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2019年 今年読んだ本 ベスト30 [読書全般]


さて、いよいよ今年も終わりということで、
年末恒例のランキング発表です。

毎回書いてますが、私 mojo の独断と偏見で決めてます。
皆さんの評価と一致しない場合もあるかと思いますが
私の好みの問題ですので、石を投げたりせずにご寛恕ください。

対象は、原則としてオリジナルのフィクション作品のみです。
(ノンフィクションとノベライズは除いてあります。)
シリーズ作品の場合は1つにまとめてしまったものもあります。
あしからずご容赦ください。

あと、挙げてある本の中にはまだ記事に書いてないものも含まれます。
(それについては、なんとか年明けにはupできるかと思います。)


それではまずはトップテンから。
星の数で言うと、第1~6位が星4つ半。7位以下は星4つです。

第1位「宇宙軍士官学校 -前哨-」全12巻(鷹見一幸)ハヤカワ文庫JA
第2位「リボルバー・リリー」(長浦京)講談社文庫
第3位「蜜蜂と遠雷」上下(恩田陸)幻冬舎文庫
第4位「ガンルージュ」(月村了衛)文春文庫
第5位「戦場のコックたち」(深緑野分)創元推理文庫
第6位「屍人荘の殺人」(今村昌弘)創元推理文庫
第7位「六花の印/落日の門 連城三紀彦傑作集」全2巻(連城三紀彦)
 創元推理文庫
第8位「わずか一しずくの血」(連城三紀彦)文春文庫
第9位「丸太町/烏丸/今出川/河原町 ルヴォワール」(円居挽)講談社文庫
第10位「ジェリーフィッシュは凍らない」(市川憂人)創元推理文庫

第1位は、”謎の侵略者から地球を守る” という
昭和スペースオペラのお手本のような、直球ど真ん中の剛速球。
それを現代に合わせて巧みにアップデートした大作。

第2位は、今年読んだ中で冒険小説の最高作。
血と硝煙の弾幕を突破していくヒロインの圧倒的な存在感、
そして彼女に憧れる少年の成長を描く。

第3位は、ビームもミサイルも銃弾も飛んでこないし
殺人も密室も探偵も犯人も登場しないけど(笑)、
ページをめくるたびに興奮と感動をもたらしてくれた希有な作品。


次に第11~20位です。すべて星4つです。

第11位「使用人探偵シズカ -横濱異人館殺人事件-」(月原渉)
 新潮文庫nex
第12位「ルパンの娘 / ルパンの帰還 / ホームズの娘」(横関大)
 講談社文庫
第13位「ゼロの日に叫ぶ 戦力外捜査官」(似鳥鶏)河出文庫
第14位「機忍兵零牙 [新装版]」(月村了衛)ハヤカワ文庫JA
第15位「涙香迷宮」(竹本健治)講談社文庫
第16位「生霊の如き重るもの」(三津田信三)講談社文庫
第17位「弥栄の烏」(阿部智里)文春文庫
第18位「阪堺電車177号の追憶」(山本巧次) ハヤカワ文庫JA
第19位「夏のロケット」(川端裕人)文春文庫
第20位「狩人の悪夢」(有栖川有栖)角川文庫

次は第21~30位です。21~25位が星4つ、26位以下が星3つ半です。

第21位「錆びた滑車」(若竹七海)文春文庫
第22位「幽女の如き怨むもの」(三津田信三)講談社文庫
第23位「探偵が早すぎる」上下(井上真偽)講談社タイガ
第24位「青い海の宇宙港 春夏編/秋冬編」(川端裕人)ハヤカワ文庫JA
第25位「弩」(下川博)講談社文庫
第26位「シャーロック・ノートI/II」(円居挽)新潮文庫nex
第27位「黒猫の回帰あるいは千夜航路」(森晶麿)ハヤカワ文庫JA
第28位「日本SF傑作選2 小松左京」(小松左京/日下三蔵)ハヤカワ文庫JA
第29位「巨神計画/巨神覚醒/巨神降臨」(シルヴァン・ヌーヴェル)
 創元推理文庫
第30位「女王 上下」(連城三紀彦)講談社文庫

これ以外に星3つ半を獲得した作品が30作ありましたので
以下に掲げます。こちらは評価順では無く読了順です。

・「Acrobatic 物語の曲芸師たち ミステリー傑作選」(日本推理作家協会)
 講談社文庫
・「ペンギンを愛した容疑者 警視庁いきもの係」(大倉崇裕)講談社文庫
・「ロボット・イン・ザ・ガーデン」(デボラ・インストール)小学館文庫
・「恐怖の緑魔帝王」(芦原すなお)ポプラ文庫
・「猫間地獄のわらべ歌」(幡大介)講談社文庫
・「樹海警察」(大倉崇裕)ハルキ文庫
・「ほうかご探偵隊」(倉知淳)創元推理文庫
・「アリスマ王の愛した魔物」(小川一水)ハヤカワ文庫JA
・「沈黙の書」(乾石智子)創元推理文庫
・「風ヶ丘五十円玉祭りの謎」(青崎有吾)創元推理文庫
・「きみのために青く光る」(似鳥鶏)角川文庫
・「股旅探偵 上州呪い村」(幡大介)講談社文庫
・「化学探偵Mr.キュリー6」(喜多喜久)中公文庫
・「キングを探せ」(法月綸太郎)講談社文庫
・「BLOOD ARM」(大倉崇裕)角川文庫
・「爆撃聖徳太子」(町井登志夫)PHP文芸文庫
・「ずっとあなたが好きでした」(歌野晶午)文春文庫
・「シュークリーム・パニック」(倉知淳)講談社文庫
・「さよなら神様」(麻耶雄嵩)文春文庫
・「ラン迷宮 二階堂蘭子探偵集」(二階堂黎人)講談社文庫
・「クジャクを愛した容疑者 警視庁いきもの係」(大倉崇裕)講談社文庫
・「鍵のかかった部屋 -5つの密室-」(似鳥鶏他)新潮文庫
・「今昔百鬼拾遺 鬼/河童/天狗」(京極夏彦)講談/角川/新潮
・「サスツルギの亡霊」(神山裕右)講談社文庫
・「炎の放浪者」(神山裕右)講談社文庫
・「モノクローム・レクイエム」(小島正樹)徳間文庫
・「推理は空から舞い降りる 浪速国際空港へようこそ」(喜多喜久)
 宝島社文庫
・「呪い殺しの村」(小島正樹)双葉文庫
・「ベスト本格ミステリTOP5 短編傑作選001」(本格ミステリ作家クラブ)
 講談社文庫
・「ブラッド・ブレイン」全3巻(小島正樹)講談社タイガ


