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祟り火の一族 [読書・ミステリ]

祟り火の一族 (双葉文庫)

祟り火の一族 (双葉文庫)

  • 作者: 小島 正樹
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2015/12/10
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

三咲明爽子(あさこ)は都内で劇団員をしている。
彼女に持ち込まれたのは異様なアルバイト。
日に一度、成城の屋敷に赴き、白装束に着替え、
顔を包帯で被われた男の横たわる枕元で、怪談を語る。

女の死体を埋めた橋脚にヒビが入り、血が流れ出す。
洞窟の中に潜み、自らの身体を松明で焼く女。
首を吊った男の死体が燃やされ、その頭部から緑色の少女が現れる・・・

異常な状況と怪談の内容に激しく興味を惹かれた明爽子は、
知人の群馬県警刑事・浜中を巻き込み、背景を探り始める。

問題の屋敷から出てきた青年の後をつけた二人は
群馬県の墨皮村にある廃鉱山へと導かれてゆく。
そこにあったのは鉱山の所有者・狩能家の屋敷。
しかしその母屋は半ば焼け落ちて廃墟となっていた。

浜中の知人の探偵・海老原とともに狩能家の屋敷を再訪した明爽子は
くだんの青年と再会する。彼は池ノ井恭輔と名乗り、
狩能家にまつわる奇怪な殺人事件を語り出す・・・


妖異極まる6つの怪談、墨皮村に伝わる言い伝え。
狩能家を襲った怪奇な連続殺人事件。
これだけ書くと横溝正史っぽいけど、雰囲気は二階堂黎人に近いかな。

狐狸妖怪や超常現象にも見える謎も終盤に綺麗に解明される。
快刀乱麻を断つが如く、積み上げられた謎の数々をバッタバッタと
切りまくる海老原の推理は、読んでいて爽快。

このあたりは、ついこの間に読んだ「覇王の死」を彷彿とさせる。
よくもまあこれだけ "ネタ" を集めたものだ。この努力には敬服。

並みのミステリ長編が何本も書けるくらいの
トリックのてんこ盛り状態なんだが、さらに驚かされるのは
ラストにもう一段 "大技" が仕込んであること。

 ただ、この "オチ" の評価はどうだろう。
 私は今ひとつ好きになれないんだが、単に私が石頭なだけ?
 気にしない人も多いんだろうけど・・・


本作で登場したのが、出世欲が全くないにもかかわらず、
信じられないくらいの偶然のために次から次へと大手柄を挙げ、
順風満帆に出世街道をひた走って(走らされて?)いる浜中刑事。

 ラリィ・ニーヴンの「ノウン・スペース・シリーズ」を
 ちょっと思い出してしまったよ(←分かる人いないってば)。

明爽子さんとの掛け合いも楽しいし、これからレギュラー化するのかな。

解説によると、名探偵・海老原浩一のシリーズは、
とりあえず全8巻らしいので、あと5巻読めることになる。

これだけ大風呂敷を広げて、しかも包み残しせずに畳んでみせる。
(畳み方が綺麗かどうかは読者の好みによるかも知れないけど)
本格ミステリとしては、なかなか貴重なシリーズ。
次巻も期待してます。


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