SSブログ

覇王の死 上下 [読書・ミステリ]

覇王の死(上) (講談社文庫)

覇王の死(上) (講談社文庫)

  • 作者: 二階堂 黎人
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/05/15
  • メディア: 文庫




覇王の死(下) (講談社文庫)

覇王の死(下) (講談社文庫)

  • 作者: 二階堂 黎人
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/05/15
  • メディア: 文庫



評価:★★★

「悪魔のラビリンス」から始まり、
「魔術王事件」「双面獣事件」と続いてきた
「ラビリンス」シリーズの完結編である。

能登半島の最北部にある眞塊(まかい)谷。
その地を支配する邑知(おうち)家は、古代から続く名家の末裔にして、
戦時中は軍部への影響力を持つほどの富を誇っていた。
その当主・大輔は後継者に恵まれず、全財産を相続人することになる
ひ孫の少女・みねりの結婚相手を探していた。

花婿候補の一人で、邑知家の縁につながる青年・尾崎が
山で遭難死していたことを知った弁護士・毒島(ぶすじま)は、
邑知家の財産を乗っ取るべく、天涯孤独な青年・青木を
尾崎に仕立て上げて邑知家へ送り込んだ。

一方、眞塊谷の隣にあって、邑知家の斡旋によって
宣教師たちが集団で入植したニューホーリー村では、
奇々怪々な事件が起こっていた。
男女二人の首なし死体が巨木の幹に磔(はりつけ)となって発見され、
村人たちの間には次第に狂気と疑心暗鬼が蔓延していき、
やがて人々は殺し合いを始める。

さらに邑知家にも、第二の花婿候補・今野が現れるが、
その3日後、密室状況での殺人事件が起こる
・・・


ほとんど「怪奇大作戦」(古っ!)もといホラーSFだった
前作「双面獣事件」よりは、ミステリらしい雰囲気に戻ってきた。
双面獣くん(笑)も引き続き出演してるけど、今回は脇役。
下巻の中ほどから登場する二階堂蘭子嬢がすべて持っていってしまう。

二ユーホーリー村で巻き起こる奇々怪々な事象も
蘭子嬢の推理できちんと説明される。
よくまあこれだけネタを集めたなあとまずは感心。
その努力はすごいけど、いくらなんでも
それがみんな一つの村に集まるのはちょいやり過ぎな感も・・・
まあ、このようないささか力まかせの展開でも、
本書を読むような人はあんまり気にしないかな。

密室殺人の方もきっちり解明してくれる。
こちらも、いかにもこの作者らしい外連味たっぷりの仕掛けだ。

さらには、そもそもニューホーリー村成立の経緯、
そして(お約束だが)邑知家自体にまつわる秘密まで
蘭子は解き明かしてみせる。
それにラビリンスがどう関わっていたかも含めて。
まさに "神の如くすべてを見通す" 彼女の活躍が堪能できる。


いわゆる「二階堂蘭子」シリーズと、
この「ラビリンス」シリーズとの時系列はよくわからないんだが
(作中に年月日が記載されてるから、確認すればいいんだろうけど)
本書でわかった時系列で並べると
「人狼城の恐怖」 → 蘭子3年間の失踪 → 「覇王の死」(本書)
という流れになる。

本書の終盤で、蘭子は3年ぶりに日本に帰ってくる。
この "空白" の間に、蘭子にはある "変化" が起こっているのだが、
"彼女に何が起こったか" は読んでのお楽しみだろう。

 私も「失踪中に、ひょっとしたら○○してたりして」って
 予想(妄想?)していないわけではなかったが
 いざ実際にそうなってみるとやっぱり驚いたよ。

シリーズ完結編ということで、蘭子vsラビリンス、最後の対決!
ってなるかと期待したのだが、そのへんはやや肩すかし気味かなあ。

 サブマリン707の「アポロ・ノーム編」みたい・・・って
 そんなこと言っても誰も分からんよなあ。

あくまで本作は "蘭子嬢の華麗な推理" がメイン、ということで。


ずっと昔、蘭子シリーズは長編全10作予定って聞いた気がする。
もしそれが本当なら、「人狼城」が長編5作めなので、
(「魔術王」「双面獣」がカウントされなければ)
あと5作書かれるはずだ。
"新生" 蘭子嬢の活躍を期待して待ちましょう。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ: