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蛇棺葬 / 百蛇堂 怪談作家の語る話 [読書・その他]


蛇棺葬 (講談社文庫)

蛇棺葬 (講談社文庫)

  • 作者: 三津田 信三
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/10/16
  • メディア: 文庫
百蛇堂<怪談作家の語る話> (講談社文庫)

百蛇堂<怪談作家の語る話> (講談社文庫)

  • 作者: 三津田 信三
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/12/13
  • メディア: 文庫
評価:★★★

『蛇棺葬』『百蛇堂』という二巻構成のホラー長編。
あわせて文庫で1000ページ超えという途方もない話。

『蛇棺葬』

奈良県蛇迂(だう)郡它邑(たおう)町。
幼い頃、そこにある旧家・百巳(ひゃくみ)家に引き取られてきた私。
当主である父が、外につくった愛人に産ませた子が私だ。
そこは古くから蛇神を祀る奇妙な風習に満ちあふれた場所だった。
認知症気味の祖母、私を敵視している義母(父の本妻)、
本家に寄生している叔父叔母たち。
”招かれざる客” である私は居場所がない。
使用人の一人、民(たみ)さんだけが私の味方だった。
やがて祖母が亡くなり、百巳家独自の葬儀・”葬送百儀礼” が行われる。
その〆として、父は祖母の遺体と共に
屋敷の離れである<百蛇堂>で一晩過ごすことになる。
しかし翌朝、密室状態の建物の中から父の姿は消えていた。

その後、私は叔父夫婦に引き取られ、無事に成人する。
そして二十数年の時が流れ、私は再び百巳家へ足を踏み入れる。
危篤状態となった義母に逢うためである。
やがて義母はなくなり、その葬儀にあたり、
私はかつての父のように<百蛇堂>で一晩過ごす羽目になる・・・


『百蛇堂 怪奇作家の語る話』

編集者で怪奇作家でもある三津田信三は
龍巳美乃歩(たつみ・みのぶ)という男に引き合わされた。
彼が語る百巳家の怪異の数々に三津田はすっかり魅せられてしまう。

後日、美乃歩がその内容を原稿にしたもの(これが『蛇棺葬』にあたる)が
三津田のもとに送られてくるが、それを読んだ女性編集者が失踪するなど、三津田の周囲の人々に不審な出来事が発生し始める。
その正体をつかむため、京都に住む美乃歩のもとに向かうのだが・・・


この作者には、ミステリ要素がメインの話と、
ホラー要素がメインの話があるが本書は完全に後者。

怪奇と幻想の物語が好きな人にとっては、
本書はたまらまく面白いのだろうとは思うが。

密室からの人間消失とか、いかにも本格ミステリ的な謎があって、
本編の中ではいくつかの合理的な解釈が示される。
それだけで充分、ミステリ長編になるんじゃないかと思うんだが
あくまで本書は怪奇と幻想の物語として進行していく。

密室以外にもいくつもの謎が散りばめらえれていて、
そのうちいくつかは解かれていくのだけど、
あくまで作品内のホラー設定のもとでの謎解きなので、
謎が謎でなくなっても、そこに現れるのは新たな怪奇と恐怖。

謎の解決していく過程がそれなりに面白いので、読めることは読める。
逆にいかにもホラーな場面はもうページをめくるのが辛い辛い。

私は基本的にホラーは苦手なんだけどなんとか読み切れたのは、
そういう ”私でも読める部分” が思いの外多かったからだろうな。

んー、作者がこの手の作品が大好きなのは分かるのだが
やっぱりミステリとして着地する物語を読みたいなあ。

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