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キング&クイーン [読書・ミステリ]

キング&クイーン (講談社文庫)

キング&クイーン (講談社文庫)

  • 作者: 柳 広司
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/02/15
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

ヒロイン・冬木安奈は警官を父として生まれ、
長じて後、警視庁のセキュリティ・ポリス(SP)になった。
しかし、ある国会議員を護衛する任務に "失敗" し、
自らの職務に疑問を感じて職を辞してしまう。

今は、バー<ダズン>のオーナー・袴田に拾われ、
バーテン兼 "用心棒" を務めている。

天才チェス・プレイヤーであるアンディ・ウォーカーは
昨年ジャカルタで行われた元世界王者との一戦に勝利し、
世界王者へ返り咲いたのもつかの間、そのまま失踪してしまう。

アンディは気ままに世界を放浪した後、日本へやってきていた。
偶然、日本で暮らしているアンディに出くわした
留学生・宋蓮花(ソウレンホア)は、
彼が何者かに狙われていることを知る。
蓮花は、<ダズン>の常連客の伝手を辿って、
安奈へアンディの "護衛" を依頼する。

自らの過去と葛藤しながらも、最終的に依頼を受ける安奈。
彼女の背中を押したのは
「目の前で困っている人を決して見捨てない」
という、亡き父の言葉だった。

天才ゆえの奇矯な振る舞いを繰り返すアンディ。
彼に振り回されながらも、かつての上司・首藤をも巻き込み、
"護衛" 任務を全うしようとする安奈だが・・・


ヒロインが実にオトコマエ。とにかく安奈がカッコいい。
女性ながらSPにまで登り詰めた力量は伊達ではない。
素早い状況判断、先を読むカンも鋭く、もちろん腕っ節も強い。
拳銃を持つ二人組の追跡を振り切り、
蓮花とアンディを保護していく過程はまさにプロ。

ただ、せっかく安奈が的確な指示をしても、
アンディがそれに素直に従ってくれないんだよなあ・・・


ラストに至り、"追っ手の正体" が明かされるんだが
そこで読者はかなり驚かされるだろう。
いつのまにか「ハードボイルド」として一生懸命読んでいたら、
背負い投げを食らってしまう。
そうだよね、これは「ミステリ」だったんだ。

読み終わってみると、「キング&クイーン」というタイトルは
これ以外にはない! ていうくらいピッタリなことがわかる。

孤高のヒロイン・安奈はとても魅力的。
できたらシリーズ化してもらって、
さらなる彼女の活躍を読ませてほしいなあ。


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本能寺遊戯(ゲーム) [読書・ミステリ]

本能寺遊戯 (創元推理文庫)

本能寺遊戯 (創元推理文庫)

  • 作者: 高井 忍
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2015/11/21
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

思い起こせば、最初に読んだ歴史ミステリは高木彬光の
『成吉思汗の秘密』と『邪馬台国の秘密』だったような気がする。
たぶん高校時代。どっちが先だったかは覚えてないんだが(^_^;)。

天才探偵・神津恭介が歴史上の謎に挑む、って感じで
「源義経が成吉思汗になった説」の検証とか
「邪馬台国の存在した場所」を魏志倭人伝の記述のみで推理する、
とかいう内容だったと記憶している。

歴史の知識に乏しかった当時の私は、とても感心しながら読んでた。
特に『邪馬台国の秘密』のラストで神津恭介が
「邪馬台国は○○にあった!」って断言したもんだから
その後しばらく(20年くらい)は「邪馬台国○○説」を信じ込んでた。

 さすがに最近はいろいろ研究が進んできて、
 ○○はかなり怪しくなってきたけど・・・

閑話休題。


「日本史上の謎に対する新説を募集しています。
 あなたの新説が、将来の真説になるかも知れません!」

初心者向けの歴史雑誌『ジパング・ナビ!』が行った公募企画に
挑戦するのは高校2年生の歴女三人組。
扇ヶ谷姫乃(おおぎがやつ・ひめの)、朝比奈亜沙日(あさひな・あさひ)、
そして交換留学生のアナスタシア・ベズグラヤ。

「本能寺遊戯(ゲーム)」では明智光秀謀反の真相、
「聖剣パズル」では草薙剣(くさなぎのつるぎ)をはじめとする
 三種の神器にまつわる謎、
「大奥番外編(イレギュラー・ケース)」では春日局の大奥での権勢、
「女帝(エンプレス)大作戦」は、重祚した女帝・称徳天皇と
 怪僧・弓削道鏡、そして帝位をめぐる宇佐八幡の神託。

