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砂星からの訪問者(フィーリアン) [読書・SF]

砂星からの訪問者 (朝日文庫)

砂星からの訪問者 (朝日文庫)

  • 作者: 小川一水
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2015/08/07
  • メディア: 文庫
評価:★★★

異星系の探査を行う艦隊の従軍カメラマン、
石塚旅人(イシヅカ・タビト)を主役とするシリーズ、第2作。


本書は第1作のラストからそのまま始まる。

前作の舞台となったカラスウリ星系で、2種族の異星人と
ファーストコンタクトを果たした第五ダーウィン艦体。
太陽系に次ぐ人類の拠点である沖ノ鳥島星系まで帰還してきたが
艦隊付きカメラマンのタビトは、単独行動によって
艦隊を危険に晒したとして収監されてしまう。

しかしその沖ノ鳥島星系に突如異星人の宇宙船が現れ、
人類側の船舶に攻撃を仕掛けてきた。
釈放されたタビトは迎撃部隊に随行して現地に向かう。
白兵戦のさなか、異星人の宇宙船に入り込んだタビトは
そのまま相手の大型船へと連れ去られてしまう。

タイトルの ”フィーリアン” とは、今回登場した異星人に対して
地球人が設定した呼称である。

大型船の内部は、草原を模した広大な人工居住空間となっており、
フィーリアン(猫が進化したような外見をもつ)たちによる、
弱肉強食の原始的な闘争社会が営まれていた。

彼らには全体を統治する者がおらず、超光速航行を可能にする
技術力に見合うような文明を持っている様子もない。
ならば彼らは何者なのか?

彼らの上に、高度な知性を持つ存在がいるとしか思えないのだが、
その正体をつかむことができない。

たまたま出会った一人(?)のフィーリアンと
意思の疎通に成功したタビトは、本格的な戦争に発展するのを防ぐべく、
異星人社会の秘密を探っていくのだが・・・


終盤で明らかになるのは、遙かな過去に
フィーリアンたちを襲った悲劇と、それによって
彼らが種族として選んだある行動。
フィーリアン社会の謎もそれによって説明されていく。

この手のSFで大事なのは、魅力的な異星人の創造だと思うのだが、
本作のフィーリアンは充分に面白い存在だと思う。

終盤では前作の異星人が再登場してくる。
それなりの必然性があって出てくるのだけど、これは諸刃の剣かなあ。
前作を読んでいるかいないかで本書の面白さに差が出てしまいそう。
でも、シリーズものを第2巻から読み始める人もそんなに多くないかな。

シリーズと言えば、前巻は新書版のノベルスサイズだったんだけど
本書ははじめから文庫書き下ろし。
思えば一時期、ノベルスはたくさん種類があったけど
いまは講談社と光文社くらいかなあ。
昔と比べてレーベル数が激減しているように思う。

出版界の不況はこんな形でも現れてきてるんだね。

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