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黒猫の薔薇あるいは時間旅行 [読書・ミステリ]

黒猫の薔薇あるいは時間飛行 (ハヤカワ文庫JA)

黒猫の薔薇あるいは時間飛行 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 森晶麿
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2015/01/23
  • メディア: 文庫



評価:★★★

24歳にして大学教授になった俊英、人呼んで "黒猫"。
語り手でもあるヒロインは "黒猫" の同級生にして
大学院で研究に励みながら、彼の "付き人" を勤めている。
しかし "黒猫" は、パリの大学教授・ラテストの招きにより、
25歳にして客員教授となって渡仏してしまう。

それから半年。

日本に残された "付き人" は、学内機関誌に掲載する原稿のために
指導教授・唐草から作家・綿谷埜枝を紹介され、
彼女の家でインタビューすることになる。

埜枝は語る。30年前に出会った運命の人との恋を。

植物学者・國槻瑞人(くにづき・みずと)の創始したゲニウス植物園。
そこで出会った青年と意気投合した埜枝。
数日後、青年は埜枝に赤い鉢植えの薔薇を渡し、
翌日の夜、レストラン「オフランド」での再会を約束した。
しかし翌朝、なぜか赤い薔薇は白薔薇にすり替えられており、
青年も約束の場所に現れることはなかった・・・

一方、パリの "黒猫" も、音楽家リディア・リシュールの
屋敷にあるローズガーデンにまつわる謎に出会い、
ラテスト教授の孫娘・マチルドとともに解明に乗り出していく。

日本とフランス、それぞれ独自に謎を追う "付き人" と "黒猫"。
しかし2つの謎には意外なつながりがあった・・・


物語は両者を交互に描きながら進むが、
"付き人" の章では、彼女の "黒猫" に対する恋心も描かれる。
本作は、二人の学部生時代を描いた番外編
(『黒猫の刹那あるいは卒論指導』)
を除けばシリーズ3作目だが、巻を追ううちに
彼女の思いが次第に高まってきているのがわかる。

しかし "黒猫" の章では、マチルド主体に描かれているせいもあるが
彼の内面はなかなかうかがい知れない。

物語の構成上、"付き人" の恋のライバルとなる立ち位置のマチルドだが
"黒猫" がマチルドと接する態度は、"付き人" へ対するそれと同じで
まったくもって素っ気ない。

"黒猫" の本心がどこにあるのかは
ラストでちょっぴり垣間見ることが出来るが、
マチルドは次作にも登場するらしいので
この "恋のトライアングル"(笑) はしばらく続きそうだ。

読者は、ミステリとしての興味と同じくらい、あるいはそれ以上に
ヒロインの恋の行方に一喜一憂するかも知れない(私もそうだ)。


このシリーズ、当初はポオにまつわるウンチクやら
哲学的なリクツやらがとっても鬱陶しくて、
理解するのが楽ではなかったのだけど
巻を重ねるうちにあまり気にならなくなってきた。

ウンチクやらリクツやらの描写がこなれてきたのか、
単に私の頭がボケてきて鈍感になったのか・・・
たぶん後者だろう。


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