・りこ)」と名乗る。

しかし、「朝日座」はすでに閉館が決まっており、
森田も「打つ手がない」と決意を変えるつもりはない。
「ここが潰れたら本当に困る!」と主張する莉子は、
この町に住んでなんとかするという。
それは、「ある人との約束」が理由だった。

莉子が高校一年の時、東日本大震災が起きた。
タクシー会社で働いていた父(光石研)は
除染作業員の送迎を担当したが、やがて莫大な利益をあげたと
噂をされるようになり、莉子は友達が一人もいなくなってしまう。

そんな高校二年の折、立ち入り禁止の屋上にいるところを
数学教師の田中茉莉子(大久保佳代子)に見つかり、
視聴覚準備室へ連れていかれる。茉莉子先生と一緒に
映画『青空娘』のDVDを鑑賞した莉子は、映画の魅力を知るのだった。

その後、家族で東京に移住するが、
高三の一学期でドロップアウトしてしまう莉子。
家に居場所がない莉子は、郡山にある茉莉子先生の家を訪ねて
二人の同居生活が始まる。
茉莉子先生との楽しい毎日は長くは続かなかったが、
莉子が実家に戻るまで、二人の時間にはいつも映画があった。

2019年、映画の配給会社に勤めていた莉子のもとに、
茉莉子先生が病に倒れたという連絡が届く。
8年ぶりに茉莉子先生と再会すると、
「お願いがある」と言われるのだった。
「南相馬にある朝日座という映画館を立て直してほしい」と。

先生との約束を果たすために映画館を守ろうと奔走する莉子と、
積年の思いを断ち切り閉館を決めた支配人・森田。
果たして「朝日座」の運命やいかに……

さて、それではこの映画を観て思ったことを
順不同につらつらと書いてみることにしよう。
あまりまとまっていないのだが、
いつものことなのでそのへんはご勘弁のほどを(おいおい)。

全体的に、派手なシーンはないし劇的な展開が待っているわけでもない。
震災の悲惨さや住民たちの苦闘をことさらに描く部分もない。

主に日常生活の場面が延々と続くのだが、目立つのは会話のシーン。
莉子と茉莉子、莉子と森田、二人だけで会話するシーンが
けっこう尺を占めるんだが、見ていて退屈することはないし、
ストーリーへの興味もなくなることなく持続する。
演じている役者さんもいいのだろうけど、
それ以上に脚本が上手いのだろうと思う。
ちなみに脚本を書いたのは監督本人だ。


映画本編は、莉子が「朝日座」存続のために奔走する ”現代編” と
莉子と茉莉子先生の交流を描く ”過去編” が交互に描かれていく。

東日本大震災と原発事故によって大打撃を受け、
さらにコロナ禍でとどめを刺された「朝日座」。

 この映画館に限らず、過疎化とコロナ禍で経営が成り立たなくなった
 店舗や施設は枚挙に暇が無いだろう。

莉子の父は、皆が尻込みする放射線絡みの仕事に対し、
「誰かがやらなければならないこと」との使命感を持ってあたるが、
それが結果的に周囲から白い目で見られることになる。

莉子の母は夫のことが理解できず、子どもたちを連れて東京へ転居するが
体の弱い莉子の弟を溺愛して、莉子のことを顧みない。

 これもまた、震災と原発事故がもたらした悲劇だが
 この一家に限らず、3.11以後に家族のあり方が変わってしまった
 という人も数多いのではないか。

高畑充希が演じる主役の莉子は、高校1年の時に震災で家庭が崩壊し、
高2の頃は自殺しそうなくらい追い詰められていて暗い表情なのだが
10年後、「朝日座」に現れた莉子は毒舌交じりの威勢のいい台詞を吐く
元気いっぱいのお嬢さんへと成長している。
この二つの役をきっちり演じ分ける彼女はやっぱり上手いと思う。

