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神子上典膳 [読書・歴史/時代小説]

神子上典膳 (講談社文庫)

神子上典膳 (講談社文庫)

  • 作者: 月村 了衛
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/11/13
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

「凶悪なる敵から、亡国の美姫を守って戦う孤高の戦士」

本書のストーリーをざっくり書くとこうなるが、
この一行から連想される物語と本書との落差は大きい。


時は戦国末期、文禄2年(1592年)。
下野国(しもつけのくに)に領国を持つ藤篠光永は、
重臣・龍田織部介の謀反により討たれ、一族は悉く斬首される。
ただ一人難を逃れた17歳の澪(みお)姫は、
小姓の小弥太とともに落ちのびるが、
追っ手に取り囲まれ万事休す、かと思えた。

そのとき、黒い長羽織の牢人が現れて二人を救う。
その男の名は神子上典膳(みこがみ・てんぜん)。
剣聖・伊藤一刀斎から奥義を授けられた剣の達人であった。

理由も聞かず、報酬も求めず、
二人を国外まで無事に送り届けることを約束する典膳。

澪姫主従が目指すのは、藤篠家と同盟を結ぶ三荻領の筑波家。
しかし龍田の手の者によって街道を押さえられ、
一行は険しい山道の続く雉ヶ岳に向かう。
断崖絶壁が行く手を阻む中、追っ手は着実に近づいてきていた・・・


典膳の剣がいかに無敵とはいえ、多勢に無勢。
龍田側にも、天下の剣豪を倒して名を上げようという
黒蓑(くろみの)右門・左京次という凄腕の兄弟がおり、
戦い続ける典膳は次第に満身創痍に。
しかし、どんなに深手を負おうとも、
澪姫主従を守るという自らに課した "使命" を
異常なまでの執念で全うしようとする。

 本心が窺い知れないところといい、とてつもない不死身ぶりといい、
 ちょっぴり『装甲騎兵ボトムズ』のキリコ・キュービィを彷彿とさせる。


この物語で最大の謎は、"典膳その人" にある。

龍田側の追っ手の一人、白木蔵人が典膳に問う。
「貴公には関わりのなきこと。何故に退かれぬ」
典膳は答える。
「この二人は俺に助けてほしいと言った。だから助ける」
冗談ではなく、彼は心底そう考えているようなのだ。

無法に泣く民あれば、無敵の剣で悪を懲らす。
たとえ相手が何者であろうとも、ただ一人にて立ち向かう。
そして名乗ることなく立ち去る<黒い長羽織の男>。

しかし、彼の言動の端々に見え隠れするのは、底知れぬ虚無。
"無私の境地" などという高尚なものではなく、
ましてや "正義" なんてどこにもない。

自らの命にすら執着せず、澪姫主従を救うために
生還が期しがたい敵の罠へも淡々と踏み込んでいく。
何が彼をそうさせているのか。


終盤に明かされる意外な事実によって、彼の "真意" が明らかになる。
私も驚かされたけれど、思い返せば
そこに至るまでの伏線もちゃんと張ってあったし、
そういう意味では「ミステリ」としてもよくできている。


SFハードボイルド「機龍警察」シリーズでブレイク中の著者だが、
解説によると、本書が実質的な小説家デビュー作だという。
SFや冒険小説も楽しみなんだけど、
この人が書く時代劇ももっと読んでみたくなった。


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トワイライト・テールズ 夏と少女と怪獣と [読書・SF]

今日から2016年の分に突入! 去年分の消化のためとは言え、
12月末から1ヶ月間、毎日更新を続けるなんて
開設以来の10年間、ついぞなかったこと。さすがに疲れた_(_^_)_
今後は平常運転に戻ります。まあ、3日に1回くらいを目標に・・・


 


トワイライト・テールズ  夏と少女と怪獣と (角川文庫)

トワイライト・テールズ  夏と少女と怪獣と (角川文庫)

  • 作者: 山本 弘
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2015/11/25
  • メディア: 文庫



評価:★★★★

巨大怪獣が物理的矛盾なしに存在できるという世界設定のもと、
気象庁特殊生物対策部、通称「気特対」と、
日本に上陸する巨大怪獣との戦いを描いた「MM9」シリーズ。

 ちなみに「MM」とは怪獣の "規模" を表す指標で
 「モンスター・マグニテュード」の略。
 「MM9」は体重4000tを超えるような巨大怪獣を表す。

第3作「MM9 -destruction-」では、
地球侵略を目論む遊星人率いる宇宙怪獣軍団と
地球怪獣軍団との超常バトルロイヤルが展開した。
クライマックスシーンを読みながら号泣したのも懐かしい思い出だ。

