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#拡散希望 その炎上、濡れ衣です [読書・冒険/サスペンス]


#拡散希望 その炎上、濡れ衣です (宝島社文庫)

#拡散希望 その炎上、濡れ衣です (宝島社文庫)

  • 作者: 冨長 御堂
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2023/03/07
  • メディア: 文庫
 

評価:★★★☆


 ウエディング・プランナーの藍原ひかるは、同僚が手掛けた披露宴でのトラブル収拾に手を貸した。しかし、新婦からの投稿で式場が ”炎上” してしまう。
 そしてなぜか、その矛先がひかるに向かってくることに・・・

* * * * * * * * * *

 ホテルチェーン「ハルモニア上野」の婚礼部で、ウエディング・プランナーとして働く藍原(あいはら)ひかるは、顧客からの評判も高く、社内でも指折りの評価を得ていた。

 そこを訪れたのが、野間口修平(のまぐち・しゅうへい)と麻生詩絵里(あそう・しえり)のカップル。二人の担当となったのは、ひかるの同僚の美濃昭彦(みの・あきひこ)。

 美濃は外部から転職してきて、その後はあちこちの部署を転々としてきた。婚礼部への異動も二度目。その理由は、ストーリーの進行とともに明らかになっていくのだが、要するに "使えない奴" なのだ。
 ひと言で云えばズボラ。根拠が無いくせにやたら楽観的なので仕事は遅いし、顧客との大事な約束事も忘れる。報告や連絡も穴だらけ。困っても相談など一切しない、というか自分が困った状況になっていることに気づかない。

 そんな奴がなんでクビにならないんだ・・・と思うところだが、なぜかのうのうとしている。その理由は後半になって明らかになるのだが、まあ予想通りの背景がある。

 その美濃が担当する野間口・麻生カップルもまた、家庭内にいろいろな事情を抱えてるらしく、式の内容がなかなか決まらないし、そのせいか何度も会場まで足を運んでくる。
 普通のカップルよりも、より注意深く対応する必要があるカップルに対し、よりによって一番関わってはいけない人物が担当になってしまった・・・ここに今回の騒動の根幹がある。

 当然ながら式はトラブルの連続となり、途中からヘルプに入ったひかるの尽力でなんとか収拾して終わった。しかし夫妻の怒りは収まらず、式場へ抗議にやってきた。

 美濃と婚礼部のマネージャー・大森が対応に当たるが、その際、夫妻の追求を逸らすために、トラブルの原因となった人物としてひかるの名を挙げ、責任を押しつけてしまう。

 式場の対応に納得できない夫妻は、SNSに投稿してしまう。さらに悪いことに、新婦・詩絵里の友人・根岸公恵(ねぎし・きみえ)が、夫婦を "応援" すべく過激な投稿を続ける。どんどん騒ぎは広がり、事態は収拾不能状態に。
 かくして、ネット上には『A原、死んで詫びろ』という書き込みがあふれかえることに・・・

 自分のあずかり知らぬところで炎上騒ぎの当事者となってしまったひかるは茫然自失してしまう。
 当然ながら上司たちはひかるを庇うどころか、職場から隔離し、野間口夫妻と接触させまいとする。
 しかしそれは夫妻からすれば「責任者が逃げている」と受け取られ、火に油を注ぐ結果になってしまう。

 絶体絶命の危機に陥ったひかるが出会ったのは、弁護士の九印葉桜(くいん・はざくら)。彼女はひかるに訴訟を起こすことを提案する。その相手は・・・


 ネット社会である現代ならではのサスペンスだろう。

 厄介なのは、炎上騒ぎに加担している人間の、たぶん99%は "善意" や "正義感" から、式場とひかるを叩く書き込みをしているのだろうということ。
 ただ、自分が正しいと信じている人間ほど、行動の制限が効かなくなりがちだ。だからどんどんエスカレートしていく。
 世界中で起こっている戦争・紛争だって、みんな当事者同士が "自分の正義" を信じてるんだから。

 物語はひかるが訴訟を決意し、相手側に訴状を突きつけるところまで進んでいく。もちろん、訴訟が起こされると分かった時点で、この騒ぎに関わった人間は慌てだす。だいたい、軽い気持ちで参加している者が大半だから、自分の形勢が悪くなると簡単に逃げ出すわけだ。
 というより、次第に飽きてきて、次の新しい話題に移って行ってしまう、ってことなのかも知れない。その程度のことなのだけど、そうなるまでの間は、非難の対象となった当事者にとっては耐えられない時間だろう。


