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化学探偵Mr.キュリー5 [読書・ミステリ]

化学探偵Mr.キュリー5 (中公文庫)

化学探偵Mr.キュリー5 (中公文庫)

  • 作者: 喜多 喜久
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2016/12/21
  • メディア: 文庫
評価:★★★

人呼んで ”Mr.キュリー” こと
四宮大学理学部化学科准教授・沖野春彦と、
大学総務部で働く採用2年目の職員・七瀬舞衣。
このコンビが大学の内外で起こる事件を解決していくシリーズ第5弾。

「第一話 化学探偵と無上の甘味」
〈四宮サイエンスサークル(SSC)〉と〈四宮科学愛好会(四科)〉。
部員減少に悩む二つのサークルは合併することにしたが
どちらが存続団体となるかで揉めていた。
そこで、”科学で勝負” することになった。
それぞれのサークルが人工甘味料を合成する。
より甘みの強い化合物を創り出した方が勝ち、というわけだ。
しかし、理学部の初島准教授が〈SSC〉に肩入れをしているという。
そこで、〈四科〉は沖野に助力を乞うのだが・・・
ラストで勝負を決する物質だけど、これ25年くらい前に
職場の同僚から教えてもらったことのあるヤツだった。
その気になれば誰でも入手できるんだよ、これ。

「第二話 化学探偵と痩躯の代償」
ある日、買い物に出た舞衣は高校時代の同級生・朝香(あさか)に出会う。
学生時代にかなり太っていたのが嘘のように痩せていて驚く舞衣。
今は不動産の事務員をしていて、四宮大学の院生とつきあっているという。
しかし、時折見せる不安そうな表情を見て心配になった舞衣は、
朝香の恋人の院生・山中に会うのだが・・・
ラストで明らかになる朝香のダイエット法はちょっと意外だが、
(最近、TVCMで流れてるアレだね)
どんなことでも度を超せば害になるのは一緒だなあ。
そして、舞衣は高校時代もいい娘だったんだねえ・・・

「第三話 化学探偵と襲い来る者」
教育学部の学生・隅田梨奈が大学からの帰路に
仮面を着けた謎の男に襲われ、ネックレスを奪われるという事件が起こる。
これ以前にも同様の事件が2件起こっており、
総務部が学生たちに注意を呼びかけていたさなかのことだった。
舞衣は、情報を集めるために
里奈の恋人で法学部4年の佐野に会いに行くが・・・
作品内で、大学内の鉄製の手すりに
放射性物質が微量に含まれていたというエピソードが披露されるのだが、
それに対して沖野が「たまにあるんだ、こういう事故は」
なんて言ったので目が点になってしまった。
おいおいおい、いくら人体に影響がないレベルだったからって、
ほんとに「たまにある」ことなのかね?
それってたいへんなことじゃないのかい?

「第四話 化学探偵と未来への対話」
高校生の由良斗真(ゆら・とうま)は、
登校拒否して引き籠もり生活をしている。
心配した母親が相談したのが舞衣の叔母夫婦だったことから、
舞衣もこの件に引っ張り込まれてしまう。
とは言っても、彼女なりにいろいろ画策しても
なかなか効果は無く、結局のところ沖野が出てくるのだが・・・
後半で、道を見失った高校生と沖野の対話が始まる。
その過程で、沖野が有機化学の道へ進んだきっかけも明かされる。
何が原因で、人が外界に対して
心を閉ざすようになるのかは想像するしかない。
たぶん人それぞれにいろんな悩みがあるんだろうなあとは思う。
最近は、引き籠もりの人も高齢化しているなんて話も聞く。
うーん、どうなってしまうのでしょうかね、これからの世の中は。
この短編の中で、斗真くんは一歩踏み出すきっかけを掴むことができるが
現実はそうそう簡単なものではないだろうし。

「第五話 化学探偵と冷暗の密室」
大学内の節電対策のため、設備の点検を命じられた舞衣。
理学部の冷蔵室がかなり電力消費をしているとのことで、
沖野と共に中に入った舞衣だったが、
出入り口のドアが老朽化していて壊れてしまい、
中から開けることができなくなってしまう。
閉じ込められてしまった二人はなんとか脱出しようと策を巡らすが
ことごとくうまくいかない。
その間にも冷気で体温を奪われ、凍死の危機が。
さらに舞衣を、ある ”生理現象” が襲う。
まさに ”乙女のピンチ”(死語かな笑)だ・・・
いわゆる ”吊り橋効果” なエピソードなので、
二人の仲が一歩進んだようにも思われる。
お互いに好意を抱いているのを改めて自覚したようだし。
さて、次巻以降の展開はどうなるのでしょうかね?

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