 ちなみに「2013年 私が読んだ本ベストテン」で堂々の第1位。

"燃えて萌えて笑って泣ける怪獣小説" という
私の "ウケるツボ" 突きまくりの希有なシリーズ「MM9」。
本書はそのスピンオフ。いわば番外編となっている。


「生と死のはざまで」
 ドラゴンの飛翔する異世界を夢想し、
 つらい現実から逃避していた高校生・和男。
 彼の前に現れたのは、空想のドラゴンにそっくりな怪獣だった。
 ところが、自衛隊との交戦により怪獣は地上に落下、
 和男は女性自衛隊員・英理子と共に地下に閉じ込められてしまう。
 必死のサバイバルを続けるうちに英理子に惹かれていく和男。
 しかし、二人の頭上に居座る怪獣に対する総攻撃の時刻が迫っていた。
 負傷した英理子とともに和男は決死の脱出を試みるのだが・・・
 苦難から逃げることしかできなかった少年は、
 自らの運命と向き合い、愛する人を守る "男" へと成長していく。
 しかしこのラストは・・・切ない。切なすぎる。

「夏と少女と怪獣と」
 2004年の夏、アメリカ。
 湖畔に住む11歳の少年・ハロルドは
 祖父が残した "怪獣の鳴き声" のテープを使って
 湖のモンスターを呼び出す実験の最中に
 聴力に障害を持つ12歳の少女・タリーと出会う。
 たちまち彼女に恋してしまうハロルド。
 短い夏のひとときを楽しく過ごす幼い恋人たち。
 しかし、タリーはある日突然姿を消してしまう。
 湖の波打ち際に、引き裂かれた血まみれの水着を残して・・・
 少年の純粋で一途な思いが奇蹟を呼び寄せる。
 本書収録の四話の中では最高のエンディングだと思う。
 さすが表題作。

「怪獣神様」
 舞台はタイ北部の村。
 親に捨てられ、12歳で売春組織に売られた少女・シリヤム。
 14歳で祖父に保護されたものの、村では陰湿ないじめを受けていた。
 そんな彼女の前にある日突然、空から "神様" が現れる。
 異形な姿かたちはまさしく怪獣なのだが、
 高度な知性を秘めたその存在は自らを
 「惑星ボラージュから来たゼオー」と名乗り、彼女に語りかける。
 ゼオーとの会話を続けるうちに、
 その優しさと深い愛情に魅せられていくシリヤム。
 しかし、MM8級の巨大怪獣による被害を恐れる人類は
 タイ陸海空軍の全戦力を結集した総攻撃を準備していた・・・
 怪獣は人類と共存することは不可能なのか。
 怪獣は「悪」で人類は「善」なのか。
 読んでいるとむしろ怪獣の方が可哀想になってしまう、
 古くて新しいテーマが語られる。
 哀切に満ちたゼオーの過去も相まって、
 ラストではちょっと目がウルウル。

「怪獣無法地帯」
 1968年のアフリカ。米ソが冷戦の真っ最中という時代。
 舞台はコンゴ共和国のジャングル。
 多くの巨大生物が跋扈する "怪獣無法地帯" を逃げ回る3人の男女。
 怪獣に追われる彼らを救ったのは、
 巨大な類人猿とともにジャングルを駆ける金髪の美少女・マリオン。
 研究のために移住してきた生物学者夫婦の子として生まれ、
 大自然と先住民、そして類人猿怪獣ンボンガと共に成長してきた。
 3人はアメリカのCIA職員と名乗り、彼女に対して
 "怪獣無法地帯" の中に墜落した偵察衛星を
 回収する任務への協力を依頼する。
 マリオンの道案内のもと、衛星の墜落地点に向かう3人だったが・・・
 密林の美女と巨大猿。
 キングコングとターザンをあわせたような設定だが
 とにかく総天然美少女(まさに文字通り)マリオンがとても魅力的。
 文明社会と隔絶した大自然の中で暮らす。
 それもまた幸せの一つのかたち。
 そして、そういう場所にさえ持ち込まれる "人間の醜さ"。
 しかしそんなものを歯牙にもかけないマリオンの強さが心地よい。
 "怪獣無法地帯" なんてタイトルなもんだから、
 てっきりレッドキングが出てくるものと思ったんだが(笑)
 クライマックスで登場する怪獣のモチーフは○○○○でしたね。

ところで、「MM9」シリーズ第4作は出ないんでしょうか。
ドラゴン怪獣のように首を長~くして(笑)待ってます。


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スター・ウォーズ/フォースの覚醒 [映画]

実はこの映画を観たのはかなり前なんだけど、
とりあえず昨年分の読書記録の残りをupするのを
優先してたもんで、今日になってしまった。

観たのは2D・日本語吹き替え版。
「洋画は字幕に限る」なーんて思ってた時期が私にもありました。
でも、トシを取って視力が衰えた身では、
激しいアクションの合間に文字を読むなんて至難の業。
迷わず吹き替え版を選択。結果的にこれは正解だったと思う。

さて、1回目を見たのは今年最初の連休、1月9日(土)。
そして実はその2日後の11日(月)に2回目を見てるんだなあ。

そうかそうか、そんなに面白かったのか・・・
いやぁ、間違ってはいないんだけど、本当の理由は別にある。

お恥ずかしい話だが、トシを取るとトイレが近くなって・・・
2時間ちょっとの上映時間のうち、後半に入ったあたりから催してきて
落ち着いて見ていられなかったのだ(^_^;)。

私はとりあえず最後まで見られたが、かみさんはガマンできずに中座。
すぐ帰ってきたんだけど、けっこう重要なシーンを見逃していた。

そのことを後で私から告げられたかみさんは、
「え~、やっぱりそうだったんだ。ねえ、もう一回観に行こうよ~」
私ももう一度じっくり見たかったので、2回目の鑑賞と相成った次第。

2度目は、朝から水分を控えて万全の体制で出発。
おかげで、全編バッチリ見ることができた。
ストーリーが頭に入っているので細かい台詞の内容まで理解できたよ。

閑話休題。


本題であるところの映画の感想だけど、
私はたいへん楽しんだし、気に入りました。

Ep.4~6のあとに製作されたEp.1~3。
CGとSFXの進歩のおかげで、やたらと画面が派手になった。
ライトセーバーの殺陣も軽やかになり、
一見するとものすごく進化したように見えた。
(実際、進化してたんだろうけど)
ただ、技術的には長足の進歩を遂げたのだろうけど、
見ていて今ひとつ満足感に浸れなかったのも事実。

まあ、主役のアナキンが闇落ちしていく物語という
予めバッドエンドが決まったストーリー、というのもあったろうけど。

でもそれを差し引いても "物語" として印象に残らなかったよなあ・・・


そんな "不完全燃焼" 感をずっと持ち続けてはや幾星霜。
Ep.7「フォースの覚醒」は、そんな不満を吹っ飛ばす出来だった。

Ep.6から30年。
第二デス・スターは破壊され、皇帝も倒されて
共和国復活万歳、って話かと思いきや、
帝国の残党は「ファースト・オーダー」を名乗り、
いまだ大きな勢力を保っている様子。
共和国もこれに対抗すべく、レイア姫率いるレジスタンスを支援、
銀河は未だ戦乱が続いていた・・・
というのが映画冒頭で恒例の "流れゆく文字列" で語られる。
そしてレジンスタンスの中核、ジェダイ・マスターたる
ルーク・スカイウォーカーは、ある "事情" により、失踪していること、
戦いの帰趨を握る彼を「ファースト・オーダー」、レジスタンス双方が
探し求めていることも・・・

今回の主人公はレイ。何と妙齢の女性である。
たった一人で惑星ジャクーの砂漠に暮らし、
スクラップから部品を引っぺがして生活の糧にしている。
失踪したルークの行方を示す手がかりを持つドロイドBB-8との出会いが
彼女を銀河の運命を巡る大冒険へと導いていく・・・

こう書くと、レイの立ち位置が、
まんまEp.4におけるルークと重なるんだが
実際、Ep.7はEp.4を彷彿とさせるシーンが多々あり、
口が悪い人は「Ep.4のリメイク」っていう人もいるらしい。

でもこれは、意図的にやっていることだと思うよ。
あえてEp.4に寄せていくことで、
Ep.1~3でちょっと違う方へ向かってしまった(笑)
「SWサーガ」を、"本流" へと引き戻す。
それこそが本作の目的だったように思う。

2回見たせいか、台詞も頭に入ってきて、
すごく良くできた脚本なのも分かったし。

ヒロインのレイ、元ストーム・トルーパーだったフィン、
レジスタンスのエースパイロット・ポーなど新しいキャラも魅力的。

特にレイはスゴい。女性にもかかわらず腕っ節も強いし
メカに詳しく宇宙船の操縦にも秀でてる。男に頼らない自立心も旺盛。
たぶんEp.4のルークより "できる子" になってる(笑)。
レイの相手役になるフィンも黒人俳優が演じているし
このあたり、40年という時間の流れと時代の変化も感じる。

ハン・ソロ、チューバッカ、レイア姫などの旧キャラの登場も嬉しい。
青春時代にSWに胸躍らせた世代にはたまらない贈り物だろう。
ルークの出番がほんのちょっとしかないのがちょっと淋しいが、
おそらく彼は次作以降でたくさん活躍するんだろう。

吹き替え版ならではの話だが、演じている声優さんも
ハン・ソロを磯部勉、ルークを島田敏、レイアを高島雅羅と、
30年前と同じ人が演じている。ここもうれしいところだ。
新ヒロインのレイを演じているのは永宝千晶さんという方。
ちょっとネットで調べたら舞台をメインに活動している人らしく
声優としては新人。でもとっても達者で安心して観ていられる。

 Ep.4のTV初放映(1983年10月)のときの悲劇を覚えているだろうか。
 ルークが渡○徹、レイアが大○久○子、ハン・ソロが松○し○る。
 今思い出しても悪夢以外の何物でもなかったなあ・・・

残念なのがC-3PO役の野沢那智さんが5年前にお亡くなりになったこと。
でも、今演じているおられる岩崎ひろしさんというのがまた達者で
野沢那智そっくりの声質で演じていらっしゃる。これもたいしたもの。


新三部作の第一弾らしく、レイたちの冒険は始まったばかり。
次作へ向けての伏線もたくさんあって、期待はいやが上にも高まる。
2017年公開のEp.8が今から待ち遠しい。


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教場 [読書・ミステリ]

やったーついに2015年分終了! (^_^)b
でも、1月分がもう2桁も溜まってる~ (@_@)


教場 (小学館文庫)

教場 (小学館文庫)

  • 作者: 長岡 弘樹
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2015/12/08
  • メディア: 文庫



