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バチカン奇跡調査官 二十七頭の象 [読書・ミステリ]


バチカン奇跡調査官 二十七頭の象 (角川ホラー文庫)

バチカン奇跡調査官 二十七頭の象 (角川ホラー文庫)

  • 作者: 藤木 稟
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/07/25
  • メディア: 文庫
評価:★★☆

カソリックの総本山、バチカン市国。
世界中から寄せられてくる "奇跡" 発見の報に対して
その真偽を判別する調査機関『聖徒の座』。

そこに所属する天才科学者の平賀と、
その相棒で古文書の解析と暗号解読の達人・ロベルト。
「奇跡調査官」である神父二人の活躍を描く第16弾。
長編としては13作目になる。


上司であるサウロ大司教に呼び出された平賀とロベルトは
驚くべき話を聞く。
深夜午前2時、バチカン美術館に展示されている
ラファエロ作の絵画『フォリーニョの聖母』の前に
ファティマの聖母が現れ、預言をするのだという。
その模様を捉えたと称するビデオまでがネット上に出回っているらしい。
二人は直ちに噂についての調査を開始する。

一方、ローマの街では十字路の路上に描かれた "悪魔の紋章" の上で
変死体が見つかる事件が続発しており、
カラビニエリ(警察軍)のアメデオとプロファイラのフィオナが
捜査に乗り出す。
事件の背景には、わずか27歳にして夭折した
大人気俳優ライモンド・アンジェロの存在が関わっているらしい。

タイトルの『二十七頭の象』とは、作中に出てくる謎の言葉で、
どうやら事件の黒幕となっている組織の名前らしいのだが・・・


長編ではあるけれども平賀とロベルトの登場はほぼ出だしと終盤のみで
フィオナとアメデオが主役と言っていいだろう。
いままでは外伝的な短編で登場していた二人がメインなので、
外伝の長編版といったところか。

全編にわたって幻想的な雰囲気が濃厚に漂い、
その中で次々に猟奇的な事件が起こっていくのだが
ラストの解明シーンでは、それぞれの事件について
合理的な理屈づけがされていきホラーではなく、ミステリとして着地する。
このあたりは島田荘司を彷彿とさせる。

ただ、発端となる "聖母降臨" の謎解きは期待外れかなあ。
まあわかりやすい解決ではあるのだが、
このシリーズの中でこういう "現象" を取り上げるのだから
シリーズにふさわしい、ひと捻りした "からくり" が
欲しかったなあとも思う。

ちなみに表紙の美女がフィオナ。
作中でも彼女がイラストにあるような "コスプレ" で
捜査に出かけるシーンがある。
美人なんだが、しゃべり方もファッション感覚も、
ついでに言えば男の趣味(笑)も一般人とかけ離れている。
でもそれが彼女の魅力なんだけどもね。

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ねらわれた女学校 セーラー服と黙示録 [読書・ミステリ]


ねらわれた女学校 セーラー服と黙示録 (角川文庫)

ねらわれた女学校 セーラー服と黙示録 (角川文庫)

  • 作者: 古野 まほろ
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2016/09/22
  • メディア: 文庫
評価:★★★

三河湾に浮かぶ人工島に建つ全寮制の探偵養成学校、
聖アリスガワ女学校を舞台に島津今日子、古野みづき、葉月茉莉衣の
女子高生3人組が遭遇する事件を描く、シリーズ第3巻。
今回は4編収録の短編集だ。

「消えたロザリオ」
今日子の同級生・井の頭竜子が所有しているロザリオがなくなった。
捜索を頼まれた3人組は、消失した時間帯である
水曜日の5時間目から7時間目の間、授業を抜け出すことのできた生徒を
ピックアップした結果、容疑者は3人にまで絞り込まれたが・・・
ラストは、密閉空間であり閉鎖社会である女子校ならではの解決法かな。
ちなみにロザリオとは、カトリックで祈りを唱えるときに用いる
数珠状のもので、円環の一端に十字架がついている。
私は十字架そのものをロザリオというのかとばかり思ってたが
十字架はあくまでロザリオの一部でしかないらしい。

「とらわれた吸血鬼」
夕刻の図書室で今日子は一人の少年と出会う。男子禁制のはずの学園内で。
しかし少年は一瞬にして姿を消してしまう。そこへ現れた校長・古賀は
少年のことを「殺人鬼」と呼ぶのだった。
そしてその夜、3人組の前に再び姿を現した少年の正体は・・・
ミステリと言うよりはホラー風味のドタバタ・コメディだね。

「あらわれた悪魔」
寮の部屋でせっせとレポート書きに勤しむ今日子たち。
消灯時間を迎え、今日子は寮を抜け出して学内にある教会へ向かう。
そこに聖書を置き忘れてきてしまっていたのだ。
シスターに発見されると厳しいお仕置きが待っている。
無事に聖書を回収した今日子だが、
その帰りに学内の広場で驚くべき光景を目撃する・・・
いやあ、この後の出来事がまた凄まじい。
カトリックの学校、しかも女子校でここまでやっていいんですかねえ。
まあ、この学校自体がまともな存在じゃなくて、
実は壮大な陰謀の隠れ蓑らしいし、
それに敵対する組織なんてものも今回出てきたみたいだから、
この流れは続くんだろうなあ。

