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モノクローム・レクイエム [読書・ミステリ]


モノクローム・レクイエム (徳間文庫)

モノクローム・レクイエム (徳間文庫)

  • 作者: 小島 正樹
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2017/09/16
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

警視庁が試験的に創設した特捜五係は、
奇妙不可思議な事象の中に潜む犯罪を専門に扱う部署だ。
メンバーもわずか3人しかいない。
係長は元捜査一課の稲葉実。あだ名は ”昼行灯”。
交通部から異動してきた萬千尋(よろず・ちひろ)、
そして元・探偵という異色の経歴の菱崎真司(ひしざき・しんじ)。

さらに本書には、もう一つの ”組織” というか人物が登場する。
奇妙な話、不思議な体験を買い取ってくれるという「怪譚社」。
ネット上で ”買い取り” を依頼すると、黒服の謎の男が現れて
体験の内容を聞き取り、そしてかなりの高額を支払ってくれる。

全五話構成で、各話ごとに事件は独立しているが
最終話で、物語の背景にある意外な事実が明かされる連作短編集だ。


「第一話 火中の亡霊」
女子大生の里奈は、深夜に異様な光景を目撃する。
彼女の隣家の3階で、戦時中の防空頭巾のようなものをかぶった人が
炎に包まれて苦しんでいる様子を。
いやあ、犯人が必死に工作した結果なのは分かるのだけど
ここまでやるかなあ・・・ってレベル。
私は好きだけどね、こういう展開(笑)。

「第二話 踊る百の目」
フリーターの陽太はバイトが終わった深夜、
家に帰るためにバイクで郊外の公園を走っていた。
そこで見たのは、闇の中に点々と光る ”目”。その数およそ100あまり。
やがてその ”目” たちは空中高く飛翔し始めた。
その体験談を買い取ると申し出たのは、「怪譚社」だった・・・
怪奇幻想ムード満点なんだけど、
これ、明るいところでみたら、けっこうお間抜けな光景かも。
それをここまで不気味にみせる手腕は流石。

「第三話 四次元の凶器」
大学生の歩は、母親の再婚が原因で引きこもりとなり、
実家の離れで一人で寝起きしていた。
しかしある夜、彼は異様な光景を目撃する。
部屋に飾ってあった模造刀が、突然血を流し出す光景を。
その夜、歩の高校時代の同級生・帆乃香が刺殺されており、
刀が流した血のDNAは穂乃香のものと一致していた・・・
これもまた、犯人の工作が涙ぐましいばかり。
人を殺すより、刀に血を流させる方がよっぽど手が込んでて
大変に見えるのだけど、それは言ってはいけない約束だね(笑)。
だけどこういう犯人のおかげで、私たちは面白いミステリを読める。

「第四話 怨霊の家」
30過ぎまで女性に縁のない生活を送ってきた下浦は、
ある日、咲良という派遣社員の女性と親しくなる。
彼女と過ごす日々に充実感を憶えていたそんな日、
たまたま病気で寝込んでいた夜、彼は不気味な体験をする。
物音に目覚めた下浦は、部屋の片隅で
こちらに背を向け、ひたすら小石を積み上げている謎の男を目撃する。
幻覚だと思い込んだ下浦は布団にくるまって寝てしまうが、翌朝、
箪笥の引き出しの中に小石が無数に詰まっているのを発見する・・・
咲良がグルであることは早々に見当がつくが、もう一幕ある。
最後のページの下浦の台詞が心に刺さる。
そして本書全体を貫くストーリーの点から見ても、転回点となる話。

「第五話 見えざる犯罪者」
特捜五係が設立された真の目的、「怪譚社」と菱崎との関係など、
物語の背景が明かされる。そこには警察内部の勢力争いも絡んできて
誰が敵で誰が味方かも分からず、事態に翻弄される千尋の姿が描かれる。


発端の怪奇性と結末の合理性、って言葉がある。
横溝正史作品を評したものだったと思うのだけど
第一話から第四話までは、それにきっちりと当てはまるつくり。
第五話の展開には怪奇性はないけれど、”犯人” の哀しみは胸に沁みる。

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青い海の宇宙港 春夏編/秋冬編 [読書・青春小説]


青い海の宇宙港 春夏篇 (ハヤカワ文庫JA)

青い海の宇宙港 春夏篇 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 川端 裕人
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2019/07/04
  • メディア: 文庫
青い海の宇宙港 秋冬篇 (ハヤカワ文庫JA)

青い海の宇宙港 秋冬篇 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 川端 裕人
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2019/07/04
  • メディア: 文庫
評価:★★★★