評価:★★★★

小説だから誇張や脚色も当然あるだろうけど、この本を読むと
そのへんの交番にいるお巡りさんを見る目が変わる。
そんな作品。

舞台は警察学校。
タイトルの「教場」とは警察学校の教室のこと。
名前が違うように、"学校" とはいうものの、
普通の学校とは別世界である。

犯罪に向かい合う以上、生命の危険は常に存在する。
そんな現場で働く者を送り出すのだから
"授業" も常に真剣勝負で、警官として必要な知識と技能を
文字通り "身体で覚える" まで叩き込まれる。
そういう意味では軍隊に近いとも言えるだろう。

例えば「第一話 職質」では職務質問が取り上げられる。
繁華街の酔っ払いに対して職務質問を行うという想定で
教官が酔っ払い役となり、生徒が警官役となって
ロールプレイを行うのだが、これがまた奥が深い。
職務質問一つとっても様々な留意点があり
犯罪の兆候を見逃したり証拠を隠滅されたりしないように
"警官がしなければならないこと" や "相手にやらせてはいけないこと" が
山のようにあることに驚かされる。

警官という業務の重要性から、当然ながら成績の悪い学生には
腕立て伏せ10回とかグラウンド10周とかの "ペナルティ" や
原稿用紙20枚の反省文などの "苦行" が降ってくる。

半年間の短期課程にもかかわらず、入校して1ヶ月ちょっとで
41人の同期生の中で既に4人が依願退職している。
ある意味、警察官としての資質に欠ける者を
はじき飛ばす "篩(ふるい)" 、それがこの "学校" なのだ。

とはいっても、全編これ警察官業務の話というわけではない。
むしろ警官の卵とはいえ若者の集団なのだから
厳しいルールの裏をかこうとしたり
隙間をすり抜けようとしたりする者もいるし、
閉鎖的な環境、脱落することへの不安、職務への重圧などから
精神の平衡を失う者も現れる。
その辺りも、本書独特の "ミステリ素材" になっている。

連作短編形式で、毎回主人公は代わるのだが
同期生の中の話なので、複数回にわたって登場するキャラもいる。

その中で、もっとも印象的というか中心にいるのが
わずかなミスも見逃さずに退校処分を下す
冷厳な教官・風間公親(きみちか)。

本書の裏表紙の惹句に「"既視感ゼロ" の警察小説」って銘打ってある。
確かに舞台となる警察学校というのは今までにない設定で
新鮮で目新しい舞台なのは間違いない。

 本書は各種のミステリベストテンでも軒並み上位に入っている。
 「警察小説」としてはオリジナリティ充分の出色の出来だけど、
 「ミステリ」としてみると、私の好みとは
 微妙に違う方を向いているんだけどね(^^;)

特殊な舞台で繰り広げられるドラマだけに
ストーリーも既存のパターンにあてはまらない。
そういう意味で "既視感ゼロ" は間違ってはいないんだが
こと風間に関しては「どこかで見たような・・・」って気がしてた。

つらつら考えてみて、はっと気づいたのが
「ジョーカー・ゲーム」(柳広司)で
スパイ養成のため "D機関" を設立した結城中佐。
すべてを見通す洞察力もそうだし、ふとしたときに見せる人間味も。

そしてどちらにもある共通点がある。
結城中佐は○○が○○で、風間教官は△△が△△だということ。

聞くところによると、風間を主人公としたスピンオフ作品も
執筆されているらしい。これも楽しみだ。


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桜花忍法帖 バジリスク新章 上下 [読書・ファンタジー]

桜花忍法帖 バジリスク新章 (上) (講談社タイガ)

桜花忍法帖 バジリスク新章 (上) (講談社タイガ)

  • 作者: 山田 正紀
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/11/19
  • メディア: 文庫




桜花忍法帖 バジリスク新章 (下) (講談社タイガ)

桜花忍法帖 バジリスク新章 (下) (講談社タイガ)

  • 作者: 山田 正紀
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/12/17
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

山田風太郎に「甲賀忍法帖」という長編作品がある。
本書「桜花忍法帖」は、この「甲賀-」の続編、
というか後日談に相当する。
であるから本書について記す前に「甲賀-」について
少し書いておく必要がある。


慶長19年(1614年)。服部半蔵に率いられた二つの忍者群である
伊賀と甲賀に、驚くべき命令が下される。

三代将軍選定に悩む家康は天海僧正の提言を受け入れた。
すなわち、伊賀と甲賀の忍者たちに相争わせ、
最後まで生き残った者で決める、というもの。
伊賀が勝てば竹千代(家光)、甲賀が勝てば国千代(忠長)が将軍となる。

双方から10名ずつの手練れが選ばれたが、その中には
甲賀の頭目の孫・弦之介と伊賀の頭目の孫娘・朧(おぼろ)がいた。
恋仲で、間もなく祝言を挙げるはずだった二人の運命は、
非情なものへと変転する。