「ねらわれた女学校」
今日子が目覚めたとき、彼女は謎の空間に捉えられていた。
そこはエッシャーの騙し絵のように無限に続く無限階段。
彼女は脱出方法を導き出すべく、懸命に考え続ける。
同じ時、みづきと茉莉衣もまた同様の空間に囚われていたのだった。
これはミステリと言うよりはパズルなのだろうな。
そして、彼女たち(というよりは学園)の敵が、
具体的に名前を持った存在として現れる。
彼ら(彼女ら?)が、今後のストーリーに絡んでくるんだろうなあ。
それを知らずに3人組たちは陰謀に翻弄され続けるわけだ。
もっとも、そんなものは軽々と吹き飛ばしてしまいそうな
逞しいお嬢さんたちではあるが。

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Life 人生、すなわち謎 ミステリー傑作選 [読書・ミステリ]


Life 人生、すなわち謎 ミステリー傑作選 (講談社文庫)

Life 人生、すなわち謎 ミステリー傑作選 (講談社文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/04/14
  • メディア: 文庫
2013年に発表された短編ミステリから選ばれた10編を収録した
ベスト・アンソロジーの一冊目。
本書には10編のうち、半分の5編が収録されている。


「彗星さんたち」伊坂幸太郎
主人公の二村はシングルマザー。
東京駅で新幹線の車両清掃員として働き始めた。
主任の鶴田は50代の女性だが、二村を厳しくも温かく指導する。
その鶴田が倒れて意識不明となった日、
二村たちは新幹線の車内で不思議な光景を目撃する。
うーん、これってミステリなのかなあ。
予備知識無しに読めば「いい話だな」で済むんだが
年間ベスト盤のミステリ・アンソロジーに入ってるってことは
読む方も "そういう期待" をするわけで・・・

「暁光」今野敏
機動捜査隊員の "俺" は、定年間近の刑事・縞長(しまなが)と
コンビを組んでいる。縞長の特技は人相を覚えること。
雑踏の中から指名手配犯を見つけ出すこともお手のもの。
しかしその縞長が、家宅捜査の最中に被疑者を取り逃がしてしまう・・・
ベテラン刑事の強かさを垣間見せるラストは鮮やか。

「墓石の呼ぶ声」翔田寛
雨宮勇吉は、石大工の棟梁だった祖父の一人娘と、
そこに婿に入った住み込みの石工の間に生まれた。
この縁組は祖父の意向による強引なもので、
勇吉が8歳になったときに母は梅次郎という愛人とともに出奔してしまう。
その1年後、父は勇吉を連れて墓地へ行き、ある墓石を見せる。
それは死んだ梅次郎のために母が建てた墓だった・・・
老境に至った勇吉が大正時代の幼少期を回想するかたちで語られる。
本書の中でいちばんミステリらしい作品。

「コーチ人事」本城雅人
プロ野球はストーブリーグの次期を迎え、
来季の監督・コーチ人事が話題になる頃。
スポーツ新聞のプロ野球担当記者・江田島は
人気球団・東都ジェッツの新ヘッドコーチ人事の情報をつかむべく、
過去にジェッツでコーチをしていた三塚に密着していた。
彼は新ヘッドコーチとして起用される大本命と見られていたのだ。
特ダネを巡る他社との駆け引き、同じ社内における記者同士の確執など
業界内幕小説としては面白いけど、
これがミステリだと言われるとちょっと首を傾げてしまうなあ。

「五度目の春のヒヨコ」水生大海
朝倉雛子は26歳。社会人となって五度目の春を
社会保険労務士として迎え、小さな社労士事務所で働いている。
クライアントとなった会社に出向いて
事務仕事に励んでいる最中に、日置真子という女性が現れ、
「この会社から不当解雇を受けた」とまくし立てるのだった・・・
これも確かに謎解き要素はあるし、予備知識なしで読めば
"お仕事小説" としてはたいへん面白いのだけどね。
まあ、日常の謎系ミステリと言えなくもないかな。


本書の収録の5作はどれも小説としては面白いと思うが
「ミステリー傑作選」と銘打つのであれば、
やっぱりミステリ度の高めの作品が読みたいと思ってしまう。

私基準ではいちばん良かったのは「墓石-」、次点は「暁光」。
「彗星-」「コーチ-」は私の好みからはかなり外れているなあ。

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アルスラーン戦記 1~4 [読書・ファンタジー]


王都炎上・王子二人 ―アルスラーン戦記(1)(2) (カッパ・ノベルス)

王都炎上・王子二人 ―アルスラーン戦記(1)(2) (カッパ・ノベルス)

  • 作者: 田中 芳樹
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2003/02/21
  • メディア: 新書
落日悲歌・汗血公路 ―アルスラーン戦記(3)(4) (カッパ・ノベルス)

落日悲歌・汗血公路 ―アルスラーン戦記(3)(4) (カッパ・ノベルス)

  • 作者: 田中 芳樹
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2003/05/21
  • メディア: 新書
『銀河英雄伝説』と並ぶ、田中芳樹の大河ファンタジー・シリーズ。
1986年の第1巻から数えて31年、
2017年12月に最終16巻が刊行され、めでたく完結となった。

その間、劇場アニメ・OVAになって(91~96年)、
同時期に漫画化もされたが
いかんせん原作の刊行が止まってしまっていずれも未完。

しかし2013年から荒川弘による漫画化が始まり、
2015年には二度目のアニメ化と人気は衰えを知らないようだ。


さて、原作は無事に最終巻まで刊行されて、
待ちわびていたファンの一人として大変喜ばしく思っているのだが
一気に読んでしまうのもなんだかもったいなくて
少しずつちまちまと読んでいるところ(笑)。

最終巻まで読んでから記事に書こうかとも思ったんだが
なんせ冊数が多いので、とりあえず4巻分ごとにまとめて
記事に書くことにした。
ちなみに15年4月~9月まで放送されたアニメ(1期)は、
この1~4巻までの内容だ。

初刊の発行年を掲げてみると
1巻「王都炎上」(1986年)、2巻「王子二人」(1987年)、
3巻「落日悲歌」(1987年)、4巻「汗血公路」(1988年)。
おお、この頃はまめに出てたんだねえ。

ちなみに1986年5月には同じ作者による『銀河英雄伝説』第7巻が刊行、
87年11月には最終巻となる第10巻が刊行されて本編は完結、
88年頃は外伝を執筆していた時期に相当する。
作者としても一躍人気作家に躍り出て、
勢いにあふれた時期だったんだろうと推測する。


さて、『アルスラーン戦記』は第一部7巻、第二部9巻からなる。
当初は第二部も7巻で14巻で完結予定だったのだが
いつの間にか2巻増えてた(笑)。まあ増える分にはいいかな。

第一部は順調に終わったのだが、
第二部に入って2巻ほど出たあたりからばったり途絶え、
数年おきに思い出したように刊行されるようになった。
平均すると4年に一巻くらいになってしまったので、
オリンピックのようにやってくるようになった(笑)。

というわけで、第一部の7巻分はもう複数回読んでいるのだが
第二部の9巻め以降は買っても読まずに積んでおいた。
「完結したらまとめて読もう」って思ってたんだが
まさかこんなに時間がかかるとはねえ(笑)。

閑話休題。内容の紹介に移ろう。


舞台は中世ペルシアに似た異世界。

大陸公路の要衝に位置するパルス王国は
剛毅の国王アンドラゴラスの統治のもとで繁栄を極め、
その国勢は盤石かとも思われていた。
しかしパルスの隣国であるマルヤム王国を滅ぼした
宗教国家ルシタニアがその矛先をパルスへ向け、侵攻を開始する。

アトロパテネの平原にルシタニア軍を迎え撃ったパルス軍だったが
敵の奸計にはまって壊滅的な大敗北を喫し、
アンドラゴラスは捕らえられてしまう。

この日、初陣を迎えていた14歳の王太子アルスラーンは
パルス随一の戦士・ダリューンに守られ、
わずか二騎で辛くも戦場を脱出する。

勢いに乗るルシタニア軍はパルスの王都エクバターナを占領、
帰るべきところを失ったアルスラーンは、
ひとまずダリューンの親友であるナルサスの元へ向かう・・・


『アルスラーン戦記』第一部は、
この王子一人、騎士一人というたった二人の戦いから幕を開ける。
ルシタニア軍の追っ手から逃れながらも、
アルスラーンのもとには少しずつ有能な家臣が集まっていき、
やがて国内の残存戦力を糾合して侵略者打倒のために挙兵、
王都の奪還とルシタニア軍との決戦を経て、
パルスの王座に就くまでが描かれる。


アルスラーンと共に立つのは最強戦士ダリューン、天才軍師ナルサス、
その侍童エラム、女神官ファランギース、放浪の楽士ギーヴ。
この5人を手始めに、後の世に "アルスラーンの十六翼将" と称される
家臣たちが巻を重ねるごとに続々と集まっていく。

人気作家だけあって筆力は抜群。キャラ立ちも完璧で
多人数が登場する場面でも、台詞を読んだだけで誰の発言か分かる。
キャラ同士による軽口と冗談と毒舌の応酬も絶品で
このへんは田中芳樹の真骨頂だろう。

圧倒的な劣勢にあっても彼らは陽気さを失わず、
主君とともに戦いの渦中へ飛び込んでいく。
この "アルスラーンと愉快な仲間たち" の活躍が
全編にわたって綴られていくのだ。