 間もなく三十路に入ろうという人なんだが
 17歳の役がさほど不自然に見えないのは
 本人の童顔に加え、メイクや衣装の助けもあるのだろうが
 立ち居振る舞いなどのところで、
 高校生の雰囲気をうまく出しているんだろう。

高校生の莉子を救ったのが、数学教師の茉莉子。
”人生の師” となる茉莉子との出会いによって、
変わっていく莉子の様子も描かれていく。

いささか風変わりだが、仕事はきっちりやり、生徒からの人望もある。
しかし男に対しては惚れっぽく、またすぐにフラれてしまって
男運に恵まれないという残念な教師を大久保佳代子が好演している。

 というか、彼女以外にはこの役はできないんじゃないかってくらい
 ハマってる。あんまり上手いんでwikiを見てみたら、
 劇団に所属してたこともあって、舞台出演の経験も豊富なようで
 女優としての基盤はしっかり持っている人だったんだね。
 「数学教師」というのは意外だったが、作中ではしっかり
 莉子に三角関数の加法定理を教えてるシーンがある。

終盤近くのあるシーンでは目から汗が・・・
いやはや、失礼な言い方になるが
大久保佳代子さんに泣かされるとは思わなかったよ。

「朝日座」支配人の森田を演じる柳家喬太郎。
本職は落語家ということなのだが、こちらも
閑古鳥の鳴く映画館を泣く泣く閉めることになる哀愁を
違和感なく見せてくれる。

この映画の特徴として、悪人が登場しないことがある。

「朝日座」を取り壊して、跡地にスーパー銭湯を建てる、
という計画を進める男が出てくる。
普通の映画なら悪役になるところだが、
実は彼なりに地域の振興のために熟慮した結果だったりする。

莉子からみれば「家庭を顧みなかった」父親だったが、
10年後の今はタクシー会社の社長にまで上り詰めている。
上にも書いたが、彼にも彼なりの使命感があって
仕事に邁進していたわけで、家族に対しての言い分だってある。

映画の中の莉子は「家族なんて幻想」と言う。
父にも母にも裏切られた(と感じている)莉子だったが、
映画のラストにいたると、彼女の家庭も(ほんのちょっぴりだが)
これから変わっていくかも知れない、という
ささやかな可能性の芽も描かれる。

恩師の意を受けた莉子が、「朝日座」を救うために走り回る映画なのだが
その行動が回り回って、最後には莉子自身をも救うことに。

「朝日座」を存続させることが果たして地域にとって ”正解” なのか、
観ている私も「こりゃ難しいなぁ」・・・って思ったが、
紆余曲折の末に納得のエンディングを迎える。
”映画” としては、これが正解だろう。

東日本大震災以後衣、被害の悲惨さや原発行政の不備とかを扱う
ニュースや映像作品は夥しく出現しただろうけど、
震災から10年を経て生まれたこの作品は、
それまでと異なり、東北に生きる人々の
”希望” を語る映画になっていた。


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ゴーストハント3 乙女ノ祈リ [読書・その他]

ゴーストハント3 乙女ノ祈リ (角川文庫)

ゴーストハント3 乙女ノ祈リ (角川文庫)

  • 作者: 小野 不由美
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2020/09/24
  • メディア: 文庫

評価:★★★☆

主人公兼語り手は、16歳の女子高生・谷山麻衣。
彼女がアルバイトをしているのは
心霊現象を専門に調査する「渋谷サイキックリサーチ」(SPR)。

そこの所長である17歳の美少年、通称ナルと
個性的なゴーストバスターたちが繰り広げる
ホラーな冒険を描くシリーズ、第3作。

ある土曜日、SPRに次々と女子高生がやってきた。
相談内容は狐憑き、幽霊騒ぎ、ポルターガイスト・・・
しかもみな、東京近郊にある名門女子校・湯浅高校の生徒だった。

とまどう麻衣たちだったが、やがて湯浅高校の校長・三上が直々に現れ、
「校内で起こっている奇妙なこと」について正式な調査を依頼される。

翌日、ナル・麻衣・僧侶の滝川・助手のリンの4人で現地へ赴くが、
生徒からの怪奇現象に悩む訴えは夥しい数に上り、
さらには生徒だけでなく教師の中にも被害者がいるという。

