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せつないいきもの 牧場智久の雑役 [読書・ミステリ]

せつないいきもの: 牧場智久の雑役 (光文社文庫)

せつないいきもの: 牧場智久の雑役 (光文社文庫)

  • 作者: 竹本 健治
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2017/08/08
  • メディア: 文庫
評価:★★★

天才囲碁棋士・牧場智久と彼の恋人で
明峰寺学園高校2年生、剣道部でエースを張る武藤類子の
コンビが活躍するシリーズの短編集。
とは言っても、作中に智久自身はほとんど登場せず、
専ら携帯電話(スマホ)で登場。
類子から聞かされた事件のあらましから
真相を推理するという、ほとんど安楽椅子探偵。


「青い鳥、小鳥」
類子の同級生の如月拓也の特技は読唇術(おいおい)。
ある日、彼は電車の中で2人の女性の会話を読み取ったが
それは、何者かを監禁しようという犯罪計画だった。
ファミレスで拓也からその話を聞いていた類子たちは、
たまたまその二人組を発見し(おいおい)、尾行を開始した。
二人組は10階建てマンションに入る。続けて中に入った類子たちは
エレベーターの動きから二人の部屋を突き止めようとするが・・・
このとき、2台あったエレベーターがそれぞれ複雑に動いていたんだが
智久がこの動きを解析してみせるのが一種の暗号解読みたいで面白い。
最終的には智久の推理で事件の意外な全貌が明らかになるのだけど
さすがに凶悪事件はそう簡単にそこら辺には転がってないってことか。
「名探偵コナン」じゃないけど、探偵役の周囲にいる人々が
かなりの頻度で事件に巻き込まれることにツッコんじゃいけないのだね。

「せつないいきもの」
人気ミュージシャン・速水果月に誘われて
「ホイミン倶楽部」という集会に参加した類子。
20代から30代くらいの、マスコミや出版、ゲーム、
ネット企業などで働く人たちが所属している。
そのメンバーの一人、ゲーム脚本家のさゆきがビルの屋上から転落死する。
周囲の状況から自殺と思われたが、
智久はその死の裏にあった意外な理由を明らかにしていく。
出てくる人々の職業が、私からしたら馴染みのないものばかり。
そのせいか、今ひとつ物語にのめり込めなかったなあ・・・

「蜜を、さもなくば死を」
明峰寺学園の古ぼけた木造の物置小屋が何者かに爆破される。
犯人不明のまま時は過ぎ、類子は果月とともに
”ミステリ・ナイト” というイベントに参加する。
主催者からは携帯電話とベルトが渡され、
ベルトはチームの中の一人が身につけることになっており、
今回は果月が装着した。
携帯メールで手がかりが示され、参加チームごとに
謎を解いて真相を推理させるという形式で進行するのだが、
開始早々、類子が持つ携帯に不審な男から連絡が入る。
果月が着けているベルトには爆弾が仕込まれている。
遠隔操作で爆発させることができる。外そうとすると即座に爆発する、と。
相手の男は、明峰寺学園の物置小屋を爆破したのも自分だと語り、
送りつけた問題の謎解きを強要する。
類子は智久に連絡を取り、彼からアドバイスを得ながら
ゲームに参加するが・・・
こちらは明らかに暗号解読ものなんだけど、謎の半分は
東京圏に住んでいる人だったら案外解き易いんじゃないかなあ。
私だってすぐに分かったよ。だって地図を見ればイッパツなんだもん。
爆弾魔という凶悪事件なんだが、明らかにされる動機は極めて些細なもの。
まあ犯人からしたら重大事なのだろうが。

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