歴史上の謎に関するスタンスは三人三様。
毎回与えられるテーマに対して侃々諤々の大激論。
彼女らの "新説" は、みごと入賞できるのか・・・


この手の話では、最後に "意外な" 真相or新説が提示されて締め、
という流れがお約束。

本書も基本的にはそのパターンなんだけど、それだけに収まらない。

最終編の「『編集部日誌』より」では、3人組を相手に
『ジパング・ナビ!』の編集者・宿毛(すくも)が
「そもそも "歴史の謎解きとは何か"」を語るのだが
実は本書最大の特徴というか、読んでて一番おもしろかったのはここ。

このあたりは作者の "本音" なのか、作品としての "演出" なのか。
(「あとがき」を読むと前者のようなんだけど)

まあ、誰でも多かれ少なかれ感じていることなのだろうけど、
「よく言った!」って思う半面、
「それを言っちゃあ、おしまいよ」だよなあ。
ここまで言っちゃったら、作者は今後、歴史推理ものが
書きにくくならないかしら・・・

他人事ながら心配だ(笑)。


この文章を書くために、本書をもう一度手にとって
ところどころ拾い読みしていたら、
本書の冒頭に、ポオの『マリー・ロジェの謎』から
引用した文章が掲げられていることに気づいた。
初読の時に目を通したはずなんだが、すっかり忘れていたよ。

でも、全編読み終わった後にもう一度読んでみると、わかる。
本書のテーマを端的に表した、実に "的確な引用" だったことが。


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ねずみ石 [読書・ミステリ]

ねずみ石 (光文社文庫)

ねずみ石 (光文社文庫)

  • 作者: 大崎 梢
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2012/01/12
  • メディア: 文庫



評価:★★★

山あいの集落・神石村。
そこでは年に一度のお祭りの日に、あるイベントが行われる。
「子」の字が記された「ねずみ石」が7つ、村のあちこちに隠される。
それを見つけた子どもは、願い事を1つだけ叶えられるという。

4年前の祭りの夜、村で女子高生・三島理恵とその母親が殺害された。
その晩、小学3年生だった土井諭大(さとひろ)ことサトは
ねずみ石を探すうちに上級生とはぐれ、行方知れずになってしまう。
翌朝発見されたものの、祭りの夜の記憶を失っていた。

事件は未解決のまま継続捜査となり、いまでも時おり村に刑事が現れる。
そして今年も「ねずみ石探し」の日は近づいていた。

中学1年生となったサトは、親友のセイこと山田誠也の頼みで
神石村の "祭り調べ" にとりかかる。
しかしそれは、4年前の事件を掘り起こす作業でもあった。

祭りの準備に狩り出されながらも、村の人々の間を廻り、
セイと一緒に"祭り調べ" を続ける中、二人は
村の青年団員・玉置憲夫がアパートで死んでいるところに遭遇する。

4年前の事件で、理恵と交際していた同級生の渡内繁樹が
容疑者として浮上したが、玉置の証言によって
犯行時刻のアリバイが成立し、繁樹は容疑を免れていた。
しかし最近になって、玉置はその証言を翻していたという・・・


田舎の村とは言っても時代は現在。
ネットも携帯電話もあるので世間から孤絶したりはしていない。

とは言っても、狭いコミュニティの中で起こった事件なので
関係者はお互いに顔見知だったりする。
親兄弟・親類だったり、友人・先輩・後輩だったり。

主人公である子どもたちから見れば、
みんな近所のおじさん/おばさん/お兄さん/お姉さん。
生まれた時から知っていて、いま隣に座って
祭りの準備をしている人が殺人犯なのかも知れない。
それはなかなか恐ろしい環境だろう。

子どもが主人公ではあるが、真相はかなり苦い。
ミステリとしては良くできていると思うけど
子どもが苦しむ話はあまり好きではないなあ・・・


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ダチョウは軽車両に該当します [読書・ミステリ]

ダチョウは軽車両に該当します (文春文庫)

ダチョウは軽車両に該当します (文春文庫)

  • 作者: 似鳥 鶏
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2013/06/07
  • メディア: 文庫



評価:★★★

主人公・桃さんをはじめとする楓ヶ丘動物園の職員たちは
同僚の本郷さんを応援するために、彼が出場する
県民マラソン大会のコース脇までやってきた。
しかし道路上を疾風のように駆け抜けたのは
人間のランナーではなく1匹のダチョウだった!

