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のぞきめ [読書・その他]


のぞきめ (角川ホラー文庫)

のぞきめ (角川ホラー文庫)

  • 作者: 三津田 信三
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2015/03/25
  • メディア: 文庫
評価:★★☆

全体で二部構成。文庫で400ページほどの分量で、
「第一部」が約100ページ、「第二部」が約250ページ。
その前後を「序章」と「終章」で挟んでいる。


「第一部 覗(のぞ)き屋敷の怪」

時代は昭和の終わり頃。
大学生4年の利倉成留(とくら・しげる)は、
山奥の貸別荘<Kリゾート>でアルバイトをすることになった。
バイト仲間は城戸勇太郎(しろと・ゆうたろう)、
阿井里彩子(あいさと・さいこ)、岩登和世(いわのぼり・かずよ)の3人。

管理人の三野辺(みのべ)は、別荘地以外の周囲の山林への立ち入りを
禁じたていたのだが、ある日、和世はその禁を破ってしまう。
巡礼者の母娘に導かれて山道を進み、巨大な岩の前まで行ったという。

それを聞いた成留たちは、4人でその岩まで行き、
さらに、そこから見えた村にまで足を伸ばしてみる。

そこは誰も住んでいない廃村だった。
「鞘落」という表札がかかった大きな屋敷までやってきた4人は、
そこで何者かの ”視線” を感じ、恐慌に駆られて逃げ帰る。

勇太郎と和世は早々とバイトを辞めることにしたが、
帰る途中で勇太郎は事故死してしまい、
和世にもまた ”異変” が起こる・・・


「第二部 終(しま)い屋敷の怪」

昭和10年代。
東京の大学で日本史を専攻していた四十澤想一(あいざわ・そういち)は
友人の鞘落惣一(さやおとし・そういち)から、彼の故郷のことを聞く。

それは梳裂(すくざ)山地にある侶磊(ともらい)村。
周囲の町村からは「弔(とむら)い村」と呼ばれている。

かつて、村に迷い込んだ落ち武者や巡礼者たちを
村人が殺害し、その以来、村に<のぞきめ>という
”憑き物” が現れるようになった・・・という伝説があるという。

その惣一が、民俗調査に出かけた先で崖からの転落死を遂げてしまう。
彼の話に興味を覚えていた四十澤は侶磊村に向かい、鞘落家を訪れる。
そこで彼が体験したのは村の異様な風習、そして怪異の数々だった・・・


作者の作風はホラーとミステリの融合が特徴だが
その比率は作品ごとに異なる。

「刀城言耶シリーズ」では、さまざまな超常的な怪異が頻発するが
最終的にはミステリの枠内で、99%は合理的に説明・解決される。
残り1%ほどは、割り切れないものが残るが
それも ”余韻” として楽しめる。
いわば「ホラー風味のミステリ」だ。

しかし本書は違う。超常的な怪異が頻発するのは同じだが
登場する様々な ”謎” のうち、かなりの部分は合理的な解釈が示される。
しかし、メインである ”超常の存在” は最後まで否定されない。
それゆえ、最後まで恐怖は持続することになる。
「ミステリ要素もあるホラー」という感じか。
本書はこちらの系統に属する作品だ。


私が好きなのはやっぱり前者で、本書のように
最終的に ”怪談” で終わるのは苦手です。

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BLOOD ARM [読書・SF]


BLOOD ARM (角川文庫)

BLOOD ARM (角川文庫)

  • 作者: 大倉崇裕
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/05/25
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

周囲を山で囲まれた町・中の平(なかのひら)では、
近年、原因不明の地震、そして停電が頻発していた。

近くにある黒岩山には、最近になって
何かの研究施設と思われる施設が建設され
その横には巨大なパラボラアンテナまで出現した。

中の平でフリーターをしている青年・沓沢淳(くつざわ・じゅん)は
配達を頼まれて近くの集落・上の平(かみのひら)へ向かうが、
そこで彼が見たものは住人たちの死体、
地鳴りとともに崩壊していく家々だった。

そして、突如現れた巨大な触手が淳を襲ってきた。
必死に逃げ回る彼を救ったのは、
白衣の美女・御堂怜子(みどう・れいこ)。

謎の触手のことを知っているらしい怜子とともに、
淳は黒岩山の施設を目指すことになる。
そこには、”怪物” への対抗手段があるらしい・・・


ここまで読んできたならお分かりかと思うが
本書は「怪獣小説」である。

「怪奇大作戦」や「ウルトラQ」みたいな導入部から
やがて ”怪獣” の本体が出現し、そこから命からがら逃げてきて
黒岩山の施設に到着した二人は、いよいよ反撃を開始する。

 ”パラボラアンテナ” って単語を聞いて
 ”マーカライトファープ” とか ”メーサー殺獣光線車” とか連想した人、
 あなたは私の ”同類” です(笑)。

しかし、 ”怪獣” がそう簡単に倒せるはずもない。
絶体絶命の危機に陥った二人は、ついに ”最終兵器” の起動を決断する。

いったい何が始まるのかは、読んでのお楽しみなんだけど
「ゴジラ」をはじめとする東宝特撮映画や円谷プロ作品、
そして膨大なアニメ群を見て育ってきたサブカルオタクの方ならば、
期待を裏切らない展開になってると思う。


表題作以外に、巻末には文庫で40ページほどの
短編「怪獣チェイサー」が収録されている。

こちらは怪獣小説アンソロジー「怪獣文藝の逆襲」に
収録されていたもので、怪獣が日常的に出現する世界を舞台に、
怪獣に至近距離まで肉薄して動画を撮り、
それをネットの動画サイトに投稿して金儲けをしている
”怪獣チェイサー” の一人である星野研介と
怪獣撃退を担当する「怪獣省」の ”予報官”・岩戸正美の出会いを描く。

こちらも怪獣ファンにとっては楽しい作品になっていると思う。

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爆撃聖徳太子 [読書・歴史/時代小説]


爆撃聖徳太子 (PHP文芸文庫)

爆撃聖徳太子 (PHP文芸文庫)

  • 作者: 町井 登志夫
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2012/07/17
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

タイトルからしてぶっ飛んでるんだけど、内容もぶっ飛んでる。
とは言っても、聖徳太子がB29に乗って
どこかに爆弾を落としに行くとかいう話ではない(当たり前だ)。

いちおう飛鳥時代を舞台にした古代史小説・・・なんだろうなぁ。


タイトルこそ「聖徳太子」となっているのだが、
視点人物は小野妹子(おののいもこ)である。

西暦590年、若き小野妹子は北九州の地で、
大陸からの難民が押し寄せているのを見る。
中国大陸に起こった帝国・随が周囲の隣国を次々に従え、
それに追われた人々が海を越えて倭国(日本)にやってきていたのだ。
随の次なる征服目標は朝鮮半島、そして琉球。

既に琉球には随の皇帝から服属を促す使者がやってきていた。
琉球の長たちからの援軍要請を受けた厩戸皇子は、
朝廷に無断で琉球に渡ってしまう。
どうやら、勝手に随と戦いを始めてしまうつもりらしい。

慌てた朝廷は皇子を連れ戻すために
小野妹子と蘇我蝦夷(そがのえみし)を遣わすのだが・・・


上に書いた文章で出てきた皇子の行動からも分かると思うが
本書に登場する聖徳太子は、とんでもないキャラクターである。

「うるさああああい」と叫びながら
あたりかまわず走り回ったりするなど
とにかく突拍子もない行動をとり、蘇我蝦夷からは
「気の触れた奴」とか「たわけ野郎」とか呼ばれている。

 なぜかキリストの生誕のエピソードは知っているらしく、
 時折自分のことをキリストになぞらえることもあったりする。

しかし、そんな皇子の奇矯な行動は、彼に備わった一種の ”超能力” に
由来するものだということが次第に明かされていく。

同時に、未来を見通す目を持っており、
近い将来、隋が朝鮮半島と琉球を手に入れたら次の目標は倭国になる。
彼が琉球防衛に暴走するのもそれが理由だった。


その後、遣隋使となった小野妹子だが、皇子の ”悪縁” は途切れず、
(というか、皇子に無理矢理引き込まれて)
いよいよ半島への侵攻を始めた隋の大群に対して、
徹底抗戦する高句麗軍に加わり、各地を転戦する羽目になる。

終盤のクライマックスは、遼東城に立てこもる高句麗軍と、
その周囲を固めた隋の大軍との壮絶な籠城戦。

ここが落ちれば半島は隋の支配下となり、隋軍の矛先は倭国へ向かう。
まさに背水の陣で臨む高句麗軍&小野妹子に対して隋軍は、
あるときは物量にものを言わせて、あるときは奇手奇策を用いて
着実に高句麗軍の戦力を削り取っていく。

絶望的なまでの彼我兵力の差に、
妹子の命運も尽きたかと思われるが・・・
ここの攻防戦だけでも本書を読む価値があると思う。


聖徳太子のイメージといえば、コミック『日出処の天子』(山岸凉子)が
まず頭に浮かんでしまうんだが(それも如何なものかと思うが)
本書の聖徳太子もまたユニークで、”人知を超えた存在” という意味では
案外共通しているのかも知れない。

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死香探偵 尊き死たちは気高く香る [読書・ミステリ]


死香探偵 - 尊き死たちは気高く香る (中公文庫)

死香探偵 - 尊き死たちは気高く香る (中公文庫)