実は、読み終わったのだけど記事にしなかった本が4冊あります。

うち2冊は、記事を書こうと思って本を探したのですが
見つからない(笑)。どこかへ行ってしまったみたいですねえ。
家人に棄てられてしまったかも(おいおい)。

そしてもう2冊は、読み終わったんだけど評価が星1つだったもの。
こちらは、記事にすると文句ばかり書き連ねそうなので止めました。
武士の情けですね(笑)。


今年は、私の身の上に大きな変化があったわけですが
結果として、自由に使える時間が増えましたので
たくさん本も読めるようになりました。

そのおかげで、フィクションに限ると186冊読めました。
(新書のノンフィクションを入れるともう数冊追加になるのですが。)
統計を取り始めたここ20年間で最多だった2003年の185冊を超えて
最多記録更新となりました。

文庫換算で総ページ数は約73000ページ。
1日あたり、200ページくらい読んでいたことになります。

もっとも、読むのにかまけて読書録のupが滞ってしまいました。
やっぱり4~6月のサボりが大きかったですねえ。
結局その遅れを挽回することはできなかったなぁ。
2019年分の読書録をupし終わるのは
早くても1月上旬くらいまでかかりそうです。

11~12月に、集中して読書録の記事を書いてきたのですけど
思ったことは、やっぱり読み終わってから
間を開けずに書かなきゃダメだということ。
なにせ時間が経つと中身を忘れてしまって、思い出すまでが容易でない。
もともと記憶力が怪しいところへもってきて、トシも上がってきたので
そのうち頓珍漢なことを書いてしまうんじゃないかと心配です。

とまあ泣き言はこれくらいにして。


だらだら続けてきたこのブログも、いつのまにか記事の数も
1900件を超えました。「継続は力なり」とはよく言ったものです。

内容の質は保証できない駄文の山でございますが(苦笑)、
皆さんの暇つぶしの一助になれば望外の幸せです。

それでは皆様、良いお歳を。

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ブラッド・ブレイン 全3巻 [読書・ミステリ]


ブラッド・ブレイン1 闇探偵の降臨 (講談社タイガ)

ブラッド・ブレイン1 闇探偵の降臨 (講談社タイガ)

  • 作者: 小島 正樹
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/06/21
  • メディア: 文庫
ブラッド・ブレイン2 闇探偵の暗躍 (講談社タイガ)

ブラッド・ブレイン2 闇探偵の暗躍 (講談社タイガ)

  • 作者: 小島 正樹
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/07/19
  • メディア: 文庫
ブラッド・ブレイン3 闇探偵の旋律 (講談社タイガ)

ブラッド・ブレイン3 闇探偵の旋律 (講談社タイガ)

  • 作者: 小島 正樹
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/08/22
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

東京湾のお台場の南西に位置する人工島に、1つだけある建物。
日本の脳科学の権威・早坂群一の提唱で建設された
地上11階、地下1階の威容を誇る脳科学医療刑務所だ。

ここには全国の刑務所から集められた ”特異な犯罪者” が
集められていて、早坂は特別矯正監として実質的にここを仕切る。
「犯罪者の脳の研究」をテーマとする早坂によって、
ここは彼の ”研究のための実験場” になっているわけだ。

この刑務所にあって、広大な個室を与えられ、TVは見放題、
インターネットの閲覧と検索も自由という最高級の待遇を
受けている囚人、それが月澤凌士(つきさわ・りょうじ)。
6年前に一夜にして5人の命を奪い、死刑が確定している男だ。

月澤は刑事事件の資料を読んで、容疑者の持つ完璧なアリバイを
あっさりと崩してみせ、解決へと導いた。
彼の類い希な推理力を未解決事件の解決に利用しようと考えた
警察関係者は、月澤の代わりに捜査に当たる ”相棒” を選出した。

それが警視庁の刑事・百成完(ももなり・かん)。
本シリーズの主人公でもある。
彼は刑務所内の月澤と連携して事件の情報を集め、
それを受け取った月澤が真相を解き明かす、そういう関係だ。

こういう風に書いてくると、月澤と百成という
異色のホームズ/ワトソンの活躍する物語、って思うだろうが
そのように展開するのは1巻の「闇探偵の降臨」のみ。
ここでは、団地の2階から聞こえてきた奇妙な声の謎、という
些細な出来事が、意外な凶悪事件の解決までつながる顛末が描かれるが
実はこれらすべてが、次巻以降へ向けた伏線になっている。

2巻と3巻では舞台は脳科学医療刑務所の中に移る。

実質的な所長を務める早坂が、何者かに殺害される。
彼のバイタルをモニターしていた刑務所の管理システムによって
直ちに非常事態プログラムが作動、すべての扉が自動で施錠されてしまい
そのとき室内にいた囚人たち・看守たちはみな拘束されてしまう。

