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ロボット・イン・ザ・ガーデン [読書・SF]

ロボット・イン・ザ・ガーデン (小学館文庫)

ロボット・イン・ザ・ガーデン (小学館文庫)

  • 作者: デボラ インストール
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2016/06/07
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

物語は近未来のイギリスから始まる。
AIが発達して、アンドロイドやロボットが
家庭や職場で普通に見られるようになった時代。

主人公のベンは亡くなった両親から相続した家と財産で
だらだらと暮らしていた。
獣医になるために入った大学も休学してしまい、
半ば引き籠もり状態のニートみたいな34歳。

ちょっと前まではこんなぐうたらではなく、ちゃんと結婚もしてる。
妻のエイミーは法廷弁護士としてバリバリ働いており、
当然ながらベンの現状には不満たらたらである。

そんなある日、ベンは庭先に迷いこんだ一体のロボットを発見する。
いかにもあり合わせの部品を集めて作ったような粗末な外見で
今にも壊れそうである(表紙のイラストにあるとおり)。
自らを「タング」と名乗るが、どこから来たのかは答えない。

タングに対して興味を覚えた(親近感を憶えた?のかも知れない)
ベンは ”彼” の世話にかかり切りになってしまい、
エイミーはとうとう愛想を尽かして家を出て行ってしまう。

 ちなみに、タングには自分が ”男の子” だという認識があるようだ。

タングの胴体の中には、謎のシリンダーに入った謎の液体があって、
量が少しずつ減っているようだ。
タングは、液体がなくなってしまったら止まってしまうと言う。
(そもそも動力源が何かも分からないんだけど)

タングの胴体に貼ってある金属板に書かれていた文字を手がかりに、
ベンはタングの製作者を探す旅に出るが、
それはアメリカ合衆国を横断し、そして日本へ、さらには
南太平洋の島国へと、地球を半周するような大がかりなものだった・・・


タング自身は2~3歳児レベルの知能をもつが
まさに子どものように様々なものに触れてどんどん学習していき、
ついでにいろんな騒ぎを巻き起こしていく(笑)。

一方、ベンのほうは今まで漫然と過ごしてきた日常が一変し、
何から何まで自分でやらなくてはならなくなる。
飛行機やレンタカーなどの交通手段から宿の手配、
そしてあちこち訪ね廻ってタングの製作者を探さなければならない。
さらに、タングの引き起こした騒ぎの後始末まで・・・
タングと共にてんてこ舞いな旅を続けるベンの姿が延々と綴られていく。

読み始めてすぐに予想がつくけれど、これは、
タングとの間の ”疑似親子関係” を通じたベンの ”父親修行” の物語だ。

ベンは現在の境遇に安住している自分が、
そもそもまともではないとの自覚は持っていたが
そこから一歩踏み出せないでいた。自分に自信が無かったからだ。
だからエイミーが子どもをほしがっても、決断できないでいた。
(これも彼女との仲が破綻した一因)

しかし、タングと共に旅を続けるうちに、
タングの保護者としての自覚と行動を身につけて、
ベンはだんだんと ”父親” らしく振る舞えるようになっていく。

 子どもを持った人なら分かると思うが「子育ては自分育て」。
 はじめから立派な親はいない。
 子どもを育てながら、自分も親になっていくものだ。

後半に入ると、タングの ”生みの親” との対面や、
エイミーとの関係修復という懸案への対処を迫られる。
成長したベンの決断と行動が読みどころだろう。


作中には、ロボットを人間の欲望の道具として扱う
エピソードもあるけれど、総体的にSF的雰囲気は薄いかな。
アシモフのロボットものみたいな作品を期待するとあてが外れるが
”親子” の情愛物語としてみれば、ベタな展開だけど手堅く読ませる。

 ハリウッドあたりが映画化してもおかしくない作品だと思う。
 いいファミリー映画になるんじゃないかな。

そして、いつの間にか本書には続編が出てた。
タイトルは「ロボット・イン・ザ・ハウス」。

実は今、読んでる最中なのでそのうち記事をupする予定。

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