  • 作者: 喜多 喜久
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2018/01/23
  • メディア: 文庫
評価:★★★

主人公・桜庭潤平は特殊清掃員として働いている。
特殊清掃とは、孤独死した住人の部屋を、
腐乱した遺体を含めてきれいに ”清掃” すること。

しかし潤平は、仕事を続けているうちに
遺体の放つ屍臭を「いやな臭い」ではなく「食べ物の香り」に
感じるような特殊体質になってしまったのだ。

しかしある日、清掃現場に現れたのは
東京科学大学の薬学部准教授・風間由人(よしひと)。
彼の研究テーマ「犯罪捜査に用いる分析技術の研究」のための
データ収集にやってきた彼は潤平の特殊能力に気づき、
半ば無理矢理に、助手にしてしまう。

殺人事件の現場に連れ出された潤平が感じた”香り”から、
風間は事件の真相に迫っていく。
本書には、二人の活躍する4編が収録されている。


「第一話 交じり合う死は、高貴な和の香り」
「第二話 君に捧げる死は、甘い菓子の香り」
「第三話 毒に冒された死は、黙して香らず」
「第四話 裁きがもたらす死は、芳(こう)ばしき香り」


作家さんというのは、途方もないことを考えつくものだと
いつも感心しているのだけど、これもまた驚きの発想だ。

ただまあ、モノが屍臭なのには、ちょっと引いてしまうなぁ。
ここ10年ほどの間に、かみさんの両親や
自分の父親を見送った身からするとねぇ・・・


さて、潤平君には困った副作用がある。
たとえば、ある遺体の屍臭を ”炊き上がったご飯の香り” って
感じたとして、遺体の処置は済んで時間が経ってくると
今度は本物の ”炊き上がったご飯の香り” が
耐えられない悪臭に感じられるようになって、
ご飯を食べられなくなってしまうのだ。

つまり、彼が遺体に接すれば接するほど、
食べられるものがどんどん減っていってしまうという
悲しい運命が・・・

本書の中では、いまのところ彼の副作用は解消していない。
物語はさらに続くので、次巻以降で解決されることを祈りましょう。
だって解決されなかったら、
いつの日か潤平君は餓死してしまうからねえ・・・

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宇宙軍士官学校 -前哨- 1~6 [読書・SF]


宇宙軍士官学校―【前哨/スカウト】― 1 (ハヤカワ文庫JA)

宇宙軍士官学校―【前哨/スカウト】― 1 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 鷹見 一幸
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2012/07/24
  • メディア: 文庫
宇宙軍士官学校―前哨(スカウト)― 2(ハヤカワ文庫JA)

宇宙軍士官学校―前哨(スカウト)― 2(ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 鷹見 一幸
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2012/11/22
  • メディア: 文庫
宇宙軍士官学校―前哨― 3 (ハヤカワ文庫JA)

宇宙軍士官学校―前哨― 3 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 鷹見 一幸
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2013/04/24
  • メディア: 文庫
宇宙軍士官学校―前哨―4 (ハヤカワ文庫JA)

宇宙軍士官学校―前哨―4 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 鷹見 一幸
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2013/11/22
  • メディア: 文庫
宇宙軍士官学校 -前哨-5 (ハヤカワ文庫JA)

宇宙軍士官学校 -前哨-5 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 鷹見 一幸
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2014/06/20
  • メディア: 文庫
宇宙軍士官学校-前哨-6 (ハヤカワ文庫JA)

宇宙軍士官学校-前哨-6 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 鷹見 一幸
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2014/11/21
  • メディア: 文庫
2012年7月から始まった、大河スペースオペラ・シリーズ。
年に3~4冊のペースで現在も続巻が刊行中で
この文章を書いている段階で17巻まで出ている。

ストーリーが連続していることと、いつ終わるのか分からないことで
どの時点で読書録を書くべきか悩んでるんだけど、
とりあえず第1部(だと思われる部分)が12巻までなので
半分の6巻まで読んだところでいったん記事にしておこうと思った。

 だから次回は12巻まで読んだところで記事にして、
 その後は随時、って感じになりそう。


西暦2015年。この年、人類は異星人<アロイス>と
ファースト・コンタクトを果たした。
以来15年。人類は地球の統一を果たし、異星人がもたらした
オーバーテクノロジーで空前の繁栄の時を迎えていた。

そんな2030年に物語は始まる。
地球人へのオーバーテクノロジー提供の代償は、
優秀な若者/子どもたちを戦士として提供することだった。

主人公・有坂恵一は、地球各地から集められた若者たちの一人。
彼らは巨大ステーション<アルケミス>で、過酷な訓練の日々を迎える。

彼らは、近い将来に結成されるであろう ”地球軍” の
中核を占める指揮官として養成されていることが早々と明かされる。

やがて、<アロイス>を含む異星人たちの連合組織 ”銀河文明評議会” が
”粛正者” と呼ばれる謎の勢力と交戦中であることが明らかになる。

 ちなみに評議会のメンバーの異星人たちの多くは、
 ほぼ人類に近い生態/メンタリティをもつようで、
 太古に同一種の生命が宇宙に播種された可能性も仄めかされている。

