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『ゴジラ ー1.0』 ネタバレあり感想 後編 [映画]


 表記にあるとおり、『ゴジラ ー1.0』のネタバレあり感想・後編を始めます。
 未見の方はぜひ劇場でご鑑賞の上で再度お越し下さい。
 映像・音響共に、まさに映画館の優れた設備で ”体験” するための作品で、一見に値する映画だと思います。

 「ネタバレなし感想」は11/12にアップしております。


■海神作戦開始

 いよいよ「海神作戦」が開始される。参加艦艇は、駆逐艦「雪風」「響」「夕風」「欅」のわずか4隻。しかも武装解除のため砲塔は撤去されていて、丸腰の状態だ。

 敷島の駆る「震電」によって相模湾へと誘導されたゴジラに向かって、まず「夕風」「欅」が突進する。ゴジラはこの2艦を熱戦で一掃するが、実は両艦とも無人。これは銀座での熱戦発射後のゴジラの ”損傷” 具合から、短時間内での連射はできないと踏んだ野田の計画だった。
 まずゴジラに一発撃たせてしまうための囮。実際の間隔を計測したわけではないから、これもけっこう危ない橋を渡ってるよねぇ。でも「穴だらけの作戦」なのは、みな百も承知の戦いだ。

 残る「雪風」と「響」による、ゴジラにガスのボンベを装着させる作戦が始まる。途中、二艦がギリギリの距離ですれ違うという決死の操艦を見せる。
 なんでギリギリになったかはノベライズ版で解説されてる。「雪風」の艦尾に装備されたクレーンが吊っているワイヤーと、海面との間のわずかな隙間を「響」が通り抜けるためだ。

 2艦とも海中にワイヤーを曳航したまま交差すると、ワイヤーが艦体に接触して損傷したり、スクリューに絡んでしまうリスクがあるからだろう。
 ノベライズを読んでからもう一度映画館に行ったら、このシーンはちゃんと画面に映ってる。細かいところまで考えて作ってるんだなぁと思った。

 堀田艦長の「全艦、衝撃に備えよぉぉ!」の命令が緊迫感満点でシビれる。


■ゴジラ、深海へ

 ゴジラへのボンベ装着に成功、開放されたガスの発泡に包まれ、浮力を失ったゴジラは1500mの深海へ一気に沈降していく。

 『ゴジラ-1.0』は、さまざまな形態で上映されてるけど、IMAXで観ると音響に圧倒される。ここでのゴジラ周囲の爆発音、続いて深海へ引き込まれていく海水の音は、全身に響いてくる。まさに ”轟音” だ。

 ゴジラって、普段はどうやって浮いてるんだろう?って疑問を頭の隅に残しつつも(笑)、目はスクリーンへ釘付けだ。

 流石のゴジラも、熱線の放射態勢へ入っていた背びれの輝きが消えたので、それなりの効果はあった模様。
 しかし未だ動きは止められないようで、野田は ”予備作戦” への移行を進言、バルーン展開によるゴジラ引き上げへと進んでいく。

 ところがゴジラはバルーンを食い破り、引き上げ途中で停止してしまう。堀田は駆逐艦2艦による引き上げを始めるが、絶対的な推力が足りない。


■”援軍” 登場

 そこに、水島率いる船団がやってくる。負傷によって作戦から外された彼は、近隣の小型船舶をかき集めて作戦海域へ急行してきたのだ。

 ちりも積もれば山となるではないが、小さい船でも数が揃えば大きな力になるってわけで、首尾良くゴジラ引き上げに成功。

 あんなにたくさんのロープで引っ張られて駆逐艦の艦体は大丈夫なのかとか、ワイヤーは(海水の浮力はあるにしろ)ゴジラの体重に堪えられるのかとか、頭の隅っこに浮かんだけど、そこはツッコんではいけないところ(笑)。

 浮上してきたゴジラは体のあちこちがなんだか爛れたみたいになっていて、かなりのダメージを喰らっているように見える。しかしそれでもなお、熱線放射シークエンスに入ってしまう。このままでは海神艦隊(+水島船団)の消滅は必至だ。