 そういえば、昔「ロードランナー」ってアニメがあったなあ。
 あれに登場するのも鳥だったか。

早速ダチョウ捕獲のために桃さんたちは一肌脱ぐのだが
さすがは現役の動物園の職員たち。無事ダチョウの保護に成功する。

冒頭から驚きのシチュエーション。
キャラ紹介も兼ねて、ツカミはバッチリだ。

ところが捕獲シーンを撮影した動画がネットに投稿され、
美人獣医の鴇先生は一躍人気者になってしまい、
彼女はトラブルに見舞われることに。

謎の4人組に拉致されそうになったり、
桃さんと一緒にさらわれて、どこかの建物に閉じ込められて
焼き殺されそうになったりと、もうたいへん。
どうやら、相次ぐ騒ぎは鴇先生の過去に関わりがあるらしい・・・


冒頭に現れるダチョウはそもそもどこから現れたのか。
当初、桃さんたちは「個人で飼ってたのが逃げ出した」と推測する。

「いやぁ、いくら何でもそれはなかろう」って思ったんだけど
つい最近、「個人で飼ってたダチョウが逃げた」ってニュースがあった。
残念ながら逃げたダチョウは死んでしまったけど、
「ホントに飼ってる人っているんだなあ」って驚いたものだ。
あのニュースで本書を思い起こした人もいるのではないかな。


もちろん、本書に登場するダチョウくんは、
背後にいろいろ事情を抱えていて、
それが今回の事件の原因になっているんだけどね。

人間のエゴで生命を弄ばれる動物たち。
ユーモア・ミステリの衣をまとっているけれど
ラストで明かされる真相はシビアだ。


シリーズ第2弾とあって、今回は鴇先生にスポットが当たってる。
彼女が楓ヶ丘動物園に来て獣医に就任するまで、
どんな経歴でどんな場所で働いてきたのか、
どんな人たちと一緒に暮らし、過ごしてきたのか。
いやあ、彼女ほどの人でも、女性というだけでたいへんなんだね。

レギュラーメンバーもお馴染みになってきた。
オタク飼育員の服部君も相変わらずヘンタイだし(笑)、
アイドル飼育員の七森さんも相変わらずカワイイし。
桃さんも、二人の女性に囲まれてどうなるのだろう・・・

2作目にて既に安定感ばっちりなシリーズ。次巻も楽しみにしてる。
次作「迷いアルパカ拾いました」も手元にあるので近々読む予定。


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忍び道 忍者の学舎開校の巻 [読書・歴史/時代小説]

忍び道: 忍者の学舎開校の巻 (光文社時代小説文庫)

忍び道: 忍者の学舎開校の巻 (光文社時代小説文庫)

  • 作者: 武内 涼
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2014/10/09
  • メディア: 文庫



評価:★★★

時は江戸時代初期、将軍・綱吉の治世。
戦国の世は遠くなり、人々は戦(いくさ)から遠ざかった。
そんな中、突如起こった赤穂浪士の討ち入り。

急遽、幕閣が集められ、評定が開かれる。
将軍のお膝元でありながら、大がかりな "テロ行為" の前兆を見逃し、
さらには発生を未然に防ぐことができなかったのはなぜか。

原因として挙げられたのは公儀隠密の "劣化"。

太平の世が続き、隠密も世襲化・官僚化がすすみ、
"忍び" の術が継承されていない。
体術が鍛えられておらず、城の石垣も登れない。
江戸にずっと住んでいるために地方の方言も分からない。
要するに、"諜報員" として使い物にならない・・・

このままでは、幕府の "眼" も "耳" も失われてしまう。
そこで、老中・小笠原佐渡守(さどのかみ)の
発案によって、ある計画が動き出す。

天領である関八州から、優れた素質を持つ子供を探し出して
妙義山の荒れ寺に集め、伊賀・甲賀の枠を超えた "教育" を施し、
優秀な忍者を養成する。"忍者の学び舎" の開校である。

主人公・一平は13歳。北上野(こうずけ)の貧しい山村の出身だが
『天狗のごとき体捌き』を見込まれて妙技山にやってきた。

『猿(ましら)のごとき体のキレ』を見いだされた"つぎお"。
並外れた怪力を誇る "秩父の雲三郎"。
そして、"あやめ"、"雪"などの少女たち。
8歳から15歳までの子供たちが総計48人集められ、
厳しい修行の日々が始まった・・・


読んでいてなんだか既視感を覚えるのはなぜだろう・・・
って思ったら、わかった。「忍たま乱太郎」だったんだね(笑)。
そう思うと、学舎長を務める伊賀の老忍者・百地半太夫の風貌が
”学園長先生" に脳内変換されてしまったよ(笑)。

もちろんこちらの方がより訓練は厳しいし、
脱落したら里に帰されて、貧乏暮らしに逆戻り。
みんな生き残りに必死だ。

修行を送るうち、子供たちの間には友情も芽生えてくるが、
グループ間では軋轢や諍いも生じてくる。
そのあたりはまさに学園ものの雰囲気。
内気だった一平も、学び舎の中で友と一緒に成長していく。

しかし、学び舎の存在を苦々しく思う者も存在する。
幕閣の中には、公儀隠密による監視が緩んできている隙に、
非合法に私服を肥やしている者もいた。

戦国の世が終わり、忍者の行く末は様々。
伊賀・甲賀のように幕府に仕えた集団もいれば
盗賊/抜け荷/盗品売買などの裏稼業へと転身していた一派もいる。
それが風魔忍者。その棟梁・風魔小四郎は
公儀隠密の復活を望まない幕閣と手を結び、
"学び舎" をつぶすべく策謀を巡らしていく・・・


本書はシリーズ第1巻なので、設定と主要キャラの紹介がメインで
悪役たる風魔との本格的な対決は次巻以降で描かれるのだろう。


読み終わってみて、ふと疑問に思った。
本書の想定する読者ってどんな人なんだろう?

時代小説のメイン読者は年配の人じゃないかなあ(私の偏見)。
そういう年配の人は、こういう子どもが主人公の作品を読むのかな?

まあ、私が心配することじゃないけど(笑)。


でも、こんなふうにも思った。

私が小学生の頃は「伊賀の影丸」とか「仮面の忍者 赤影」とか
「サスケ」とか「カムイ外伝」とかの忍者マンガがたくさんあった。
私が本書を読もうと思った動機の何割かは、
これらの忍者マンガを読んだ記憶にある。

 「NARUTO」は忍者マンガかなあ・・・?
 あれって魔術妖術の類いでファンタジーでしょ?
 もっとも、現代の子どもらから見れば、
 忍術も魔術もおんなじように見えるのかも知れないけど。

スーパー戦隊シリーズでも「忍者戦隊カクレンジャー」
「忍風戦隊ハリケンジャー」「手裏剣戦隊ニンニンジャー」と
10年おきくらいに忍者モチーフの戦隊がでてくる。

ならば、そういう作品で育った人たちだったら、
こういう十代の少年少女が主役の忍者小説ってのも
受け入れられるのかも知れない。

案外、ニーズはあるのかも。


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書き下ろし日本SFコレクション NOVA+ バベル [読書・SF]

NOVA+ バベル: 書き下ろし日本SFコレクション (河出文庫)

NOVA+ バベル: 書き下ろし日本SFコレクション (河出文庫)

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2014/10/07
  • メディア: 文庫



評価:★★☆

2013年7月に「NOVA10」が発刊され、全10巻をもって
一応の完結となった「NOVA」シリーズ。

新作短編SFのみでアンソロジーを組むという珍しいスタイル。
ひと頃、雑誌等に発表される短編SFが激減した時代があって
(いわゆる「SF冬の時代」というやつ?)
そのために新作短編発表の場を用意するために
発刊されたシリーズだったと記憶している。

現在は「冬の時代」は過ぎ「雪解け」くらいにはなってきたのかな?

さて、シリーズ終了から1年ちょっとで新シリーズの立ち上げとなった。
今回は、参加している作家さんが全員、日本SF大賞or特別賞の受賞者、
またはその候補だったという人ばかり。
そういう意味では"豪華"な顔ぶれ。

ただ、それと私の好みが合うかは別問題なんだなあ。


「戦闘員」宮部みゆき
 現代社会でやたらと増えてきた監視カメラ。
 そのレンズの向こう側に潜む "何か" に気づいたのは
 御年80歳を超えた主人公・藤川。
 しかしながら、年はとっても気力充実。
 超高齢化社会ならではのヒーローの誕生か。
 これ続編が読みたいなあ。

「機龍警察 化生」月村了衛
 近未来の警察に、人型近接戦闘兵器「機甲兵装」(通称 "龍機兵")
 が導入された世界。龍騎兵とテロリストとの攻防を描いたのが
 本編たる長編シリーズなんだけど、本作はそのスピンオフ短編。
 なので、派手な戦闘シーンはなし。
 その代わり、主役メカたる "龍騎兵" が凡百の機甲兵装を
 上回る高性能を示す、その秘密の一端が明かされる。

