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ペンギンを愛した容疑者 警視庁いきもの係 [読書・ミステリ]

ペンギンを愛した容疑者 警視庁いきもの係 (講談社文庫)

ペンギンを愛した容疑者 警視庁いきもの係 (講談社文庫)

  • 作者: 大倉 崇裕
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/06/15
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

警視庁総務部総務課動植物管理係。
要するに犯行現場に残された動植物の世話をする係なのだが
そこに所属する薄圭子巡査は、獣医学部を首席で卒業、
生物分野については博識を誇る逸材だが、常識にはいささか欠ける。
そんな彼女が、元捜査一課の須藤警部補と組んで
動物がらみの事件に挑む、〈警視庁いきもの係シリーズ〉第3弾。


「ペンギンを愛した容疑者」
食品グループ会長・藤原慶二郎が殺される。
彼が飼育していたペンギン部屋の中に設えられた池に浮かんでいたのだ。
死因は殴打された後の溺死と思われた。
容疑者は妻の亜紀子、秘書の久慈達夫、亜紀子の兄の青木益男。
この中でも、ペンギン愛にあふれた久慈くんがいいキャラしてる。
中盤で、同じ作者の『問題物件』シリーズのヒロイン・若宮恵美子さんが
ゲスト出演してるのだが、単なるファンサービスではなくて
彼女によって犯行動機が明らかになるのでかなり重要な枠回り。

「ヤギを愛した容疑者」
小学校の教頭・三好が殺され、容疑は
現場に倒れていた男・津浜にかかるが、彼は意識不明の状態にあった。
三好は赴任してから、それまで行われていた
児童とヤギの触れあい教育の中止を決定し、
ヤギの飼い主である津浜と軋轢を生じていた。
タイトル通り、津浜がヤギ好きだったことがきっかけで
事件の様相が大転回、意外な動機と意外な真犯人に至る流れは鮮やか。

「サルを愛した容疑者」
圭子の知人・五反田徹也が逮捕される。彼が暮らすマンションで、
恋人の車島名子(くるましま・めいこ)の死体が発見されたのだ。
現場を訪れた薄と須藤は、飼われているリスザルを発見する。
名子の死はサルによる事故死の可能性も疑われた。
そのマンションは、心臓病の治療のためアメリカに滞在中の
哲也の叔父・五反田成昭のもので、彼の飼っているリスザルの
世話をする条件で徹也は住まわせてもらっていたのだ。
圭子の推理でリスザルの容疑は晴れるが
(さすがに「猿が殺しました」なんてねえ。180年前ならともかく)
一方、圭子に南極での温暖化調査チームへの参加オファーが
来ていることを知り、心穏やかでない須藤。
いつのまにか圭子とのチームに生きがいを見いだしていたようで。

「最も賢い鳥」
マンションの一室で住人・梶田が撲殺死体で発見される。
現場に向かった圭子と須藤は、一羽のヨウムを発見する。
ちなみにヨウムとはインコの仲間で
”最も賢い鳥” と言われ、4歳児ほどの知能があるという。
もちろん、人間の言葉を覚えて話すこともできる。
ヨウムの元の持ち主・伊勢が容疑者として浮上するが
圭子の推理から真犯人が別にいることが判明する。
ラストシーンにちょっとじんわり。いやあ、この鳥は千両役者だ。
どんな名優も「子どもと動物には勝てない」っていうが、本当だね。

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