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せつないいきもの 牧場智久の雑役 [読書・ミステリ]

せつないいきもの: 牧場智久の雑役 (光文社文庫)

せつないいきもの: 牧場智久の雑役 (光文社文庫)

  • 作者: 竹本 健治
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2017/08/08
  • メディア: 文庫
評価:★★★

天才囲碁棋士・牧場智久と彼の恋人で
明峰寺学園高校2年生、剣道部でエースを張る武藤類子の
コンビが活躍するシリーズの短編集。
とは言っても、作中に智久自身はほとんど登場せず、
専ら携帯電話(スマホ)で登場。
類子から聞かされた事件のあらましから
真相を推理するという、ほとんど安楽椅子探偵。


「青い鳥、小鳥」
類子の同級生の如月拓也の特技は読唇術(おいおい)。
ある日、彼は電車の中で2人の女性の会話を読み取ったが
それは、何者かを監禁しようという犯罪計画だった。
ファミレスで拓也からその話を聞いていた類子たちは、
たまたまその二人組を発見し(おいおい)、尾行を開始した。
二人組は10階建てマンションに入る。続けて中に入った類子たちは
エレベーターの動きから二人の部屋を突き止めようとするが・・・
このとき、2台あったエレベーターがそれぞれ複雑に動いていたんだが
智久がこの動きを解析してみせるのが一種の暗号解読みたいで面白い。
最終的には智久の推理で事件の意外な全貌が明らかになるのだけど
さすがに凶悪事件はそう簡単にそこら辺には転がってないってことか。
「名探偵コナン」じゃないけど、探偵役の周囲にいる人々が
かなりの頻度で事件に巻き込まれることにツッコんじゃいけないのだね。

「せつないいきもの」
人気ミュージシャン・速水果月に誘われて
「ホイミン倶楽部」という集会に参加した類子。
20代から30代くらいの、マスコミや出版、ゲーム、
ネット企業などで働く人たちが所属している。
そのメンバーの一人、ゲーム脚本家のさゆきがビルの屋上から転落死する。
周囲の状況から自殺と思われたが、
智久はその死の裏にあった意外な理由を明らかにしていく。
出てくる人々の職業が、私からしたら馴染みのないものばかり。
そのせいか、今ひとつ物語にのめり込めなかったなあ・・・

「蜜を、さもなくば死を」
明峰寺学園の古ぼけた木造の物置小屋が何者かに爆破される。
犯人不明のまま時は過ぎ、類子は果月とともに
”ミステリ・ナイト” というイベントに参加する。
主催者からは携帯電話とベルトが渡され、
ベルトはチームの中の一人が身につけることになっており、
今回は果月が装着した。
携帯メールで手がかりが示され、参加チームごとに
謎を解いて真相を推理させるという形式で進行するのだが、
開始早々、類子が持つ携帯に不審な男から連絡が入る。
果月が着けているベルトには爆弾が仕込まれている。
遠隔操作で爆発させることができる。外そうとすると即座に爆発する、と。
相手の男は、明峰寺学園の物置小屋を爆破したのも自分だと語り、
送りつけた問題の謎解きを強要する。
類子は智久に連絡を取り、彼からアドバイスを得ながら
ゲームに参加するが・・・
こちらは明らかに暗号解読ものなんだけど、謎の半分は
東京圏に住んでいる人だったら案外解き易いんじゃないかなあ。
私だってすぐに分かったよ。だって地図を見ればイッパツなんだもん。
爆弾魔という凶悪事件なんだが、明らかにされる動機は極めて些細なもの。
まあ犯人からしたら重大事なのだろうが。

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メルカトルかく語りき [読書・ミステリ]

メルカトルかく語りき (講談社文庫)

メルカトルかく語りき (講談社文庫)

  • 作者: 麻耶 雄嵩
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/05/15
  • メディア: 文庫

評価:★★☆

メルカトル鮎といえば、作者のデビュー作『翼ある闇』で登場し、
それがそのまま ”最後の事件” となってしまった探偵役。
自ら ”銘” 探偵と名乗るほど、推理力は飛び抜けているのだけど
傍若無人、傲岸不遜な性格なので敵も多かろう。
”あんなこと” になってしまったのかも、身から出た錆かも知れない(笑)。