一方、”粛正者” とは一切の交渉/対話が不可能で、
彼らの目的は徹底的な破壊と殺戮のようだ。

”粛正者” は、はじめ高度な文明を持つ星系を狙って侵攻していたが
当然ながらそんな星系は抵抗も激しく、侵攻失敗率も高い。そこで彼らは
200年ほど前より、未成熟な文明の星を主に狙うようになったという。

つまり地球は ”粛正者” からしたら格好の餌食なわけで、
太陽系を侵略者に対する橋頭堡にしようという ”銀河文明評議会” と
滅亡を回避したい人類との利害は一致するわけだ。

かくして恵一たちは、地球防衛の要となるべく訓練を受けている。
そんな訓練生たちの過酷な試練の日々が描かれていく。


まずは、主人公・有坂恵一の ”出世” の物語として読めるだろう。
候補生たちの中の一人だった彼が、訓練を通じて次第に頭角を現し
やがて訓練生のリーダーへになっていく。

さらに上位の訓練では、彼らを率いて訓練航海の艦長をこなし、
訓練生一人一人が各艦の艦長となった艦隊では、
その総指揮をふるうようになる。

訓練生同士の友情、ライバルとの反目などは学園もののノリだし
恋愛模様にはライトノベル的な雰囲気もあるだろう。
でも、私がいちばん感じたのは一種の ”懐かしさ” だった。

銀河レベルの異星人連合なんて50年代黄金期のスペースオペラだし
恵一が訓練戦艦のブリッジから指揮を飛ばすシーンや
圧倒的戦力で太陽系に迫る敵なんて設定には「ヤマトだなあ」と感じたり
巧みな戦術戦略で相手を打ち破るところに「銀英伝」の影響を見たり。
それ以外にも、私の気づかないところで
過去のSF小説やSFアニメなどを上手く取り込んでいるんだと思う。

寄せ集めと言ってしまえばそれまでなんだが、
よく言えば ”いいとこどり” をしていて、
かつバランスの取り方がうまいんだろうと感じる。

5巻では、ついに太陽系に ”粛正者” の探査機が現れ、
実戦投入された恵一たちは本格的な戦闘を経験する。

そして6巻では、人類は ”銀河文明評議会” へ地球防衛のための
増援を求めて、<アロイス>よりもさらに上位の種族のもとへ向かう。
そこで恵一たちは、さらなる運命の変転を迎える。

いまのところ、とても楽しく読ませてもらっている。
あとまだ未読の巻が10巻以上あるなんて嬉しいじゃないか。

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春から夏、やがて冬 [読書・ミステリ]


春から夏、やがて冬 (文春文庫)

春から夏、やがて冬 (文春文庫)

  • 作者: 歌野 晶午
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2014/06/10
  • メディア: 文庫
評価:★★

スーパーマーケットの保安責任者・平田は
万引き犯の末永ますみを捕まえる。
いつもなら警察に引き渡すのだが、彼女の免許証に書いてあった
生年月日を見た平田は、彼女をそのまま解放する。

7年前、平田の娘・春夏(はるか)は死んだ。轢き逃げだった。
警察の捜査も、妻とともに行った情報提供を求める運動も虚しく
事件は時効を迎えてしまう。
やがて妻は心を病み、平田は家庭をも失ってしまう。
娘の死に対して自責の念に苛まれる平田は仕事への情熱も失い、
自ら系列会社のスーパーの保安部長へと異動していった。

末永ますみは高校を中退、その後務めていたスナックをクビになって
いまはリョウというDV男と同棲中だった。

彼女は、春夏と同年の生まれだった。
万引きを見逃したことをきっかけに、
ますみは平田の前にしばしば現れるようになる。

ますみを邪険に扱う平田だったが、困っている様子は見捨てておけず
何かと世話を焼くようになっていく。

ふたりは擬似的な親子関係のような状態になっていくのだが
周囲はそれを ”男女の関係” であろうと邪推する。
しかし平田はそれを一向に意に介さない。
そんな中、ますみは平田の過去を知ってしまう・・・

そして、ページ数で残り1/4ほどのところで
事態は急展開を告げるのだが・・・


起こる事件自体は単純なんだが、
その背後に隠された ”真相” は二転三転する。

まず平田の境遇が悲惨の一語だ。
これほど不幸で、先の展望が見えない主人公も珍しいだろう。
ますみも幸福とはお世辞にもいえず、こちらも薄幸な娘だ。

そんな二人が出会うことによってこの物語が動き出すのだが、
最後まで読み終わってみると虚しさ、やるせなさが残るばかり。

ミステリとしてはよくできているとは思うが、
読み終わってどどーーんと落ち込んでしまうのは辛い。

ユーモアミステリでもない限り、犯罪を描く以上は
ある程度の闇を描かざるを得ないのは十分承知なのだけど
ここまで悲しい読後感をもつ作品は苦手です。

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天冥の標 I メニー・メニー・シープ 上下 [読書・SF]


天冥の標〈1〉―メニー・メニー・シープ〈上〉 (ハヤカワ文庫JA)

天冥の標〈1〉―メニー・メニー・シープ〈上〉 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 小川 一水
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2009/09/30
  • メディア: 文庫
天冥の標〈1〉―メニー・メニー・シープ〈下〉 (ハヤカワ文庫JA)

天冥の標〈1〉―メニー・メニー・シープ〈下〉 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 小川 一水
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2009/09/30
  • メディア: 文庫
「天冥の標(てんめいのしるべ)」とは、2009年9月から
文庫書き下ろしの形で刊行が始まった大河SFシリーズのこと。

シリーズそのものは2019年2月に最終巻が刊行されて完結、
全10部、計17巻というボリュームの大作となった。

内容的には一種の「未来史もの」といえるだろう。

アシモフのファウンデーション・シリーズもそうだったし
ハインラインも、初期の作品群は同一の未来史に属していたはず。
ラリー・ニーヴンの「ノウン・スペース」シリーズとか
フランク・ハーバートの「デューン」シリーズとか・・・懐かしいねえ。

日本でも谷甲州の「航空宇宙軍史」とか
田中芳樹の「銀河英雄伝説」なんかも未来史ものだよねえ。
眉村卓の「司政官」シリーズなんてのもあったなあ・・・

閑話休題。


先輩作家たちの有名なシリーズに新たな1ページを加えようというのが
この「天冥の標」シリーズなのだろう。


さて、第1巻は西暦2803年、
人類の入植以来、300周年を迎えようという
植民星「メニー・メニー・シープ」から始まる。

この星の地殻からは化石燃料がほとんど産出しないため、
唯一と言っていいエネルギー源は植民船シェパード号の動力炉。
そのコントロールを握る一族が ”臨時総督” として惑星を支配していた。

 もっとも、エネルギーが不十分なためか、
 メニー・メニー・シープではごく狭い範囲にしか植民が進んでいない。

しかし近年、臨時総督ユレイン三世は、
地下深くに眠るシェパード号の発電能力が不調を来している、
という理由で植民地全域への配電を制限し、
住民たちへの弾圧を強めつつあった。

そんな中、セナーセー市で謎の疫病が蔓延する。
市井の医師カドムは、治療に当たりながらもその感染源を突き止める。
それは謎の怪物 ”イサリ” だった。

疫病そのものは、太古から伝わる抗ウイルス薬で
食い止めることに成功(ついでに病名も「冥王斑」と判明)するが、
イサリは臨時総督府に連れ去られてしまう。

やがて、弾圧に耐えかねた人々は総督府へ反旗を翻す。
そして<海の一統>の若きリーダー、アクリラは
総督府の支配の及ばない土地を求めて旅立つが、
彼方の地で彼が見たのは驚くべき光景だった・・・


およそ800年後の未来から始まる物語なので、
当然ながら意味の分からない言葉や設定、謎が頻出する。

「ダダー」、「ドロテア」、「石工(メイスン)」とは何か?
「冥王斑」とイサリにはどんな関係があるのか?
人間に性愛で奉仕するアンドロイドである《恋人たち》(ラヴァーズ)。
そして、ラスト近くで現れる《咀嚼者》(フェロシアン)・・・


ストーリーの行く末としては、
植民者たちが圧政を敷く総督を倒してめでたしめでたし・・・
っていくと思うのだが、ところがどっこい、意外な展開を迎える。
物語は収束するどころか、逆に制御不可能とも思えるような
大暴走が始まったところでページが尽きるのだ。

「えーっ、ここで終わりぃ?」って誰もが思うだろう。
そして、続巻を待つのだろうけど・・・

実は第2部である「天冥の標 II 救世群」は
「I」の続きではないのである(なんと!)。

物語は2015年の地球に戻り、疫病「冥王斑」の世界的なパンデミックと
タイトルにある《救世群》という ”組織” の誕生が描かれるのだ。

第3部である「天冥の標 III アウレーリア一統」の舞台は西暦2310年。
「I」に登場した<海の一統>の先祖たちが、
「ドロテア」を巡って太陽系狭しと大活躍するスペースオペラ。