本作の人気の理由はいろいろあるだろう。
流浪の王子が国を取り戻すという王道ストーリー、
それを波瀾万丈の冒険物語に仕立て上げる構成の妙、
綺羅星のごとく登場する魅力的なキャラクターたち、
寡兵をもって大軍を打ち破る戦略・戦術の描写など
挙げればいくらでも出てきそうだ。

その中でも、最も特徴的だと思うのは主人公の造形だろう。

大国の王子に生まれながら、なぜか両親には愛されず
(そこにはある秘密があったのだが)
幼少期は乳母夫婦に預けられ、平民に混じって王宮の外で暮らす。
幸いにして養父母からは充分な愛情を注がれて育ち、
長じて王太子に冊立されて王宮内に戻っても、
その "庶民感覚" を失わずにいる。
作中に登場する14歳のアルスラーンは、そんな素直で純真な少年だ。

剣技も未熟だし、飛び抜けた知略を示すわけでもない。
「オレについてこい!」的な威勢の良さを持つわけでもない。
ある意味 "平凡" なキャラクターで
ヒロイック・ファンタジーの主役としてはかなり異色だろう。

しかし彼のもとには、なぜか有力な臣下が集まってくる。
それも王室の権威によることなく、彼自身の資質と、
自らの理想の旗を掲げることによって。

物語初期におけるアルスラーンの行動理由は
「侵略者を追い出して平和を取り戻すこと」だったが
戦いを通じて "玉座" というものの光と闇に触れ、
「王が善政を敷けば世の中の不幸を減らせる」ことを知る。
そして巻を追ううちに「良き王となり、この国を変えたい」という
思いが募っていくのだ。

アルスラーンが改革のトップに掲げるのは「奴隷制の廃止」。
これはパルスの旧弊な体制の象徴となるものだ。
それを実現するためには、自らの力を持って侵略者を追い払い、
その功績を以て守旧派の父王に改革を認めさせなければならない。

軍師ナルサスは、自分の領地で奴隷制の廃止を試みて失敗した過去を持ち、
この若い王子に新たなる国家建設を託すようになる。
他の臣下たちもアルスラーンの中に「良き王たる資質」を認め、
その理想の実現に力を貸すことを選んでいく。

まあ、簡単に言えばみんなアルスラーンのことを好きになって、
彼をもり立てようという気分になってしまうんだね。
それくらい「人望」を集める能力がある少年なんだ。

後世、"解放王" と呼ばれることになるアルスラーンと、
"十六翼将" (まだ全員集まってないけど)たちの戦いは、
まだ始まったばかりである。

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「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」第四章 天命編 & 舞台挨拶 を観てきました [アニメーション]


※本編のネタバレはありません。

第三章では、初日に早起きして舞台挨拶2回を
両方観ることができたのだけど
今回はかみさんに午前中に仕事が入ってしまった。
こいつは舞台挨拶は無理だなあ、午後の回に行くか・・・
しかし確認してみると今回の舞台挨拶11:00と14:05。
11:00はさすがに無理だが14:05なら行けるかも。

かみさんは12:00上がりなんだが、
休みをもらって30分早く職場を出るという。
でも家まで帰ってきてから駅まで歩くと時間がかかる。

そこで、私が車でかみさんを迎えに行き、職場の前でピックアップ。
そのまま駅まで行ってしまうことにした。
しかし、実行してみるとトラブルが連続。
まず、かみさんを乗せて駅まで来たものの、
予定していた駅前の駐車場が満杯で入れない。
仕方がないのでちょいと距離があるところに駐めることに。
駅へ向かって歩きながら「このままだと予定より2本遅い電車になるなぁ」

しかしかみさんの歩みの早いこと早いこと。
「そんなにとことこ歩いてると転ぶよ。
 まだ雪が凍ってるところがあるんだから」
日陰には、月曜に降った雪の名残がまだあって
場所によってはガチガチに凍ってる。
「アタシは大丈夫よ!」といいながらスタスタ。
その後を、置いて行かれないように一生懸命について行ったら、
なんと1本遅れで乗れてしまった。

ズォーダーではないが「執念」という言葉が脳裏をよぎったよ(笑)。

だがトラブルは続く。
乗換駅に着いたのだが、電車が来ない。何か事故があったらしい。
一瞬アタマの中が真っ白になったが、しかしこれも、
幸いにして並行している別路線があったので
そちらに乗り換えて事なきを得る。

相次ぐトラブルで、新宿ピカデリーに着いたのは
上映開始の10分前だったよ。まさにギリギリセーフ。

もうロビーは人でいっぱい。我々もいよいよ入場。
お客さんはかなり若い人が増えてきた印象。

2202-4c.jpg
やがて中村繪里子さん登場。相変わらず司会は上手い。
続いて小野大輔さん、鈴村健一さん、東地宏樹さん、
羽原信義監督、福井晴敏氏、そして最後は山寺宏一さん。

