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貴族探偵 [読書・ミステリ]

貴族探偵 (集英社文庫)

貴族探偵 (集英社文庫)

  • 作者: 麻耶 雄嵩
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2013/10/18
  • メディア: 文庫
評価:★★★

殺人事件の現場に突如現れ、警察上層部に影響力を行使して
捜査へ強引に介入、そして解決してしまう「貴族探偵」。
貴族だけあって、推理するのは執事やメイドなど使用人の方々(笑)。
本人はお茶を飲んだり、関係者の女性を口説いたり(おいおい)。
という、およそ人を食った設定の連作ミステリ。


「ウィーンの森の物語」
人里離れた山荘で、戸倉計器の社長・戸倉成一が死体で発見される。
睡眠薬を服用し、手首を切った状態で。
自殺かと思われたが、現場を密室状態にしようとして
失敗したと思われる痕跡が発見されたことから他殺と断定される。
さらに、犯行があった夜に現場を立ち去った
社長秘書・旗手(はたて)真佐子が自宅で撲殺されていたことも判明。
今どき糸を使った密室なんて・・・なあんて思ってたら
これがけっこう重要だったねぇ。
いつもながら犯人指摘の推理は鮮やか。
もっとも推理したのは執事の山本さんでしたが(笑)。

「トリッチ・トラッチ・ポルカ」
郊外の廃倉庫から見つかった死体は
頭部と両腕が切断され、持ち去られていた。
やがて身元は専業主婦の宇和島逸子(いつこ)と判明するが、
彼女は複数の人間に対して恐喝をしていたことも明らかに。
今回、推理を疲労するのはメイドの田中さん。
分かってみれば、遺体切断の理由は前例がけっこうあるのだけど、
それを悟らせないのは流石。

「こうもり」
北陸の老舗旅館に、大学の卒業旅行に訪れた紀子と絵美。
そこで二人は人気作家の大杉道雄たち一行と知り合う。
しかしその2日後、祭りの最中に大杉の義妹・佐和子が殺される。
今回も推理を疲労するのはメイドの田中さん。
犯人が弄したトリックはいささか古色蒼然としてるが
真のサプライズは真相が明かされた後にやってくる。

「加速度円舞曲」
山道を車で走行中だった日岡美咲は、突然の落石で立ち往生してしまう。
たまたまそこを通りかかった貴族探偵とともに
落ちてきた石があった場所にいくと、
そこにはミステリ作家・厄神春征(やくじん・はるまさ)の別荘が。
そして別荘の書斎には、厄神の撲殺死体が・・・
今回、運転手の佐藤が解き明かす真相は、
完璧を求めすぎた故に自ら墓穴を掘ってしまった犯人の姿。
いくらミステリの犯人だといったって、ここまではしないとも思うが
それを言ってはいけないのでしょうねぇ(笑)。

「春の声」
旧伯爵家で資産家の桜川鷹亮(たかすけ)は、
孫娘・弥生の結婚相手を選ぶため、3人の若者を呼び寄せる。
いずれもそこそこ有名な会社の御曹司だったが、
その3人が一夜のうちに死体に変わってしまう。
たまたま桜川邸に滞在していた貴族探偵が乗り出すが・・・
今回は、執事の山本さん、メイドの田中さん、運転手の佐藤さんの
3人がそろい踏みで推理を披露する。
しかし、もう一枚裏がありそう・・・というところで幕。


貴族探偵自身はまったく推理に加わらないけど、
考えてみれば、"名探偵"を3人も使用人として雇っている時点で
スゴい人なのかも知れない。

続巻「貴族探偵対女探偵」も文庫化されていて手元にある。
これも近々読む予定。

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