実はこの文章を書いている時点で
第4部「天冥の標IV 機械じかけの子息たち」を
読んでいる途中なのだけど、西暦2313年を舞台に
《恋人たち》の少女と《救世群》の少年が主役になって、
なんとも淫靡な物語が展開している。

つまりこのシリーズは、未来史であると同時に
一冊ごとは異なる作風で書かれていて
まさに小川一水という作家が、持てる引き出しを
全開にして構築している、一世一代の作品群なのだろう。

巻が進むにつれて時間も未来に向かい、様々な設定も明かされ、
そしてどうやら第8部あたりで第1部の時間軸に追いつくらしい。
だからこの「メニー・メニー・シープ」の行く末は
そこまで読み進めないと分からないわけだ(おいおい)。

現在のところ、月1冊のペースで読んでるので
読み終わるのは来年の今頃かな・・・

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「階段島」シリーズ 全6巻 [読書・ファンタジー]


いなくなれ、群青 (新潮文庫nex)

いなくなれ、群青 (新潮文庫nex)

  • 作者: 河野 裕
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/08/28
  • メディア: 文庫
その白さえ嘘だとしても (新潮文庫nex)

その白さえ嘘だとしても (新潮文庫nex)

  • 作者: 河野 裕
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/05/28
  • メディア: 文庫
汚れた赤を恋と呼ぶんだ (新潮文庫nex)

汚れた赤を恋と呼ぶんだ (新潮文庫nex)

  • 作者: 河野 裕
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/12/23
  • メディア: 文庫
凶器は壊れた黒の叫び (新潮文庫nex)

凶器は壊れた黒の叫び (新潮文庫nex)

  • 作者: 河野 裕
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/10/28
  • メディア: 文庫
夜空の呪いに色はない (新潮文庫nex)

夜空の呪いに色はない (新潮文庫nex)

  • 作者: 河野 裕
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2018/02/28
  • メディア: 文庫
きみの世界に、青が鳴る (新潮文庫nex)

きみの世界に、青が鳴る (新潮文庫nex)

  • 作者: 河野 裕
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/04/26
  • メディア: 文庫
評価:★★

2014年から、ほぼ年1冊のペースで刊行されてきたシリーズが
今年の4月末に最終巻が出て完結した。

そのうちまとめて読もうと思っていたんだが
9月には「いなくなれ、純情」というタイトルで
映画化されるとの情報が入ったので
その前に6冊まとめて読むことにしたという次第。


舞台となるのがシリーズ名にもなっている「階段島」。

文字通りどこかの海に浮かぶ島で、島のなかに長い階段がある。
港に近い街からはじまり、途中に学校(中高併設)があり、
さらに島の最高部(山頂)にまで続いている。
そこには「魔女の館」があると噂されているが、
なぜか頂上まで行き着いた者はいないという。

この島は外部に対して閉ざされている。
携帯電話の電波は届かず、インターネットは閲覧のみ可能で
メールの送受信は不可能。でも通販の注文は可能なようで
生活に必要な物資とともに、定期的に島にやってくる貨物船で届く。
しかし、その船に乗って島から出ることはできない。
過去に何人か密航しようとしたがことごとく失敗したという。

島には2000人ほどが暮らしているが、
みんな島に来たときの記憶を持っていない。
ある日気がつくと、この「階段島」にいたというわけだ。

それでも、大きな混乱もなく、みな平穏に暮らしている。
中学生・高校生は寮から学校へ通い、
大人は街で仕事をして生きている。

この島で暮らす人々の間では、次のような噂が流布している。
ここは ”捨てられた人間” が行き着く場所で
”失くしたもの” を見つける以外に島を出る方法はない・・・


読んでいくと、この島は一種の ”異世界” で、
”現実世界” とは別の時空に存在しているのがわかってくる。
日本政府の極秘管理エリアとか、
宇宙人迎撃のための秘密基地とか、そんな物騒なもの(笑)ではない。

この世界の正体は、シリーズ中ではかなり早めに明らかになるのだけど
設定的には「ファンタジー」といっていい。


主人公は高校1年生の七草(ななくさ)。
彼は8月の終わりにこの島へ ”やって来た”。

そして11月の終わり、一人の少女が島へ ”現れる”。
彼女の名は真辺由宇(まなべ・ゆう)。
小学校の頃からの七草の幼なじみで
中学2年のときに転校していった。
(第1巻表紙イラストのセーラー服の少女が由宇)
2年ぶりの二人の再会からこの物語は始まる。

島の高校に通っていた七草は、
快活なゲームフリークの佐々岡、寡黙な少女・堀、
優等生で委員長の水谷という、
クラスメイトたちと平穏な日々を送っていた。

しかし由宇の出現は、七草の生活に波紋を広げていく。

さらに、小学2年生の相原大地が ”やって来た” ことも
七草たちを戸惑わせる。
この島に来る人々は皆、中学生以上の年齢で小学生が来ることは
今までなかったのだから。
この ”イレギュラー” はなぜ起こったのか?
彼はなぜこの島にやってきたのか?

