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だいじな本のみつけ方 [読書・その他]

だいじな本のみつけ方 (光文社文庫)

だいじな本のみつけ方 (光文社文庫)

  • 作者: 大崎 梢
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2017/04/11
  • メディア: 文庫
評価:★★★

読書好きな中学2年生・中井野々香(ののか)を主人公とした
中編2作を収める。

 横道にそれるが、最近「ジュブナイル」って言葉を
 聞かないなあって思ってちょっとネットを漁ってみたら、
 いまは「ヤングアダルト」と言うそうな。
 うーん、あんまりピンとこないなあ。なにせ古~い人間ですから(笑)。

閑話休題。


「だいじな本のみつけ方」

ある日の放課後、校舎内を歩いていた野々香は
手洗い場の角に放置されている一冊の本を発見する。
何気なく手にした野々香は驚く。
それは彼女の好きな人気作家・新木真琴の新刊だった。

本を元の場所に戻した野々香は、自分もその本を手に入れるべく
商店街にある「ゆめみ書店」に向かうが、なぜか店頭で見つからない。
店員の青山さんによると、発売はもう少し先のはずだという。
では、あの本はいったいどうしてあそこに存在していたのか?

野々香は、喧嘩仲間の男子・高峯秀臣(たかみね・ひでおみ)と共に
あの本の持ち主を探し始めるが・・・

文庫で110ページほどの作品で、
この謎は30ページ過ぎあたりで解けるのだけど
これは、読書好きな人なら見当がつくんじゃないかな。


「だいじな未来のみつけ方」

書店員の青山さんを通じて、野々香と秀臣に相談が持ち込まれる。
「本」をテーマにした小中学校の交流イベントの企画・立案だ。
小学校の校長先生とも話し合い、
その内容の候補の一つとして「読み聞かせ」が挙がった。

野々香は思い出す。
かつて公民館で読み聞かせをしていた "達人" で、
ビトさんなる人がいたことを。

さっそく野々香たちは公民館を訪ねるが、
ビト(尾藤)さんは数年前、ある "失敗" を起こして、
それ以来、読み聞かせはしていないのだという・・・


「だいじな本-」では、謎の新刊書の持ち主を捜したり、
「だいじな未来-」では、尾藤さんと関わった女の子を捜したりと
物語の糸口はどちらも "人捜し"。
流石にミステリ作家だけあって、この部分は面白く読ませる。

本好きな中学生が、親友悪友と共に、
大人も巻き込んで「本」のために奔走する。
とても微笑ましいのだけど、ここまで積極的に
本に関わろうとする中学生なんて
実際はなかなかいないだろうなあとも思う。

ただでさえ活字離れが叫ばれてるけど、
小中学生の頃に読書の習慣がつかないと
なかなか本を読もうとは思わなくなるんじゃないかなあ。

本書の対象はおそらく小中学生なのだろうけど
大人が読むと、また違う感慨を抱くだろう。

私の場合は、かつて読書好きな中学生だった自分を思い出してしまう。

野々香や秀臣みたいな行動的な子どもではなかったけれど、
家から徒歩で3~4分のところにあった書店には通い詰めてたなあ。
あの頃、小遣いのほとんどは本代に消えていた。

あるときレジで店員さんから「あなたは本が好きなのねえ~」
って言われて、猛烈に恥ずかしかったこととか。

背伸びをして創元推理文庫の海外ミステリを買ったけど、
訳文が難しくてさっぱり分からなかったこととか(笑)。


出版社もあの手この手で本を売る工夫をしてるんだろうが
それとは別に、本好きな子どもを増やす方策も考えていかないと。

「読書の楽しみ」なんて言葉が
”死語” になってしまうような未来は見たくないよねぇ・・・

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