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教場 [読書・ミステリ]

やったーついに2015年分終了! (^_^)b
でも、1月分がもう2桁も溜まってる~ (@_@)


教場 (小学館文庫)

教場 (小学館文庫)

  • 作者: 長岡 弘樹
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2015/12/08
  • メディア: 文庫



評価:★★★★

小説だから誇張や脚色も当然あるだろうけど、この本を読むと
そのへんの交番にいるお巡りさんを見る目が変わる。
そんな作品。

舞台は警察学校。
タイトルの「教場」とは警察学校の教室のこと。
名前が違うように、"学校" とはいうものの、
普通の学校とは別世界である。

犯罪に向かい合う以上、生命の危険は常に存在する。
そんな現場で働く者を送り出すのだから
"授業" も常に真剣勝負で、警官として必要な知識と技能を
文字通り "身体で覚える" まで叩き込まれる。
そういう意味では軍隊に近いとも言えるだろう。

例えば「第一話 職質」では職務質問が取り上げられる。
繁華街の酔っ払いに対して職務質問を行うという想定で
教官が酔っ払い役となり、生徒が警官役となって
ロールプレイを行うのだが、これがまた奥が深い。
職務質問一つとっても様々な留意点があり
犯罪の兆候を見逃したり証拠を隠滅されたりしないように
"警官がしなければならないこと" や "相手にやらせてはいけないこと" が
山のようにあることに驚かされる。

警官という業務の重要性から、当然ながら成績の悪い学生には
腕立て伏せ10回とかグラウンド10周とかの "ペナルティ" や
原稿用紙20枚の反省文などの "苦行" が降ってくる。

半年間の短期課程にもかかわらず、入校して1ヶ月ちょっとで
41人の同期生の中で既に4人が依願退職している。
ある意味、警察官としての資質に欠ける者を
はじき飛ばす "篩(ふるい)" 、それがこの "学校" なのだ。

とはいっても、全編これ警察官業務の話というわけではない。
むしろ警官の卵とはいえ若者の集団なのだから
厳しいルールの裏をかこうとしたり
隙間をすり抜けようとしたりする者もいるし、
閉鎖的な環境、脱落することへの不安、職務への重圧などから
精神の平衡を失う者も現れる。
その辺りも、本書独特の "ミステリ素材" になっている。

連作短編形式で、毎回主人公は代わるのだが
同期生の中の話なので、複数回にわたって登場するキャラもいる。

その中で、もっとも印象的というか中心にいるのが
わずかなミスも見逃さずに退校処分を下す
冷厳な教官・風間公親(きみちか)。

本書の裏表紙の惹句に「"既視感ゼロ" の警察小説」って銘打ってある。
確かに舞台となる警察学校というのは今までにない設定で
新鮮で目新しい舞台なのは間違いない。

 本書は各種のミステリベストテンでも軒並み上位に入っている。
 「警察小説」としてはオリジナリティ充分の出色の出来だけど、
 「ミステリ」としてみると、私の好みとは
 微妙に違う方を向いているんだけどね(^^;)

特殊な舞台で繰り広げられるドラマだけに
ストーリーも既存のパターンにあてはまらない。
そういう意味で "既視感ゼロ" は間違ってはいないんだが
こと風間に関しては「どこかで見たような・・・」って気がしてた。

つらつら考えてみて、はっと気づいたのが
「ジョーカー・ゲーム」(柳広司)で
スパイ養成のため "D機関" を設立した結城中佐。
すべてを見通す洞察力もそうだし、ふとしたときに見せる人間味も。

そしてどちらにもある共通点がある。
結城中佐は○○が○○で、風間教官は△△が△△だということ。

聞くところによると、風間を主人公としたスピンオフ作品も
執筆されているらしい。これも楽しみだ。


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