日本列島の南に位置する多根島は、
豊かな自然と、日本宇宙機関(JSA)の宇宙関連施設が同居する島だ。

 モデルは、言わずと知れた種子島でしょう。JSAはJAXAかな。

この島には「宇宙奨学生」という制度がある。
島外からやってきた小学生は1年間、里親の元で過ごしながら、
党内で催される様々な宇宙関係のイベントに参加する、というもの。

東京から来た天羽駆(あもう・かける)、北海道から来た本郷周太、
橘ルノートル萌奈美(もなみ)はフランスから来たハーフ。
そして地元・多根島の大日向希実(おおひなた・のぞみ)を加えた
4人の小学生が本書の主人公だ。
ちなみに萌奈美が5年生、他の3人は6年生。

自然を楽しむことを目的に島へ来た駆だったが、
周太の熱意に押され、4人でロケットの打ち上げを目指すことになる。
そんな彼らの、島で過ごす1年間を描いた物語だ。


同じ作者の「夏のロケット」の小学生版とも言えるのだけど
時代も20年経ち、何よりIT技術が進歩したことによって
小学生でも機体設計や軌道計算ができるようになっているなど
打ち上げを巡る様相は一変している。

前編である「春夏編」は、駆たち4人が
島の特産品であるサトウキビからとった黒糖を材料にして
固体燃料を作り、それを使った ”キャンディ・ロケット” を
打ち上げようとする話。

そして後編「秋冬編」では、本格的なロケットの打ち上げを目指す。
それも地球の衛星軌道を超え、太陽系を脱出し、
宇宙の彼方まで届くような・・・

もちろん子どもたちだけでできるわけはなく、
さまざまな大人たちの協力が欠かせない。
小学校の先生たち、こどもらの里親たち、
島の人々、そしてJSAの職員たち。

”キャンディ・ロケット” までは笑顔で協力してくれるが
いざ本格的なロケットとなると、途端に慎重になる。
まあその気持ちもわかるが。

そんな頑なな大人たちの ”壁” を、子どもたちの情熱が突き崩していく。
子どもたちの夢を、かつての自分の夢に重ね、
島民の心が一つになって、1本のロケットに結実していく。
このあたりはなかなか感動的。

私は年のせいか、大人たちのほうに感情移入してしまう。

JSAで働いてはいるものの、自分に割り当てられる仕事に
疑問を抱く加勢(かせ)、そしてその同僚で
生物学が専門という異色の経歴の大日向奈々(希実の従妹)は、
読んでいていちばん気になる恋人未満カップルだったりする。

神社の宮司で周太の里親でもある岩室が、
ロケット部品の加工工場を経営してたりと
そのへんにいるおじさんおばさんが、
意外なところでロケットに関わっていたりする。

子どもたちの姿が生き生きと描かれているのはもちろんなんだけど
登場してくる大人たちも、みんな個性的だ。

そして終章は3年後。

成長した子どもたちは、それぞれが自分の未来へ向かって歩んでいる。
そしてロケットの打ち上げは、大人たちにも変化をもたらし、
中には意外な転身を果たしている者も。

そんな子どもたち大人たちの姿、
そして島の現在を描いて物語は幕を閉じる。

明るい未来を感じさせる話は、やっぱり読んでて楽しい。

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炎の放浪者 [読書・歴史/時代小説]


炎の放浪者 (講談社文庫)

炎の放浪者 (講談社文庫)

  • 作者: 神山 裕右
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/08/09
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

物語の舞台は1307年のフランス。

パリで鍛冶屋を営むジェラールは、
妻・マルグリッドとともに平穏に暮らしていた。

そこへ現れたのは王宮顧問官の密偵を務めるマルク。

9日前、フランス王フィリップ4世は、
神殿(テンプル)騎士団の本拠地を急襲、
幹部たちを逮捕・拘束したが、1人の騎士が脱出、逃走したという。

マルクはジェラールに、この逃走した騎士を捕らえるよう命じる。
マルグリッドを人質に取られたジェラールに抗うすべはなく
お伴兼見張り役の従騎士ピエールとともに追跡の旅に出る。

しかし、逃走した騎士アンドレを追ううちに、ジェラールは
これが単なる人捜しではないことに気づいていく。

アンドレの行く先々で現れる、暗号が刻まれた金貨にはじまり、
やがて明らかになる、キリストにまつわる聖遺物の存在。
ジェラールは否応なく、巨大な陰謀に巻き込まれていてしまう・・・


そもそも、王宮が一介の鍛冶屋に対してこんなことを頼むはずもなく、
アンドレを追うストーリーと並行して、
パリに流れ着くまでのジェラールの数奇な前半生が語られる。

読者は、彼の育ってきた過酷な状況、そしてパリで
マルグリッドの父親に拾われてからの運命の変転を知ると
なおさら、彼への感情移入が深まるだろう。

彼は幼少期から剣の手ほどきを受けてきたため、かなりの腕前なのだが、
アンドレはジェラールと同等以上の手練れ。
追跡劇のさなか、二人は何度か剣を交えるのだが決着はつかず
いつしか互いに相手の技量を認め合うような関係に。
この二人の変化も読みどころの一つ。