家康の命令により、双方血で血を洗う死闘に次ぐ死闘の末、
精鋭20名の忍者すべてがあい果てた・・・

これが「甲賀忍法帖」の概要。


そしてこの死闘から12年後の寛永3年(1626年)、
「桜花忍法帖」の物語が始まる。

伊賀・甲賀ともに次世代の忍びが育っていた。
<甲賀五宝蓮><伊賀五花撰>と呼ばれる新鋭たちである。

甲賀の棟梁は甲賀八郎、伊賀の棟梁は伊賀響(ひびき)。
二人は12年前に散った弦之助と朧の忘れ形見、運命の双子であった。

将軍位の争いに敗れた忠長は大納言の位を授けられ、
駿河・遠江合わせて55万石を領する身となっていた。
その前に成尋衆(じょうじんしゅう)と名乗る忍者群が現れる。
その棟梁たる謎の僧侶・成尋は、忠長を使嗾して
天下に大乱をもたらそうとしていた・・・

そのために邪魔となるのは<甲賀五宝蓮>と<伊賀五花撰>。
成尋衆は、その超絶の技をもって彼ら精鋭忍者群に襲いかかり、
<五宝蓮>と<五花撰>は、八郎と響を残して全滅してしまう。

しかし成尋衆は、ある思惑から二人にとどめを刺さず、
いずこかへ去ってしまう・・・


ここまでが上巻なんだが、実は八郎と響はほとんど活躍しない。
つまり、乱暴に言ってしまえば上巻がまるまるプロローグなのだ。
二人の本格的参戦は下巻から始まる。

<五宝蓮><五花撰>壊滅の5年後、寛永8年(1631年)。
将軍秀忠の死と時を同じくして再び成尋衆は降臨する。
五層にも及ぶ天守閣を持つ機動城塞「叢雲(むらくも)」
(超巨大戦車と思えばほぼ間違いない)
を駆って、江戸への進撃を開始する成尋衆。

迎え撃つは、ともに17歳へと成長した八郎と響が率いる
<新・甲賀五宝蓮>と<新・伊賀五花撰>。
この世に平穏を取り戻すため、10人の若き忍者が立ち上がる・・・


とにかく成尋衆がとてつもなく強い。
(ほとんど魔術妖術の類いなんだが「忍法帖」シリーズの読者で
 そこに文句を言う人はいないだろう。)
<甲賀五宝蓮>も<伊賀五花撰>も精鋭揃いで、
半端じゃない強さなんだけど、それでも
赤子の手をひねるように次々に倒されていくんだから。

下巻で<新・甲賀五宝蓮>と<新・伊賀五花撰>に加わるメンバーは、
上巻ではまだ半人前というか二軍のような扱いだった少年少女たち。
5年経っても、成尋衆のほうがはるかに力は上だ。
そんな彼らがどのように "超人軍団" と渡り合うのか。

思い出したのは、作者が昔書いてた「超冒険小説」シリーズ。
このシリーズは "プロvs素人" というシチュエーションが多用されてた。
素人ならではの奇想奇策で、プロの鼻を明かす、というパターン。

本作はファンタジーなのでそこまで理詰めではないが、
それでも、弱者が知恵と工夫で強者に一太刀浴びせる話を書かせたら
作者の右に出る者はいないだろう。

とは言っても、成尋衆も強敵である。
死闘を乗り越えるたびに櫛の歯が欠けるように味方も喪われていく。
果たして怪僧・成尋の野望を食い止めることはできるのか・・・


すべての発端である「甲賀忍法帖」は1958年の発表(これも驚きだ)。
しかも、半世紀近くを経ても人気は衰えず、
2003年には「バジリスク ~甲賀忍法帖~」と題されてマンガ化、
(本書の副題もここから来ているのだろう。
 表紙のイラストも、マンガの作者・せがわまさき氏が描いている。)
2005年にはTVアニメ化、さらには映画化もされている。
(ちなみに映画の方は弦之介がオダギリジョー、朧が仲間由紀恵。)

そして発表後60年近く経っても、本書のように
後輩の作家によって "続編" が描かれる。
山田風太郎というのはつくづくスゴい作家だったんだなあと思う。

登場人物の名前の奇抜さとか、登場する "忍法" の奇想天外さとか
まだまだ書かなくてはいけないことがありそうなんだけど
もういい加減書いてきたのでもうそろそろ終わりにしよう。

ああ、でもこれだけは書いておきたい。
表紙イラストに描かれた八郎と響がねえ・・・可愛くないんだ(笑)。
たぶん、せがわまさき氏が頑張って書いたんだと思うんだけど
この二人はこんなにおどろおどろしくないんだ。
もっと年相応の子どもで、でも過酷な運命に弄ばれて、
でも絶望せずにひたすら頑張ってる。実に "いい子" なんだなあ。
残念ながら、このイラストと本文での描写はかなり落差がある。

せがわさん、ごめんなさい。
でも、この本はどう考えても表紙で損していると思うんだよねぇ・・・


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綾小路きみまろ 爆笑スーパーライブ [日々の生活と雑感]

今日は中高年の星の漫談を聞いてきた。

話の始まりは例によってかみさん。
10日ほど前、新聞広告で見つけたのが標題のイベント。
「あーっ、これ見に行きたーい! ねえ、チケット取ってよ」
とは言っても、もう日が迫っている。
「もう完売じゃないの」
「とにかく聞いてみてよ」
広告に載ってた電話番号に問い合わせた。
若いお姉さんが出てきて応対。
「あー、申し訳ありません。S席はもう完売ですね~。
 A席だったらご用意できるんですが。」
「じゃ、A席を2枚お願いします。」