この二人に加え、中盤以降には安達(あだち)という
”謎めいた少女” が現れ、物語の波乱要素になっていく。


文庫裏表紙の惹句には「心を穿つ青春ミステリ」なんて書いてあるが
ミステリ要素は極めて希薄で、事件らしい事件もほとんど起こらない。

もっとも大きな変化は、登場人物間の関係だろう。

七草は由宇たちとともに、島に秘められた謎や
大地の抱えた事情などに関わっていくことになる。
そんな中、七草は由宇との関係をしばしば自分に問うことになる。


本シリーズを読んでいて、いちばん感じたことは
「よくわからないなぁ・・・」ということだった。

島の秘密や大地の境遇などはそれなりに理解できるのだけど
七草・由宇・堀・安達たちメインキャラの頭の中が
さっぱり分からない(笑)。

いや、分かったかな、と思うときもあるのだけど
読んでいくうちにまた分からなくなる。

本書に登場する彼ら彼女らは、人間が子どもから大人になるときに、
盛大に脱ぎ散らかしてしまうもろもろを
一つも捨てずに大事に抱えている人たちばかり。

会話自体も観念的な事柄が多くて・・・
まあ、そんなキャラたちが生活できる場所として
この島を設定したんだろうけどね・・・


七草と由宇のラブストーリーとしてみても、よくわからない。
完璧主義者の七草が由宇に抱くのは「信仰」で、
理想主義者の由宇が七草に抱くのは「信頼」で。
(このへんはなかなか一言では説明できないんだが)

まあ、そういうところが「恋」であり「愛」なんだろうけど
当事者たちがそう思ってないところがいちばんの問題か。
見ようによっては「一途な純愛」といえなくもないんだけど
こんなに回りくどいのは読んでいて疲れる。

 まあ由宇さんの性格が、およそ恋愛向きではないというか、
 いかにも世渡りが下手というか(理想が高すぎるという意味です)。
 そのへんが原因ですかね。

 最終巻のエピローグまで読むと、
 どうやら七草も由宇も ”大人” になったのかも知れないな・・・
 って思えましたけど。

結局、最後まで彼ら彼女らの頭の中はよく分かりませんでした。
もっとも、「青春」というもの自体、よく分からないもの(笑)なので
仕方がないと言えばそれまでなのですが。


まあ、感性の鈍ったオジさんのたわ言なので聞き流してください。
若い人にはまた違った感想もあるのでしょう・・・

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キングを探せ [読書・ミステリ]


キングを探せ (講談社文庫)

キングを探せ (講談社文庫)

  • 作者: 法月 綸太郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/09/15
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

名探偵・法月綸太郞シリーズの一編。
発表当時、さまざまなミステリ・ベストテンに
上位でランクインした作品でもある。


今回のテーマは交換殺人。それも、一対一の交換なんぞではなく、
なんと四重交換という ”荒技” が描かれる。

繁華街のカラオケボックスに集まった4人の男。
お互いを「夢の島」「イクル君」「カネゴン」「りさぴょん」という
ニックネームで呼び合う彼らは、
交換殺人の計画を詰めるために集まったのだ。

 彼らがどういう経緯で知り合ったのかも、ちゃんと説明される。

4人はトランプのカードをくじ代わりに引いて、
それぞれが ”担当するターゲット” と、
”実行する順番” を決めて別れる。

 タイトルの「キングを探せ」はここからきている。


メンバーの一人「夢の島」は、再婚した妻・妃名子(ひなこ)を
殺してもらう予定だった。彼女は結婚後にうつ病を発症、
自分には生きる価値がないと思い込み、いつ自殺しておかしくない
”希死念慮(きしねんりょ)” という状態に陥っていた。
しかし、いま自殺されては生命保険金が下りない。
そこで自殺する前に殺してもらおうというわけだ。

カードのくじ引きの結果、実行犯1号と決まった「夢の島」は
遺産相続を目論む「イクル君」の伯父・安斎秋則の殺害を実行する。

続いて妃名子の絞殺死体が発見され、
夫の渡辺清志(つまり彼が「夢の島」であるわけだ)が
容疑に浮かぶが、アリバイが成立して容疑から逃れる。


一方、殺人事件に追われる法月警視と綸太郞は
さまざまな仮説/推理を立てていくが
最初のうちは多重交換殺人なんて発想そのものがないから
かなりの迷走をしていく。

しかし、さすがに綸太郞はそのままでは終わらない。
やがて、渡辺清志が目論んだ保険金代理殺人ではないか、
という切り口から、次第に実行犯に迫っていく。

当然、犯人側も自分たちの計画がバレつつあるのを察知する。
そして捜査の方向をそらすために、意外な ”行動” に打って出る。
もちろんその裏には巧みな ”詐術” が隠されているわけで・・・