いろいろお話をして頂いたのだけど、いかんせん盛りだくさんで
あんまり覚えてない(笑)。記憶力の減退がバカにならない(おいおい)。
まあ、内容はそのうちネットなどに出回ると思うので、私の感想をひとつ。
声優さんというのは、ふだんは作品内で声を聞いているのだが
あんな広いホールでマイクを使って喋ると
若干声が変わって聞こえるのだろうか。
東地宏樹さんの声が、若い頃のささきいさおさんの声そっくりに
聞こえたんだよねぇ。ま、似た声質の人を選んだのかも知れないけども。

そんなこんなで舞台挨拶が終わり、いよいよ本編の上映へ。
ネタバレにならない範囲でちょいと書くと

・デスラー総統、意外と多弁。そしてカッコいい。
・謎が謎を呼ぶ、大帝&サーベラー。
・空間騎兵隊無双。溜まりに溜まった鬱憤をついに晴らすか。
・やっぱ肉弾戦だよねえ。そしてついにテレサ登場。

そして上映終了。廊下には第五章のポスターが。次は「煉獄編」。

2202-4a.jpg
"煉獄" をwikiで調べると
「天国には行けなかったが地獄にも墜ちなかった人の行く
 中間的なところ」とあるけど、いまいちよくわからん(笑)。

さて、この次の17:00の回もとってあったので
この休憩時間に軽く腹ごしらえ。

一回目で台詞がよく聞き取れなかったところも
二回目では聞き取れて(全部じゃないけど)
それなりに理解は深まったとも思う。
ただまあ、毎回のことだが情報量が多いので
BDが到着したらまた見返していくことになるだろう。

さて、新宿ピカデリーの1階エントランスには3mヤマトと
同じく3mアンドロメダが鎮座している。

到着したときにあったのは分かったのだけど、
何せ時間が迫っていたので横目で見ながらスルー。
帰りにじっくり見てみたんだが、回りは写真を撮るための人だかり。
私も何枚か撮ったんだがみんなピンボケで人様に見せられない(^^;)。

なんだかんだで家に着いたら21:00近く。
いやあ、疲れました。肉体的にもだけど
行くときの「遅刻するんじゃないか」というハラハラドキドキで
精神的な疲労が半端ない。明日はゆっくり休みましょう。

最後は入場記念特典。雪さんと真田さんとノイ・デウスーラ。

2202-4b.jpg

あと、余計なことを一つ。

14:05の回の舞台挨拶が終わったあと、
かなりの若い人たち(主に女性)が、映画の始まる前に
一斉に席を立ち、外へ出て行ってしまった。
あれは声優さんのファンなのだろうねぇ。

おそらく11:00の回を観て舞台挨拶を観て、
続けて14:05の舞台挨拶を観たのだろう。
映画本編はもう既に一度観ているので、もういいと思ったのか。

2800円という安くない金を払って、舞台挨拶だけ観て帰る。
「お金は払ってるんだから、どう振る舞おうと勝手」
なのかも知れないが・・・

これから本編を見ようと楽しみにしている人たちを前にして
ぞろぞろ映画館を出て行く。
そんな光景を見せられた人たちはどう感じるのだろう。
少なくとも、私はいい気持ちはしなかったねぇ。

すみません、最後はオッサンの愚痴になってしまいました。

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小さな異邦人 [読書・ミステリ]


小さな異邦人 (文春文庫)

小さな異邦人 (文春文庫)

  • 作者: 連城 三紀彦
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2016/08/04
  • メディア: 文庫
評価:★★☆

作者は2013年10月に65歳で逝去された。今の私と何歳も違わない。
なんとももったいないし惜しい人を亡くしたと思う。

本書の親本は2014年3月に刊行されており、
作者にとっては最後の短編集となった。

「指飾り」
主人公は相川康行、42歳のサラリーマンだ。
3年前に妻・礼子と離婚したが、会社からの帰路で
礼子に似た女の後ろ姿を見かける。
その様子を会社の同僚・倉田和枝に見られてしまい
それがきっかけで彼女と一夜を共にすることになるが・・・
ミステリ要素は希薄。
男女の恋愛の駆け引きに重点が置かれた恋愛小説かな。

「無人駅」
新潟県の六日町にある無人駅で降りた女は
タクシーで旅館「双葉」へ向かうが
到着しても何故か降車せず、駅前へ戻ってスナックに入る。
男と待ち合わせをしているようなのだが・・・
謎めいた女の行動に過去の犯罪が絡み、切れのいいラストを迎える。

「蘭が枯れるまで」
専業主婦の有希子は、通っていたフラワー・アレンジメント教室で
小学校時代の同級生・多江と再会する。
お互いに夫婦仲が冷え切っていることを知り、
多江は有希子に双方の夫を殺す交換殺人を持ちかけるが・・・
いやあこの結末はスゴい。
最後の最後に二段三段構えで驚きが襲ってくる。

