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トワイライト・テールズ 夏と少女と怪獣と [読書・SF]

今日から2016年の分に突入! 去年分の消化のためとは言え、
12月末から1ヶ月間、毎日更新を続けるなんて
開設以来の10年間、ついぞなかったこと。さすがに疲れた_(_^_)_
今後は平常運転に戻ります。まあ、3日に1回くらいを目標に・・・


 


トワイライト・テールズ  夏と少女と怪獣と (角川文庫)

トワイライト・テールズ  夏と少女と怪獣と (角川文庫)

  • 作者: 山本 弘
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2015/11/25
  • メディア: 文庫



評価:★★★★

巨大怪獣が物理的矛盾なしに存在できるという世界設定のもと、
気象庁特殊生物対策部、通称「気特対」と、
日本に上陸する巨大怪獣との戦いを描いた「MM9」シリーズ。

 ちなみに「MM」とは怪獣の "規模" を表す指標で
 「モンスター・マグニテュード」の略。
 「MM9」は体重4000tを超えるような巨大怪獣を表す。

第3作「MM9 -destruction-」では、
地球侵略を目論む遊星人率いる宇宙怪獣軍団と
地球怪獣軍団との超常バトルロイヤルが展開した。
クライマックスシーンを読みながら号泣したのも懐かしい思い出だ。

 ちなみに「2013年 私が読んだ本ベストテン」で堂々の第1位。

"燃えて萌えて笑って泣ける怪獣小説" という
私の "ウケるツボ" 突きまくりの希有なシリーズ「MM9」。
本書はそのスピンオフ。いわば番外編となっている。


「生と死のはざまで」
 ドラゴンの飛翔する異世界を夢想し、
 つらい現実から逃避していた高校生・和男。
 彼の前に現れたのは、空想のドラゴンにそっくりな怪獣だった。
 ところが、自衛隊との交戦により怪獣は地上に落下、
 和男は女性自衛隊員・英理子と共に地下に閉じ込められてしまう。
 必死のサバイバルを続けるうちに英理子に惹かれていく和男。
 しかし、二人の頭上に居座る怪獣に対する総攻撃の時刻が迫っていた。
 負傷した英理子とともに和男は決死の脱出を試みるのだが・・・
 苦難から逃げることしかできなかった少年は、
 自らの運命と向き合い、愛する人を守る "男" へと成長していく。
 しかしこのラストは・・・切ない。切なすぎる。

「夏と少女と怪獣と」
 2004年の夏、アメリカ。
 湖畔に住む11歳の少年・ハロルドは
 祖父が残した "怪獣の鳴き声" のテープを使って
 湖のモンスターを呼び出す実験の最中に
 聴力に障害を持つ12歳の少女・タリーと出会う。
 たちまち彼女に恋してしまうハロルド。
 短い夏のひとときを楽しく過ごす幼い恋人たち。
 しかし、タリーはある日突然姿を消してしまう。
 湖の波打ち際に、引き裂かれた血まみれの水着を残して・・・
 少年の純粋で一途な思いが奇蹟を呼び寄せる。
 本書収録の四話の中では最高のエンディングだと思う。
 さすが表題作。

「怪獣神様」
 舞台はタイ北部の村。
 親に捨てられ、12歳で売春組織に売られた少女・シリヤム。
 14歳で祖父に保護されたものの、村では陰湿ないじめを受けていた。
 そんな彼女の前にある日突然、空から "神様" が現れる。
 異形な姿かたちはまさしく怪獣なのだが、
 高度な知性を秘めたその存在は自らを
 「惑星ボラージュから来たゼオー」と名乗り、彼女に語りかける。
 ゼオーとの会話を続けるうちに、
 その優しさと深い愛情に魅せられていくシリヤム。
 しかし、MM8級の巨大怪獣による被害を恐れる人類は
 タイ陸海空軍の全戦力を結集した総攻撃を準備していた・・・
 怪獣は人類と共存することは不可能なのか。
 怪獣は「悪」で人類は「善」なのか。
 読んでいるとむしろ怪獣の方が可哀想になってしまう、
 古くて新しいテーマが語られる。
 哀切に満ちたゼオーの過去も相まって、
 ラストではちょっと目がウルウル。

「怪獣無法地帯」
 1968年のアフリカ。米ソが冷戦の真っ最中という時代。
 舞台はコンゴ共和国のジャングル。
 多くの巨大生物が跋扈する "怪獣無法地帯" を逃げ回る3人の男女。
 怪獣に追われる彼らを救ったのは、
 巨大な類人猿とともにジャングルを駆ける金髪の美少女・マリオン。
 研究のために移住してきた生物学者夫婦の子として生まれ、
 大自然と先住民、そして類人猿怪獣ンボンガと共に成長してきた。
 3人はアメリカのCIA職員と名乗り、彼女に対して
 "怪獣無法地帯" の中に墜落した偵察衛星を
 回収する任務への協力を依頼する。
 マリオンの道案内のもと、衛星の墜落地点に向かう3人だったが・・・
 密林の美女と巨大猿。
 キングコングとターザンをあわせたような設定だが
 とにかく総天然美少女(まさに文字通り)マリオンがとても魅力的。
 文明社会と隔絶した大自然の中で暮らす。
 それもまた幸せの一つのかたち。
 そして、そういう場所にさえ持ち込まれる "人間の醜さ"。
 しかしそんなものを歯牙にもかけないマリオンの強さが心地よい。
 "怪獣無法地帯" なんてタイトルなもんだから、
 てっきりレッドキングが出てくるものと思ったんだが(笑)
 クライマックスで登場する怪獣のモチーフは○○○○でしたね。

ところで、「MM9」シリーズ第4作は出ないんでしょうか。
ドラゴン怪獣のように首を長~くして(笑)待ってます。


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