上にも書いたが、宝探しの要素もあり、
従騎士ピエール、巡礼の娘ベアトリス、ユダヤ教の導師エズラなど
サブキャラにもそれぞれ物語があり、
フランス王宮の巡らす巨大な企みありと盛りだくさん。

文庫で460ページとちょい厚めだが、
最後までハラハラしながらページをめくることなるだろう。

これでラストが××××ならば言うことはないんだが・・・
本来なら★4つつけるところなんだが、そのせいで★半分減。

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怪盗グリフィン対ラトウィッジ機関 [読書・ミステリ]


怪盗グリフィン対ラトウィッジ機関 (講談社文庫)

怪盗グリフィン対ラトウィッジ機関 (講談社文庫)

  • 作者: 法月 綸太郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/09/13
  • メディア: 文庫
評価:★★

「怪盗グリフィン、絶体絶命」に続く、シリーズ第2弾。

グリフィンの元に持ち込まれた依頼は
「トロッターの未発表作品『多世界の猫』の原稿を盗んでほしい」
というもの。

P・K・トロッターはヒューゴー賞/ネビュラ賞の常連で
(どちらもアメリカSF界では権威ある文学賞)
53歳で物故したが、死後になって
彼の作品が多く映画化されたという人気作家。

 これは明らかにP・K・ディックがモデルだね。
 「ブレードランナー」「トータル・リコール」
 「マイノリティ・リポート」などの映画の原作者だ。

依頼者はスタンフォード大学の英語学教授エリック・ケンドール。
彼によると、実はその遺稿はトロッターの作ではなく、
エリックの教え子がオートポエティックスによって
作り出した贋作なのだという。

 オートポエティックスとは、数理文学解析によって
 人工的に物語を創作するテクノロジーだ。

それがネット上に流出してしまったので、
偽物であることが知られる前に回収しようというものだった。

活動を開始したグリフィンだが、やがて彼以外にも
なぜか政府機関(CIA)や動物愛護団体なども
原稿の行方を追っていることが判明する・・・


ミステリにSF要素を持ち込んだ作品は、
最近作者が得意(?)とするところなんだけど
パラレルワールドや歴史改変とかが絡んでくると
一気に難解になってくる。
私のアタマが悪いせいか知れないが(たぶんそうだね)。

作中に出てくる「シュレディンガーの猫」みたいに
「箱の中身はいったいどうなってるんだ?」て感じである。

文章がわかりにくいわけではないんだけど、
物語中で何が起こって何が問題なのかがだんだん分からなくなってくる。
結局のところ、途中から ”理解” を諦めて
とにかくストーリーを追うことだけにした。

文庫で330ページと決して長くないだけど
全部で64章もあって、章立てが細かい。
平均すると1章あたり5ページほどと短い。
頻繁に賞の区分が入るのも、よく分からなくなる
原因の一つかも知れない(そんなことはない?)。

前作でグリフィンと偽装夫婦を演じた
CIA諜報員アグネスの再登場は嬉しかったけど、
全体的な見通しが(私にとっては)よくなかったので評価も辛め。

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アナと雪の女王2 [映画]


かみさんが、第1作「アナと雪の女王」をレンタルで観た。そして
第2作も観にいきたいから連れて行け、と私にせっつく。

というわけで急遽、15日にTV放映された第1作をビデオに撮って
観てみましたよ。いやあ、「アナ雪」ってこんな話だったんだね。

ちなみに、ビデオを再生して分かったけど、TV放映って
最初の30分くらいはCMが入らずにずーっと本編を流すんだね。

でも、民放だからCMは一定量入れなければいけない。
そのため、後半になると頻繁にCMが入る。
きちんと測ったわけじゃないけど、7分おきくらいには入っている。
しかも1回のCMが長い。2分は下らないんじゃないかなぁ。

後半は細切れの本編を、リモコン片手にCMを飛ばし飛ばし観るという
なんとも落ち着かない鑑賞でした。

閑話休題。

anayuki2.jpg

第1作は、アナの姉・エルサの持つ、すべてを凍らせる ”氷の魔法” が
暴走したことによって、二人の国・アレンデールが危機に陥り、
アナがエルサを捜す旅に出る話だった。

しかし、エルサがなぜ ”氷の魔法” を持つのかについては
全く触れられていなかった。

第2作では、その理由が明かされる。

エルサは、北の方から聞こえてくる「不思議な歌声」を耳にする。
同時に王城の回りでは精霊たちが暴れ始め、アレンデールの国民たちは
海沿いの王城地区を離れ、高台へと避難する。

エルサはアナ、クリストフ、オラフ、スヴェンとともに北へ向かい、
そこで霧に包まれた森を発見、その中で
”ノーサンドラ” と呼ばれる民たちに出会う。

そこで一行は驚くべき事を聞く。
34年前、当時のアレンデール王(アナたちの祖父)とノーサンドラが
戦火を交え、それが原因で精霊たちの怒りを買い、
彼らは霧の中に閉じ込められてしまったのだという。そして、
アナたちの行く手を4つの精霊(風/火/水/大地)が阻むだった・・・


見ていて思ったのは「対象年齢が上がってるなぁ・・・」ということ。
第1作が2013年、今作が2019年。間に6年の時間が流れている。

制作陣は、6年前に第1作を見て、
それから6歳ぶん、年齢を重ねた層を相手に作ってるんじゃないかなぁ。
前回6歳だったら、今は12歳。
そのあたりに向けて語ってるような気がする。

34年前の因縁話や、アナたちの両親の秘密とかは
幼い子には分かりづらいんじゃなかろうか。
少なくとも小学校高学年以上でないと、
分からないところの方が多くなるんじゃないか?

たとえばつい最近第1作をビデオで観て、
その雰囲気を期待して観に来た小さいお子さんたちは
当てが外れたんじゃないかなぁ・・・

 実際、映画館の中では小さい子が泣いてる声を聞いたし
 かみさんによると、近くにいた小さい子たちが
 つまんなそうな顔をしてたとか・・・

映像的にはスゴいと思う。技術も進歩したのだろうし。
スペクタクルシーンの迫力は圧巻。でもそのぶん、
単純明快さは薄れて物語的な複雑さは増したかな。

ストーリーも、前作はコメディ調がメインだったけど、
今回はシリアスなストーリーの合間にギャグシーンが入るなど
比率が逆転してる。

第1作の基調を「明」とするなら、今作は「暗」。
実際、終盤近くのあるシーンで、
私は切なくて涙が出てきてしまったよ・・・
あれです。オラフの ”あのシーン” です・・・

映画的には、今作の方がより豊かな要素が多いと思うけど
幼い子たちへの受けは、今ひとつじゃないかなぁ。


あと、吹替版について。

第1作もそうだったけど、声優陣は完璧だ。
松たか子の美声は健在だし、神田沙也加の歌も絶品だ。
ピエール瀧から交代したオラフ役の武内駿輔も達者。
これで22歳とは信じられない。
そして何より今回驚いたのは姉妹の母親(先代の王妃)を演じた
吉田羊の演技と歌。声優としても上手いが
それ以上に歌が素晴らしい。オジさんはびっくりしたよ(笑)。


最後にどうでもいいことを一つ。

映画の中盤で、エルサが氷の魔法を駆使して
火の精霊や水の精霊と ”戦う” シーンがあるのだけど、
手の先から飛ばす ”冷凍光線”(笑) が
スターウォーズの ”フォースの雷光” みたいで
さながら彼女は ”ジェダイ・マスター” みたいに見えましたよ。

そういう目で見てしまうと、
ラストでのエルサの身の振り方はルークみたいだし
アナの立ち位置はレイア姫みたいだし、
クリストフはハン・ソロの役回りみたいだし。
そうなるとスヴェンはチューバッカ、
オラフはC-3POですな(おいおい)。

おなじディズニーだからと言うわけじゃないだろうけど。


さて、続編の「3」はできるかな? ってかみさんに聞かれたけど
あの終わり方ではすぐには続編は無理でしょう。

それこそSWみたいに、作中時間で20年後くらいに設定して、
メインキャラの子どもたちの時代にもっていけば、ありかな・・・

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決算!忠臣蔵 [映画]


「忠臣蔵」といえば、日本人ならば知らぬ者のない、
超有名な時代劇コンテンツだ・・・と思ってたのだけど
その考えは改めなければならないかも知れない。

私はかみさんと一緒に観にいったんだけど、
おなじハコの中にいたお客さんは圧倒的に年配者。
私たちとほぼ同じ年代(50代~60代)が一番多かったんじゃないかな。
中でも、かみさんの隣にいたのは
どうみても80は超えてるんじゃないかと思われるご老体。

まあ題材からして、この映画の主な観客は
高年齢層になるのだろうとは思うのだけど、
それにしても若者(20代以下)がほとんどいなかったのは
いささか考えさせられる。

私が子どもから青年期にかけて、つまり昭和の時代までは
年末になると何らかの形で「忠臣蔵」や「赤穂浪士」は
TV画面に登場していたような気がする。
過去の映画のTV放映だったり、長時間ドラマになったり、
はたまたドキュメンタリー番組になったりと、
観てる方が「またか」と思うくらい画面に登場していたような。