殺害事件発生時に室内におらず、行動が自由だったのは
月澤、百成、そして5人の囚人のみ。
彼らの中に犯人はいる・・・


なんと言っても月澤のキャラがかっこいい。
推理力のみならず身体能力も桁外れで、格闘戦でもめちゃくちゃ強い。
いわゆるダークヒーローなんだが、
彼が闇の道へと落ちる切っ掛け、そして6年前に起こした
大量殺人の真相が明らかになる3巻を読んでいると
いつのまにか彼を応援してしまうようになる。

彼に対峙する5人の囚人たちもみな個性的。何せ、
早坂が全国の刑務所から選んできた ”エリート囚人”(笑)だからね。

彼らが非常事態プログラム発生を利用して脱獄を企て、
月澤/百成コンビを相手に権謀術数の限りを尽くすところも読みどころ。

そして、そんな月澤をはじめとする ”エリート囚人” たちを相手に
揉みに揉まれた(笑)百成くんも、最初は振り回されるばかりなのだが
次第に成長し、推理の冴えも見せるようになる。
そんな ”ワトソン役の成長” も注目かな。

最後までどう転ぶか分からないストーリーにハラハラして
楽しい読書の時間を過ごさせてもらった。

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ベスト本格ミステリTOP5 短編傑作選001 [読書・ミステリ]


ベスト本格ミステリ TOP5  短編傑作選001 (講談社文庫)

ベスト本格ミステリ TOP5 短編傑作選001 (講談社文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/12/14
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

本格ミステリ作家クラブが編集するところの
「本格短編ベストセレクション」シリーズは
16年間に16冊が刊行されたみたいなんだが、
やっぱり本が売れない時代なのかなあ・・・

2015年版である本書から、ぐっとページ数が減ってほぼ半分。
収録作も半分の5作になってしまった。
ちょっと寂しいねぇ・・・


「許されようとは思いません」芦沢央
他のアンソロジーで既読。
諒一と水絵は交際4年を超え、そろそろ結婚を考え始めていた。
しかし諒一はなかなかプロポーズできないでいた。
なぜなら、彼の祖母は殺人者だったから。
18年前の1979年、東北の寒村で祖母は
同居中の義父(諒一から見れば曾祖父)を刺殺していたのだ。
獄中で病死した祖母の遺骨を寺に納めるために諒一と水絵は村に向かう。
道中、諒一から祖母の話を聞いていた水絵は、
祖母の "真の動機" を推察する。
現代では、結婚は当事者同士だけのものという意識が
ごく普通かも知れないが、地方ではまだまだ古い考え方が
残っているのかも知れない。ましてや昭和の中頃ではねぇ・・・
陰鬱な話だが、ラストでの若い二人の会話に救われる。

「舞姫」歌野晶午
短編集で既読。
半年間の海外遊学が認められる特別枠に合格し、入社した十條。
パリに渡った彼は周囲から ”ジョジョ” と呼ばれ、バーで働いていた。
現地で知り合った女性・フランソワーズと暮らしていたが
帰国の日が迫ってきていた。
そんなとき、彼の働くバーで死体が見つかる。
現場は密室だったことから事故死が疑われたが・・・
犯人や密室のトリックもよくできてるけど、
最高の驚きはラストの1行にある。

「心中ロミオとジュリエット」大山誠一郎
”私” の叔父、鹿養大介(かよう・だいすけ)は俳優である。
ある日大介は、近所に住む元警視・遠藤から、
彼が交番勤務時代に経験した事件の話を聞く。
門田登美雄(もんでん・とみお)と木谷百合枝(こたに・ゆりえ)は
親同士がライバル企業の社長で犬猿の仲であった。
恋に落ちた二人だが、親の許しが出るはずもなく駆け落ちをする。
しかし、ようやく親同士が和解したのも時既に遅く、
生活に困窮した二人は海岸の崖下で心中死体となって発見される。
この事件に立ち会った遠藤の話から、
大介は意外な解釈を引き出してみせる・・・
ラストの逆転が鮮やか。うん、言われてみればそうだよね。

「三橋春人は花束を捨てない」織守きょうや
新米弁護士の北村は、三橋春人という青年から相談を受ける。
妻の美紅(みく)が浮気をしているので離婚したいが、
1歳になる娘の親権は手放したくないという。
一般に父親が親権を得るのは難しいケースが多いが
北村は美紅の行動を調査し、春人に有利な事実を積み上げていく・・・
この作家さんは初めて読んだ。北村のキャラも親しめるし、
事件のキーパースンになる深浦葵子(みうら・あおいこ)もいい。
そして、ミステリとしても最後までひねりが効いていて面白く読める。

「死は朝、羽ばたく」下村敦史
他のアンソロジーで既読。
札幌刑務所の門を出てきた主人公・奥村。
彼の前に現れた3人組の少年は、奥村の行く先々で
「こいつは前科者だ」と言い立てて、執拗な嫌がらせを繰り返す。
彼らは出所者を狙って恐喝をする常習犯だったのだ。
何をされても、全く彼らを相手にしない奥村だったが・・・
ミステリ的には、あっと驚く切り返しが待っているのだが、
物語的にはさらにもうひとひねり。これは達者だ。

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日本SF傑作選2 小松左京 [読書・SF]


日本SF傑作選2 小松左京 神への長い道/継ぐのは誰か? (ハヤカワ文庫JA)

日本SF傑作選2 小松左京 神への長い道/継ぐのは誰か? (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 小松 左京
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2017/10/05
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

