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忍び道 忍者の学舎開校の巻 [読書・歴史/時代小説]

忍び道: 忍者の学舎開校の巻 (光文社時代小説文庫)

忍び道: 忍者の学舎開校の巻 (光文社時代小説文庫)

  • 作者: 武内 涼
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2014/10/09
  • メディア: 文庫



評価:★★★

時は江戸時代初期、将軍・綱吉の治世。
戦国の世は遠くなり、人々は戦(いくさ)から遠ざかった。
そんな中、突如起こった赤穂浪士の討ち入り。

急遽、幕閣が集められ、評定が開かれる。
将軍のお膝元でありながら、大がかりな "テロ行為" の前兆を見逃し、
さらには発生を未然に防ぐことができなかったのはなぜか。

原因として挙げられたのは公儀隠密の "劣化"。

太平の世が続き、隠密も世襲化・官僚化がすすみ、
"忍び" の術が継承されていない。
体術が鍛えられておらず、城の石垣も登れない。
江戸にずっと住んでいるために地方の方言も分からない。
要するに、"諜報員" として使い物にならない・・・

このままでは、幕府の "眼" も "耳" も失われてしまう。
そこで、老中・小笠原佐渡守(さどのかみ)の
発案によって、ある計画が動き出す。

天領である関八州から、優れた素質を持つ子供を探し出して
妙義山の荒れ寺に集め、伊賀・甲賀の枠を超えた "教育" を施し、
優秀な忍者を養成する。"忍者の学び舎" の開校である。

主人公・一平は13歳。北上野(こうずけ)の貧しい山村の出身だが
『天狗のごとき体捌き』を見込まれて妙技山にやってきた。

『猿(ましら)のごとき体のキレ』を見いだされた"つぎお"。
並外れた怪力を誇る "秩父の雲三郎"。
そして、"あやめ"、"雪"などの少女たち。
8歳から15歳までの子供たちが総計48人集められ、
厳しい修行の日々が始まった・・・


読んでいてなんだか既視感を覚えるのはなぜだろう・・・
って思ったら、わかった。「忍たま乱太郎」だったんだね(笑)。
そう思うと、学舎長を務める伊賀の老忍者・百地半太夫の風貌が
”学園長先生" に脳内変換されてしまったよ(笑)。

もちろんこちらの方がより訓練は厳しいし、
脱落したら里に帰されて、貧乏暮らしに逆戻り。
みんな生き残りに必死だ。

修行を送るうち、子供たちの間には友情も芽生えてくるが、
グループ間では軋轢や諍いも生じてくる。
そのあたりはまさに学園ものの雰囲気。
内気だった一平も、学び舎の中で友と一緒に成長していく。

しかし、学び舎の存在を苦々しく思う者も存在する。
幕閣の中には、公儀隠密による監視が緩んできている隙に、
非合法に私服を肥やしている者もいた。

戦国の世が終わり、忍者の行く末は様々。
伊賀・甲賀のように幕府に仕えた集団もいれば
盗賊/抜け荷/盗品売買などの裏稼業へと転身していた一派もいる。
それが風魔忍者。その棟梁・風魔小四郎は
公儀隠密の復活を望まない幕閣と手を結び、
"学び舎" をつぶすべく策謀を巡らしていく・・・


本書はシリーズ第1巻なので、設定と主要キャラの紹介がメインで
悪役たる風魔との本格的な対決は次巻以降で描かれるのだろう。


読み終わってみて、ふと疑問に思った。
本書の想定する読者ってどんな人なんだろう?

時代小説のメイン読者は年配の人じゃないかなあ(私の偏見)。
そういう年配の人は、こういう子どもが主人公の作品を読むのかな?

まあ、私が心配することじゃないけど(笑)。


でも、こんなふうにも思った。

私が小学生の頃は「伊賀の影丸」とか「仮面の忍者 赤影」とか
「サスケ」とか「カムイ外伝」とかの忍者マンガがたくさんあった。
私が本書を読もうと思った動機の何割かは、
これらの忍者マンガを読んだ記憶にある。

 「NARUTO」は忍者マンガかなあ・・・?
 あれって魔術妖術の類いでファンタジーでしょ?
 もっとも、現代の子どもらから見れば、
 忍術も魔術もおんなじように見えるのかも知れないけど。

スーパー戦隊シリーズでも「忍者戦隊カクレンジャー」
「忍風戦隊ハリケンジャー」「手裏剣戦隊ニンニンジャー」と
10年おきくらいに忍者モチーフの戦隊がでてくる。

ならば、そういう作品で育った人たちだったら、
こういう十代の少年少女が主役の忍者小説ってのも
受け入れられるのかも知れない。

案外、ニーズはあるのかも。


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