しかし時代は変わった。
永遠に続くんじゃないかと思っていた「水戸黄門」さえ地上波から消え、
TVでのレギュラー時代劇番組なんて大河ドラマくらいになってしまった。

 それさえも、これからは明治以降を扱ったものが増えていきそうで
 時代劇は絶滅寸前じゃないかな。

12月になっても「忠臣蔵」の「ち」の字も聞かない年もある。
おそらく、いまの若者はほとんど「忠臣蔵」の何たるかを知らないだろう。

「忠臣蔵」の映画を見に行って、
その「忠臣蔵」自体が、滅びゆくコンテンツなのかも知れないな・・・
なんてことを思った日でした。

閑話休題。

kessann.jpg

「忠臣蔵」を題材にした映画やドラマはそれこそ山ほどあるので
新たな作品を作るには新たな切り口が必要だ・・・というわけで、
討ち入りをお金の面から描いてみた、というのがこの映画。

ちなみに、当時のかけ蕎麦が1杯16文だったので
かけ蕎麦1杯=16文=480円とみなし、
1文=30円として換算した値段が画面に登場する。

内匠頭の刃傷沙汰によって藩が潰れ、残務整理が始まる。
そこで残った資金が、藩士への割賦金(退職金)、そして
お家再興(内匠頭の弟・浅野大学への家督相続)を
幕府に訴えるための工作資金へ。しかしそれは叶わず、
そこで残ったものが仇討ちのための ”軍資金” となるわけだ。

そして、内匠頭切腹から討ち入り決行までの1年9か月、
浪士たちも生きていかなければならないから、金が必要だ。
そのため、残った資金もみるみる減っていく・・・というあたりを、
映画では面白おかしく描いて見せてくれるわけだ。

そのために設定されたのが、岡村隆史演じるところの
浅野家勘定方・矢頭長助(やとう・ちょうすけ)。ちなみに実在の人物。
いわゆる経理担当で、浅野家の財政状態を一手に把握している人物。
大石内蔵助(堤真一)とは竹馬の友、というのは史実なのか
映画独自の設定なのかは分からないけど、
筆頭家老と下級武士という身分の差はあっても、
内蔵助に対してかなりずけずけとものを言う役どころ。

岡村隆史の俳優経験がどれくらいなのか、寡聞にして知らないのだけど
堂に入った演技で、俳優専業の人とも遜色ない。
とくに堤との掛け合いは絶品。
大石がボケて、矢頭が冷静にツッコミを入れる、まさに漫才。

この映画に限って言えば、まさに ”岡村の映画” といっていい。
詳しいことを書くとネタバレだが、
おいしいところをみんな持って行ってしまう。

この映画での大石は、無類の女好きで、優柔不断で周りに流されるという
なんともさえない人物なのだが、その彼が一念発起して
仇討ちへと突き進むきっかけもまた矢頭がもたらす。

基本的には喜劇なんだが、爆笑と言うほどではない。
それでもところどころクスッとさせるところがあって
逆にほろりと涙を誘うところもあり、
2時間の映画を退屈させずに見せてくれる。

ちなみに、かみさんの横にいたご老体には、いたくウケていた模様。

とは言っても、もともとの「忠臣蔵」のストーリーや登場人物に
ある程度馴染みがないとわかりにくいかも知れない。
原典を直球とすれば、変化球的な作品だからね。

堤と岡村以外にも、豪華な出演陣を誇る
大高源五の濱田岳はやっぱり上手い。
堀部安兵衛の荒川良々は、もうちょっと使いようがあったような。
瑤泉院の石原さとみ、彼女も瑤泉院を演じるようなトシになったんだね。
大石理久の竹内結子もいい。いかにも、あの大石の妻なら
こんな人でないと務まらないだろう、って思わせる。


最初に、「忠臣蔵」は滅び行くコンテンツって書いたが
もしこれからも赤穂浪士たちの物語を描いていこうとするのなら、
一度、完全に若者に向けての作品を作ったらどうかなぁ。

浪士全部をイケメン俳優で固めてつくるとか、
2.5次元俳優で舞台化するとか。
(たしか「里見八犬伝」も、舞台化されてたよね。)
女性陣みんなを萌えキャラにしてアニメ化するとか(おいおい笑)。

もちろんストーリーも、史実には目をつぶって
とにかく派手に、外連味たっぷりに描いてみせる。

それくらい徹底してやったら面白いだろうなぁ・・・

これ冗談でなくて、けっこう本気で書いてるんだけど。

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幻肢 [読書・ミステリ]


幻肢 (文春文庫)