■敷島の決断

 万事休すと思われたそのとき、敷島の「震電」がゴジラに向かって突っ込んでいく。750kgもの爆弾を抱えていたのも、ゴジラと差し違えて倒すため。

 「震電」はまっすぐにゴジラの口へと突入、次の瞬間大爆発が起こってゴジラの頭部が吹っ飛ぶ! そして本体もまた、光を放ちながら崩壊を始め、破片となりながら海中へ没していく・・・

 敷島は・・・一同が呆然とする中、野田が上空のパラシュートを発見する。彼は直前で脱出していたのだ・・・

 橘は、爆弾と同時に脱出装置も装着していたのだった。彼もまた敷島に「生きろ!」と告げていた・・・



■脱出装置

 2回めの鑑賞のとき、「震電」を整備している橘のシーンでコクピットが映ったのだけど、座席の背面に横文字が書いてあったことに気づいた(ドイツ語っぽいと思ったけど、ノベライズ版ではやっぱり「ドイツ製」と明記されてた)。

 ネットで調べたら、圧縮空気を利用した座席の射出装置は、第二次大戦中に既にドイツとイギリスで完成していたらしい。前線の戦闘機に搭載されるまでには至らなかったが。

 この「震電」の射出装置は、橘が進駐軍から手に入れて ”後付け” で装備したものだと思ってたんだが、Yahoo!ニュースの記事で、(映画内の設定として)機体にもともと付いていたのではないか、っていう考察があった。

 日本は大戦中にドイツから潜水艦を使って様々な軍事情報を得ていた。ジェット戦闘機Me262やロケット戦闘機Me163の情報まで手に入れていた。日本がそれを元に「橘花」と「秋水」を建造したのは有名な話だ。
 ならば、ドイツが開発した射出装置もまた潜水艦を使って日本に持ち込まれ、「震電」の試作機に装備されていたのではないか、というもの。

 「震電」は後方にプロペラがある関係で、パイロットが脱出する時にプロペラに接触して負傷する可能性がある。そのため、元々の設計ではプロペラシャフトに爆薬を仕込み、パイロットが機を捨てる際にはそれを使ってプロペラを爆散させる仕組みを取り入れる予定だったという。
 ドイツから射出装置が手に入ったのなら、それを使う方が確実なのは間違いないので、この考察には「なるほど」って思った。

 いくら橘が整備士として有能でも、短時間で射出座席を機体に組み込むのは、流石に無理があるよねぇ。


■生きる

 経緯はともかく、敷島は自ら「生きる」ことを選択した。
 典子の喪失を乗り越え、彼の心を ”生” へと向けさせたのは、明子の存在もあっただろう。「海神作戦」に参加した人々の、諦めずに運命に抗う姿勢もあっただろう。

 でも、いちばん大きかったのは、突入直前に「生き残ったものは、きちんと生きていくべきです」という彼女の言葉を思い出したから、そして何より、いま生きているのは、銀座で彼女が自らの身を挺して守ってくれたから、ではないだろうか。いわば、彼女から ”譲られた” 命なのだから。

 いずれにしろ、この映画のテーマである「生きて、抗え」を体現したシーンだろう。

 生き残ったとしても、敷島を待っているのは典子のいない世界。それでも、生きていく。そういう覚悟をしたのだろう。

■再会

 「海神作戦」を終え、帰港した「雪風」。しかし敷島に笑顔はない。そんなとき、出迎えの人々の中から明子を抱えた澄子が現れ、一枚の電報を渡す。
 それをみた敷島は顔色を変え、明子を抱いて病院へ向かう。そしてそこの病室には・・・典子の姿が!

 包帯姿も痛々しいが、生きていた典子の姿に号泣する敷島。そんな彼に、典子は優しく語りかける。

「浩さんの戦争は、終わりましたか・・・?」

 思えばこの2時間の映画(作中時間では実に2年近い)の間、敷島は悩み、悔やみ、悲しみ、泣き、そして怒りと絶望に苛まれてきた。

 だが、このラストシーンで流した涙は、いままでとは全く違う、温かい喜びに溢れたものだったはずだ。彼の戦争は、まさに今、終わったのだ・・・


 典子は死んだままの方がよかったのではないか、という意見も散見する。まあ、そのほうがドラマとして綺麗に収まるのかもしれない。
 でも、私は思う。2時間の上映時間のうち、1時間59分くらいはずっと悩み苦しんできた敷島に、最後の1分くらいご褒美をあげても罰は当たらないんじゃないか、って。
 頑張った者が報われるとは限らないのは世の常。だからこそ、フィクションの中だけでも、報われて幸せを掴む姿を、私は見たい。

 私はこのラストシーンの後、二人は幸福になったと信じている。


■不穏

 ラストシーンの典子の首筋に、不気味な黒いアザのようなものが浮かび上がってくるという不穏なカットで二人の物語は幕となる。

 ここの解釈は様々だろう。まあ普通に考えれば、ゴジラのまき散らした放射能に被曝したことで、典子の体にこれから何らかの健康被害が起こって来るのかもしれない、ということ。

 ネットには、銀座で剥がれた落ちたゴジラ細胞を典子が体内に取り込んでいて、その生命力のおかげで生き残れた(あるいは甦った)のだろう、って意見があって、それもまた大胆な解釈だと思った。

 ゴジラ映画であるならば、やはり核兵器、そして放射能の恐怖について描かれるのは当然で、むしろ全く触れないのも不自然だろう。

 もちろん、単なるアザで、そのうち消えてしまうって考えることもできる。そう考えられたら精神衛生的にはいちばんいいのだが(笑)。

 もっと大きく考えれば、”核” や ”戦争” の暗喩なのかもしれない。
 ゴジラは去っても、人類は ”核” の力を手にしてしまった。人類文明の陰には、これからもずっと ”核” の脅威が存在し続ける。そして ”戦争” もまた、なくなることはない。

 一見して平和な世界に見えても、その裏には常に ”核” や ”戦争” があり続ける、ということを示しているのかもしれない。

 ハッピーエンドかと思えたラストに、ちょっと不穏な余韻を残すというのはよくある手法で、この映画でもその解釈は観客に任されているのだろう。


■ゴジラ復活?

 そして最後は、深海に沈降していくゴジラの破片の映像。徐々に再生を始めていくような描写でエンドとなる。
 ゴジラは完全に倒すのは不可能な不滅の存在で、いつかまた人間の前に現れる・・・ということだよね。

 山崎監督は「もう1本くらい撮りたい」なんて言ってるらしいから、ひょっとして何年か後に、再び同じ監督によるゴジラ映画が観られるかもしれない。


■おまけ

 プラモデルメーカーのハセガワから、こんな製品が発売されるとアナウンスがあった。

「九州 J7W1 局地戦闘機 震電 『ゴジラ-1.0』 劇中登場仕様」
SP579infor3.jpg


 映画とのコラボ製品ですね。発売は12月27日頃とある。ハセガワの公式サイトにある紹介ページにある「※キットにゴジラは付属しません」という注釈が笑える。

 心が躍って購買欲が刺激されるのだけど、もう50年もプラモデルに触ってないからなぁ。上手く作れる自信は全くない。
 1/48スケールだから全長196.5mm、全幅231mmもあって、意外と大きい。たとえ上手く作れても飾る場所に困りそうだ。うーん、どうしよう・・・


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めとろん

mojoさん、こんばんは。
ご無沙汰しております。

私もこれを観ました。個人的な感想ですが「シン・ゴジラ」よりも琴線に触れました。

シン・ゴジラやシン・ウルトラマンみたいにネットで若い方々も巻き込んだブームにはならないかもしれませんが、さすがヤマト実写版の監督!(もちろん良い意味で)、色々な面でも凄く良かったです。