生徒に起こっている謎の現象は多岐にわたり、ナルは増援を呼ぶことに。
すなわち巫女の松崎綾子、霊媒師の原真砂子、エクソシストのジョンと
レギュラーメンバー総出演となる。

彼らの調査が進む中、怪現象と関わりがあるのではないかと噂される
生徒の存在が浮上する。

3年生の笠井千秋は、TVで見た超能力番組がきっかけで
”スプーン曲げ” ができるようになり、周囲に披露していたが
それを知った学校側が全校朝礼の場で
彼女のことを「まやかしだ」と吊し上げたのだという。

昔、ユリ・ゲラーが ”超能力” でスプーンを曲げるTVを
見ていた人の中に、自分もスプーン曲げの能力に目覚めた人が出てきて、
彼ら彼女らは「ゲラリーニ」と呼ばれているという。

千秋もまたそのゲラリーニの一人ではないかとナルは判断するが
怪異現象はいっこうに止まず、
より大きな悪意を伴ってナルや麻衣たちに襲いかかってくる・・・

高校内で起こるオカルト現象を扱っているんだが、
本書のメインテーマは「超能力」だろう。

”超能力に目覚めた” ことによって自分の、そして周囲の人々の
生活を歪め、不幸をもたらしてしまった千秋。

しかし、一連の事件の背後には ”黒幕” がいる。
本作はミステリではないし、犯人当てがメインでもないので、
作者もさほど隠す気はないみたいで
読んでいればなんとなく見当はつくのだけれど、
それによって本書の面白さが損なわれることもなく、充分に面白い。

例によって、レギュラーキャラ同士の掛け合いが
無類に楽しいのは前回と同様だが、ラストに至り、
麻衣に関してある ”事実” が明らかになる。
これは何だろうね・・・次作以降への伏線ですかね(笑)。

最後に余計なことをちょっと。

本書の中で「ユリ・ゲラー」という懐かしい名前が出てきたけど、
これは ”自称・超能力者” として一世を風靡したイスラエル人のこと。

彼の日本での ”全盛期” は1980年代後半あたり。
本書の原型が書かれた1989年~92年頃は、
彼の ”活躍” の記憶も冷めやらぬ頃だったんだろう

ユリ・ゲラーで思い出した話がある。早稲田大学の大槻義彦教授
(いまもご存命で、現在は客員教授になってるらしい)が書いた本、
「超能力は果たしてあるか」(講談社ブルー・バックス、1993)。
この中に、ユリ・ゲラーを扱った章がある。

彼がTV画面を通じて日本全国の家庭に ”念力” を送り、
(故障や電池切れとかで)止まってしまっている時計を
動かしてみせる、という企画の番組があって、
実際、放送中にTV局へ「ホントにうちの時計が動き出しました!」って
電話が何十本もかかってきたのだという。

この ”現象” について、大槻先生は理詰めできっちりと解明してみせた。
中学生でも理解できるようなごく当たり前の理屈を積み上げていくと
この不可思議な現象も合理的な説明がついてしまう。
当時、読んでいてとても驚き、かつ感心した記憶がある。

28年も昔に読んだ本の内容を覚えているのにねぇ。
最近のことを覚えていられないのは困ったものだ(おいおい)。


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レディ・ヴィクトリア ロンドン日本人村事件 [読書・ミステリ]

レディ・ヴィクトリア ロンドン日本人村事件 (講談社タイガ)

レディ・ヴィクトリア ロンドン日本人村事件 (講談社タイガ)

  • 作者: 篠田真由美
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/03/22

評価:★★★

舞台は19世紀のロンドン。ヴィクトリア朝の時代。

女王陛下と同名の貴婦人・ヴィクトリアと、
人種も国籍も様々で、型破りで個性的な使用人たちで構成された
“チーム・ヴィクトリア” のメンバーが
ロンドンに起こる謎の事件に立ち向かう、冒険探偵譚、第3作。

