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密室殺人ゲーム2.0 [読書・ミステリ]

密室殺人ゲーム2.0 (講談社文庫)

密室殺人ゲーム2.0 (講談社文庫)

  • 作者: 歌野 晶午
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/07/13
  • メディア: 文庫
評価:★★☆

本格ミステリはしばしばパズルに例えられる。
「パズラー」という言葉で呼ぶときもあるしね。
でもそれだけでは小説にはならない。
登場人物の描写や舞台/時代設定を織り込んで、
起承転結のドラマが構築されたものを
ミステリファンは楽しんでいるのだと思う。

でも、たまにそういうドラマ要素を抜きにして(ゼロとは言わないが)
パズル的要素を前面に押し出した作品も存在する。
本書もそんな系列につながる作品の一つだろう。

シリーズ第1作「密室殺人ゲーム王手飛車取り」に続く
第2作であるけど、上にも書いたように
全体を貫くストーリーがあるわけではないので
本作から読んでも全く困らない。
実際、私も第1作の内容はすっかり忘れていた(笑)。


5人のミステリマニアがネットを介したAVチャットをしながら
各自が出題するミステリ問題を解き合う、という形式の連作短編集だ。

まずこの5人からして正体不明だ。
本名を名乗らずハンドルネームなのは当たり前として、
webカメラで映るお互いの姿を見ても相手の素性は全く分からない。

〈頭狂(とうきょう)人〉は、ダーズベーダーのかぶり物。
〈伴道善(ばん・どうぜん)教授〉はカツラとめがねで変装した姿。
〈aXe〉(アクス)は、「13日の金曜日」のジェイソンのような
 ホッケーマスクを装着し、
〈ザンギャ君〉の画面には水槽の中にいるカミツキガメが映っている。
〈044APD〉は、プジョー・コンパーチブルの写真。
 これは「刑事コロンボ」の愛車だ。

文中に明言されてないけど、おそらく声も機械を通して
変えてるんじゃないかな。
つまり人相はもちろん、性別・年齢すら不明な5人の集まりなのだ。

そして、各自が「問題」を出題するんだけど、
これがみな密室殺人。しかも実際に起こった事件。
つまり、各メンバーが順繰りに自らが密室殺人を実行して
それを問題に仕立て上げてるわけだ。

そして、他のメンバーがゲーム感覚でそれを解く。
まさに「密室殺人ゲーム」なわけだ。

他のメンバーも、新聞やテレビなどの報道される情報だけに飽き足らず、
自ら現場へ足を運んで調査したり、関係者に話を聞きにいったりする。
もちろんこの時は素顔で相手に接するわけだが・・・

それにしても、この5人のメンバーの持つ情熱は異常なまでに大きい。
真相が露見して逮捕されたら身の破滅だからね。
それでもなおかつ、「密室殺人問題」を作り出しているのだから
まさにミステリにすべてを賭けてるといっても過言ではない。

そして実際、すべてを賭けきってしまうメンバーも現れるのだが・・・


私も本格ミステリは大好きなのだが、ここまでパズル的に
余計なものをそぎ落としてしまったものを読むのはいささか辛かった。

私は「名探偵」も「トリック」も「論理のアクロバット」も
大好きなのだけど、やっぱり「物語」を読みたいのだなあと
改めて自覚した。

いちおう本書も、ミステリに身も心もすべて捧げた人々の
物語ではあるのだけど
私の読みたいものではないみたい。だから星も少なめ。

この手のミステリはたまに読む(1年に1冊くらい)ぶんにはいいけどね。

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