早川書房から「日本SF傑作選」と銘打ち、
いわゆる ”SF第一世代作家” 6人の作品集が刊行された。
本書はその第2弾で、小松左京が「日本沈没」(1973年)で
ブレイクする前、”第一期” ともいえる60年代の作品を収録している。
内訳は短編6作、中編1作、そして長編を1作(!)。
文庫で700ページ超という容量だからできることだね。

本作の収録作はすべて私が大学時代~20代の頃に読んだもの。
何作かは、他のアンソロジーや傑作集にも収録されていたりして
30代以降に再読したものも多い。


「地には平和を」(短編)
デビュー作にして直木賞候補となった作品。
昭和20年8月15日で太平洋戦争が終わらずに、
そのまま本土決戦へ突入した日本が描かれる。
歴史改変ものと思わせて、更にその上をいく。

「時の顔」(短編)
タイムトラベルが可能になった時代。青年カズミを謎の奇病が襲う。
実は彼は、ある調査員が江戸時代から赤子の状態で連れ帰ってきたことが
判明し、奇病の原因もその時代にあると思われた。
カズミの命を救うため、”僕” は江戸時代へと旅立つ・・・
小松左京版「輪廻の蛇」だね。

「紙か髪か」(短編)
ある日突然、世界から ”紙” が消えてしまう。
紙を分解する微生物が発生したためだが・・・
SFお得意の「if」もので、
混乱に陥る世界を描くシミュレーションものでもある。

「御先祖様万歳」(短編)
”僕” の故郷のある小さな山の洞窟が、
突如100年前の世界に通じてしまう。
そこから始まる大小様々な騒動をユーモアたっぷりに描いていく。

「お召し」(短編)
ある日、世界中から12歳以上の人間が消えてしまう。
残されたのは小学生以下の子どもたちが、
必死に生き延びようとする姿を描く。

「物体O(オー)」(短編)
ある日、日本列島の上に巨大な円環状の物体が現れ、
円環の下になった地域(東京を含む)は押しつぶされてしまう。
物体の高さは200kmもあり、ほぼ衛星軌道に達する。
それによって日本は円環の中と外とに完全に分断されてしまう・・・
やがて「日本沈没」や「首都消失」につながる
”巨大災厄もの” の走りだね。

「神への長い道」(中編)
文明が極限まで進歩した遠未来。
病気も貧困も戦争も根絶され、閉塞状況に陥った人類。
主人公は、冷凍睡眠のもとで恒星を渡り、異星の文明に接するが・・・

「継ぐのは誰か?」(長編)
情報のネットワーク化が進み、医学も進歩し、種々の問題や紛争も好転し、
平和な ”黄金時代” が来るのでは、と人々が期待している近未来。
ヴァージニア大学都市で、多くの仲間と共に学ぶタツヤ。
彼のクラスメイトのチャーリィが謎の死を遂げる。
そしてタツヤは、この3か月の間に世界のあちこちの大学で
類い希なIQを持つ学生や若手研究者が死亡していることを知る。
捜査当局に協力して犯人を追うタツヤたちは、
やがて人類文明の陰に、”人類を超えた種” の存在を感じ始める・・・

”人類の行く末” と ”進化” も、小松左京が描いたテーマだった。


読み終わって思ったことだけど、小松が描く未来が
驚くほど的確だったことに驚かされる。

特に「継ぐのは誰か?」で描かれるコンピュータ・ネットワーク社会は
コンピュータの普及とインターネットの発達を予見していたようで
今読んでも、まったく古さを感じさせない。

データをネットワーク上で一元管理し、バックアップも多重に取るとか
いまの「クラウド」を思わせるような描写もあるし。

本作が書かれた1968年は、インターネットの一般利用が始まるよりも
かなり前だよねぇ・・・。だって、私が自宅に
インターネットを引いたのが1998年頃だったんだから・・・

小松の慧眼は、いまさらながら流石としか言い様がない。

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屋上 [読書・ミステリ]


屋上 (講談社文庫)

屋上 (講談社文庫)

  • 作者: 島田 荘司
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/02/15
  • メディア: 文庫
評価:★★☆

新進気鋭の盆栽作家・安住淳太郞。
しかしその前衛的な作風のために斯界の重鎮と衝突し
それが原因で盆栽業界から ”追放” されてしまう。

干されて仕事を失った安住は経済的に困窮し、
やがて精神を病むようになって、ついに自殺してしまう。

彼の残した作品群は紆余曲折を経てU銀行が引き取り、
受け入れ先が決まるまでT見市にあるU銀行自社ビルの屋上で
管理することになった。

しかしなにぶん数が多すぎて、屋上は盆栽で埋め尽くされてしまい、
社員が毎日水やりをして世話をする羽目になってしまう。

そんなある日。
U銀行の自社ビルの屋上から行員が転落死する事件が続発する。
みな、屋上の盆栽へ水やりにいったまま転落していた。
しかし、自殺するような事情を抱えた者は一人もいなかった・・・


物語は、いくつかの流れに分かれて語られる。
「屋上の呪い」というパートでは、上記の銀行内での出来事が、
「苦行者」では、会社を辞めてニートとなった男の鬱々とした日々が、
「サンタクロース」では、サンタクロースの衣装を着て
 年の瀬のアルバイトに励む四十男の悲哀が、
「宇宙人」では、転落死した女子行員が生前に見た謎の人物が。