「ノー・パラドクス」藤井太洋
 人類が時間を超える技術を手に入れて200年。
 タイム・トラベルはありふれたものとなり、
 時間旅行専門の代理店まである。
 当然、タイム・パラドクスの発生も日常茶飯事になっているという
 なんだかスゴい話。あんまりスゴすぎて、
 途中から訳が分からなくなりました(笑)。ゴメンナサイ。

「スペース珊瑚礁」宮内悠介
 宇宙だろうと深海だろうと、核融合炉の中だろうと
 零下190度の惑星だろうと、さらにはサイバー空間の
 バーチャルな世界だろうと、借金があれば取り立てに行くという
 <スペース金融道>シリーズ。その第4弾。
 主人公の体内細胞のミトコンドリアが主に対して反乱を起こし
 (どこかで聞いた話だなあ)勝手に借金をこさえていた・・・
 毎度お馴染みのドタバタ喜劇が展開する。

「第五の地平」野崎まど
 主人公はモンゴルの覇者、チンギス・ハーン。
 彼は地球を征服したのち宇宙へ進出(おい)、
 宇宙で育つ植物を生み出して太陽系内に播種(おいおい)、
 直径7天文単位に及ぶ "草原" を支配していた(おいおいおい)。
 ここまで壮大なホラ話も珍しい(褒めてます)。

「奏(かな)で手のヌフレツン」酉島伝法
 すみません、最初の3ページで挫けました。

「バベル」長谷敏司
 文庫で約120ページ。80ページまで頑張ったんですけど
 どうしても作品世界に入れませんでした。スミマセン。

「φ(ファイ)」円城塔
 文庫で21ページしかない作品なんだけど、
 最初の12行までしか理解できませんでした。
 もう許して・・・


巻末の3編は、もう私の手に負えません。

私のオツムが日本SFの進化に追いついていけないことが、
よ~く分かりました。


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有川浩脚本集 もう一つのシアター! [読書・その他]

有川浩脚本集 もう一つのシアター! (メディアワークス文庫)

有川浩脚本集 もう一つのシアター! (メディアワークス文庫)

  • 作者: 有川 浩
  • 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
  • 発売日: 2011/05/25
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

主人公・春川巧(たくみ)は、小劇団「シアターフラッグ」の主宰。
しかし赤字続きの劇団は300万円の借金を抱え、解散の危機に。
万策尽きた巧は、兄の司(つかさ)に泣きつく。

彼ら兄弟の父親は、演劇にのめり込むあまり妻子と別れ、
貧困のうちに病死していた。

そのような経緯から、弟の演劇活動を認めない兄だったが、
いくつかの条件と引き替えに借金の肩代わりを引き受ける。

どんぶり勘定だった劇団の経理を、今後は司が仕切ること。
貸した300万を2年で返済すること。
返済には、劇団が上げた収益のみを認める。
2年で返済しきれないのならば、劇団は即刻解散せよ・・・

かくして"鉄血宰相"・春川司のもと、「シアターフラッグ」は
2年後のタイムリミットに向けて、劇団存続を賭けた大奮闘へ・・・


というのが、小説「シアター!」シリーズの基本設定。
現在続編「シアター!2」まで刊行され、次巻の「3」で完結の予定。


本書は、この「シアター!」を原作に、
実在の劇団「theater劇団子」(シアトルゲキダンゴ)のために
作者自ら書き下ろした脚本を書籍化したものだ。
実際、2011年1月に上演されている。

内容は小説そのものを舞台化したものではなく、
設定をそのまま使って新しいエピソードを描いた、
いわば「番外編」になっている。


「シアターフラッグ」に、地方都市の高校から学校公演の依頼が入る。
司も含めて、喜び勇んで出向いてきた劇団員の面々だが、
リハーサル開始前から次々にトラブルに見舞われる。
準備した小道具がゴミと間違えて捨てられてしまうとか
舞台セットが運送業者の手配違いで開演までに届かないとか
舞台のパンフレットがすり替えられるとか。
トラブルの背後には何者かの "悪意" があるらしい。
しかし開演時間は刻々と迫ってきていた・・・