ということは、それ以後に発表されてるメルカトルものは
みな『翼ある闇』事件以前のはずなんだが、さてどうだろう。
”あんなこと” になってしまったのが
本物のメルカトルとは思えない気もする。

閑話休題。

本書はメルカトル鮎が、友人の作家の美袋三条をお供に
(というより引きずり回して)活躍する5作収めている。

予め書いておくが、とんでもない変化球、いや大暴投だらけだ。
いわゆる ”普通の” 本格ミステリを期待すると裏切られる。
ミステリの「枠を超えた」どころではなく、
「枠をぶち壊した」作品ばかり(おいおい)。
人によっては怒り出すかも知れない。


「死人を起こす」
6人の高校3年生が、8月の終わりに宿泊旅行に出た。
場所は、かつて外国人が所有していた空き別荘。
しかし到着した夜、メンバーの一人の男子学生が2階の窓から転落、
庭石に頭を打ちつけて死亡しているのが発見された。
一年後、残りの5人はそれぞれ大学生や浪人生となった。
彼らは亡くなった学生を偲んで、再び現場となった別荘へやってくる。
集まりを呼びかけた学生は一年前の ”事件” を解決するため、
探偵を呼んだという。しかしその呼ばれた探偵・メルカトルの
到着と同時に、もう一人の死体が発見される・・・
いやあ、この結末はいろんな意味で驚かされる。
同じオチで他の作家さんが書いたら袋だたきにされそうだが

「九州旅行」
美袋のマンションを訪れたメルカトルは
突如「血のにおいがする」といいだし、ある部屋の前で立ち止まる。
ドアに鍵はかかっておらず、居間には
背中に包丁を突き立てられた男の死体。
被害者の携帯履歴から、恋人の女性が犯人と思われたが・・・
これもとんでもない結末だなあ。美袋くん逃げて~。

「収束」
和歌山県沖にうかぶ小島にやってきたメルカトルと美袋。
島の所有者・小針は新興宗教の教祖となり、
5人の信者と2人の使用人と共にここで共同生活を行っている。
その夜、嵐が島を襲い、翌朝になって小針の死体が発見される。
ここでもまた、メルカトルによって突拍子もない解決法が示される。
人の命より真相を、真犯人を求める。
探偵としては有能なのかも知れないが人間として如何なものか。
でもこれがメルカトルという男。

「答えのない絵本」
メフィスト学園高等部に勤務する物理教師が殺される。
容疑は、当時校舎内にいた20人の生徒にかけられる。
メルカトルが切れ味鋭い推理を展開し、エラリー・クイーンばりに
消去法によって犯人を絞り込んでいくのだが・・・
いやあ、これはミステリでは許されない結末だと思うんだけど。

「密室荘」
信州にあるメルカトルの別荘に泊まった美袋。
しかし翌朝、地下室に見知らぬ男の絞殺死体が。
別荘は内部から完全に施錠されており、従って
犯人はメルカトルか美袋かに絞られる・・・
この解決も、およそミステリではあり得ないもの。
もはやメルカトルは探偵役を ”超えてる” 存在なのだね。


「美袋三条の受難」てタイトルの方が
本書の内容を正しく表してるんじゃないかと思う(笑)。
いやあ、この話以後もメルカトルとつきあってたら、
美袋くんはいつか命を落とすと思うぞ(爆)。

麻耶雄嵩が書いた、探偵役がメルカトルだから、許される話ばかり。
それくらい強烈なクセ球の5連投。
ミステリ初心者にはオススメしません。

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蛇棺葬 / 百蛇堂 怪談作家の語る話 [読書・その他]


蛇棺葬 (講談社文庫)

蛇棺葬 (講談社文庫)

  • 作者: 三津田 信三
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/10/16
  • メディア: 文庫
百蛇堂<怪談作家の語る話> (講談社文庫)

百蛇堂<怪談作家の語る話> (講談社文庫)

  • 作者: 三津田 信三
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/12/13
  • メディア: 文庫
評価:★★★