「屋上の呪い」のパートだけでは何が何やら分からない事件も
他の3つのパートが進行していくにつれて、
奇怪な事件の背景が徐々に浮かび上がってくる。

そして後半になって「馬車道」というパートが始まり、
ここで御手洗潔が登場し、謎を解き明かす。

「暗闇坂の人食いの木」とか「水晶のピラミッド」とか、
御手洗の登場する大長編はいくつもあるけれど、
本書も540ページとそれらに匹敵する大部。
しかしながら、ページ数が多い割に真相はちょい拍子抜けな感が。
さんざん引っ張っておいてこれ? って思う人は多いのではないかな。

ただまあ、結末に至るまでに登場する人々の哀歓はそれなりに読ませる。
本人たちは必死なのだろうけど、周囲から見ればいささか滑稽な展開は
ユーモア小説とみればなかなか面白いとは思う。

でも、島田荘司で、しかもこれだけの大長編で、
密室状態の屋上からの連続転落死と、謎もなかなか魅力的。
読者はかなりの期待を持って読み始めると思うんだけど
それに応えられているかどうかは微妙な気が。

あと、読み終わって思ったのだけど、本書には
現場となった屋上の見取り図とかの図面類は一切載ってない。

載せたら、勘のいい人ならネタを見破ってしまうからかな・・・
なぁんて思いました。ちょっと意地の悪い見方かしら(笑)。

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屍人荘の殺人 (映画) [映画]


※本編のネタバレはありません。

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話題の映画、観て参りました。

第一印象は「観る人を選ぶ映画だなあ・・・」ということ。
おそらく、楽しめる人と全くダメな人に分かれるんじゃないかなあ。
私は、十分に楽しませてもらいましたが。

映画として素晴らしい出来か? って聞かれたら正直なところ微妙ですが
安くない入場料を払って、2時間という時間を使って、
損をしたとは思いませんでしたので、私的にはOKでした。

ちなみにこの映画、原作におけるミステリとしての骨格は、殺害方法、
トリック、伏線、証拠の提示、犯人まで、ほとんど改変してません。
細かい枝葉の部分での変更や省略はありますが、
全体のストーリーも、原作の流れをほぼ踏襲しています。
いじられまくって原作の面影を留めない作品だって珍しくない中で
本作は、ミステリ映画としては良心的な作りだと思います。


観る人を選ぶ、その理由の最も大きなものは、
やっぱり物語の序盤で起こる ”ある事態” でしょうねぇ(笑)。
これが受け入れられるかどうかで、
この映画の評価はほぼ決まるのではないでしょうか。

原作を読んでいて、映画を観に来ている人は問題ないですね。
映画の中で起こるイベントをすべて知っていて観に来てるわけですから
当然、”ある事態” も受け入れているはずなので。

問題は、原作を知らずに観に来た人たちですね。
若手人気俳優が出てくるちょっとコミカルな映画・・・
くらいの気持ちで臨むと、”ある事態” が始まった途端に
呆気にとられてしまうでしょう。

ここで「ああ、そうか、こういうのも面白いじゃん」って思えるか
「とんでもないゲテモノ映画じゃないか」って思ってしまうか。
そこでこの映画の評価が決まってしまうでしょう。

 後者の場合、それによって、この映画のミステリとしての良さを
 理解してもらえなくなる、ってことも起こるでしょう。

とはいってもこの映画、予告編では
いっさい ”ある事態” について触れてません。
制作陣も悩んだかも知れませんが、ここを伏せてあるがゆえに
読者(観客)を驚かせる、ってのも本作の ”売り” ですからね。
私は、明かさなかったのは正しいと思いますが
観客の中には「騙された」とか
「予告編詐欺だ」とか言い出す人もいるでしょう。


次に、映画はキャストで観る、って人もいますよね。
内容やジャンルや作品の出来は関係ない、
とにかくご贔屓の俳優さんをひたすら観ていたい・・・っていう人。

これを主役三人に当てはめてみましょう。

まず、美少女探偵・剣崎比留子こと、浜辺美波さんを観に来た人。
これは大満足でしょう。とにかく美波さんの可愛さは半端ではないです。
彼女がスクリーンの中で動いて、喋って、ドジを踏んで(笑)、
推理するのを観ているだけでも幸福な気持ちになれるでしょう。
オッサンの私でさえそう思うのだから、
10代20代の男どもはたまらんでしょうな(おいおい)。

ただ、台詞回しが上手くないのはいただけない。
滑舌が悪いのか稽古が足りないのか、
ところどころ聞き取りにくいところがある。
「アルキメデスの大戦」での財閥のお嬢様役や
アニメ「HELLO WORLD」での女子高生役のCVでは
そんなこと感じなかったのにねぇ・・・
慣れない言葉遣いだったのはわかるけど、ちょっと残念でしたね。

次に ”神紅大学のワトソン” 葉村譲こと、神木隆之介くんを観に来た人。
これも大満足でしょう。とにかく神木くんの上手さは特筆ものです。
剣崎比留子と明智恭介という、強烈なキャラに挟まれて
二人が繰り出すどんなボケもツッコミも受けて受けて受けまくる。
”ある事態” と殺人事件という、極限状態に置かれてもなお、
”普通の人間” として振る舞える葉村は、観ていて安心感を与えます。

最後に ”神紅大学のホームズ” 明智恭介こと、中村倫也さんを観に来た人。
これはかなり不満でしょう。上の方で、この映画は原作に忠実だと
書きましたが、明智の扱いもまた、原作とほぼ同じ。
要するに、出番はそんなに多くないんです(笑)。
私は、てっきり脚色にあたって彼の出番を増やすとばかり思ってましたが
(なにせ中村さんは人気俳優ですから)
意外にも原作通りだったのでちょっと驚きました。
だから、中村倫也さんを観に来た人は、彼の出番は少ないし、
それに加えて扱いが ”アレ” ですから(笑)、怒り出すかも知れません。

