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自薦 THE どんでん返し2 [読書・ミステリ]


自薦 THE どんでん返し2 (双葉文庫)

自薦 THE どんでん返し2 (双葉文庫)

  • 作者: 乾 くるみ
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2017/01/12
  • メディア: 文庫
評価:★★☆

同趣旨のアンソロジー集の第2弾。前回も思ったけど、
「どんでん返しがある」って前提で読まれることって
作家さんにとってはとんでもないハンデの様な気がするんだよね。
そんなふうに銘打ってしまったら、読者の側の抱く期待を
超えたものを示さないといけなくなってしまうわけだから。

とはいうものの「自薦」っていうくらいだから
それなりに作者としては自信のある作品を収めてるのだろう。
それがその通りかどうかは読者が判断することなのだけども。


「同級生」乾くるみ
ミリオンセラー作家となった高校時代の同級生。
彼のマンションに集まったのは主人公の夏海(なつみ)を含む同窓生5人。
酒を酌み交わしながら彼女は高校時代を回想するが・・・
うーん、意外なオチではあるがミステリではないなあ。

「絵本の神様」大崎梢
出版社の新人営業・智紀は、前任者からの引き継ぎで
東北にあるユキムラ書店を訪れるが、1ヶ月前に廃業してしまっていた。
しかし近所の住人から、智紀の訪れる1日前に
店のシャッターの前に一人の男が佇んでいたことを聴く。
そして駅前の書店に営業に向かった智紀は、そこで
ユキムラ書店の看板の絵とそっくりに描かれたイラストを目にする。
短編集で既読。日常の謎系ミステリなんだけど、
ミステリと言うよりは本にまつわるちょっといい話という趣。
街角の零細書店は何処も厳しいみたいで、どんどん店数が減っている。
寂しいことだけどこれも時代なのかなあ。

「掌の中の小鳥」加納朋子
雑踏の中で、大学時代の先輩・佐々木に出会った "僕"。
実は "僕" はこの1ヶ月の間、佐々木の妻・容子から
三回、留守番電話に伝言を残されていた。
佐々木と語りながら、大学時代の
ある不思議な出来事を思い出す "僕" だが・・・
この作品は二部構成になっていて、後半はまた別の物語が綴られていく。
形式的には二つの短編が並べられた造りになっているのだけど
前半と後半では登場人物にも重複はないし、
全くといっていいほど別の話である。
それぞれ独立していても、良く出来た話だと思うんだけどね。

「降霊会」近藤史恵
家庭の事情で学園祭前の一週間、高校を欠席していた南田。
学園祭当日に登校した南田は、幼なじみの砂美(すなみ)が
"死んでしまったペットの降霊会" なるものを開くことを知る。
それに参加した南田は、降霊会に不審なものを感じるが・・・
本書の "どんでん返し" の趣旨にいちばん合っている作品かな。
降霊会の "謎解き" が終わったあと、さらにもうひとひねり。

「勝負」坂木司
乗り合いバスに乗ったことのある人なら身に覚えがあるだろう。
次のバス停で降りるとき、
「降車ボタン」を押すべきか、押さなくてもいいものか。
自分が押さなくても、誰か押すだろう、
いやいやもし次のバス停で降りるのが自分しかいなかったら
押さないと降り損ねてしまうぞ・・・
そんな葛藤を感じたことはないか?
作家さんというのは、ほんとにいろんなところから
ネタを拾ってくるんだなあと思うよ。
そこからこんなショートストーリー(文庫でわずか12ページ)を
ひねり出すんだから、作家さんというのはたいしたもの。
ちなみに本作はSFでもミステリでもホラーでもない。

「忘れじの信州味噌ピッツァ事件」若竹七海
主人公は長野県警から警視庁へ出向中の刑事・御子柴(みこしば)。
調布市内で一人の男が保護される。
頭に殴打傷があって記憶を失っていたが、所持していたキーホルダーが
長野県駒ヶ根市の特産品<信州味噌ピッツァ>であったことから
地元のペンション経営者・藤田肇であることが判明する。
しかし入院中の藤田の元へ現れた女は、
この男は自分の夫・亀田勝だと言い出す。
どうやら藤田/亀田は、長野と新宿で
二人の妻を持つ二重生活をしていたらしいが
彼にはさらなる裏の顔もあったらしいことがわかり・・・
話が進むにつれて、記憶喪失の男の正体が
どんどん分からなくなっていくというコメディタッチな作品。
これはどんでん返しというよりは
意外性のインフレーションとでも言ったらいいか・・・
本書の中ではいちばんミステリっぽいつくり。


「どんでん返し」というほどインパクトがあるかというと
ちょっと疑問だが、意外な真相とか意外な結末、
という点では収録作はみなクリアしてるかな。

でも、思う。
つくづく第1集冒頭の「再生」(綾辻行人)は凄かったなあと。
アレを超える作品というのは、なかなか難しいかも。

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