『蛇棺葬』『百蛇堂』という二巻構成のホラー長編。
あわせて文庫で1000ページ超えという途方もない話。

『蛇棺葬』

奈良県蛇迂(だう)郡它邑(たおう)町。
幼い頃、そこにある旧家・百巳(ひゃくみ)家に引き取られてきた私。
当主である父が、外につくった愛人に産ませた子が私だ。
そこは古くから蛇神を祀る奇妙な風習に満ちあふれた場所だった。
認知症気味の祖母、私を敵視している義母(父の本妻)、
本家に寄生している叔父叔母たち。
”招かれざる客” である私は居場所がない。
使用人の一人、民(たみ)さんだけが私の味方だった。
やがて祖母が亡くなり、百巳家独自の葬儀・”葬送百儀礼” が行われる。
その〆として、父は祖母の遺体と共に
屋敷の離れである<百蛇堂>で一晩過ごすことになる。
しかし翌朝、密室状態の建物の中から父の姿は消えていた。

その後、私は叔父夫婦に引き取られ、無事に成人する。
そして二十数年の時が流れ、私は再び百巳家へ足を踏み入れる。
危篤状態となった義母に逢うためである。
やがて義母はなくなり、その葬儀にあたり、
私はかつての父のように<百蛇堂>で一晩過ごす羽目になる・・・


『百蛇堂 怪奇作家の語る話』

編集者で怪奇作家でもある三津田信三は
龍巳美乃歩(たつみ・みのぶ)という男に引き合わされた。
彼が語る百巳家の怪異の数々に三津田はすっかり魅せられてしまう。

後日、美乃歩がその内容を原稿にしたもの(これが『蛇棺葬』にあたる)が
三津田のもとに送られてくるが、それを読んだ女性編集者が失踪するなど、三津田の周囲の人々に不審な出来事が発生し始める。
その正体をつかむため、京都に住む美乃歩のもとに向かうのだが・・・


この作者には、ミステリ要素がメインの話と、
ホラー要素がメインの話があるが本書は完全に後者。

怪奇と幻想の物語が好きな人にとっては、
本書はたまらまく面白いのだろうとは思うが。

密室からの人間消失とか、いかにも本格ミステリ的な謎があって、
本編の中ではいくつかの合理的な解釈が示される。
それだけで充分、ミステリ長編になるんじゃないかと思うんだが
あくまで本書は怪奇と幻想の物語として進行していく。

密室以外にもいくつもの謎が散りばめらえれていて、
そのうちいくつかは解かれていくのだけど、
あくまで作品内のホラー設定のもとでの謎解きなので、
謎が謎でなくなっても、そこに現れるのは新たな怪奇と恐怖。

謎の解決していく過程がそれなりに面白いので、読めることは読める。
逆にいかにもホラーな場面はもうページをめくるのが辛い辛い。

私は基本的にホラーは苦手なんだけどなんとか読み切れたのは、
そういう ”私でも読める部分” が思いの外多かったからだろうな。

んー、作者がこの手の作品が大好きなのは分かるのだが
やっぱりミステリとして着地する物語を読みたいなあ。

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少年探偵 [読書・ミステリ]

([し]4-7)少年探偵 (ポプラ文庫)

([し]4-7)少年探偵 (ポプラ文庫)

  • 作者: 小路 幸也
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2017/05/09
  • メディア: 文庫
評価:★★★

ポプラ社によるオマージュシリーズ第三弾。
第1巻に収められた短編には、ちょっと変化球もあったけど
おおむね、”原典の世界”を尊重していたと思う。

しかし、本書は大変化球だ。それも ”消える魔球” クラス(笑)の。

 この例えが分からない人も多くなっただろうなあ・・・(おいおい)


怪人二十面相、明智小五郎、小林少年、文代夫人・・・
登場してくる単語はみなお馴染みなのだけど、
その設定が根本から変わっているのだ。
リメイクならぬリブート、あるいは
パラレルワールドの話と割り切って読まないと
ちょいと混乱するかも知れない。

中でも一番大きな改変は文代さんだろう。
なにせ明智の妻ではないのだから(゚Д゚)。

何処で出てくるかは読んでのお楽しみで、
彼女の位置づけが本書の物語の根幹をなしてるといってもいいだろう。


<怪人二十面相>が世間を騒がせている中、
12歳の少年・芳雄は東京駅で鉄道自殺を図るが
その寸前、謎の紳士に助けられる。
紳士は芳雄に対し、「死ぬ勇気があるのなら、自分を悩ますものと戦え」
と告げる。さらにこう続ける。
「ならば、私が君を鍛えよう。<裏道の歩き方>を教えよう」
紳士は芳雄に ”小林” という新たな姓を与え、
彼のもとで ”闇の探偵道”(!) の修行を始めることになる。

十数年前、<明智小五郎>と名乗って幾多の事件を解決してきた男は
いまは名無しの男として厭世的な生活をしていた。
しかし、親友の新聞記者・真山に焚き付けられたこともあり、
世間を騒がす<怪人二十面相>を捕らえるべく、
名探偵として再び行動を起こすことを決意する。

実は芳雄は、西四辻(にしよつじ)伯爵家の息子だった。
その姉・麻由美は友人の池子(いけこ)のもとを訪ね、不審な話を聞く。
かつて西四辻家の運転手を務めていた加藤。
彼の息子・修は、麻由美とは年も近く、親しくしていた。
その修が働いている鉄工所が、何やら怪しいものを作り始めたという。

物語は芳雄、明智、麻由美の3つのストーリーラインで進行していく。

上野の美術館からの仏像盗難、銀座を被う殺人スモッグ、
跳梁する怪人・”蛾男”、そして闇夜を走る幽霊列車・・・etc。
壮大なスケールの事件を次々と引き起こす二十面相と、
それを打ち破っていく明智の活躍が描かれる。

3つのラインは最終的に一つにまとまり、
明智、芳雄、文代、そして二十面相の意外な関係が明かされて、
少なからず苦めな結末を迎える。


この手の作品のトリックに、リアリティの面で
野暮なことを言うつもりは無いんだけど、
幽霊列車のトリックだけは正直言って首をかしげてしまう。

最後まで分からなかったのが、芳雄くんを助けた謎の紳士の正体。
いろいろ考えてみたがこれといった答えが思い浮かばない。
もっとも、勘のいい人や、原典に詳しい人からしたら
一目瞭然で簡単なのかも知れない。
もし続編とか書かれるのなら、明かされるのかな。

時代・舞台設定こそ原典を踏襲しているものの
各キャラクターの設定をここまで改変してしまうと、
拒否反応を示す人もいるかも知れないなあ。


そのうち明智も小林くんも二十面相も
女性化した作品なんてのも出てきたりして。

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だいじな本のみつけ方 [読書・その他]

だいじな本のみつけ方 (光文社文庫)

だいじな本のみつけ方 (光文社文庫)

  • 作者: 大崎 梢
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2017/04/11
  • メディア: 文庫
評価:★★★

読書好きな中学2年生・中井野々香(ののか)を主人公とした
中編2作を収める。

 横道にそれるが、最近「ジュブナイル」って言葉を
 聞かないなあって思ってちょっとネットを漁ってみたら、
 いまは「ヤングアダルト」と言うそうな。
 うーん、あんまりピンとこないなあ。なにせ古~い人間ですから(笑)。

閑話休題。


「だいじな本のみつけ方」

ある日の放課後、校舎内を歩いていた野々香は
手洗い場の角に放置されている一冊の本を発見する。
何気なく手にした野々香は驚く。
それは彼女の好きな人気作家・新木真琴の新刊だった。

本を元の場所に戻した野々香は、自分もその本を手に入れるべく
商店街にある「ゆめみ書店」に向かうが、なぜか店頭で見つからない。
店員の青山さんによると、発売はもう少し先のはずだという。
では、あの本はいったいどうしてあそこに存在していたのか?

野々香は、喧嘩仲間の男子・高峯秀臣(たかみね・ひでおみ)と共に
あの本の持ち主を探し始めるが・・・

文庫で110ページほどの作品で、
この謎は30ページ過ぎあたりで解けるのだけど
これは、読書好きな人なら見当がつくんじゃないかな。


「だいじな未来のみつけ方」

書店員の青山さんを通じて、野々香と秀臣に相談が持ち込まれる。
「本」をテーマにした小中学校の交流イベントの企画・立案だ。
小学校の校長先生とも話し合い、
その内容の候補の一つとして「読み聞かせ」が挙がった。

野々香は思い出す。
かつて公民館で読み聞かせをしていた "達人" で、
ビトさんなる人がいたことを。

さっそく野々香たちは公民館を訪ねるが、
ビト(尾藤)さんは数年前、ある "失敗" を起こして、
それ以来、読み聞かせはしていないのだという・・・


「だいじな本-」では、謎の新刊書の持ち主を捜したり、
「だいじな未来-」では、尾藤さんと関わった女の子を捜したりと
物語の糸口はどちらも "人捜し"。
流石にミステリ作家だけあって、この部分は面白く読ませる。

