SSブログ

オーリエラントの魔道師たち [読書・ファンタジー]


オーリエラントの魔道師たち (創元推理文庫)

オーリエラントの魔道師たち (創元推理文庫)

  • 作者: 乾石 智子
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2016/06/22
  • メディア: 文庫
評価:★★★

作者は2011年にファンタジー作家としてデビュー、
"オーリエラント" と呼ばれる異世界を舞台にして
作品を発表し続けている。
そのほとんどが長編だったのだけど、初の短編集となるのが本書。

「陶工魔道師」
陶工師ヴィクトゥルスは、魔法を込めた焼き物を作る。
望みを叶えることも、人をおとしめることも・・・
彼のもとを訪れた貴族タモルスは、
立身出世を実現する焼き物を所望するが
まずは "焼き物による魔法" を証明してみせよ、と命じる。
因果応報、って言葉を感じるラスト。

「闇を抱く」
酒に溺れて家族を顧みない父に代わり、働くことを決意したオルシア。
フェデルの町へやってきた彼女は、名家の奥方・ロタヤから紹介され
機織工房を営むリアンカのもとで働き始める。
父親が連れ戻しにくることを心配するオルシアに
リアンカは紐を使った不思議な "お呪(まじな)い" を教えるのだった。
日用品と人体の一部を用いた魔法 "アルアンテス" も面白いが
男に虐げられた女たちの巡らす "裏のネットワーク" も興味深い。
"秘密結社" というほどのものではないが、
女性たちが密かに手を組んでいるというのは
男からするとなかなか脅威ではあるかな(笑)。
ちょっと「デューン」(F・ハーバート)を思いだしたりして。

「黒蓮華(こくれんか)」
コンスル帝国の兵士に村を焼き払われ、家族を失った少年は
長じて人や動物の死体を用いた魔法 "プアダン" を身につけた。
ベイルスの町の役人・アブリウス。
ある日、彼は自分の机の引き出しの中に
ネズミの目玉が放り込まれていることに気づく。
それはプアダン魔道師となった "彼" による復讐の始まりだった。
後半はちょっとミステリタッチかな。
復讐の物語なんだが、読後感は悪くない。

「魔道写本師」
本と文字を用いて行う "ギデスティン魔法" を身につけた
写本師・イスルイールは、港町ナーナで
二十数年ぶりに弟・ヨウデウスと再会する。
しかしその夜、イスルイールの家は
水の魔道師・ハインによって襲撃を受けてしまう。
後半には二人の魔道師の戦いや幻想的なシーンも織り込まれ
これぞファンタジー、という物語が展開する。


陶器、日用品、死体、書物など
作者の描く魔法には様々なバリエーションがあって
1作ごとに新しい "技" を見せてくれる。
杖1本で実現する魔法もそれはそれで楽しいが
こういうものもなかなか面白い。

nice!(2)  コメント(2) 
共通テーマ: