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宇宙探偵ノーグレイ [読書・SF]


宇宙探偵ノーグレイ (河出文庫)

宇宙探偵ノーグレイ (河出文庫)

  • 作者: 田中 啓文
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2017/11/07
  • メディア: 文庫
評価:★★☆

 

タイトル通り、様々な惑星で起こる事件を解決する
宇宙探偵ノーグレイの活躍を描く連作短編である。
SFミステリというよりはドタバタコメディに近い。
まあ、作者が作者だけにねぇ・・・


「怪獣惑星キンゴジ」
シャリドマン恒星系第四惑星キンゴジ。
巨大な土着生物(=怪獣)が跋扈するこの世界は、
ジュラシック・パークのように怪獣を観光資源として活用していた。
その「怪獣ランド」で謎の事件が起こる。
そこで飼われている最大生物であるガッドジラのうちの一頭が、
飼育棟の中で首を切断されて殺されていたのだ。
実は殺されたガッドジラには、ある秘密があった。
依頼のために赴いてきたノーグレイは、
捜査のためにとんでもない羽目に・・・
殺人ならぬ殺 "怪獣" 事件。犯人ならぬ犯 "怪獣" を見つけるために
ノーグレイは奮闘する。まあそれはいいんだが
他の怪獣の名前がアギンスラとかマダンとかってのは如何なものか。
ちなみに特撮界で「キンゴジ」といえば、
映画「キングコング対ゴジラ」(1962年)のこと。
キングギドラではないので念のタメ。

「天国惑星パライソ」
惑星パライソにある宗教国家ヘブン。
ここへ移住する者は財産をすべてお布施として寄付する。
さらに脳内に「リング」と呼ばれる装置を埋め込まれ、
これが "十戒" を強制的に守らせるのだという。
さらにこの星には天使にそっくりの土着生物までが飛び回っていた・・・
しかし、犯罪の存在しないこの世界で
続けて3人の人間が殺されてしまう。
ノーグレイはこの世界の意外な秘密を解き明かす。

「輪廻惑星テンショウ」
この惑星テンショウの地表では心霊現象が多発し、
人間がロケットで惑星を離れようとするとなぜか死んでしまう。
植民した人間がこの星の土着生物から知らされたのは、
この星では死んだ人間の "魂" が新生児に転生するということ。
どうやらこの星の持つ特殊な引力圏が、
ここを一種の "あの世" にしているらしい。
ノーグレイは、この星の国家主席に霊的攻撃を仕掛けてくるのは
誰の魂なのかを突き止めることになったのだが・・・

「芝居惑星エンゲッキ」
シキラヅカ星系の惑星エンゲッキは、星一つがまるごと劇場と化していた。
4歳以上の国民はすべて "演劇省" から配布される
脚本どおりに演技しなければならないのだ。
一日かけて脚本を覚え、"稽古場" で演出担当者から指導を受け、
翌日は一日中 "本番" を演じるのだ。
しかも町中には監視カメラを搭載したドローンが跳んでおり、
アドリブは許されない。
しかし、その演劇省脚本統括部の職員が殺されるという事件が起こる。
ノーグレイもまた、捜査にあたって脚本を渡されるが、
もちろんそんなことでは犯人は見つけられない・・・


実はここまでの4編では、ラストで共通してある "出来事" が起こる。
それは何故なのか、どうしてそんなことが可能なのか、
読者は訝しむと思うのだが、
その理由は最終話「猿の惑星チキュウ」で明かされる。


惑星の設定を考えて、事件の内容を考えて、いちおう(笑)ミステリなので
特殊な状況下でのみ成り立つ論理を考えて・・・と、
考えてみるとけっこうな手間である。
かなり割の合わないことなんだけど、これがこの作者の作風なんだよね。

そんな労力を傾けた割に、本書に感動したり感心したりする人は少なそう。
それどころか、あまりの荒唐無稽さに怒り出すような人がいそう、
でもまあ、そういう人はそもそもこの作者の本を手に取らないだろう(笑)。

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