幻肢 (文春文庫)

  • 作者: 島田 荘司
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2017/08/04
  • メディア: 文庫
評価:★★★

wikiによると、タイトルの幻肢(げんし)とは、事故や病気が原因で
手や足を失ったり、生まれながらにして持たない患者が、
存在しない手足が依然そこに存在するかのように感じることを指す。


吉祥寺医科大学に通う学生・糸永遥(はるか)は、
自動車の運転中に交通事故に遭ってしまう。
そして、大学病院で目覚めた彼女は記憶を失っていた。

”親友”・彩(あや)の介助を受けながら受けた治療により、
断片的に記憶は戻ってきたものの
事故前後の記憶は杳として不明なままだった。

遥には雅人という恋人がいた。
彼女が事故に遭ったとき、雅人も同乗していたという。
しかし事故以降、雅人は姿を見せない。

彩に尋ねても、
「私の口からは言えない。あなたが思い出さなければいけない」
と答えるばかり。

ひょっとして、雅人は死んでしまったのではないか・・・

一人悩む遥は、やがて鬱病を発症してしまい、
治療のためにTMS(経頭蓋磁気刺激法)を受けることになる。

 このTMSという方法は実在のもので、wikiによると
 頭部に電磁石を近づけ、頭蓋骨内に磁場の変化を起こすもの。
 それによって脳内の特定部位に弱い電流を誘起させ、
 脳内のニューロンを刺激する方法らしい。

しかし遥は通常のTMSだけではなく、さらなる ”効果” を願って
医師の目を盗み、磁界で刺激させる部位を勝手に変更してしまうのだ。
(彼女自身が医大生で、それなりの知識はあるのだ)

しかしそれが原因なのか(どうかはわからないが)
その直後から、彼女の前に ”雅人の幻” が現れるようになる。

喜んだ遥は、幻の恋人・雅人と言葉を交わし、同じ時間を過ごし、
どんどんのめりこんでいくのだったが・・・


近年、島田荘司作品に多い、いわゆる ”脳科学” もの。
主役となる人物が見る、不思議な、あるいは現実離れした光景を
脳の働きと関連付けてミステリ化していくものだ。

本作でも、遥が見る幻の裏には、ある ”仕掛け” が潜んでいる。
最後には、遥の引き起こした ”事故” の全貌も含めて
すべて明らかになり、遥自身の物語上の着地点も定まるのだけど・・・

語り口もわかりすくて、かつ読みやすい文章で、とりあえず最後まで
興味を失わずに読み通せたんだけど、どうにもすっきりしないんだよねえ。
いろいろ考えたんだけど、遥を含めて登場人物たちの言動に
納得いかない部分が少なくなくて・・・

このラストに「うーん、これでいいのかなぁ?」って
疑問を感じる私がいる。


余計な話だけど、本作は映画になっている。
というか映画のために書き下ろした話らしいんだけど・・・
なんでこの話なのだろうね。
島田作品にはもっと面白い原作がたくさんあるだろうに。

映像向きの大がかりな物理トリックを使った作品も多いのにね。
まあ、マニアックすぎて一般受けしないのかも知れないが(笑)。

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サスツルギの亡霊 [読書・ミステリ]


サスツルギの亡霊 (講談社文庫)

サスツルギの亡霊 (講談社文庫)

  • 作者: 神山 裕右
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/09/12
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

タイトルの「サスツルギ」って聞き慣れない言葉なんだけど、
環境省のHPによると、
「雪の表面が、風で削られてできた模様です。
 風の吹いてくる方が鋭くとがり、風の向きにそって、
 なだらかに伸びているので、その形から風の向きがわかります。
 大きなサスツルギは高さ2メートルにもなります」
とある。ちなみにロシア語から由来する言葉らしい。

↓同じく、環境省HPにあった写真も引用しておきます。

sasutsurugi.jpg

作者は2004年に『カタコンベ』で乱歩賞を受賞して
本作が2作目となる。

タイトルからも分かると思うけど、物語は極寒の世界・南極が舞台。


親同士の再婚によって、篠田英治と矢島拓海(たくみ)は兄弟となった。
お決まりの兄弟間の葛藤を抱えながらも二人は成長し、
兄の英治は研究者となり、弟の拓海はカメラマンとなった。

国立極地研究所に勤務していた英治は、南極越冬隊に参加するが
隕石の調査中にブリザードに遭遇、行方不明となってしまう。

 ちなみに、越冬隊参加者の選考って結構厳しいみたいなんだけど、
 そのあたりも描かれている。

英治の ”死” から2年後、拓海の元へ1枚の絵はがきが届く。
差出人の住所は南極・昭和基地内郵便局、しかし消印はなし。
さらに、謎の電話もかかってくる。
「兄の死の真相を知りたければ、彼が命を落とした地に行け」と。