「冬薔薇」
団地の一室で主婦・悠子が目覚めるところから始まる。
そこへ電話をかけてきたのは、悠子の浮気相手の男。
近くのファミレスに来ているという。
部屋を出て男の元へ向かう悠子だが、周囲のものに違和感を感じる。
時間感覚のずれ、見知らぬ女物の靴、湿っているドアノブ、
エレベーターで乗り合わせた少年が見せる不審な行動。
さらにはタイムスリップが起こったような展開まで見せ、
不条理SFかとも思わせるが、ラストできれいにすべての謎が解消する。
ちょっと島田荘司を思わせるが
明らかになる真相はまぎれもなく連城ワールド。

「風の誤算」
入社10年のベテランOL沢野響子の上司・水島課長は
さえない中年男性なのだが、芳しくない噂が多々あった。
エレベーター内で女子社員に対してセクハラ行為に及んだらしい、
若い愛人を囲っているらしい、株で大儲けをしたらしい・・・
彼のもとへ時折かかってくる無言電話のこともあり、噂は噂を呼ぶ。
果ては連続通り魔殺人の犯人ではないか、とまで。
結末は意外だが、ミステリと言うよりはちょっぴりホラー風な作品。

「白雨(はくう)」
高校1年の乃里子はクラスメイトからのいじめに悩んでいた。
そんなとき、乃里子は母・千津あての手紙を読んでしまう。
差出人の名は笹野俊太郎。それは遠い昔、千津の父親(乃里子の祖父)が
母親(祖母)を刺してのち、自ら命を絶った事件の原因となった男だった。
作者の代表作である『花葬シリーズ』を彷彿とさせる男女の情念の物語。
ラストで明かされる "衝撃の事実" によって、
事件の様相が一気にひっくり返るさまは見事。
本書の中でも一押しの連城ミステリ。

「さい涯(は)てまで」
JRの駅職員・須崎は、同僚の石塚康子と不倫関係になり、
二人は月に一度、鉄道旅行に出かけるようになる。
しかし旅行の数日後には、須崎のいる切符売りの窓口に
決まって同じ女が現れ、浮気で利用した駅までの
二人分の切符の購入するようになった。
康子は須崎の妻の差し金ではないかと疑うが・・・
ミステリと言うよりは男女の愛憎と葛藤の物語。

「小さな異邦人」
表題作だが、これが作者の遺作となったらしい。
高校2年の秋彦を筆頭に一代(かずよ)、三郎、龍生(たつお)、
奈美、晴男、雅也、そして最年少の弥生は4歳という
母1人子供8人という大家族が舞台。
物語の語り手は中学3年の一代が務める。
そんな一家9人の団欒の時間にかかってきた電話は
『子供の命を預かっている。3000万円を用意しろ』と告げる。
しかし子供たちは全員揃っている。はたして犯人の真意は?
ううん、なんとなくオチは予想がついてしまうが、
必ずしもスッキリしたものではないなあ。
巻末の解説では「誘拐ものの傑作」と褒めちぎってるけど
私には捻りすぎなようにも感じる。
ちなみに8人も子供がいるので、彼らの間の長幼関係の把握が
なかなかできなかったよ。どっちが年上か年下かさっぱりだったが
途中である "規則" に気づいたので、それ以降は悩まなくなったよ。


連城作品にしては星の数が少ないのは、
ミステリ要素が少ない作品が含まれていることと
私の好みから外れた作品が多いことが理由。

まあ、"連城三紀彦" というブランドだから、
事前の期待が大きすぎたのかも知れない。

あくまで "私基準" での評価なので、
恋愛小説、あるいは恋愛を絡めたサスペンスが好きな方なら
高評価になるのではないかなと思う。

ちなみにミステリが好きな人への私の一押しは「白雨」、
次点は「蘭が枯れるまで」。

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闇に香る嘘 [読書・ミステリ]


闇に香る嘘 (講談社文庫)

闇に香る嘘 (講談社文庫)

  • 作者: 下村 敦史
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/08/11
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

第60回江戸川乱歩賞受賞作。

主人公は村上和久、69歳。
65年前の1945年、入植先の中国・満州で終戦を迎えた和久は
日本への引き揚げる途中、兄と離ればなれになってしまう。

無事に帰国した和久だったが、幼少期の栄養不足が遠因となって
成人してから次第に視力が衰え、41歳にして失明してしまう。

絶望して荒れた生活を送り妻と離婚、その元妻も数年後に事故死。
父の世話に明け暮れた娘・由香里とも確執を抱えるようになる。
そんなとき、生き別れとなった兄・竜彦が
中国残留孤児として帰国してきた。

一方、由香里の一人娘・夏帆は腎臓に障害を抱えていた。
治療のために由香里から腎移植を行ったが、
その腎臓は次第に機能が衰えてきており、透析が欠かせない。
孫のために腎移植の検査を受ける和久だったが、
移植には不適合と診断されてしまう。
最後の望みとして、竜彦に腎臓の提供を頼み込むが、
日本政府に対して補償を求める裁判に明け暮れる兄は
移植のための検査すら拒絶するのだった。
頑なな兄の態度に、和久はふと疑問を抱く。
果たして "兄" と名乗る男は本物の竜彦なのか?

竜彦の真偽を確かめるべく行動を起こす和久の前に現れる謎の影、
その和久のもとへ続々と届く点字の手紙は何を意味するのか。
果たして "兄" の正体は、そしてその背後には何があるのか・・・


巻末の解説によると、作者は乱歩賞に挑戦すること9年目、
最終選考にも4度残ったことがあるという "大ベテラン"。
精進を重ねての受賞だけあって荒削りな感じはなく、文章力も高レベル。
発表された年の各種ミステリランキングでも上位に食い込んだ作品だ。


本作でスゴいと思ったのは、主人公を盲目に設定したこと。
そして物語をその主人公の一人称で描いていること。
そのためには、視力を持たない人間を取り巻く "世界" をも
描かなければならない。
盲目であることによって生じる様々なハンデ、
視力障害者が使用する道具・機器などの描写、
見えないことに対する鬱屈感、疎外感、絶望感。
その部分が実にリアルに描写されているのにも驚かされる。

そしてそんな人物が "探偵役" となって
"謎" の解明に向かって行動していく。
もちろん、視力のハンデは "探偵" としての活動にとっても
大きな障害となって主人公の前に立ちはだかる。

上にも書いたが、(視力のせいもあるが)主人公は偏屈者だ。
妻に愛想を尽かされ、娘からは恨まれる。
万人から好かれるキャラとはお世辞にも言えない。
そういう意味ではなかなか感情移入しにくい主人公なのだが
それでも最後まで読ませてしまうのだから、その筆力はたいしたものだ。
視力障害に残留孤児と、とかく日常生活の中では
目を背けてしまいがちな要素を二つもぶち込んでおいて
謎とサスペンスを併せ持つミステリに仕立て上げてしまうのだから。

読んでて楽しい作品、とは言いにくいのだが
先行きに興味をつないで読ませるし、読後感は悪くない。
この作者、しばらくつきあってみたい。

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「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」主題歌CD & サントラvol.1 [アニメーション]


アニメ『宇宙戦艦ヤマト2202』主題歌シングル第二弾「君、ヒトヒラ」

アニメ『宇宙戦艦ヤマト2202』主題歌シングル第二弾「君、ヒトヒラ」

  • アーティスト: ささきいさお,阿久悠,宮川彬良
  • 出版社/メーカー: ランティス
  • 発売日: 2018/01/24
  • メディア: CD
7netで注文していたので、本来なら発売前日(23日)の朝8時には
届いていたはずなんだけど、あの大雪のせいで遅配となってしまった。

23日の夜でも届かず、今日(24日)の朝も届かず、
今日の夜になってメールチェックをしたら
「お近くのセブンイレブンに届きました」というメールが来てた。
タイムスタンプは15時すぎ。なんと31時間遅れです。
まあ、天気を怨んでもしょうがないけどね。

まず主題歌CD。歌が3曲とそれぞれのインストゥルメンタル、計6曲。

まずは ありましの さんの「君、ヒトヒラ」、第三章のED主題歌だ。
映画観でも聞いたし、BDの再生でも何回となく聞いているので
既にお馴染み。寡聞にしてありましのさんって知らなかったんだけど
声の質も歌の雰囲気も私は嫌いじゃない。

次は「CRIMSON RED」、歌い手は星野裕矢さん。
この方も寡聞にして知らないんだなあ。
まあ、既に有名な人を連れてきて歌わせてみたものの
イメージが合わないとか言われるよりはいいのかな。
実はまだ1回しか聞いてないので評価は保留。
映画館で実際に流れるのを聞いてからまた判断したいと思う。

そしていよいよ満を持して登場のささきいさお大先生。
タイトルはそのものズバリ「宇宙戦艦ヤマト2202」。
「2199」よりテンポが上がってより勇ましくなってる。
おそらく全盛期の勢いを想い出しながら歌ってるんだろうな、
なぁんて勝手に想像しながら聞いてる。
まもなく喜寿を迎えるとはとても思えない元気さで、
こちらも頑張らねばならないなぁ、って思ってしまう。
我々ヤマト世代にとっては「人生の応援歌」だからね。
「ささきさん、戻ってきてくれてありがとう」って言いたくなる。


アニメ『宇宙戦艦ヤマト2202』オリジナル・サウンドトラック vol.1

アニメ『宇宙戦艦ヤマト2202』オリジナル・サウンドトラック vol.1

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ランティス
  • 発売日: 2018/01/24
  • メディア: CD
次はサントラ盤。主に第一章~第三章の使用曲が収録されてる。
まあ2202を観てきた人なら、どの曲がどこで使われたかは
言わずもがなだと思うので個々の曲については触れない。
というか、実はこちらもまだ通して1回しか聞いてないので(^^;)