ドラマや映画の脚本というのは現場で撮影しているうちに
変わっていくことがよくあるって聞くけど、演劇の場合も同様のようだ。

この舞台の脚本も、稽古中に変わった部分もあれば、
演出家のアイデアで変更された部分、
さらには役者さんからのフィードバックがあったりして、
実際の上演までに変化していった。本書にはその最終形が収めてある。
どう変わっていったかの経緯も【註】としてかなり詳しく記してあり、
この「変化していく様子」を追っていくのもまた楽しい。
まさに「舞台」というのは "生き物" なのだなあと実感する。

たぶん、違う劇団・違う役者・違う演出者がつくり上げれば
また違う形になるだろうし、またそうでなければいけないのだろう。

巻末には作者と俳優との対談が2つ掲載されている。
1つは「シアターフラッグ」を招いた高校の教員として出演した
大和田伸也氏。なんと大御所じゃないか。
もう1つは春川司を演じた阿部丈二氏。こちらは舞台メインの方らしい。
どちらも密度の濃い話が詰まっていて読み応え充分。


脚本集なんだけど、小説に劣らずとても面白かった。さすが有川浩。
とは言っても、思い起こせば「シアター!2」からもう5年。
もうそろそろ「3」を書いて下さいよ、有川さん。


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覇王の死 上下 [読書・ミステリ]

覇王の死(上) (講談社文庫)

覇王の死(上) (講談社文庫)

  • 作者: 二階堂 黎人
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/05/15
  • メディア: 文庫




覇王の死(下) (講談社文庫)

覇王の死(下) (講談社文庫)

  • 作者: 二階堂 黎人
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/05/15
  • メディア: 文庫



評価:★★★

「悪魔のラビリンス」から始まり、
「魔術王事件」「双面獣事件」と続いてきた
「ラビリンス」シリーズの完結編である。

能登半島の最北部にある眞塊(まかい)谷。
その地を支配する邑知(おうち)家は、古代から続く名家の末裔にして、
戦時中は軍部への影響力を持つほどの富を誇っていた。
その当主・大輔は後継者に恵まれず、全財産を相続人することになる
ひ孫の少女・みねりの結婚相手を探していた。

花婿候補の一人で、邑知家の縁につながる青年・尾崎が
山で遭難死していたことを知った弁護士・毒島(ぶすじま)は、
邑知家の財産を乗っ取るべく、天涯孤独な青年・青木を
尾崎に仕立て上げて邑知家へ送り込んだ。

一方、眞塊谷の隣にあって、邑知家の斡旋によって
宣教師たちが集団で入植したニューホーリー村では、
奇々怪々な事件が起こっていた。
男女二人の首なし死体が巨木の幹に磔(はりつけ)となって発見され、
村人たちの間には次第に狂気と疑心暗鬼が蔓延していき、
やがて人々は殺し合いを始める。

さらに邑知家にも、第二の花婿候補・今野が現れるが、
その3日後、密室状況での殺人事件が起こる
・・・


ほとんど「怪奇大作戦」(古っ!)もといホラーSFだった
前作「双面獣事件」よりは、ミステリらしい雰囲気に戻ってきた。
双面獣くん(笑)も引き続き出演してるけど、今回は脇役。
下巻の中ほどから登場する二階堂蘭子嬢がすべて持っていってしまう。

二ユーホーリー村で巻き起こる奇々怪々な事象も
蘭子嬢の推理できちんと説明される。
よくまあこれだけネタを集めたなあとまずは感心。
その努力はすごいけど、いくらなんでも
それがみんな一つの村に集まるのはちょいやり過ぎな感も・・・
まあ、このようないささか力まかせの展開でも、
本書を読むような人はあんまり気にしないかな。

密室殺人の方もきっちり解明してくれる。
こちらも、いかにもこの作者らしい外連味たっぷりの仕掛けだ。

さらには、そもそもニューホーリー村成立の経緯、
そして(お約束だが)邑知家自体にまつわる秘密まで
蘭子は解き明かしてみせる。
それにラビリンスがどう関わっていたかも含めて。
まさに "神の如くすべてを見通す" 彼女の活躍が堪能できる。


いわゆる「二階堂蘭子」シリーズと、
この「ラビリンス」シリーズとの時系列はよくわからないんだが
(作中に年月日が記載されてるから、確認すればいいんだろうけど)
本書でわかった時系列で並べると
「人狼城の恐怖」 → 蘭子3年間の失踪 → 「覇王の死」(本書)
という流れになる。

本書の終盤で、蘭子は3年ぶりに日本に帰ってくる。
この "空白" の間に、蘭子にはある "変化" が起こっているのだが、
"彼女に何が起こったか" は読んでのお楽しみだろう。