 個人的には、ちゃんと裁判の内容まで描いて、事態の原因や責任の追及まできっちり世間に対して明らかにしてほしかったなぁとも思わないでもない。
 でもそこまで書かなかったのは、裁判が終わる頃にはネット上ではこんな騒ぎは綺麗さっぱり忘れ去られていて「いまさら」ってことになってるだろう・・・てことなのかも知れない。そこまで作者が考えたのかどうかは分からないが。


 作者はこれが小説デビューらしいが、キャラの書き分けも上手い。特にひかるの数少ない味方となる同僚・四ノ宮祐斗(しのみや・ゆうと)の、飄々としたところがとてもいい。
 炎上するひかるのパートではハラハラしたし、美濃の "働きぶり" を描くパートではホントに腹が立つなど、筆力も充分にある。
 作者の経歴を見ると、編集やライターや脚本執筆など、文章に関わる仕事をしてこられたようなので納得できる。

 ミステリでもSFでもないけれど、とても楽しく読ませてもらいました。



タグ:サスペンス
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『ヤマトよ永遠に REBEL3199 第一章 黒の侵略』を観てきました [アニメーション]


※ネタバレはありません。


 去る7/20(土)、『3199 第一章』を観てきました。場所はMOVIXさいたま。

3199_1MV.jpg

 かみさんも退職したので、初日の金曜だって行けたはずなのですが、残念ながら7/19(金)は母が病院に通う日で、私が送迎しなければなりません。なんだかんだで一日かかってしまうので無理。

 じゃあ夜の部に行けばいいだろう・・とはいかないんですねぇ。こちらもまた別の理由があって、夜は外出しづらい事情があるのですよ。
 だから、6/12夜の「完成披露舞台挨拶」も、7/19夜の「スタッフによる初日舞台挨拶」も、7/21夜の「キャストによる上映記念舞台挨拶」も行けなかったんですよねぇ・・・何とかなりませんかねぇ。

 閑話休題。

 というわけで、記念すべき初回鑑賞は7/20(土)となりました。そして一回目の上映はなんと朝7:55から。かなり早起きをしなければなりませんでした。

 この日のMOVIXさいたまは7:30営業開始とのことですが、7:35くらいに着いたらもうけっこうなお客さんの数が。やっぱり『KINGDOM』は強い(笑)。

 『ヤマトよ永遠に』もけっこう入ってましたよ。年配率が高いのは毎度のことですが、若いお客さんもいます。私の前に並んでたのは20代と思われる女性でしたね。

 まずは森雪役の桑島法子さんのナレーションによる「これまでの宇宙戦艦ヤマト」。YouTube にも挙がってるのでご覧になった方も多いでしょう。
 20分くらいあるのですが、とてもよかったです。観ているといろいろ思いだして、ときどき涙が出てきたり。以前の記事にも書きましたが、桑島さんが森雪役で本当によかったと思いました。

 さて、肝心の本編ですが・・・私もかみさんも、とても楽しみました!

 高密度な情報のてんこ盛りながら、「予想通り」の部分と、「予想以上」の部分と、「予想外」の部分いい塩梅に配合されていたように思います。
 そしてあのED! 未見の方はお楽しみに・・・とだけ書いておきます。


 さて、上映終了後は近くのファーストフードで軽食を。いちおう朝食は摂ってきたのですが、量を抑えていたので。そして食べながらの「おさらい」です。

 かみさんは「新たなる旅立ち」以降の旧作を観ていないので、頭の中に「?」が渦巻いているようで、それを私にぶつけてきます。
 「んー、それはたぶん○○だと思うんだよねー」
 何せリメイクですから、設定等も旧作とは異なる可能性もある。だから私の答えもおのずと ”推測” が多くなるのですが・・・


 そんな「おさらい」を済ませ、近くの書店で時間を潰していよいよ本日2回目の鑑賞。11:30の回です。
 7:55の回よりお客さん多め。ほぼ満席に近いんじゃないかなぁ。

