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群青のタンデム [読書・ミステリ]


群青のタンデム (ハルキ文庫)

群青のタンデム (ハルキ文庫)

  • 作者: 長岡 弘樹
  • 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
  • 発売日: 2016/07/01
  • メディア: 文庫
評価:★★☆

wikiによると、タンデム(英語: tandem)というのは
本来は直列二頭立の馬車(前後に二頭の馬を並べる)のこと。
転じて、オートバイや自転車などの二人乗りの意味になったという。

本書における "タンデム" とは、
「同格の二人組」という意味だと私は解釈してる。
つまり同格の主人公が二人いるということなのだろう。


戸柏耕史(とがし・こうじ)と陶山史香(すやま・ふみか)。
警察学校で同期だった二人は、成績も同点一位。
交番勤務に配属されてからも手柄争いを続けることになる。

やがて二人は昇進を重ね、警察学校の教官となったり、
人事交流として海外の警察へ派遣されたりと様々な経験を積んでいく。
この二人の警察官人生を描いた "半生記" が
連作ミステリの形で綴られていくのが本書だ。

ライバルとはいっても、いわゆる "ケンカするほど仲がいい" を
地で行くような関係で、仕事を離れれば "腐れ縁の旧友" のような状態。
このままいけば、そのうち恋愛関係に発展しても
おかしくなさそうな雰囲気もあるのだが・・・

読者はまず「この二人、先行きはどうなるのだろう?」って
ところに興味を持つだろうが、これは読んでのお楽しみだ。

本書には、もう一人重要キャラがいる。
第一話「声色」で、継父から虐待される少女として登場する新条薫。
彼女は耕史と史香の背中を追うように、
第四話「同房」では耕史が教官を務める警察学校の生徒となり、
第五話「投薬」では若手婦人警官として登場する。
彼女の成長ぶりは、いやおうなく物語中の時の流れを感じさせる。
本書はこの三人の物語といってもいいだろう。


全8話からなる連作で、作中で過ぎゆく時間はけっこう半端ないのだが
その辺を書いちゃうと読者の興を削ぐかと思うので・・・。

最終話のあとに用意されたエピローグで、
耕史と史香が抱えてきた "秘密" が明らかになる。
いやあこれはけっこう衝撃的。
思わず前の方のページに戻って該当部分を読み直してしまったよ。

ミステリとしては切れ味鋭い出来なんだろうけど
終盤で薫の辿る運命も含めて、この物語が迎えるラストは切ない。

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