そしてもちろん、それを受けて立つのは名探偵・法月綸太郞。

このあたりは紹介が難しい。かなり込み入っているのだけど
おそらく作者が最も注力した部分で、本作の目玉でもあるので
興味を覚えた人はぜひ読んで確かめてください。


この作品は、最初から犯人が分かっているわけで
(当然、読者も犯人を知っているから)
一種の倒叙もののように始まるのだけど
中盤からは犯人側と探偵側の頭脳戦が始まり、
終盤では本格ミステリとして決着するという、
かなりの技巧を凝らした作品だ。

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小説 「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たちⅣ 《女神降臨》」 [アニメーション]


小説 宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち (4)

小説 宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち (4)

  • 作者: 皆川 ゆか
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/02/28
  • メディア: コミック
同題のアニメーションのノベライズ、第4巻。

表紙には、なにやら儚げな瞳のサーベラーさんが。
本編で明かされた彼女の ”過去” や、最終章での運命を思うと
この表情にも納得か・・・


テレザート星でのゴーランド艦隊との決着(13話ラスト)から幕を開け、
ザバイバル出撃、空間騎兵隊と地上戦車部隊との交戦へと続く。
特に機動甲冑の戦いに多くページを割き、じっくり描いている・・・
のはいいのだが、斉藤とザバイバルの対決が
終わった時点(14話半ば過ぎ)で220ぺージあたり。
この4巻は総計440ページほどなので、ほぼ半分。
この分量でアニメ約1話分というのは、いいのか悪いのか。

 まあ、私は楽しんで読んだのでかまわないんだけどね。

戦闘のさなか、艦長席から古代や島たちを眺めて
土方が沖田のことを想うシーンがいい。

イスカンダルへの大航海で彼らクルーたちを鍛え上げ、
<ヤマト>というフネを ”完成” させた、亡き友への感慨に耽る。

そして、3年前での戦いと今回の戦いでは目的が異なり、
それゆえに異なる戦術が必要になることまで見通して、
クルーたちへ的確な指示を下していく。

 このノベライズでの土方の描き方は、素晴らしいの一言だ。


そしてテレザリアムでのテレサとの対話へと進む。
語られる内容はアニメ版14話終盤とほぼ同じだのだけど、
最終章まで観た上でここを読むと、
アニメ初見時とはまた違う感想を持つだろう。


本書の後半は、アニメ通りにデスラーが主役となる。
およそ100ページにわたってデスラーの幼少時からの物語が
テレサによる ”二人称” で語られる。

 まあ簡単に言うと ”テレサがデスラーに向かって語りかける形式”
 で綴られていく、っていうこと。
 ”二人称” 自体珍しく、なかなか斬新な趣向だ。

ここでも、イスカンダルを含めたガミラスの過去に触れたり
ゼーリック(懐かしいねぇ)をはじめとして
「2199」で登場したキャラたちの活躍が描かれたり、
幼いランハルトとアベルトのエピソードとか、
このあたりはデスラー/ガミラスファンへの大サービスだろう。

アニメではカットされてしまった、
デスラー艦隊のテレザート星到着シーンとかもちゃんと描かれて
物語のつながりもよりわかりやすくなっている。

 ノベライズ版の筆者は本編の補完が目的じゃないって
 言ってるみたいだけど、アニメを観たのなら、
 絶対このノベライズ版も読んだ方がいいと思う。


読み終わってみればこの4巻では、
13話のラスト部分から15話のラスト部分までしか進んでない。
アニメ2話分に400ページというとんでもなく贅沢な作りなんだが
それだけ元の話の情報量が(本来は)多かったということなんだろう。

アニメのほうはまだ11話分も残ってるんだが、
はてノベライズは何巻までかかるのかなあ。
この調子でいったら、もう3巻くらいかかったりして。
まあ長い分には大歓迎だけどね。


さて、このブログで書いてきた「ヤマト2202」の
「感想・・・のようなもの」最終章パートもずっと宿題のまま。

3/21に「その0」を書いてupしたら、なんだか
言いたいことの大半を吐き出してしまったような気がして。

さらに退職&異動の慌ただしさに追われてしまって(言い訳にして?)
それ以降、筆が止まってしまっている。

でも最近、少しずつ書きたいことが貯まってきたような気もするので
お盆休みあたりにでもゆっくり考えてみようかなぁ・・・。


ちなみに、読書録3月分はこれで終了。
3月は身辺整理に忙しくて、読んだ本自体がもともと少なかった。
それでも、退職前に最後に読んだ本が「ヤマト」だったというのは
なにかの巡り合わせですかねぇ・・・

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