 そして12:50に上映終了。かみさんに「わかった?」と聞いたら、
「説明を聞いたからけっこう分かったけど、
 あと2回くらい観ればもっとよく分かるかも」だそうです。


 そこから家に直帰したのですが、この日の関東は酷暑日。「熱中症のおそれがあるので、外出は控えてください」という ”お触れ” が出ていたのですが、私とかみさんは最寄り駅から家まで、炎天下を歩いて帰りました(おいおい)。
 もちろん途中でコンビニによって涼み、水分補給もしましたから無事に帰り着きましたよ(笑)。

 上映2週目に入ったら、また観に行く予定。
 詳しい ”感想もどき” は、また別記事に。限定上映が終わる頃にはアップできるかな。

 本日の戦果。

20240720a.jpg

 森雪さん、楽しそうで何より。
 本編にはこんなシーン、絶対ないだろうなぁ・・・


 おまけ。
 「monoマガジン No.942 2024.8.2号」

20240720b.jpg

 ちなみに旧作『ヤマトよ永遠に』は1980年8月2日上映開始。そこに引っかけたのかな?
 「ヤマト」特集は40Pくらいあるけど、『REBEL3199』関連は8Pくらいで、旧作紹介や旧作関連グッズを扱う部分が大半ですね。


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黄土館の殺人 [読書・ミステリ]


黄土館の殺人 〈館四重奏〉 (講談社タイガ)

黄土館の殺人 〈館四重奏〉 (講談社タイガ)

  • 作者: 阿津川辰海
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2024/02/15

評価:★★★★


 世界的アーティスト・土塔雷蔵とその一家が住む「荒土館」がある一帯を地震が襲う。復讐のために館へ向かっていた一人の男は、館と外部を結ぶ唯一の道路を塞ぐ土砂崩れの前で立往生してしまう。
 そのとき、土砂の向こう側から女の声が。それは、"交換殺人" の申し入れだった。かくして、土砂に隔てられた館の内と外とで、二つの殺人計画が進行していく。
 そして名探偵・葛城輝義は、この土砂崩れのために友人たちと引き離され、館に入ることができないでいた・・・

 『紅蓮館の殺人』『蒼海館の殺人』に続く、シリーズ第三作。

* * * * * * * * * *

 『紅蓮館-』事件から3年後、語り手の "僕" こと田所信哉(たどころ・しんや)と名探偵・葛城輝義(かつらぎ・てるよし)は20歳の大学生となっていた。

 二人の元に手紙が届く。差出人は『紅蓮館-』事件をともに切り抜けた元探偵・飛鳥井光流(あすかい・ひかる)。彼女は "助け" を求めてきたのだ。

 世界的アーティスト・土塔雷蔵(どとう・らいぞう)が中国地方の山中に建てた「荒土館(こうどかん)」。そこに彼女は滞在しているのだが、ある理由から、事件の発生を予感していた。

 田所と葛城、さらに友人の三谷緑郎(みたに・ろくろう)を加えた三人は「荒土館」を目指すが、その途中で地震に遭遇、発生した土砂崩れによって田所と三谷は館側、葛城は外部側へと分断されてしまう・・・


 本書は三部構成になっている。


「第一部 名探偵・葛城輝義の冒険」

 小笠原恒治(おがさわら・つねはる)は復讐の念を胸に「荒土館」へ向かっていたが、途中で地震に遭遇、土砂崩れの前で立ち往生してしまう。

 そのとき、土砂の向こう側から女の声が。それは、"交換殺人" を申し入れるものだった。
 女が土塔雷蔵を殺す、その代わりに小笠原は、〈いおり庵〉と云う旅館の若女将・満島蛍(みつしま・けい)を殺す。

 申し出を受け容れた小笠原は〈いおり庵〉にやってくるが、そこには土砂崩れで田所たちとはぐれた葛城が既に投宿していた。
 ここから小笠原は満島を殺害する計画に着手するのだが・・・

 小笠原vs葛城 の倒叙ミステリ、という趣き。本書は文庫で約600ページあるのだが、この第一部だけで140ページほど。


「第二部 助手・田所信哉の回想」

 第一部と並行して、荒土館内部で起こる連続殺人事件が描かれていく。

 険しい崖に囲まれた館は、地震によって外部へつながる唯一の道路が断たれ、孤立してしまう。しかも何者かが仕掛けた "妨害装置" によって電波も遮断されたので、電話もネットも通じない。