時を同じくして、拓海の元に南極越冬隊への密着取材の仕事が舞い込む。
これは偶然なのか、それとも何者かが後ろで糸を引いているのか・・・

拓海が参加した越冬隊には、2年前の越冬に参加したメンバーもいた。
そして、南極に到着して活動を開始すると様々なトラブルが発生する。
負傷者も出る中、殺人事件までも起こってしまい、
その容疑は、拓海にかけられてしまう・・・


南極という、究極のクローズトサークルなんだけど
隊員数が多いので、あまり閉塞感はない。

殺人事件の犯人についても、状況証拠を積み重ねて
絞っていく展開なので、”犯人当て” っぽさは乏しい。

ミステリと言うよりはサスペンスだな・・・って思って
読んでたんだけど、「エピローグ」で示される真相はかなり意外。
なるほど、そういう絡繰りだったのか・・・


余計なことなんだけど、登場人物が多くて、
しかもみんな狭い基地内にいて、ほぼみんな研究者や技術者。
キャラのかき分けが弱いのか、読んでる私のアタマが弱いのか、
たぶん後者だと思うのだけど(笑)、読んでて
「こいつ、何してる奴だったっけ」って迷うことが多かった。

最初のうちは前の方を読み直して確認してたんだけど、
途中から面倒くさくなって止めてしまった。
まあ、作品を楽しむにはあまり支障はないのだけど(おいおい)
できれば「登場人物一覧表」をつけてほしかったなあ・・・

その代わり、昭和基地や南極の地図はしっかり載ってるんだが
これがまた、文庫判のせいか文字が小さくて、
老眼の私には読めないんだよね・・・

超高齢化社会に突入してるんだから、こういうところに配慮しないと
ますます活字離れが進んでしまいますよ、講談社さん・・・
と思ったのだけど、電子書籍なら話は変わるのかな。

キャラで分からないところがあったら、
名前で前の方のページを検索すればいいし、
地図が見にくかったら拡大すればいいんだろうな・・・

でも私みたいに、いまだに紙に拘る人も少なくないと思うので
そのへんの配慮はしてほしいなあ・・・と思った今日この頃でした(笑)。

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天冥の標Ⅴ 羊と猿と百掬の銀河 [読書・SF]


天冥の標Ⅴ: 羊と猿と百掬(ひゃっきく)の銀河 (ハヤカワ文庫JA)

天冥の標Ⅴ: 羊と猿と百掬(ひゃっきく)の銀河 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 小川 一水
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2011/11/25
  • メディア: 文庫
大河SF「天冥の標」シリーズ、第5部。

第1部「メニー・メニー・シープ」では
西暦2803年に植民星で起こった内乱を綴られ、
第2部「救世群」では2015年に戻って
感染症・”冥王斑” の地球上でのパンデミックが語られた。
第3部「アウレーリア一統」は、2310年の小惑星帯を舞台に
異星人の残した謎の遺跡 ”ドロテア・ワット” を巡るスペース・オペラ。

そして第4部「機械仕掛けの子息たち」は官能小説(笑)と
さまざまに手法を変えてきたのだけど、
この第5部の語り口は、いわゆる正統派のSFだろう。

時代は第4部の少し後、西暦2349年。
舞台は小惑星パラスで、そこの地下で
野菜農場を営むタック・ヴァンディが主人公。

まずは彼の日常生活が淡々と描かれる。
農場維持のための機器の不具合、
星間生鮮食品チェーンの進出による零細農家の先行き不安、
それに加えて、男手一つで育ててきた一人娘のザリーカは、
思春期を迎えて父親への反抗的態度が目立ってきた(とほほ)。

 このあたりは、読んでいて身につまされるお父さんも多かろう。

そんなタックの前に一人の女性が現れる。
アニー・ロングイヤーという、地球から来た研究者だ。
彼女は研究の一環としてタックとザリーカのもとで暮らし始める。

 このアニーというのがまた、よくできた女性という、
 ある意味お約束の展開で、現代ならホームドラマになりそうなんだが
 残念ながらこれは未来のSFなので、一筋縄ではいきません。

しかし、お年頃のザリーカの不満鬱屈は増すばかり。
ついにパラスの首都ヒエロンへと逃げ出すが、
彼女を捕らえようとする謎の集団が現れる。
やがて明らかになるタックの過去、そしてザリーカの出自・・・

 このあたりは、今までのシリーズを読んでないとピンとこないかな。


そして、シリーズの折り返し点になる本書で明らかになるのが
物語全体の背景になる設定。
タックの物語と並行して、太古からの時の流れが描かれる。

6000万年前に宇宙の彼方で発生した、ある知性体の歴史が語られる。
”彼ら” はいくつかの勢力に分裂しながら、宇宙を伝播していく。

そして ”彼ら” は太陽系へたどり着く。
第2部で描かれた21世紀初頭の ”冥王斑” のパンデミックの時にも
ウイルスが地球外からやって来たことが示唆されていたが
まさに ”冥王斑” は彼らの持ち込んだものであったのだ。

そして、シリーズ全体の中で起こる人間同士の争いの根底には
この知性体同士の勢力争いがあったことも。

 まさに「おまえが黒幕か!」(笑)である。

そして物語のラストでは、双子座μ(ミュー)星方向から
太陽系へ接近してくる、新たな地球外知性体の存在が示されて終わる。

 これが次巻以降の新たな波乱要因になるのだが・・・


私は現在、次の第6部「宿怨」まで読み終わってる。
そこでは太陽系全域の人類に起こる
巨大なカタストロフが描かれていて、
物語のスケールがさらに大きくなっていく。

このシリーズ、面白く読ませてもらっているのだが
果たしてこの大風呂敷、うまく畳めるのでしょうかね?

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夏のロケット [読書・青春小説]


夏のロケット (文春文庫)

夏のロケット (文春文庫)

  • 作者: 川端 裕人
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2002/05/10
  • メディア: 文庫
評価:★★★★

新聞社で科学部に所属する記者・高野は、
過激派のアジトが爆発した事件を扱うことになった。

原因はミサイルの密造らしいが、現場から発見された破片から
精密な誘導装置や噴射制御の技術を持ち込んだ
高度で本格的なものだったことが判明する。

高野は高校時代、天文部のロケット班に入り
火星到達に憧れる仲間たちと共に、ロケットの打ち上げを目指していた。
しかし、打ち上げには成功しないまま卒業の時を迎え
仲間はそれぞれの進路へとバラバラになった。

斑のリーダー的存在だった北見は押しが強い体育会系。
いまは一流商社で宇宙事業部に配属されている。

仲間から「教授」と呼ばれていた日高は大学で航空宇宙工学を専攻、
大学院を終えて宇宙開発事業団の研究者となった。

手先が器用な職人肌の清水は大学で材料工学を専攻、
大学院を終えて大手特殊金属加工メーカーの研究者となった。

そして秀才だった氷川は、親の後を継いで医者になるはずが、
なんとロックミュージシャンに転身、ミリオンヒットを連発して
いまは芸能事務所の社長に収まっている。

高野は、事件について助言を請うために日高に連絡を取ろうとするが
彼は配属先の種子島宇宙基地から失踪していた。

やがて高野は、日高たち ”旧ロケット班” の仲間が密かに集まり、
衛星軌道へのロケット打ち上げを目論んでいることを知る。
うまくいけば、民間で初のロケット事業の立ち上げになる。

同僚の純子とともに、彼らの ”プロジェクト” に
協力することになった高野だが、
過激派が密造していたミサイルに使われていた技術は
日高から流出したものではないか、
との疑惑を持った警察も、彼の行方を追っていた。

”旧ロケット班” のメンバーたちは
太平洋の無人島に集まって計画を進めることになる。
氷川が資金を提供し、北見が必要物品の調達と補給を担当、
日高と清水がロケットの製作にあたる。

彼らは、警察の手が伸びる前にロケットを完成し、
打ち上げに成功することができるのか・・・時間との闘いが始まる。


サスペンス・ミステリっぽく始まるのだけど
その要素は早々と背景に退いてしまって、
高校時代の、不完全燃焼に終わった自らの夢に
再挑戦する男たちの物語へと移行する。

あのころは金も才能もなかったが、十数年の時を経て、
メンバーそれぞれが ”新たな力” を得た。
いまなら、あの頃の夢をかなえることができるのではないか?

まさに、人生の第二ラウンドへの挑戦。
登場人物はやや薹が立っているが、王道の青春小説だろう。

もちろん、たった5人で宇宙まで行こうというのだから
そう簡単にうまくいくはずもなく、試行錯誤あり仲間との衝突ありと、
このへんの ”お約束の展開” もまた王道。


打ち上げそのものは、物語のラストで決着がつくのだけど、
彼らの進む道はそこで終わらない。
メンバーそれぞれが、第三ラウンドへの挑戦を始めるところまでを描いて
本書は幕を閉じる。

ロケット1本を作り上げるためには、
長年にわたる膨大な技術の蓄積が必要になる。
そのへんのハード/ソフト面の描写がリアリティを高めている。
テクニカルな話も多いので、堅苦しく感じる人もいるかも知れないが
馴染めなかったら読み飛ばしてしまっても大丈夫。
それでも十分、爽やかな読後感が味わえると思う。

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