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柳生十兵衛秘剣考 水月之抄 [読書・ミステリ]


柳生十兵衛秘剣考 水月之抄 (創元推理文庫)

柳生十兵衛秘剣考 水月之抄 (創元推理文庫)

  • 作者: 高井 忍
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2015/06/29
  • メディア: 文庫



評価:★★★

男装の武芸者・毛利玄達は廻国修行中の身。
彼女が出くわす様々な "謎" を、快刀乱麻を断つが如く解き明かす、
剣豪・柳生十兵衛の活躍を描く。シリーズ第2巻。

「一刀流 "夢想剣"」
 柳生と並ぶもう一つの将軍家指南役・一刀流小野次郎右衛門。
 兄弟子・大峰の善鬼(ぜんき)との一騎打ちを制して
 師・伊藤一刀斎の流儀を継いだとされる。
 次郎右衛門の墓参に訪れた玄達と十兵衛が
 多くの謎に包まれている剣豪・一刀斎の正体を解き明かす。
 ちなみに次郎右衛門の旧名は神子上典膳(みこがみ・てんぜん)と
 いうのだが、実は昨日(1/5)、
 『神子上典膳』(月村了衛)という本を読みおわったところ。
 こちらは剣劇主体の時代小説なんだけど、
 ミステリ要素もあってなかなか面白かった。
 剣豪ものだって切り口によってはミステリになるんだねえ。

「新陰流 "水月"」
 諸岡一羽の弟子・根岸兎角(とかく)は病の師を見捨て、
 自らの流派・微塵流を立ち上げた。
 一羽の高弟・岩間小熊は、裏切り者の兎角を討つべく、
 江戸・平川の橋上で果たし合いを行った。
 結果、見事に兎角を打ち破った小熊だったが、
 路頭に迷うことを畏れた兎角の弟子たちによって
 微塵流の新たな師として担ぎ出されてしまう。
 そしてその3ヶ月後、雪中の密室状況下で小熊が殺される。
 本書の中ではいちばんミステリらしい作品。
 日本家屋では珍しい密室ものだし、
 動機もこの時代でなければ成立しない必然性もある。

「二階堂流 "心の一方"」
 江戸城大手門前は諸大名の行列で渋滞していた。
 そこを通りかかった玄達が出くわしたのは、
 他家を蹴散らして進んでいく豊前国細川忠利の大名行列。
 先頭にあるは "怪剣士" と呼ばれる二階堂流・松山主水(もんど)。
 行列を押しとどめようとする黒鍬組(交通整理係)の者に対し、
 手のひらを向けるだけで、男どもが突風に吹かれたように散っていく。
 家康の孫・千姫(!)より、二階堂流を探ってほしいと頼まれた玄達は
 鎌倉の地で、十兵衛と共に二階堂流の秘密に辿り着くが・・・
 冒頭の秘技・"心の一方" のシーンだけでもいい加減驚いたけど、
 (『レインボーマン』の「遠当ての術」を連想したのはナイショだ。
  うーん、トシが分かってしまうなぁ。)
 玄達が千姫とお知り合いというのでまた驚き。
 しかも、二人を引き合わせたのは宮本武蔵(!)というおまけ付き。
 歴史上の有名人が出てくるのはお約束でもあるのだが
 まあ吹いたものだねえ・・・でも面白いから許す(笑)。
 二人が暴き出す真相もけっこうえげつないものなんだけど、
 とりあえず辻褄が合ってるからこれもいい。
 ただ一点だけ不満があるんだけど・・・いやこれは書くまい。
 気になる人は読んでみて下さい。

あと、どうでもいいことなんだが、
1巻目と2巻目で表紙の画家さんを替えたのはなぜだろう。
まあ、こっちのほうがかっこいいけど。


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