佐々木蔵之介さん、吉岡秀隆さん、神木隆之介さんの演技もとても素晴らしかったですし、浜辺美波さんもシン・仮面ライダーとは違った面でも素晴らしかったです。

浜辺美波さんの「グランドスラム」大賛成です!
ウルトラシリーズは勿論ですが、グランドスラムというからにはぜひ「宇宙戦艦ヤマト」を加えて欲しいですね(笑)
個人的な妄想ですが、実写版なら森雪、アニメ版の声優なら新キャラの「ゲール君夫人」とかwww

ブログ楽しみに拝見しております。また宜しくお願いいたします。
by めとろん (2023-12-17 16:53) 

mojo

めとろんさん、こんばんは。
お久しぶりですね。
返事が遅れてすみません。

>個人的な感想ですが「シン・ゴジラ」よりも琴線に触れました。

そうですね。「シン・ゴジラ」は ”凄い作品” だと思います。
「ゴジラ-1.0」も凄いんですけど、それよりも、
より ”感情を揺り動かされる作品” でした。
感想の記事をこんなに長々と書くなんて久しぶりでしたから。

ただ、読まされる方は延々と続く駄文に呆れかえったでしょうけど(笑)。


>ネットで若い方々も巻き込んだブームにはならないかもしれませんが、

観に来ている客層が違うこともあるでしょう。
「ゴジラ-1.0」の方が高いんじゃないかな。
私は完全リタイアしたので、平日の昼間とかに観に行ったんですけど
年配の男性が多いのは当然として、夫婦連れや女性もけっこういました。

日本国内の興収は最終で50億くらいと予想されてますが
いま、北米で大ヒットしていて公開3週間で50億稼いでるそうです。
合計すれば100億超えですから東宝はウハウハですね(笑)

演出がクサいとか演技がオーバーとかの批判もありましたが
アメリカの観客にはあれくらいで丁度いいんじゃないかと思います。
監督も案外、そのあたりを意識して作ってたりして。


>さすがヤマト実写版の監督!(もちろん良い意味で)

CGは良かったですね。
ドラマは・・・キムタクが出てる時点で期待しませんでしたが・・・
まああれだけのストーリーを2時間に収める段階で無理がありましたよね。

『ジュブナイル』や『リターナー』とかの初期作品は好きなんですけどね。
”当たり外れが大きい監督” というのが私の山崎監督のイメージ。


>色々な面でも凄く良かったです。

私もそう思います。特に「雪風」とか「震電」とかは、
プラモデル作りにトチ狂った世代には感涙ものでした。


>浜辺美波さんもシン・仮面ライダーとは違った面でも素晴らしかったです。

庵野秀明氏と山崎貴氏からオファーが来るなんて、
何か「持ってる」んでしょうね。


>浜辺美波さんの「グランドスラム」大賛成です!
>ぜひ「宇宙戦艦ヤマト」を加えて欲しいですね(笑)
>実写版なら森雪、アニメ版の声優なら新キャラの「ゲール君夫人」とかwww

浜辺さんは『HELLO WORLD』『金の国 水の国』などのアニメ映画でも
ヒロインのCVを演じてますからね。声優としても達者な方だと思います。

実写版はともかく(笑)、
リメイクヤマトでも、どこかで出ていただけると嬉しいですね。
それにしてもゲール君夫人かぁ。こんなに若い奥さんがいたら羨ましいなぁ。


>ブログ楽しみに拝見しております。また宜しくお願いいたします。

ありがとうございます。

かみさんに「『ゴジラ-1.0』観に行こうよ」って誘ってるんですが
色よい返事をもらえません(T_T)。
ゴジラ史上、いちばん女性に受けそうな作品なんですけどねぇ・・・

かみさんは年末年始の休みには
『翔んで埼玉 琵琶湖より愛をこめて』と『SPY×FAMILY』を
観に行きたいと言ってるので、そこに割って入るのは難しそうです・・・

まあ1月中旬くらいまでは上映してるらしいので何とか説得してみます。


ありがとうございました。
また、よろしくお願いします。

by mojo (2023-12-20 22:05) 

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