SSブログ

本能寺遊戯(ゲーム) [読書・ミステリ]

本能寺遊戯 (創元推理文庫)

本能寺遊戯 (創元推理文庫)

  • 作者: 高井 忍
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2015/11/21
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

思い起こせば、最初に読んだ歴史ミステリは高木彬光の
『成吉思汗の秘密』と『邪馬台国の秘密』だったような気がする。
たぶん高校時代。どっちが先だったかは覚えてないんだが(^_^;)。

天才探偵・神津恭介が歴史上の謎に挑む、って感じで
「源義経が成吉思汗になった説」の検証とか
「邪馬台国の存在した場所」を魏志倭人伝の記述のみで推理する、
とかいう内容だったと記憶している。

歴史の知識に乏しかった当時の私は、とても感心しながら読んでた。
特に『邪馬台国の秘密』のラストで神津恭介が
「邪馬台国は○○にあった!」って断言したもんだから
その後しばらく(20年くらい)は「邪馬台国○○説」を信じ込んでた。

 さすがに最近はいろいろ研究が進んできて、
 ○○はかなり怪しくなってきたけど・・・

閑話休題。


「日本史上の謎に対する新説を募集しています。
 あなたの新説が、将来の真説になるかも知れません!」

初心者向けの歴史雑誌『ジパング・ナビ!』が行った公募企画に
挑戦するのは高校2年生の歴女三人組。
扇ヶ谷姫乃(おおぎがやつ・ひめの)、朝比奈亜沙日(あさひな・あさひ)、
そして交換留学生のアナスタシア・ベズグラヤ。

「本能寺遊戯(ゲーム)」では明智光秀謀反の真相、
「聖剣パズル」では草薙剣(くさなぎのつるぎ)をはじめとする
 三種の神器にまつわる謎、
「大奥番外編(イレギュラー・ケース)」では春日局の大奥での権勢、
「女帝(エンプレス)大作戦」は、重祚した女帝・称徳天皇と
 怪僧・弓削道鏡、そして帝位をめぐる宇佐八幡の神託。

歴史上の謎に関するスタンスは三人三様。
毎回与えられるテーマに対して侃々諤々の大激論。
彼女らの "新説" は、みごと入賞できるのか・・・


この手の話では、最後に "意外な" 真相or新説が提示されて締め、
という流れがお約束。

本書も基本的にはそのパターンなんだけど、それだけに収まらない。

最終編の「『編集部日誌』より」では、3人組を相手に
『ジパング・ナビ!』の編集者・宿毛(すくも)が
「そもそも "歴史の謎解きとは何か"」を語るのだが
実は本書最大の特徴というか、読んでて一番おもしろかったのはここ。

このあたりは作者の "本音" なのか、作品としての "演出" なのか。
(「あとがき」を読むと前者のようなんだけど)

まあ、誰でも多かれ少なかれ感じていることなのだろうけど、
「よく言った!」って思う半面、
「それを言っちゃあ、おしまいよ」だよなあ。
ここまで言っちゃったら、作者は今後、歴史推理ものが
書きにくくならないかしら・・・

他人事ながら心配だ(笑)。


この文章を書くために、本書をもう一度手にとって
ところどころ拾い読みしていたら、
本書の冒頭に、ポオの『マリー・ロジェの謎』から
引用した文章が掲げられていることに気づいた。
初読の時に目を通したはずなんだが、すっかり忘れていたよ。

でも、全編読み終わった後にもう一度読んでみると、わかる。
本書のテーマを端的に表した、実に "的確な引用" だったことが。


nice!(1)  コメント(1)  トラックバック(0) 
共通テーマ: