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小説版「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち Ⅱ 《殺戮帝国》」 [アニメーション]


新年第一弾の記事は、やっぱりこれですかね。


小説 宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち (2)

小説 宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち (2)

  • 作者: 皆川 ゆか
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/12/26
  • メディア: コミック

同名のアニメーション作品のノベライズ、第2巻である。
堂々の500ページという厚さは前巻と同じで、"読みで" はたっぷり。

収録内容は アニメ6話~9話+10話の一部 である。
6・7話は第十一番惑星の攻防と波動砲の使用を巡るエピソード、
8・9話は惑星シュトラバーゼにおける、古代vsズォーダーの対決、
そして10話のうち、ガトランティス側のエピソード。

 2巻で9話分ということは、全26話は全6巻構成になりそう?

前巻では、起こったイベントを
時系列的に入れ替えて記述している部分が多かったが
本書にはそういうところはほとんどなく(全くないわけではないが)
ほぼアニメの流れに沿った展開である。

本編を見ていると、尺の都合や演出の問題で、
ややもすると舌足らずとも思える部分が多かったが
上記のようにこちらは500ページというボリュームがある。
本編で描かれなかった細部や、触れられなかった設定等が
ふんだんに盛り込まれている、と言える。

例えば、ファンをやきもきさせた6話のラストだが、
本書ではその前後の経緯がしっかり書き込まれているので
すんなりと7話冒頭のヤマトの置かれた状態へとつながる。

惑星シュトラバーゼの設定もかなり詳述されている。
古代アケーリアス人がなんらかの "実験" を行っていたと思われること。
その特異な形状や内部構造、そして質量に関する設定。
地表をマグマが覆っているにも関わらず気温が低い理由。
惑星間弾道弾によって引き起こされた "惑星の崩壊" が
どういうものであったのか、とか。

アニメ版9話では、古代とズォーダーの対決とヤマトの戦闘シーンが
交互に細かく切り替えて描かれたが、小説ではかなりまとめられている。
小説としてはその方が読みやすいだろう。
このあたりは映像と活字の表現方法の違いからくるのだろう。

そして、この第2巻のクライマックスはやはり "悪魔の選択" だ。
このあたりアニメ版では、過去の記事にも書いたけど
ズォーダーと古代と雪に絞って他の描写は削りに削っている。
ノベライズ版では、その削られてしまった部分について
かなり補完されていると言っていいだろう。

本編だけを見ていたときには、「たぶん、こういうことなんだろう」って
推測するしかなかったことも、(完全ではないが)説明が与えられる。


さらに、映像に描かれた部分以外の情報が
追加の文字情報として得られるのもノベライズの醍醐味だろう。

まず挙げられるのは、シュトラバーゼにおける
土方の活躍の描写が厚くなっていることか。
真田からの指揮権移譲もきちんと描かれるし、
その後の戦闘指揮も、さすがに古参の武将はひと味違うと思わせる。
土方ファンなら必読だろう。

避難民がガミラス艦に移乗するシーンで、
桂木透子がイリィを抱きしめたときに感じた "感覚" が
どんなものであったのかも、映像よりも一歩踏み込んで描かれてる。
ガトランティスの設定のみならず、
サーベラーの過去そのものがさらに気になってくる。

「2199」や「星巡る方舟」の内容にも触れているのも嬉しいところ。
空間騎兵隊前隊長の桐生悟郎の死をその娘・美影が知った経緯、
そして未だ本編で描かれていない美影と斉藤始との関係なども。

驚いたのは、ズォーダーと古代の対決シーン。
アニメ版にはない台詞がある。
第9話を観ていて、「さらば」のラストを連想した人は
少なからずいたと思うが、ノベライズではそこがさらに強調されている。

この台詞、もとの脚本にはあったがアニメ化時点で削除されたのか、
はじめから無くて、ノベライズ時に追加されたのかは分からないが。
どちらにせよ、この部分を読むと「2202」のラストが
「さらば」をそのままなぞるようにはならない可能性が
かなり高まったように思うのだがどうだろう。
もっとも、古代と雪の運命までは分からないが(^^;)。


さて、アニメ本編ではこのあと、
古代は100式のコクピットから雪に呼びかける。
そして、それに応えた雪がどう行動したかは
この本を読むような方なら先刻ご承知だろう。
このあたりはアニメの展開通りだ。

映画館で観ていたときも、私は古代が呼びかけるシーンで
涙腺が崩壊してしまったが、ノベライズでも同じことが起こった。

古代が、愛する人へ呼びかける。
それは告白であり、謝罪であり、覚悟であり、そして願いだ。
私は活字を追いながら、再び涙があふれるのを止められなかった。


さて、そうはいっても物語は未だ道半ばである。
リメイクにはつきものとは言え、「2202」に対しても賛否両論がある。

私にしても、今までのところは肯定的に評価しているが
最終章の最終話までたどり着いたときにも、そう思えるかどうかは
未だ予断を許さない。

過度の楽観はしないが、かといって過度の悲観もせず、
淡々と次章を、そして次巻を待とうと思う。


最後に、どうでもいいことをちょっと書いて終わる。

このノベライズの中で、古代はズォーダーに対してこんな独白をしている。
シュトラバーゼの遺跡を脱出して雪の乗るガミラス艦に向かう途中でだ。
「これは貴様のゲームだ。 ・・・(中略)・・・
 何を選んでも、貴様の勝ちだ。そうなるように、貴様は決めている」

ここを読んで、私は遙か昔に書いた自分の記事を想い出したよ。
「ヤマト2199」に関する駄文雑文集(3) ~「さらば」私的考察~ 
の中で、私は「さらば」のストーリーについてこんなことを書いている。

 確かにみんな普通の男たちだった。
 普通であるが故に、何をどうがんばっても
 事態を逆転させることはできなかった。
 そういうふうにストーリーができているのだから。

"何をどうやっても勝てない" という状況を設定している、という点では
「さらば」のラストと「2202」第9話は同じなのだなあ、と。

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