 私も「失踪中に、ひょっとしたら○○してたりして」って
 予想(妄想?)していないわけではなかったが
 いざ実際にそうなってみるとやっぱり驚いたよ。

シリーズ完結編ということで、蘭子vsラビリンス、最後の対決!
ってなるかと期待したのだが、そのへんはやや肩すかし気味かなあ。

 サブマリン707の「アポロ・ノーム編」みたい・・・って
 そんなこと言っても誰も分からんよなあ。

あくまで本作は "蘭子嬢の華麗な推理" がメイン、ということで。


ずっと昔、蘭子シリーズは長編全10作予定って聞いた気がする。
もしそれが本当なら、「人狼城」が長編5作めなので、
(「魔術王」「双面獣」がカウントされなければ)
あと5作書かれるはずだ。
"新生" 蘭子嬢の活躍を期待して待ちましょう。


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松谷警部と三ノ輪の鏡 [読書・ミステリ]

やっとここから12月分(^_^;)。まだ先は長い・・・

松谷警部と三ノ輪の鏡 (創元推理文庫)

松谷警部と三ノ輪の鏡 (創元推理文庫)

  • 作者: 平石 貴樹
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2015/06/12
  • メディア: 文庫



評価:★★★

「松谷警部と目黒の雨」でデビューした婦人警官・白石イアイを
探偵役とするシリーズの第3弾。
本作では、中学校の1年先輩で文学者を目指す彼氏と結婚して
なんと人妻に! 自身も32歳にして巡査部長に昇進している。

元プロゴルファーの横手が自宅で撲殺される。凶器はゴルフのパター。
犯行時刻に横手は葉賀開発の経理部長・石井と会う約束をしていたが
石井は自宅を出たきり戻らず、消息を絶っていた。
事件前日には横手が関わるゴルフ場に融資している
常磐銀行の営業一課長・重光が自家用内で練炭自殺を遂げており、
さらに、横手の過去の女性スキャンダルを追い続けていた
フリージャーナリスト・越塚が刺殺体で発見される。

横手の死を巡って巻き起こる不可解な事件の数々。
松谷警部と共に捜査を始めるイアイたちだが・・・


素朴でさっぱりした性格ながら鋭い推理力をもつ。
だけどそこはかとなく可愛い。イアイちゃん好きだなあ。
上手いんだか下手なんだかよく分からないんだが
捜査中にやたら俳句を詠む松谷警部も相変わらず。
メインキャラ二人に加えて、今回イアイと相棒を組む
新米警官の上原巡査が、見事に "空気を読めない" 奴で
随所でクスリと笑わせてくれる。

事件の方は一筋縄ではいかず、なかなか全貌が見通せない。
容疑者自体はさほど多くないのだけど、
読んでも読んでも五里霧中感がつきまとう。

ラストではきっちりと解明されるのだけど・・・
かなり複雑で一読しただけでは理解できなかったのは
やっぱり私のアタマが悪いせい?
今、この文章を綴りながらつらつら振り返ってみて、
ふっと頭に浮かんだのは「詰め将棋」という単語。

人物Aが○○する。
 → 人物Bは△△せざるを得なくなる
  → そこで人物Cは✕✕することを思いつく・・・

ってな感じで、複数の人物が事態の進行に合わせて、
それぞれの思惑に従って行動することによって、
結果的に不可解な事象群が完成する。

途中で一手誤ると(一人でも違う行動をしていたら)
成立しないという点で「詰め将棋」みたいだな、と。
(とはいっても、私は将棋はからきし弱いんだけどね。)

よくここまで考えたなあ・・・って素直に感心する一方で、
それぞれの人物が都合良く動きすぎじゃないかな、って気も。
"本格" 度を上げていくほど、キャラが「駒」化していくのは
ある程度は仕方ないとも思うんだけどね。
そのへんは謎解きミステリの宿命とも言える部分なんだろう。

本格ミステリとしてはもちろん、水準以上のすばらしい出来映え。
「Who done it ?」の興味ももちろんあるんだけど、
それ以上に「What happened ?」が気になる作品でした。


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花酔いロジック 坂月蝶子の謎と酔理 [読書・ミステリ]

これでやっと11月分が終了(笑)。
とはいえ12月分もまだまだたくさん残ってる(^_^;)


花酔いロジック  坂月蝶子の謎と酔理 (角川文庫)