宅配代引きで1週間ほどかかるとのこと。
開催日ぎりぎりじゃん、って思ったけど
なんのことはない、3日くらいで届いた。

場所は埼玉県加須市の「パストラルかぞ」。
届いたチケットに記されてた席番号を
「パストラルかぞ」のwebに載ってる会場図と照らし合わせたら
なんと最後列から2列目。もうちょっと遅れたら完売だったんだね。
おそるべし綾小路きみまろ。

会場まで家から車で1時間くらいかかるんだけど、まあ仕方がない。
夫婦共働きなもので、平日に二人揃っていくのはほぼ不可能なんだから、
日曜日に開催ってのは貴重なんだ。

11時に家を出てドライブ。田園地帯を走り抜け、12時に到着。
とにかく駐車場が広い。駅からちょっと距離もあるので
車がないとなかなか来づらい場所ではある。

開場が13時なので、それまで近くのファミレス(バーミヤン)で昼食。
歩いて数分なんだけど、今日は風が強い。いわゆる空っ風ですかね。

13時になったので「パストラルかぞ」へ。
なんとあんなに広かった駐車場が、もうぎっしり。
みなさんお車でご来場のようで。

ロビーに入る前から分かったけど、客の年齢層が高い。
ちょっと前に行った小椋佳のコンサートも高かったけど
(たぶん私より5~10歳くらい上が主だったと思う)
間違いなくそれよりさらに高い。
たぶん私ら夫婦より10~20歳くらい上がメインだろう。
歩くのがちょっと大儀そうなおばあちゃん(失礼!)も見かけたし。

大ホール入り口の前ではグッズ販売。
DVDやCDを売ってるのは分かるんだが、
きみまろマークのついた煎餅まで並んでるのには笑ってしまった。

会場内ではサイリウムを売ってる。
けっこう若いお兄さんが声を上げて。
「歌のコーナーで使えます」
 公演中に歌謡ショーでもあるのかと思った(これについては後述)。
「電池を入れ替えれば何回でも使えます」
 それは普通だろうと思ったのだけど、一昔前のはケミカルライト。
 つまり使い捨てだったわけだ。今はLEDなので再使用可能なのだと。
「なんとたったの500円! 1000円出せば500円おつりが出ます」
 真面目な顔でトボけたことを言う。
「1000円出すと、なんと2個も買えます!」
 それはそうだろう。きみまろの弟子かなにかかキミは。

1000席あまりのシートはほぼすべて埋まってた。
完売だったんだねえ。

そうこうしているうちにいよいよ開幕。
照明が落ち、BGMに乗せてきみまろさんが歌いながら登場。
最前列の方のお客さんはさっそくサイリウムを振ってる。
とはいっても、歌は1分ほどで終了。そしてトークの開始。

トークの内容については、もうTVで見ている通り。
放送できないような内容も含めて、た~っぷり聞かせてもらった。
私も笑ったが、横でかみさんは文字通り笑い転げていた。
途中、ときどきトチるところもあったのだが、
「私も65でございますから! たいへんなのです!」
いやあ60超えてもなお、バイタリティあふれる舞台でしたよ。

最後にまた1曲。タイトルがなんと「ピンピンコロリピンコロリ」。
結局、最初と最後にしかサイリウムの出番はなかったのだね。

終わってみれば15時10分を少々まわった頃。
1時間10分ほどのトークショー。

前座で無名のお笑い芸人が出てきて、途中に休憩タイムを取って
歌謡コーナーがあって、またトークになって、
トータルで2時間くらいかなあ・・・って予想してたんだが
最初から最後まできみまろさん一人が出ずっぱり。

でもまあ、あんまり長くなっても翌日が仕事の人もいるだろうし
(年金生活に入ってる人の方が多そうだったけどね)
早めに終わったのはそれはそれでよかったのかも。

会場から出るのもひと苦労。
駐車場の車が一斉に出口に向かうもんだから・・・
またまた1時間のドライブで家に帰ってきた。

かみさんは満足げである。
「次はユーミンのコンサートに行きたいわぁ」

いつの日かここでご報告できることを願って・・・


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祟り火の一族 [読書・ミステリ]

祟り火の一族 (双葉文庫)

祟り火の一族 (双葉文庫)

  • 作者: 小島 正樹
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2015/12/10
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

三咲明爽子(あさこ)は都内で劇団員をしている。
彼女に持ち込まれたのは異様なアルバイト。
日に一度、成城の屋敷に赴き、白装束に着替え、
顔を包帯で被われた男の横たわる枕元で、怪談を語る。

女の死体を埋めた橋脚にヒビが入り、血が流れ出す。
洞窟の中に潜み、自らの身体を松明で焼く女。
首を吊った男の死体が燃やされ、その頭部から緑色の少女が現れる・・・

異常な状況と怪談の内容に激しく興味を惹かれた明爽子は、
知人の群馬県警刑事・浜中を巻き込み、背景を探り始める。

問題の屋敷から出てきた青年の後をつけた二人は
群馬県の墨皮村にある廃鉱山へと導かれてゆく。
そこにあったのは鉱山の所有者・狩能家の屋敷。
しかしその母屋は半ば焼け落ちて廃墟となっていた。

