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かぜまち美術館の謎便り [読書・ミステリ]

かぜまち美術館の謎便り (新潮文庫nex)

かぜまち美術館の謎便り (新潮文庫nex)

  • 作者: 森 晶麿
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2017/05/27
  • メディア: 文庫
評価:★★★

ゆっくりと過疎が進みつつある香瀬(かぜ)町。

ヒロインの宇野カホリは、叔母が園長を務める保育園で
保育士として働いている。
叔母からは「そろそろ結婚を考えなさい」と言われる28歳だが
18年前に母を、その半年後には兄のヒカリをと家族を続けて亡くし、
それ以来、父・サブローと二人で暮らしてきたカホリは
父を残して嫁いでいくことに抵抗を憶えていた。

そんなとき、隣家に引っ越してきた学芸員の佐久間とその娘・かえで。
保育園でかえでの担任となったカホリは、佐久間とも親しくなっていく。

本書は、香瀬町でカホリが出会ういくつかの事件を、
町の美術館の館長になった佐久間が解き明かしていく連作ミステリだ。

各事件に共通するのは、画家を目指していたヒカリが残した絵が
重要な要素として登場すること。

例えば「第一話 きらわれもの」では、保育園に一通の絵葉書が届く。
差出人は不明で、18年前の8月の消印が押されていた。
そして裏面に描かれた絵はカホリの兄・ヒカリが描いたものだった。

18年前の8月、ヒカリは渓谷で川に落ちた状態で発見された。
死因は心臓発作とされ、事件性は否定された。
しかしその1週間前、一人の郵便局員が失踪していた。
気さくな人柄で "ミツバチ" というあだ名で呼ばれていた彼は
その日の郵便物をすべて持ったまま姿を消してしまったのだ・・・

第二話以降、個々の物語はそれぞれ独立しているのだが、
必ずヒカリの絵が何らかの関わりを持って現れる。

そしてストーリーの進行と共に、佐久間もまた
この町と意外な関係を持つ者だったことも明かされていく。

最終話では、ヒカリの死の真相と "ミツバチ" の行方を含めた、
18年前に起こった一連の"事件"の真相が解き明かされていく。


それぞれの事件の中で、佐久間はヒカリの残した絵を
ピカソやシャガール、ゴッホといった有名画家になぞらえて
その製作意図を解釈していくのだが、
いかんせん私は絵には全くといっていいほど詳しくない。
とは言っても、それでこの作品が楽しめないかといえば
そんなことはないだろう。
詳しい人はよく分かり、詳しくない人はそれなりに、ってことで(笑)。

ミステリとしては最終話で収束するのだが、
登場人物たちの物語はエピローグまで持ち越される。

しかしこの終わり方はなあ。
勝手に思い込んでいたこちらが悪いんだけど。

ベタな終わり方を避けたかったのかもしれないが
ちょっと意地が悪くないですか・・・

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