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Life 人生、すなわち謎 ミステリー傑作選 [読書・ミステリ]


Life 人生、すなわち謎 ミステリー傑作選 (講談社文庫)

Life 人生、すなわち謎 ミステリー傑作選 (講談社文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/04/14
  • メディア: 文庫
2013年に発表された短編ミステリから選ばれた10編を収録した
ベスト・アンソロジーの一冊目。
本書には10編のうち、半分の5編が収録されている。


「彗星さんたち」伊坂幸太郎
主人公の二村はシングルマザー。
東京駅で新幹線の車両清掃員として働き始めた。
主任の鶴田は50代の女性だが、二村を厳しくも温かく指導する。
その鶴田が倒れて意識不明となった日、
二村たちは新幹線の車内で不思議な光景を目撃する。
うーん、これってミステリなのかなあ。
予備知識無しに読めば「いい話だな」で済むんだが
年間ベスト盤のミステリ・アンソロジーに入ってるってことは
読む方も "そういう期待" をするわけで・・・

「暁光」今野敏
機動捜査隊員の "俺" は、定年間近の刑事・縞長(しまなが)と
コンビを組んでいる。縞長の特技は人相を覚えること。
雑踏の中から指名手配犯を見つけ出すこともお手のもの。
しかしその縞長が、家宅捜査の最中に被疑者を取り逃がしてしまう・・・
ベテラン刑事の強かさを垣間見せるラストは鮮やか。

「墓石の呼ぶ声」翔田寛
雨宮勇吉は、石大工の棟梁だった祖父の一人娘と、
そこに婿に入った住み込みの石工の間に生まれた。
この縁組は祖父の意向による強引なもので、
勇吉が8歳になったときに母は梅次郎という愛人とともに出奔してしまう。
その1年後、父は勇吉を連れて墓地へ行き、ある墓石を見せる。
それは死んだ梅次郎のために母が建てた墓だった・・・
老境に至った勇吉が大正時代の幼少期を回想するかたちで語られる。
本書の中でいちばんミステリらしい作品。

「コーチ人事」本城雅人
プロ野球はストーブリーグの次期を迎え、
来季の監督・コーチ人事が話題になる頃。
スポーツ新聞のプロ野球担当記者・江田島は
人気球団・東都ジェッツの新ヘッドコーチ人事の情報をつかむべく、
過去にジェッツでコーチをしていた三塚に密着していた。
彼は新ヘッドコーチとして起用される大本命と見られていたのだ。
特ダネを巡る他社との駆け引き、同じ社内における記者同士の確執など
業界内幕小説としては面白いけど、
これがミステリだと言われるとちょっと首を傾げてしまうなあ。

「五度目の春のヒヨコ」水生大海
朝倉雛子は26歳。社会人となって五度目の春を
社会保険労務士として迎え、小さな社労士事務所で働いている。
クライアントとなった会社に出向いて
事務仕事に励んでいる最中に、日置真子という女性が現れ、
「この会社から不当解雇を受けた」とまくし立てるのだった・・・
これも確かに謎解き要素はあるし、予備知識なしで読めば
"お仕事小説" としてはたいへん面白いのだけどね。
まあ、日常の謎系ミステリと言えなくもないかな。


本書の収録の5作はどれも小説としては面白いと思うが
「ミステリー傑作選」と銘打つのであれば、
やっぱりミステリ度の高めの作品が読みたいと思ってしまう。

私基準ではいちばん良かったのは「墓石-」、次点は「暁光」。
「彗星-」「コーチ-」は私の好みからはかなり外れているなあ。

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