逆に、比留子(浜辺美波)と葉村(神木隆之介)は全編ほぼ出ずっぱり。
どちらも原作のイメージによく合っているので、
観ているうちに続きが観たくなりました。
この映画がヒットすれば、同じキャストで
第2弾の映画もあるかも知れません。ちょっと期待してしまいます。


さて、今日(12/25)、私はかみさんと二人でこの映画を観てきました。
たまたま休みがそろったので、平日の昼間という
ちょっと贅沢な時間帯での映画鑑賞でした。

私たちが入ったハコは、約120席という小さめなものでしたが
ほぼ満席で、しかもその8割方が若者、しかもカップル多し(笑)。
剣崎比留子と葉村譲のラブコメとしてみれば、
デートムービーとしてはちょうどいいかもしれません。
”ある事態” さえ許容できれば(爆)。

以前、小説版の記事を書いたとき、
映画を観たときのかみさんの反応が心配だって書きました。
なにせかみさんは ”ある事態” 的な展開は苦手なので・・・

私は、自分が原作を読み終わったことは話しましたが、
内容についてはひと言も喋りませんでした。
たとえかみさんが相手でも、ミステリファンのお約束ですから(キリッ)。

だから「面白かった?」って聞かれても
「”私は” 面白いと思ったよ」と言っただけ。
「・・・てことは、アタシには面白くないわけ?」
「いや、そんなことは・・・ない・・・と思うよ・・・むにゃむにゃ」

だから、見終わった後で「何で教えてくれなかったのよ!」って
キレられたらどうしよう・・・って思ってました。

映画の後、恐る恐る聞いてみたら
「ああいうの、観たこと無かったから。まあよかったんじゃない」
思わず、胸をなで下ろしたのでありました(めでたしめでたし)。

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使用人探偵シズカ -横濱異人館殺人事件- [読書・ミステリ]


使用人探偵シズカ: 横濱異人館殺人事件 (新潮文庫nex)

使用人探偵シズカ: 横濱異人館殺人事件 (新潮文庫nex)

  • 作者: 月原 渉
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2017/09/28
  • メディア: 文庫
評価:★★★★

時代は明治。
没落士族の息子・秋月和美(あきづき・かずみ)は
困窮した家計の足しにするため、倉の中にあった洋画を売りに出した。
絵は傷みが激しく、海の風景を描いた表層が剥落していて、
その下には不気味な死者たちと、縊れ死んだ男の姿が現れていた。
描き手の署名は〈久住正隆〉。

しかしなぜかその絵を高価で買い取るという者が現れ、
和美はその絵を買い手の家まで送り届けることになる。

彼は絵を持って横浜にやってくるが、そこで出会ったのが
異国の血を引くと思われる女性・栗花落静(つゆり・しずか)。
彼女は絵の買い手である氷上公一(ひがみ・こういち)の住む
「名残館」(なごりかん)でメイドを務めていた。

その屋敷は海岸の突端から離れて、周囲を崖で囲まれた
大きな岩の上にあり、本土とは吊り橋で結ばれている。

屋敷には、和美を含めて6人の男女が集められており、
その中の一人は、なぜか和美が持ってきた絵に描かれた
「縊れた男」とそっくりな顔をしていた。

そしてその夜、彼は ”縊り殺されている姿” で発見される・・・

さらに、屋敷と本土をつなぐ吊り橋が切り落とされてしまい、
外部との人の出入りはもちろん、連絡手段も断たれてしまう。
その閉鎖状況下で、連続殺人が起こっていく・・・


文庫で280ページしかないのだから、かなりコンパクト。
しかし内容はかなり濃厚だ。

登場人物は全部で8人。そしてその中で、
絵に描かれた人物に ”見立て” た殺人が連続して起こり、
登場人物たちはどんどんお亡くなりになっていく。
まさに「そして誰もいなくなった」路線まっしぐら(笑)。

ページを開くと最初に目次があるのだけど(あたりまえだ)、
読者はまず、その章題にぶっ飛んでしまうだろう。

全部で22章構成なんだけど、たとえば
「第10章 見立て破り」
「第11章 見立て破り返し」
「第12章 見立て論理の崩壊」
「第13章 逆襲の見立て返し」
「第14章 逆襲の見立て返し崩し」・・・以下略

なんだかガンダム映画かゴジラ映画の題名みたいにみえてくるが(笑)
こんな章題があと6章続くのだ。しかも後半はもっと過激(おいおい)。

内容もこれに負けていない。
タイトルこそ、シズカさんが探偵役みたいだが
作中では、そのシズカさんも立派な(?)容疑者の一人。
そして最後に明かされる意外な真相、意外な真犯人。

「新潮文庫nex」というレーベルは、
比較的 ”軽めの話” を収めたものと思ってたんだけど
こんなガチガチの本格ミステリが読めるとは意外でした。

「講談社タイガ」もだけど、侮れないレーベルが増えてきました。

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シャーロック・ノートII 試験と古典と探偵殺し [読書・ミステリ]


シャーロック・ノートII: 試験と古典と探偵殺し (新潮文庫nex)

シャーロック・ノートII: 試験と古典と探偵殺し (新潮文庫nex)

  • 作者: 円居 挽
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/02/27
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

本書の舞台はパラレルワールドの日本。
探偵能力に秀でたものは「探偵士」の称号が与えられ
さまざまな特権を与えられる。
中央官庁の現衛庁(げんえいちょう)と
半官半民の日本探偵公社には、
古今の名探偵たちが多く所属している。