花酔いロジック  坂月蝶子の謎と酔理 (角川文庫)

  • 作者: 森 晶麿
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2015/05/23
  • メディア: 文庫



評価:★★★

思い返すに、酔っ払って周囲の顰蹙を買ったことは
枚挙にいとまがない。
主に大学生から30歳くらいまでのことだが。

電車を乗り過ごすことも何回もあったし
記憶をなくすことは日常茶飯事だった。
隣に座ってた女性に抱きついたこともあるらしいのだが
なにせ記憶がないので反論のしようがない(おいおい)。
一晩で日本酒を一升近く開けて、死にかけたこともある(おい!)。

もっとも私の親父は、一晩でウイスキーのボトル一本あけるのも
平気だったらしいが、不肖の息子の私はそこまで強くはない(笑)。

さすがに嫁さんをもらってからは落ち着いて
そうそう正体をなくすことはなくなったし、
最近はトシのせいか350mL缶ビールを2本くらいで
充分に酔っ払えるようになった。きわめて低燃費だ(笑)。

本書では、大酒飲みの大学生が大挙して登場して
思いっきり乱痴気騒ぎを繰り広げているんだが
自分の若い頃を見てるようで懐かしいやら恥ずかしいやら。

閑話休題。


10年前に子役として活躍しながら、成長と共に仕事が激減。
すっぱり芸能界を引退し、一般人として生きてきた坂月蝶子。

一浪してまで名門・戸山大学への入学にこだわったのは
由緒ある推理研究会へ入るため。
しかし神酒島(みきしま)先輩との出会いをきっかけに
推研ならぬスイ研(酔理研究会)へ入る羽目になってしまう。
ただひたすら酒を飲み続けるという
とんでもないサークルに放り込まれた蝶子が出会う、
さまざまな謎やら事件やらを描いた5編を収める。

舞台になる戸山大学は、作者の母校・早稲田大学がモデルだろう。
宿命のライバル・恵塾大学(慶應大学がモデル?)との間で、
早慶戦ならぬ "戸恵戦" が行われているくらいだし。


「花酔いロジック」
 美人の歴女・エリカとともに新歓コンパに参加した蝶子。
 しかしほとんど酒を飲んでいないはずのエリカが
 突如酒乱状態に陥って大暴れ、さらには失踪してしまう・・・
 第一話なので、登場人物紹介を兼ねてるんだろうけど
 キャラにまだなじみがない上に時系列が前後するので
 一読しただけではよく分からなかった。私のアタマが悪いのか?

「球酔いロジック」
 スイ研メンバーの内野は、青森への里帰りの車中で
 法学部の弥生という女生徒と知り合い、意気投合する。
 すっかり彼女に恋してしまった内野は、
 一緒に戸恵戦(大学対抗野球)を見に行こうと提案する。
 しかしなぜか弥生は、頑なにそれを拒むのだった・・・

「浜酔いロジック」
 熱海へ夏合宿へとやってきたスイ研メンバー。
 しかし合宿場所の民宿に現れたのは女優の海桃ミウだった。
 なんとミウはスイ研のOGで、かつて神酒島とつき合っていたらしい。
 さらには「ミウの恋人」と名乗る老舗旅館のオーナーまで現れる。

「月酔いロジック」
 戸山大学学園祭である<名月祭>。
 <酒博士バー>なるボーイズバーを出店予定のスイ研と、
 アルコールを制限したい実行部との間にバトルが勃発する。
 一方、神酒島先輩は、女性と一緒にどこかへ出かけているらしい。
 さらに学園祭広報部から<名月祭>のチラシ3万枚が盗まれる。

「雪酔いロジック」
  父親のたっての願いで、冬合宿をキャンセルして帰郷した蝶子。
 実家が経営する酒蔵の樽を福井の同業者の元へ運ぶことになるが、
 それは父親が密かに仕組んだ "縁談" だった。
 しかも、到着した酒蔵のとなりにある旅館では、
 まさにスイ研が冬合宿をしていた・・・


神酒島がホームズ役、蝶子がワトソン役となって進行する
"日常の謎" 系なのだけど、ミステリっぽさは希薄。
酒を巡って大学生たちが繰り広げるドタバタ劇を背景に
(他人事と思えないようなエピソード (^_^;) も多々)
神酒島に対する蝶子の揺れる恋心が綴られていく。
二人のラブコメとして読むのが正解かも知れない。

過去に酒のせいで大恥をかいたことのある人は、
また違った感慨を抱くだろうけど・・・


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