 そして土塔雷蔵、その息子、三人の娘、二人の来客、そして飛鳥井・田所・三谷。合計10人が集った館で、次々と奇怪な殺人事件が起こっていく。

 館の中庭にある高さ5mもの像が掲げている剣に突き刺さった死体。人体をそこまで持ち上げることはもちろん、周囲には遺体を投げ下ろせる場所もない。

 館の塔の頂にある部屋で見つかった銃撃死体。しかし周囲には狙撃できる地点が存在しない。空中から銃弾が放たれたのか?

 そして、誰も出入りできなかったはずの建物の中に、突如として死体が出現する。

 まさに不可能犯罪のてんこもり。自分自身も命の危険を感じた田所は、持参したPCで克明に記録を残していくが・・・

 地震発生から60時間以上が経過し、やっとのことで救助隊が到着、生存者が救出されるまでが描かれる。この部分が約300ページ。


「第三部 探偵・飛鳥井光流の復活」

 ここは文庫で約150ページ。田所の書いた手記と、独自に入手した情報を元に、葛城による謎解きが始まる・・・


 ミステリをけっこう読んできた人なら、ストーリーが進んでいくにつれて、なんとなく「この人物が犯人じゃないかなぁ」と思い当たるようになるだろう。往年の某名作を思い出す人もいるかも知れない。

 じゃあ凡作かというと全くそんなことはない。論理的にそれを説明するのはかなり難しそうだし(少なくとも私のアタマでは無理)、各不可能犯罪のトリックに至っては皆目見当がつかない(作中ではいくつか仮説が提示されるが、悉く否定されていく)。
 そういう意味では「頂上は見えているのに、そこまでの登山道が霧に閉ざされている」ような作品と感じた。

 そして、明かされてみるとトリックはかなり大がかりなもので、もちろんこの場所だからこそ可能な犯罪。「館ミステリはこうでなくては!」と思わせる。
 読者の思考の盲点を突く部分もあるし、細かいところまで計算された作品だと言えるだろう。

 このシリーズは四部作とアナウンスされている。ということは次作が最終巻となる。
 葛城と田所はどんな結末を迎えるのか? 三谷と飛鳥井は再登場するのか?
 いろいろ興味は沸くが、期待して待ちましょう。



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密漁海域 1991根室中間線 [読書・冒険/サスペンス]


密漁海域 1991根室中間線 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

密漁海域 1991根室中間線 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 亀野 仁
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2022/12/05
  • メディア: 文庫

評価:★★★


 1991年、元海上保安士の宮島咲月は、北海道・羅臼で "特攻船" (北方領土近海で違法操業をする漁船)に乗り込むことになった。
 その頃、日本漁船を攻撃して乗組員を殺害、漁獲物を強奪していく謎の攻撃船 "海魔" が出現していた。そして咲月の周囲にも謎の襲撃者が。
 これは海魔と関係があるのか? そして海魔の目的、そして正体とは・・・

* * * * * * * * * *

 北朝鮮の密漁船を臨検中、誤って同僚を死なせてしまった宮島咲月(みやじま・さつき)。海上保安庁を退職した彼女は、北海道の羅臼(らうす)で "特攻船" に乗ることになった。それは、地元のヤクザが乗り込み、ソ連近海で違法操業をする漁船のことだ。

 彼女を誘ったのは地元ヤクザの幹部・歳桃(さいとう)。昭和の映画に出てくるような、義理人情に厚い、昔気質の親分肌の男だ(彼が辿ってきた過去も作中で明かされる)。

 咲月の乗り込んだ特攻船は順調に "漁獲量" を稼いでいくが、その頃、日本漁船を攻撃して乗組員を殺害、漁獲物を強奪していく謎の攻撃船 "海魔" が現れるようになっていた。

 生存者の証言によると、"海魔" の乗員には「大柄な白人」がいたという。そして、"漁" を終えて帰港した咲月の前にも二人組の白人が現れた。辛うじて彼らの襲撃を逃れた咲月だったが、今度は歳桃が襲われてしまう・・・


 運命に翻弄されて、仲間を喪い、職を失い、家族からも疎まれ、流れ落ちた先で拾ってくれた恩人さえも救えなかった咲月。後半はそんな彼女の反撃が描かれる。

 "海魔" の脅威に対抗すべく、漁船員たちは "自警団" を組織、その自警船の一隻に乗り込んだ咲月が "海魔" と繰り広げる、壮烈な銃撃戦がクライマッスとなる。

 そして最期に明かされるのは、"海魔" の意外な目的と、その正体。

 冒険小説のフォーマット通りに、宮島咲月という女性の半生が描かれていく。


 主な舞台となるのは知床半島の羅臼、そして網走。
 道東には三回ほど旅行に行ったことがある。一回目は大学時代の友人と、二回目はかみさんと、三回目は家族で。二度目の時には知床半島を横断する国道の途中で、エゾシカに出会ったのもいい思い出だ。
 観光地というイメージしかなかったけど、本書ではそこで暮らす人々の様子も描かれ、ちょっと修正されたように思う。
 あと、作品の背景になっている1991年頃は、北海道の東の果てのほうにもバブルの波が押し寄せていたらしい。これも驚いたことの一つ。

 第一作「暗黒自治区」と比べると、ウエットな描写は増えたけどアクションは減ったかな。
 どちらがいいかは人によると思うけど、私は前作のほうが好きかなぁ。



タグ:サスペンス
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紙鑑定士の事件ファイル 紙とクイズと密室と [読書・ミステリ]


紙鑑定士の事件ファイル 紙とクイズと密室と (宝島社文庫)

紙鑑定士の事件ファイル 紙とクイズと密室と (宝島社文庫)

  • 作者: 歌田年
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2024/03/06
  • メディア: Kindle版

評価:★★★


 新宿にオフィスを構える紙鑑定士・渡部のもとへ持ち込まれる事件を、持ち前の紙に関する博識とともに、特定分野に詳しい "仲間" たちの助けも借りて解決していく、ミステリ・シリーズ第三弾。

* * * * * * * * * *

「FILE:01 クイズと密室と紙と」
 紙業界紙『月刊KAMI-ZINE』に掲載された、"紙人(かみじん)32面相クイズ" (賞金10万円)。これを解こうとしていた渡部(わたべ)は、友人の模型作家・土生井(はぶい)から奇妙な話を聞く。
 彼の知人が経営する塾で、最近カンニング行為が起こっているという。小6生が7人いるクラスで、同じ問題に同じ間違いが書き込まれるようになってきた。それ以後万全の対策をとっているがカンニングは収まらない。いったいどんな方法が使われているのか・・・
 オチで登場するアイテムは、昭和生まれにはなんとも懐かしい。そういえばこんなの、あったよねぇ。令和のこの時代ではどうなんだか知らないが・・・


「FILE:02 紙と密室とクイズと」
 東京・埼玉・神奈川で、図書館の本の間にカミソリの刃が挟まれている、という事件が発生する。刃が貼り付けられた紙には「さわるときけん けがするで カミ人30面相」という文面が。
 どうやら、渡部が営業に行っている出版社の社員が容疑者になっているらしい。独自に調査を始めた渡部は、犯人像を絞り込んでいくが・・・
 犯人のやったことは許されることではないが、言い分には共感できる部分もあるなぁ。


「FILE:03 紙とクイズと密室と」
 渡部は『月刊KAMI-ZINE』の "紙人32面相クイズ" の担当者・小牟田千果咲(こむた・ちかさ)から調査を依頼される。
 三年前、彼女の姉は密室状態の自宅マンションで睡眠薬自殺を遂げていた。当時、彼女は既婚男性との不倫に悩んでいたのだという。姉の死が他殺だと信じる千果咲は、渡部に協力してほしいと云うが・・・


 収録された三編、ミステリ的には独立しているが "紙人32面相クイズ" を介してつながりを持っている。特に「FILE:03」は、「FILE:02」の展開を受けての内容となっている。

 今回、土生井をはじめ "助っ人たち" の出番はあまりなく、渡部は自分の足を使って集めた情報で推理していく。これはこれで面白いけど、特定分野に異常に詳しいキャラ、というのもとても魅力的なので、またそういうキャラに登場してほしいな。
 恋人の真理子さんとの仲が進展するのかしないのかも気になる。続巻を待ちましょう。



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