本好きな中学生が、親友悪友と共に、
大人も巻き込んで「本」のために奔走する。
とても微笑ましいのだけど、ここまで積極的に
本に関わろうとする中学生なんて
実際はなかなかいないだろうなあとも思う。

ただでさえ活字離れが叫ばれてるけど、
小中学生の頃に読書の習慣がつかないと
なかなか本を読もうとは思わなくなるんじゃないかなあ。

本書の対象はおそらく小中学生なのだろうけど
大人が読むと、また違う感慨を抱くだろう。

私の場合は、かつて読書好きな中学生だった自分を思い出してしまう。

野々香や秀臣みたいな行動的な子どもではなかったけれど、
家から徒歩で3~4分のところにあった書店には通い詰めてたなあ。
あの頃、小遣いのほとんどは本代に消えていた。

あるときレジで店員さんから「あなたは本が好きなのねえ~」
って言われて、猛烈に恥ずかしかったこととか。

背伸びをして創元推理文庫の海外ミステリを買ったけど、
訳文が難しくてさっぱり分からなかったこととか(笑)。


出版社もあの手この手で本を売る工夫をしてるんだろうが
それとは別に、本好きな子どもを増やす方策も考えていかないと。

「読書の楽しみ」なんて言葉が
”死語” になってしまうような未来は見たくないよねぇ・・・

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M博士の比類なき実験 [読書・ミステリ]

M博士の比類なき実験 (講談社文庫)

M博士の比類なき実験 (講談社文庫)

  • 作者: 森 晶麿
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/04/14
  • メディア: 文庫
評価:★★☆

主人公・アキラは、高校時代に同級生のマドカと交際していた。
その関係は、彼女から別れを切り出されて終わりを告げるが
それからもアキラは彼女のことを忘れられずに生きてきた。

そして9年後。26歳になったアキラは、
マドカが投身自殺を遂げたことを知る。
彼女と別れてから生きる目的を見失っていたアキラは、
人生をリセットすることを思い立ち、
天才美容外科医・M博士が募集する治験モニタに応募する。

瀬戸内海の孤島に1年間滞在し、その間に
全身に美容整形手術を施すというもので、報酬は1000万円。

審査の結果、アキラは治験対象者として選ばれ、
M博士が研究所を構える無人島・O島へ向かった。

島には先客として既に治験モニタの女性が2人滞在していた。
自由奔放な性格のアヤと、シャイなミチ。

この2人以外に研究所にいるのは看護師のカンナ、
諸々のメンテナンス業務をこなすサトル、
そして所長であるM博士、さらに彼の婚約者であるレイコ。

アキラはM博士からレイコを紹介されるが、
たちまち彼女に魅せられてしまうのだった。

総勢7人による共同生活が始まったが、アキラが島に到着してから
10日目の夜、M博士の首なし死体が見つかる・・・


いわゆるクローズト・サークルものとして始まる。
島内の殺人事件の真相も、充分意外性があって面白いのだけど
ストーリーのクライマックスは、生き残った者が島を脱出し、
東京へ戻ってきた後にやってくる。


初刊時のタイトルは『COVERED M博士の島』だったという。
ジョージ・ウェルズの『モロー博士の島』を連想する人もいるだろう。

 あちらは、孤島に住むマッドサイエンティスト・モロー博士が
 獣人(動物を人間化したもの)を作り出す研究をしている、って内容。

本書に登場するのはM博士も含めてみんな正真正銘の人間なんだが、
その人間たちが、美を求めて、あるいは嫉妬に駆られて、
あるいは欲望に突き動かされて人間の道を踏み外していく。

月並みだが「人間は一皮めくればみな猛獣」ってことか。

ラストの展開は好みが分かれそう。
私はあまり好きになれないけど。

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砂星からの訪問者(フィーリアン) [読書・SF]

砂星からの訪問者 (朝日文庫)

砂星からの訪問者 (朝日文庫)

  • 作者: 小川一水
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2015/08/07
  • メディア: 文庫
評価:★★★

異星系の探査を行う艦隊の従軍カメラマン、
石塚旅人(イシヅカ・タビト)を主役とするシリーズ、第2作。


本書は第1作のラストからそのまま始まる。

前作の舞台となったカラスウリ星系で、2種族の異星人と
ファーストコンタクトを果たした第五ダーウィン艦体。
太陽系に次ぐ人類の拠点である沖ノ鳥島星系まで帰還してきたが
艦隊付きカメラマンのタビトは、単独行動によって
艦隊を危険に晒したとして収監されてしまう。