主人公・剣峰成(つるみね・なる)が入学した鷹司高校は
日本に2校しかない探偵士の養成学校だった。

クラスメイトの太刀杜(たちもり)からん(文庫表紙のイラストは彼女)、
生徒会長の大神五条(おおがみ・ごじょう)たちとともに
成が過ごす学校生活、そしてそこで起こる事件を描いていく。

「第一章 試験と名探偵」
鷹司高校で ”正典試験” が行われた。
シャーロック・ホームズの活躍を描いたのが ”正典” で、
それについての正しい解釈を問うものだ。
その試験で1位をとった時巻暦(ときまき・こよみ)に
カンニング疑惑が持ち上がる。
成は、暦が属する学生寮の寮長・九十九蘭子(つくも・らんこ)から
彼女の疑いを晴らすように依頼される。

「第二章 古典と名探偵」
往年の名探偵・金田一剛助は鷹司高校の特別顧問だ。
高校を訪れた金田一は成とからんを呼び出し、
殺人の捜査に協力しろと告げる。

「第三章 学園裁判と探偵殺し」
一度は晴れた時巻暦のカンニング疑惑だが、
彼女の周囲から新たな物証が現れる。
生徒会は、この件で ”学園裁判” を開くことになり、
それは現役の名探偵たちも傍聴するという ”将覧試合” となった。
暦の弁護人役となったのは太刀杜からん。
そして検事役となったのは、千草浅葱(あさぎ)。
往年の名検事・千草泰宗の養女だ・・・


どんでん返しが続く ”裁判” シーンを描かせたら右に出る者はない。
さすがは「ルヴォワール」シリーズの作者だ。

カンニング事件の意外な真犯人、そしてその背後には
さらに謎の組織の暗躍があったことも明らかになる。
シリーズとしての展開も楽しみになってきたね。

作品世界の名探偵として、過去の作品の探偵さんが登場するのも楽しい。
(耕助→剛助みたいにちょっと名前をいじってあるけど)
私もそれなりにミステリを読んできたつもりだけど、
元ネタが分からない探偵さんも何人かいる。
これ全部分かる人はたいしたもの・・・なのだろうなあ。

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スターウォーズ/スカイウォーカーの夜明け [映画]


※本編のネタバレはありません。

「スターウォーズ」が完結しました。
ネットの評判はいろいろみたいだけど、私は楽しみました。
J・J・エイブラムスはいい仕事をしたと思います。

sw9.jpg
思い起こせば41年前。1978年の7月。私は大学2年生でした。
今はなき大宮の映画館で見たのが、
副題の付かない無印「スターウォーズ」。
今で言うところのep.4「新たなる希望」ですね。

私は朝いちで映画館に入り、その内容にぶっ飛んでしまって
そのまま3回続けて観てしまいました(笑)。

 若い人は知らないかも知れないが、
 当時の映画館は入れ替え制ではなかったのですよ。

夏休みに入ったばかりで、館内には
小学校低学年と思われるお子様方の大群が。
こんな小さいうちから、こんなスゴい映画を観られるなんて
おまえらが羨ましいぞ・・・なぁんて思ったことを覚えてます。

 このわずか1か月後に「さらば宇宙戦艦ヤマト」を観て
 激しく落ち込むなんて、神ならぬ身には知るよしもなかったが・・・

もちろん、続編も見てきましたよ。ep.5「帝国の逆襲」も
ep.6「ジェダイの復讐」(後に改題されて「ジェダイの帰還」)も。

長い休止期間を経て1999年に始まったep.1~3も観たし、
ルーカスフィルムが買収されてからのep.7「フォースの覚醒」、
ep.8「最後のジェダイ」、ついでに「ローグ・ワン」「ハン・ソロ」も。


さて、長く続くシリーズには、いろんなファンがいるでしょう。
皆、アタマの中には「私のスターウォーズ」ができあがっていて、
ファンが100人いれば100通りのスターウォーズができてしまう。

 日本でも、「宇宙戦艦ヤマト」のリメイクである「2199」「2202」を
 こき下ろす人はたくさんいるし、
 本家アメリカでの「スタートレック」のリブートだって
 賛否両論あるみたいだし。
 ちなみにスターウォーズのep.7と9を監督したJ・J・エイブラムスは
 「スタートレック」リブートの最初の2作も監督してる。

だいたい創造主たるルーカス自身が制作したep.1~3だって、
いろいろ言う人はいるし、ましてやディズニーがつくるものなんて
「スターウォーズ」として認めない、って人だっているでしょう。


でもねえ、私は思うのですよ。
「スターウォーズ」ってお祭りなんだと。


細かい理屈なぞこねくり回したりせずに、おおらかな気持ちで
みんなでわいわいガヤガヤ楽しめばいいのではないかな、と。
だってep.4~6がそうだったでしょ。

そういう意味では、今回の「スカイウォーカーの夜明け」は
及第点以上の出来。私は十分に楽しませてもらいました。

エイブラムスのep.7は、「ep.4のリメイク」なんて声もありましたが
ep.4~6の楽しさを思い出させてくれました。

前作ep.8が正直微妙な出来だったので心配してたのですが、
エイブラムスは、広げた風呂敷を上手に畳んだと思います。

まあ、ツッコミどころはたくさんありますし、
このパートやキャラ、必要?って思うところもなくはないけど、
伏線だって最低限には張ってあると思うし(笑)。
とにかく細かいことはいいんです(おいおい)。

以下は、思ったことをいくつか。致命的なネタバレはしてませんけど
これから観に行こうという人は読まない方が楽しめると思います。


ep.6で死んだはずの皇帝パルパティーンが再登場する・・・ってのは
ネタバレじゃないよね? 予告編のラストで彼の笑い声が響いてたし、
映画でも冒頭で明らかになっちゃいます。

私はep.6での最後が呆気ないと思っていたので、彼の再登板は大歓迎です。
ラスボスにふさわしい大活躍(?)で終盤を盛り上げてくれます。

中盤ではレイの出自も明らかになりますが、
まさに「その発想はなかった」。
でも、言われてみれば納得の設定。

霊体となったルークが×から×××××を×××××するシーンでは
目頭が熱くなってきて、「終わってしまうんだなあ」というのを実感。

そして、カイロ・レンに×××××が語りかけるシーンでは
涙腺が崩壊してしまうし・・・

そのカイロ・レンも、ep.7/8ではいまひとつ悪役として
重さがなかったのだけど、本作ではもう全編出ずっぱりの大活躍。
予告編にもあったけど、大荒れの海原をバックにして、
レイとライトセーバーで立ち回りするシーンは迫力満点。
そしてその後の××を経て最終決戦へ。
ここまできて、彼のキャラが好きになりましたよ。
あらためて、ep.7~9はレイとカイロ・レンの
二人の物語だったことを再確認しました。

クライマックスのラスト30分の展開についても、いろいろ
意見はあるでしょうけど、これは狙ってやってる確信犯でしょう。
私は肯定します。

2016年にレイア役のキャリー・フィッシャーが亡くなって、
どうなるのかと思ったけど「フォースの覚醒」での未使用フィルムを
流用したのこと。でもこのあたりは不自然さを感じさせないし、
ちゃんとレイアがメインのストーリーに絡んできていてたいしたもの。

おそらく、彼女の死去とかep.8の評判とかから、
脚本にもかなりの手直しが入ったと思うんだけど、
そういう諸々の困難な条件も飲み込んで
しかも9部作の完結編というとんでもなく高いハードルを越えて
作品としてまとめ上げたのは素直に賞賛されるべきだと思います。

そしてそして、最後のシーン。
長大な物語が一周回って、元の場所に戻ってくる、
っていう展開が私は大好きなんだけど、ここにもそれがあって
私は素直に感動しました。
この瞬間、私の心は41年前に戻っていました。

さて、スカイウォーカー家の物語は終わっても
「スターウォーズ」シリーズは続くらしくて、
ディズニーは2022~26年にかけて新3部作を公開するそうな。
2026年には、私は68だよおい。
冗談ではなく、私の生きているうちには完結しなさそうな勢いですな。

以前「スターウォーズep.48 ジェダイはつらいよ 銀河慕情」なんて、
ふざけたこと書きましたが、冗談で済まなくなってきた(ないない)。

とりあえず、「スターウォーズ」はここでひと区切り。

スカイウォーカー家の皆さん、ありがとう。そして、さようなら。

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リケジョ探偵の謎解きラボ 彼女の推理と決断 [読書・ミステリ]


リケジョ探偵の謎解きラボ 彼女の推理と決断 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

リケジョ探偵の謎解きラボ 彼女の推理と決断 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 喜多 喜久
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2019/04/04
  • メディア: 文庫
評価:★★★

語り手は「懇誠リサーチ」で働く保険調査員の江崎。

彼が行きつけの定食屋で知り合った女性・友永久里子は、
国立T大学で再生科学の研究をしている。
江崎が担当する事件で久里子に相談し、彼女がその知識で解決に導く、
というシリーズの第2巻。

江崎は久里子に思いを寄せ、彼女もそれを受け入れて
前巻のラストで二人は婚約まで交わすが、
あくまで彼女の一番の生きがいは研究。
というわけで、久里子はアメリカへの2年間の留学に旅立ち、
江崎はその間、待ちぼうけをくわされることに(笑)。

その久里子が留学を終え、まもなく帰国する
・・・というところから本書は始まる。

「Research 01 契約と選択」
アパートのオーナー・園部朝子が群馬県の妙義山をハイキング中に
スズメバチの大群に襲われ、命を落としてしまう。
朝子の生命保険の受取人は夫の啓治。
彼は婿養子でアパートの管理人業務を一手に引き受けていた。
江崎は保険金目当ての殺人を疑うが・・・
ラストで明かされる被害者の遺志がなんとも衝撃的。

「Research 02 死の階段」
家電メーカーで働く増田徳也が脳梗塞で死亡する。
生命保険の受取人は妻の香奈恵。
しかし香奈恵の前夫もまた突然死していたことから
江崎は、徳也の死にも何らかの作為があるのではと疑う・・・
この手の殺人には、他にも同様の作品があるけれど
真犯人の造形がこの作者ならでは。

「Research 03 失踪の果つる地」
平泉由里という女性から夫・努の失踪宣告を求める申請が
家庭裁判所に提出された。努の失踪から7年が経過しており、
失踪宣告が出れば死亡扱いとなって、生命保険金を受け取れる。
努の失踪は偽装ではないかとの疑いを持った江崎は、
由里の情報を集め始めるが、彼の前に謎の若い女性が現れて・・・
解決への手がかりを与えてくれるのは久里子さんなんだが
この分析操作って、本人に無断でやっていいのかなぁ。

「Research 04 生命の未来予想図」
江崎の務める懇誠リサーチに、保険会社〈プラネット生命〉から
調査依頼が来る。最近、がん保険の給付金支払いが急増しているが
それがある病院に集中しているのだという・・・


本編と並行して、江崎と久里子の結婚へ向けての準備というか
いろいろな段取りが描かれていく。
とにかく人生は山あり谷間ありで、いろんな困難を
乗り越えていかなくてはならない。
そしてそれは、この二人だって例外ではなく、終盤近くになって
結構大きな ”困難” がどどーんと押し寄せてくるんだが・・・

いやあ、江崎くん、君は偉いよ。

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