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少年探偵 [読書・ミステリ]

([し]4-7)少年探偵 (ポプラ文庫)

([し]4-7)少年探偵 (ポプラ文庫)

  • 作者: 小路 幸也
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2017/05/09
  • メディア: 文庫
評価:★★★

ポプラ社によるオマージュシリーズ第三弾。
第1巻に収められた短編には、ちょっと変化球もあったけど
おおむね、”原典の世界”を尊重していたと思う。

しかし、本書は大変化球だ。それも ”消える魔球” クラス(笑)の。

 この例えが分からない人も多くなっただろうなあ・・・(おいおい)


怪人二十面相、明智小五郎、小林少年、文代夫人・・・
登場してくる単語はみなお馴染みなのだけど、
その設定が根本から変わっているのだ。
リメイクならぬリブート、あるいは
パラレルワールドの話と割り切って読まないと
ちょいと混乱するかも知れない。

中でも一番大きな改変は文代さんだろう。
なにせ明智の妻ではないのだから(゚Д゚)。

何処で出てくるかは読んでのお楽しみで、
彼女の位置づけが本書の物語の根幹をなしてるといってもいいだろう。


<怪人二十面相>が世間を騒がせている中、
12歳の少年・芳雄は東京駅で鉄道自殺を図るが
その寸前、謎の紳士に助けられる。
紳士は芳雄に対し、「死ぬ勇気があるのなら、自分を悩ますものと戦え」
と告げる。さらにこう続ける。
「ならば、私が君を鍛えよう。<裏道の歩き方>を教えよう」
紳士は芳雄に ”小林” という新たな姓を与え、
彼のもとで ”闇の探偵道”(!) の修行を始めることになる。

十数年前、<明智小五郎>と名乗って幾多の事件を解決してきた男は
いまは名無しの男として厭世的な生活をしていた。
しかし、親友の新聞記者・真山に焚き付けられたこともあり、
世間を騒がす<怪人二十面相>を捕らえるべく、
名探偵として再び行動を起こすことを決意する。

実は芳雄は、西四辻(にしよつじ)伯爵家の息子だった。
その姉・麻由美は友人の池子(いけこ)のもとを訪ね、不審な話を聞く。
かつて西四辻家の運転手を務めていた加藤。
彼の息子・修は、麻由美とは年も近く、親しくしていた。
その修が働いている鉄工所が、何やら怪しいものを作り始めたという。

物語は芳雄、明智、麻由美の3つのストーリーラインで進行していく。

上野の美術館からの仏像盗難、銀座を被う殺人スモッグ、
跳梁する怪人・”蛾男”、そして闇夜を走る幽霊列車・・・etc。
壮大なスケールの事件を次々と引き起こす二十面相と、
それを打ち破っていく明智の活躍が描かれる。

3つのラインは最終的に一つにまとまり、
明智、芳雄、文代、そして二十面相の意外な関係が明かされて、
少なからず苦めな結末を迎える。


この手の作品のトリックに、リアリティの面で
野暮なことを言うつもりは無いんだけど、
幽霊列車のトリックだけは正直言って首をかしげてしまう。

最後まで分からなかったのが、芳雄くんを助けた謎の紳士の正体。
いろいろ考えてみたがこれといった答えが思い浮かばない。
もっとも、勘のいい人や、原典に詳しい人からしたら
一目瞭然で簡単なのかも知れない。
もし続編とか書かれるのなら、明かされるのかな。

時代・舞台設定こそ原典を踏襲しているものの
各キャラクターの設定をここまで改変してしまうと、
拒否反応を示す人もいるかも知れないなあ。


そのうち明智も小林くんも二十面相も
女性化した作品なんてのも出てきたりして。

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