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鬼狩りの梓馬 [読書・ファンタジー]

年は明けたんだけど、読書記録はまだ昨年分の積み残しがたくさん。
しばらくは在庫の消化にお付き合いください。
ちなみに、この本を読み終わったのは11月15日(^_^;)。


鬼狩りの梓馬 (角川ホラー文庫)

鬼狩りの梓馬 (角川ホラー文庫)

  • 作者: 武内 涼
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2014/04/25
  • メディア: 文庫



評価:★★☆

時に1475年。戦国の世はいつ終わるとも知れず、
武蔵国・江戸がまだ村々の集合体だった頃。

魔界と人間界の境目はいまだ定まらず、
境を超えて現れた "鬼" が人を襲い、喰らっていた。

穏田村に生まれた少年・梓馬(あずま)は、
生まれながらに心の奥底に "鬼" の意識を持っていた。
彼こそは、かつて鬼だったものが、
呪師によって人に転生させられた存在だった。

6歳で両親を "青鬼" に喰われ、11歳で姉が餓死した。
18歳になった梓馬は狩人の宗貞・ハルの親娘と共に暮らしている。
生活は貧しく、村の有力者の無法に翻弄されながらも生きてきた。

ある日、近隣の麻布村へ出向いた梓馬は、ゆうという娘と知り合う。
天涯孤独な身の上の二人は、やがて想いを寄せ合うようになるが
平穏な日々は再びの鬼の出現によって終わりを告げる・・・


うーん、新年早々からあんまり文句は書きたくないんだけど
『戦都の陰陽師』の時にも書いた、同じような感想を今回も感じた。
「面白くなりそうな要素はあるのに、何だかもったいないなあ」


思うに、まずは農村の日常描写がいささか冗長なところか。

当時の農民の暮らしがたいへんだったのは事実だろうし、
リアリティの担保のためにも、ある程度の書き込みが必要だろう。
でも、「胸まで泥に浸かって稲を栽培」云々的な描写が
延々と続くのはいかがなものか。
読者が求めているのは、そういうところではないんじゃない?


もう一つは、とにかく主役の梓馬くんがなかなか活躍しないこと。

梓馬は "鬼の魂" を持つだけあって、鬼の接近を感じることもできるし、
鬼の致命的弱点である "逆鬼門" (ここを突くと鬼は死ぬ)
の場所を見つけることもできる(逆鬼門の位置は個体ごとに異なる)。

 「"敵" の能力(の一部)を持つ主人公」っていうのは、
 ある意味ヒーローものの王道設定。
 「サイボーグ009」だって「仮面ライダー」だって、
 悪の組織が作り出した超人が人間側に寝返った存在。
 「ジャイアントロボ」だって、悪の組織が作った兵器を奪取し、
 主人公がそれを利用して敵に対抗する。

通常の人間に比べれば、鬼に対しては圧倒的に
アドバンテージがあるはずなのに、梓馬くんはあんまり活躍できない。
体格が貧弱なために、格闘戦では圧倒的に弱いし、
人間相手だってろくに勝てないんだからもう・・・

まあそんな梓馬くんでも、最後には何とか倒すんだけど、
上記二つの印象が強すぎて、カタルシスに乏しいんだなあ。

群がる鬼の大群を、片っ端からばっさばっさと切り捨てろ、
とまでは言わないが、もう少し主役らしく活躍する場面が見たい。
タイトルだって「鬼狩り」なんだからさあ・・・


本書の物語は、梓馬が村を離れて旅立つところで終わる。
その気になれば、続編を描くこともできるだろうし、
考えようによっては、本書は "序章" に過ぎず、
経験値を上げた梓馬が "鬼の脅威から人々を護るヒーロー"
として活躍していく物語が、これから始まるのかも知れない。

ただ、"序章" としては文庫470ページは
ちょっと長すぎるように思ったんだよねえ。


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