しかしその沖ノ鳥島星系に突如異星人の宇宙船が現れ、
人類側の船舶に攻撃を仕掛けてきた。
釈放されたタビトは迎撃部隊に随行して現地に向かう。
白兵戦のさなか、異星人の宇宙船に入り込んだタビトは
そのまま相手の大型船へと連れ去られてしまう。

タイトルの ”フィーリアン” とは、今回登場した異星人に対して
地球人が設定した呼称である。

大型船の内部は、草原を模した広大な人工居住空間となっており、
フィーリアン(猫が進化したような外見をもつ)たちによる、
弱肉強食の原始的な闘争社会が営まれていた。

彼らには全体を統治する者がおらず、超光速航行を可能にする
技術力に見合うような文明を持っている様子もない。
ならば彼らは何者なのか?

彼らの上に、高度な知性を持つ存在がいるとしか思えないのだが、
その正体をつかむことができない。

たまたま出会った一人(?)のフィーリアンと
意思の疎通に成功したタビトは、本格的な戦争に発展するのを防ぐべく、
異星人社会の秘密を探っていくのだが・・・


終盤で明らかになるのは、遙かな過去に
フィーリアンたちを襲った悲劇と、それによって
彼らが種族として選んだある行動。
フィーリアン社会の謎もそれによって説明されていく。

この手のSFで大事なのは、魅力的な異星人の創造だと思うのだが、
本作のフィーリアンは充分に面白い存在だと思う。

終盤では前作の異星人が再登場してくる。
それなりの必然性があって出てくるのだけど、これは諸刃の剣かなあ。
前作を読んでいるかいないかで本書の面白さに差が出てしまいそう。
でも、シリーズものを第2巻から読み始める人もそんなに多くないかな。

シリーズと言えば、前巻は新書版のノベルスサイズだったんだけど
本書ははじめから文庫書き下ろし。
思えば一時期、ノベルスはたくさん種類があったけど
いまは講談社と光文社くらいかなあ。
昔と比べてレーベル数が激減しているように思う。

出版界の不況はこんな形でも現れてきてるんだね。

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「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 第七章〈最終章〉新星編」劇場予告編(60秒) 公開 [アニメーション]


1月31日、第七章新星編の予告編が公開されました。
もうちょっと早く公開されるかなと思ってたんですけどね。
気がつけば、もう4週間後に公開なんですねえ・・・



例によって、見ながら考えたこと感じたことを
ダラダラと書いてみたいと思います。

・「滅びの方舟よ! 真の目覚めを!」大帝の台詞と同時に
 剣の宝石?が輝き、同時に頭を抱えて苦しむガイレーン。
 彼の役回りというか立ち位置も明かされるでしょう。
 さて、方舟が ”目覚め” たらどうなるのでしょうかね。
 都市帝国があのままで終わるはずが無いと思ってましたので
 やっぱり ”超・超巨大戦艦” とかに変形するんですかね?
 最後に ”奥の手” を残してるんじゃないかとは思ってましたが、さて?
・ヤマト渦中へをBGMに、異空間?彗星の内部?を進むヤマト。
 古代の顔、古代?土方?の指、バーニアをふかすヤマト、
 血相を変える佐渡、交戦中のヤマト、レーダー席でのけぞる西条、
 なんと一瞬だがドリルミサイルかこれ?、
 燃える(?)玉座(手前に刺さってるのはニードルスレイブの撃った槍?)
 透子、土方、改装後の高次元微細レーダー(なにやら光ってますね)、
 キーマン、ゴストーク級ミサイル戦艦、ツヴァルケ、島、古代と雪、
 浮上(?)する次元潜行艦(?)、そしてフラーケンと
 めまぐるしく短いカットが続いていきます。
 何かと評判の悪い ”副監督肝いり横長レーダー” ですが、
 それならばなおさら劇中できちんと存在意義を示さないとねぇ。
・「若きデスラーよ、選べ、未来を」悪魔の選択を迫るミル、
 彗星の内部で交戦中のヤマト。
・「本艦はこれより敵中枢部へ突入する」土方の司令のもと、
 発艦するコスモタイガーと機動甲冑。
・「どちらかが始めなければ。引き金を引かないという道を選ぶことを」
 戦いを終わらせるために必要なことだけど、これがいちばん難しい。
 ミルの頭部に銃を突きつけるのは古代?
 大戦艦群にミサイルを撃っているのは
 ノイ・デウスーラに似てるけど違うような?
 振り返るミル、そして古代。
・剣を手に「ここまでだ。人間どもよ!」叫ぶ大帝。
 自分は人間よりも上位の存在だという意識が言わせる台詞か。
・そして、”あのBGM” をバックに『最終章』
・デスラー、異次元の海(?)から浮上するヤマト。これはカッコいい。
 フラーケンの助力でしょう。ヤーブくん再登場あるか?
 爆発に吹き飛ばされるコスモタイガー、破壊される都市帝国?
・「トランジット波動砲、発射あぁ!」
・『あらゆる予想を覆し』
 猛攻を受けるヤマト。まさに ”串刺し” 状態。
 イーター?ニードルスレイブの大群?かな? これ貫通してるよね?
 ちょっと『STAR TREK BEYOND』を連想させるシーン。
 崩壊する惑星群。これは彗星帝国内に囚われてたヤツでしょう。
 古代の面前で今まさに倒れようとする雪。
 順当に考えればミルの撃った銃弾を受けたのだろうが?
 ヘルメットのバイザーが砕け散ってるみたいだが・・・
 斉藤、被弾するツヴァルケ、キーマン、
 瀕死?の徳川・・・『さらば』のあのシーンの再現か。
 そして「次の艦長は・・・君だ」、古代のアップ。
・『真実のラストへ』
 派手にイーターが何本も突き刺さった
 ゼルグート級(バレル大使の座乗艦か)の前を横切るビームが
 月に命中。かすめただけだが、ごっそりと地表が削られて。
 この日以降、丸い満月は拝めなくなりそう。
・両手を広げて宙を仰ぐ大帝、滅びの方舟の尖塔部(?)が崩壊?
 古代がいるのは玉座の間か?
 そして、”あのラスト” を彷彿させるテレサの姿。
・「土方前艦長の命令を決行する!」決死の表情の古代で〆。
・そしてメインタイトル『第七章「新星編」』


例によって細かくカットを刻んで、しかも
時系列を入れ替えてあるのだろうから
これをもってストーリーを推し量るのは
毎度のことながら至難の業。

全体としては『さらば』を彷彿とさせる場面が多いような。
あえてそういうシーンを選んでるのかも知れないが。
ミスリードなのか、それとも・・・

これまでにも原典を大きく逸脱した展開をしてきたし、
キャッチコピーで『あらゆる予想を覆し』って宣言している以上、
第七章のラストが、単に『さらば』をなぞった展開になるとは
思えないんだが、こればっかりは分からないよなあ・・・

制作発表当時、「2202」の「0」が「φ」なのは、
「さらば」でも「ヤマト2」でもないってことだって説明されてた。
ならば、第三の結末を迎えるはずだが・・・さてどう収めるか。

今までも何回か書いてきたけれど、
原典そのものが賛否両論あった作品だけに、
どう決着をつけても文句を言う人はいるだろうなあ・・・
まあ、それはこの作品を扱う上での ”宿命” みたいなものだけど。

私としては、ここまで来たら否が応でも見届けるしかないと思ってる。

思えば、40年前に味わった「置いてきぼり」感。
アレを再び喰らってしまうんじゃなかろうか、
なぁんて恐れを抱きつつ、ここまでつきあってきた。
願わくば「こんな彗星帝国編が見たかった」って
思えるような結末を見せてもらいたいものだが・・・


さて、3/1までに公開される予告編orPVはまだあるのかな。

今までの例では、予告編より長めの「主題歌PV」が公開されてきたが
最終章の主題歌がどうなるのかはまだ未発表。
ひょっとすると、予告編やPVを見てあれこれ妄想するのも
これが最後になるのかも知れないなぁ・・・


さて、泣いても笑ってもあと4週間。
長いようで短かったリメイク・ヤマトとの旅も、
今度こそ終わるのだろうか。

小松左京の長編SF『復活の日』の中に、こんな台詞が
あったように記憶している(うろ覚えなので違ってるかも)。

「どんなものにも終わりはある。大事なことは、それがどう終わるかだ」

良き終わりが訪れんことを。

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