第一章では、ロンドンに留学中の日本人青年のことが語られる。
彼の出自から始まり、留学に至るまでの経過が綴られていくのだが
これが本編にどうつながるのかはこの時点では分からない。

メインのストーリーは第二章から。

ヴィクトリアのもとに日本製と覚しき ”翡翠の香炉” が持ち込まれる。
服飾商の妻メアリ・アンがミスタ・フォックスなる人物から
高価な宝石と引き換えに入手したものだったが、
ヴィクトリアはそれを贋物と見抜く。

折しもハイドパーク(ロンドン中心部にある公園)では
『日本人村』という催し(テーマパークみたいなもの)が開かれており、
ミスタ・フォックスはその興業主とつながりがあるらしい。

ヴィクトリアはミスタ・フォックスの正体を突き止めるため
英国きっての日本通であるミッドフォードに協力を要請、
一方、メイドであるローズとベッツィは『日本人村』を見学に行き、
そこで謎めいた日本人青年と出会う。

その翌日、ローズは家の前で行き倒れていた青年を救う。
彼もまた日本人だったが、記憶を失っていた・・・

ニセ香炉と『日本人村』、そして記憶喪失の日本人、
冒頭の留学生のことも合わせると、けっこうピースがばら撒かれていて
読んでいても、どこがどうつながるのかが判然としない。

もちろん、ヴィクトリアたちの活躍によって
どんどんピースがはまって全体像が見えてくる。
前作はどちらかというとサスペンス調だったが
今回はミステリ度がぐっとアップして、意外な真相が明かされる。

19世紀末という、西洋においてもまだまだ女性が抑圧されている時代を
舞台にしているのだが、本作に登場する女性は実に強い。

 こういう時代だからこそ、その中で強かに生きていく女性を描く、
 というのがこのシリーズのテーマの一つなのかも知れないが

本作でも、終盤になって1人の日本人女性が登場するのだが
彼女も逆境に負けない逞しい人だ。

大方の読者が期待するようなラストではないかも知れないが
これはこれなりに納得できる結末ではある。

エピローグを締めくくる ”彼” には、どこかで再登場してほしいなあ。


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スーパー戦闘 純烈ジャー [映画]

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公式サイトからあらすじを引用すると・・・

スーパー銭湯のアイドルとして歌い続け、2020年には
紅白歌合戦3年連続出場を果たしたムード歌謡グループ純烈。
歌謡界のスターダムである彼らだが、世を忍ぶ仮の姿を持っていた。
皆の憩いの場となる温泉施設の平和を守るヒーロー “純烈ジャー”
としても人知れず温泉の平和を乱す悪と戦っていたのだ――。

ある時、全国の温泉でイケメンが行方不明になるという怪事件が多発し、
巷で話題となっている。 
しかし、事件性は見られず警察の捜査は見送られてしまった。
温泉の危機を感じ取った純烈のメ ンバーは
独自に捜査を開始するのだが・・・。

以前、五木ひろしの歌謡ショーに行ったことを書いたけど
あれは三部構成で、第一部と第三部が歌中心のショー、
間の第二部は、分かりやすくてゲラゲラ笑え、最後は泣けるという
王道エンタメの演劇パートだった。

 五木ひろし以外は知らないのだけど、演歌歌手の歌謡ショーで、
 歌と軽演劇の二本立てはよくあるパターンだろうと思う。

この「純烈ジャー」、という作品、”映画” という形ではあるけど、
純烈というムード演歌歌手の「歌謡ショー・演劇の部」と
考えた方が、本質に近いように思う。
だから、もちろん本作のメイン・ターゲットは、スーパー銭湯まで
彼らを観に来ているおばさま・おじさまたちである。

ストーリー展開は、東映特撮もののフォーマットに則っていて
とても分かりやすい(笑)。これは悪口でなく褒めてる。
たぶん、純烈のファンの方々は、
普段は戦隊ものやライダーは観てないだろうから。
だからわかりやすさは大事。

なぜか途中でミュージカル風なシーンになったり
突然、ステージ上で純烈が歌うシーンに変転したり
脈絡のない展開が始まったりするんだが、それも
「歌謡演劇ショー」って考えれば納得だ。

そして基本はコメディなんだから、あまり深く考えずに
純烈のメンバーがスクリーンの中で頑張るところを楽しめばOK。
逆に「考えてしまったら負け」だろう(おいおい)。

 ただ、上記のようにベースは「歌謡ショー」なのだから、
 ”普通の映画” を期待して観に来た人は
 開始早々10分くらいで呆気にとられるかも知れない。
 私もその一人だったが(笑)。

まあ、純烈ファンの人なら満足できる ”映画” になってるだろう。

 実際、映画が終わって外へ出るとき、私の前を歩いていた
 おばさま二人組が「面白かったわね~」って話してたから。

あと、思いつくままにちょっと書いていくと

悪の女王フローデワルサ様を演じるのは ”ラスボス” 小林幸子様。
ラストで巨大化して、純烈ジャー相手に大暴れするのもお約束通り。
まるで紅白歌合戦のステージを見ているみたいだ(おいおい)。
見ていて勝てる気がしないのは流石の迫力。

 私くらいの年代だと、曽我町子さん演じるところの
 へドリアン女王様を思いだしてしまうんだよねぇ・・・。

純烈たちが、”温泉の女神” と契りを交わすことで
純烈ジャーに変身できる、って設定なんだが
その女神の皆さんが熟年の女優さんばっかり、ていうのは
やっぱりファン層を考慮しているんだろうなあ(笑)。

その中で、謎の占い師・アリサを演じているのが出口亜梨沙さん。
メインキャラの中で唯一の20代女優(28歳)なのは貴重だ(笑)。
なかなか可愛い人だと思う。グラビアアイドル出身なんだけど
wikiを見ると、サブカル系の舞台なんかにも出てるみたいだ。

そして、スーパー銭湯の清掃員として登場するのが小林綾子さん。
「おしん」でデビューしたあの子も、49歳になったんですねぇ・・・・
映画の冒頭から出番がやたらと多いなあと思ってたら、
後半のストーリーのキーマン(キーウーマン?)でした。

小田井涼平が演じる ”純ブルー” の、変身後の武器アイテムが銃なのは
彼が出てた「龍騎」での仮面ライダーゾルダをなぞってるのか?

戦隊ものといえば、主人公たちが搭乗する巨大メカが
欠かせないんだけど、これもしっかり登場する。
未見の人のために書かないけど、見たら
感心すると同時に笑ってしまうだろう(おいおい)。

そして、なんといっても最終決戦開始直後に流れる
主題歌「NEW(入浴)YORK」が素晴らしい。
タイトルこそふざけてるが(笑)、聞いてみるとそのガチさに驚く。
初期の平成ライダーっぽい曲調で始まり、
サビに向けては昭和の熱血ヒーローみたいな歌詞が胸を熱くする。
(このあたり、純烈ファンなら世代的に直撃だろう)
そうして、締めはしっかり戦隊ものの主題歌として着地する。
YouTubeに上がってるMVもカッコよくて、一見の価値ありだ。

ムード歌謡もいいけれど、たまには
こういうヒーローソングもいいんじゃないかな。そのうち、
ホントにライダーや戦隊の主題歌を歌う日が来たりして。

さて、「歌謡ショー」相手に野暮は承知で
ちょっとだけ文句を言わせてもらうと、
セットとかコスチュームなどががいささかチープな感じが否めない。
言い方を変えれば、昭和の頃のライダーや戦隊ものなどの
特撮TVドラマの雰囲気に近い、ともとれる。
まぁこれは予算の都合・・・なんだろうなぁ。

無い袖は振れない中でも、最終決戦のシーンは充分に盛り上がるので
肝心なところにはしっかりお金をかけてる、のだろう。


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