浜中の知人の探偵・海老原とともに狩能家の屋敷を再訪した明爽子は
くだんの青年と再会する。彼は池ノ井恭輔と名乗り、
狩能家にまつわる奇怪な殺人事件を語り出す・・・


妖異極まる6つの怪談、墨皮村に伝わる言い伝え。
狩能家を襲った怪奇な連続殺人事件。
これだけ書くと横溝正史っぽいけど、雰囲気は二階堂黎人に近いかな。

狐狸妖怪や超常現象にも見える謎も終盤に綺麗に解明される。
快刀乱麻を断つが如く、積み上げられた謎の数々をバッタバッタと
切りまくる海老原の推理は、読んでいて爽快。

このあたりは、ついこの間に読んだ「覇王の死」を彷彿とさせる。
よくもまあこれだけ "ネタ" を集めたものだ。この努力には敬服。

並みのミステリ長編が何本も書けるくらいの
トリックのてんこ盛り状態なんだが、さらに驚かされるのは
ラストにもう一段 "大技" が仕込んであること。

 ただ、この "オチ" の評価はどうだろう。
 私は今ひとつ好きになれないんだが、単に私が石頭なだけ?
 気にしない人も多いんだろうけど・・・


本作で登場したのが、出世欲が全くないにもかかわらず、
信じられないくらいの偶然のために次から次へと大手柄を挙げ、
順風満帆に出世街道をひた走って(走らされて?)いる浜中刑事。

 ラリィ・ニーヴンの「ノウン・スペース・シリーズ」を
 ちょっと思い出してしまったよ(←分かる人いないってば)。

明爽子さんとの掛け合いも楽しいし、これからレギュラー化するのかな。

解説によると、名探偵・海老原浩一のシリーズは、
とりあえず全8巻らしいので、あと5巻読めることになる。

これだけ大風呂敷を広げて、しかも包み残しせずに畳んでみせる。
(畳み方が綺麗かどうかは読者の好みによるかも知れないけど)
本格ミステリとしては、なかなか貴重なシリーズ。
次巻も期待してます。


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冒険王<4> 日露スパイ決戦 [読書・冒険/サスペンス]

冒険王〈4〉日露スパイ決戦 (ハルキ文庫)

冒険王〈4〉日露スパイ決戦 (ハルキ文庫)

  • 作者: 赤城 毅
  • 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
  • 発売日: 2015/12/18
  • メディア: 文庫



評価:★★★

旅順要塞の図面奪取に失敗した前作から4年。
いつのまにか元陸軍中尉・志村一心が
スパイの道に入ってから10年が経った。

時に1904年。日露はついに開戦した。

ロシア海軍の根拠地となった旅順港。
海軍による3度にわたる湾口の閉塞作戦も、
陸軍による2度の総攻撃も失敗し、
旅順は難攻不落の大要塞として日本軍の前に立ちはだかる。

連合海軍参謀・秋山真之中佐に呼び出された一心は、
旅順への潜入を命じられる。目的は、攻略目標である
"二百三高地" の偵察だった。

現地人になりすまし、ジャンク船で旅順港へ向かった一心は
首尾良く潜入に成功し、無事に偵察任務を終えたものの
意外な人物の登場によってロシア軍に捕らえられてしまう・・・


「冒険王」シリーズ、全4巻の完結編。
時代背景は日清戦争直後から日露戦争まで。
ずぶの素人から日本軍の間諜の切り札へ。
年齢も20代半ばから30代半ばへ。
ちょうどこの10年間の一心の成長が描かれてきた。

舞台も、前作からの因縁の場所である旅順。
最終作らしく、長年の宿敵だった諏訪雷四郎との決着も描かれる。
その他いろいろなしがらみにけりがついて、確かに区切りはいい。
いいんだけど。

本書は、日露講和会議のため全権大使・小村寿太郎が
日本を出発するシーンで終わる。
交渉場所であるポーツマスで展開されるであろう
ロシアとの情報戦に備えて、一心は小村の随員に加わっている。
彼のスパイとしての活躍はこれからも続いていくのだ。

だから、"完結" って感じは全然しないんだよなあ・・・


いつの日か、「冒険王」第二部が開幕することを期待したい。
史実の裏に隠れた "秘話" を語るのもいいけれど、
1巻や2巻みたいな「007」や「インディ・ジョーンズ」を
彷彿とさせるような、波瀾万丈な "物語" を読んでみたいよなあ。

3巻と4巻が地味というわけではないんだけどね。
やっぱり "冒険王" な話が読みたいじゃない。
作者はそういう話が書ける人だと思うしね。


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私の嫌いな探偵 [読書・ミステリ]

私の嫌いな探偵 (光文社文庫)

私の嫌いな探偵 (光文社文庫)

  • 作者: 東川 篤哉
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2015/12/08
  • メディア: 文庫



評価:★★★

関東地方のどこか海沿いに存在する烏賊川市。
この街を舞台にして、私立探偵・鵜飼の活躍(?)する
ミステリ・シリーズの短編集。

「死に至る全力疾走の謎」
 鵜飼が探偵事務所を構えるビルの隣にある駐車場に男が倒れていた。
 目撃者によると、その男は駐車場を全力疾走して
 ビルの壁に激突したという・・・
 異様な状況から意外な事件に結びつくあたりは流石だけど
 かなり "苦しい" 真相かなあ。まあ面白いからいいけど。

「探偵が撮ってしまった画」
 浮気調査のために張り込みをして、しっかり現場写真を撮った鵜飼。
 しかしその写真に写り込んでいた屋敷では殺人事件が起こっていた。
 いわゆる「雪の密室」ものなんだけど、
 「いくらなんでもそれはないだろう」ってトリックを堂々と使って
 しかも最後まで面白く読ませるんだからスゴいよなあ。

「烏賊神家の一族の殺人」
 烏賊神神社の宮司の息子・真墨(ますみ)の恋人が境内の祠で殺される。
 しかも発見された死体が一度消え、その後再び現れるという謎の事態に。
 死体移動の真相は警察が調べりゃ一発だと思うんだが
 それを言うのも野暮かなぁ。
 それより、特筆すべきは今回の探偵役が
 烏賊の着ぐるみ姿で推理を披露するというところ(笑)。
 史上初の「ゆるキャラ探偵 "剣崎マイカ"」の登場だ。

「死者は溜め息を漏らさない」
 崖の上から転落し、少年の目の前で死んだ男。
 しかし死体の口から、輝く煙のようなものが・・・
 "溜め息" の正体は作中で説明されるんだけど
 これ、ホントかなあ。今でも半信半疑なんだけど。
 ここさえ納得できれば他の部分はOKなんだけどね。

「二〇四号室は燃えているか?」
 鵜飼に舞い込んだのは恋人の浮気調査だった。
 依頼人の恋人・辰巳が、自分のアパートで
 赤いドレスの女と会っていることを突き止めたものの
 その直後アパートが火事になり、辰巳は焼死してしまう・・・
 これもある意味古典的なトリックなんだけど、
 ラストでそれをちょいとひとひねり。これも上手い。


探偵の鵜飼杜夫と助手の戸村流平のコンビがお馴染みなのだが
今回、隆平くんの出番は大幅に減り、代わって
鵜飼探偵事務所の美貌の大家、二宮朱美さんが大活躍する。
「友人以上恋人未満」なんて言葉があるが、この二人の関係は
「店子以上友人未満」というところか。

解説によると「烏賊神家」に登場する剣崎マイカ嬢は
シリーズの他の作品でも活躍しているとのこと。
ひょっとしてレギュラー入りしちゃうのか?

流平くんの出番がますます減ってしまうなあ・・・
まあ、それを悲しむ人はあんまりいないかも知れないけど(笑)。


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冒険王<3> 旅順の謎 [読書・冒険/サスペンス]

冒険王〈3〉旅順の謎 (ハルキ文庫)

冒険王〈3〉旅順の謎 (ハルキ文庫)

  • 作者: 赤城 毅
  • 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
  • 発売日: 2015/09
  • メディア: 文庫



評価:★★★

1895年。陸軍中尉・志村一心は、独仏露三カ国の外交官と
乱闘騒ぎを起こし、士官の身分を剥奪される。
しかし彼の素質を惜しんだ軍部により1年間の特別訓練を受け、
間諜(スパイ)として生きることになった。

そして6年後の1901年。
独仏露の三国干渉によって日本が放棄した遼東半島は
ロシアによって租借され、軍港・旅順は大要塞へと変貌していた。

ロシア駐在武官の広瀬少佐に呼び出された一心は、
旅順要塞の図面奪取を命じられる。

首尾良くロシア陸軍省に潜入し、
図面をマイクロフィルムに収めることに成功した一心は、
そのままイギリスへ向かう客船に乗り込む。
(イギリスと日本は、このころ水面下で
 「日英同盟」の交渉中という "友好国" だった。)

怪しい同乗客に囲まれる中、一心は何者かに襲われる・・・


順調にスパイとしての実績を上げてきた一心だけど
今回は冴えない面が目立つ。

成功したかに見えた図面奪取でミソをつけ、
中盤以降は敵の打つ手に対して後手後手に回ってしまう。

本来は敵のはずの人物からの助け船にすがって
何とか事態の打開を図ったり、クライマックスでのピンチも
自力で切り抜けたとは言い難かったり・・・

読んでいて颯爽感があまり感じられないのは
この展開では致し方ないかな。
好意的に解釈すれば、今回はそれだけ
敵の策略が巧妙で、一心より一枚上手だったとも言えるが。


前巻の時に書いたかも知れないけど
日清・日露の間に時代設定していて、
史実に基づいて物語を構築している。
リアルではあるのだけど、窮屈な雰囲気も感じる。

なんだか文句ばかりになって申し訳ないけど
一読者としては、もっとカッコいい一心が見たいんだなあ。

タイトルだって「冒険王」(!)なんだし。


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