とは言っても、当然収録されているべき曲がいくつか抜けているような。
例えば第2話で古代と雪のデートシーンで流れていた曲とかが
(BD第1巻のメニュー画面のBGMでもある)
入っていない。
おそらく今後発売されるVol.2(場合によってはVol.3まで出るか?)に
収録されるのだろう。

ちなみにライナーノートには羽原信義監督による宮川彬良氏への
インタビューが収録されているのだけど、
羽原監督が「一部第四章のネタバレが入ってる」って呟いたらしいので
まだ読んでない。27日以降までとっておこうと思います。


さて、いよいよ第四章の公開が迫ってまいりました。
それまで体調に気をつけて頑張りましょう。

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妃は船を沈める [読書・ミステリ]


妃(きさき)は船を沈める (光文社文庫)

妃(きさき)は船を沈める (光文社文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2012/04/12
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

臨床犯罪学者・火村英生と相棒のミステリ作家・有栖川有栖が
事件に挑むシリーズの一編。

本作は中編二つからなる二部構成になっている。

「第一部・猿の左手」
自動車が堤防から海に転落した。
その内部で死体となって発見された男・盆野(ぼんの)。
多額の負債を抱えていたことから自殺かと思われたが
解剖の結果、他殺の疑いが浮上する。
しかも盆野には1億円の生命保険がかけられていた。
盆野の妻・古都美に会った火村と有栖は、
彼女が友人・三松妃沙子から4000万円近い借金をしていることを知る。
資産家の妃沙子は年下好みで、常に若い男を周囲に侍らせていた。
そしてその中の一人で妃沙子の養子となっていた潤一を含めて
容疑者は3人となるが、古都美も妃沙子も潤一も
それぞれ犯人になり得ない理由があった・・・

タイトルにある「妃」(きさき)とは三松妃沙子のことで、
作中、彼女は周囲の男たちからそう呼ばれている。
本書は妃沙子を中心に物語が進行するといっていいだろう。

章題の「猿の左手」とは、彼女が持つ
"幸運を呼ぶアイテム" のこと。
願い事を三つ叶えてくれるという猿の手のミイラだ。

この設定は、怪奇小説作家ウイリアム・W・ジェイコブズの
『猿の手』という短編から由来しているとのこと。
本編開始前の「はしがき」にそのことが記されているし、
作中でこの短編のネタバレをしていると告げている。
実際、作中でストーリーに触れているが
この短編を未読でも本作を読むのに全く支障はない。

 ちなみに、『猿の手』はとてもよくできた怪談話だと思う。
 探せば日本の民話にもありそうなパターンだけど、
 それだけ普遍的な怖さがあるのだろう。

作中、火村はこの短編に独自の解釈を示す。
するとあら不思議、ゾンビが徘徊しそうな怪談話が
一転して周到な犯罪小説に生まれ変わってしまう。

火村の解釈イコール作者の解釈なわけで
有栖川有栖というミステリ作家(登場キャラではなくて作者の方ね)の
本格ものに対する感性の凄みを見せつけられる。
いやはやたいしたものだ


「第二部・残酷な揺り籠」
第一部から二年半後。
関西地方を最大震度6弱の大地震が襲う。
そしてその直後、実業家・設楽の邸宅の離れで、
男の射殺死体が見つかる・・・


第二部の内容を詳しく紹介すると第一部の(直接ではないけれど)
ネタバレにもつながりそうなのでここまで。

きっちりとした論理展開で犯人までたどり着く。
当代一の本格派の面目躍如たる作品だ。

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化学探偵Mr.キュリー [読書・ミステリ]


化学探偵Mr.キュリー (中公文庫)

化学探偵Mr.キュリー (中公文庫)

  • 作者: 喜多 喜久
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2013/07/23
  • メディア: 文庫
評価:★★★

キュリーと言えばマリ・キュリー。
一般的には「キュリー夫人」として有名なフランスの学者さん。
人生で2度もノーベル賞を受賞した(しかも物理学賞と化学賞)という
元祖リケジョのスーパーレディなんだが、
本作の主人公は「Mr.キュリー」というあだ名で呼ばれる
れっきとした男性である(Mr.だからね)。

その「Mr.キュリー」こと四宮(しのみや)大学理学部化学科の
沖野晴彦准教授が、大学の内外で起こる事件の数々を
解決していく連作ミステリである。相棒(ワトソン役)となるのは
大学庶務課の新人職員・七瀬舞衣(ななせ・まい)。


「第一話 化学探偵と埋蔵金の暗号」
大学の構内各所で、地面に穴を掘られるという事件が続発する。
学内のモラル向上のため、『モラル向上委員』を務める沖野とともに
舞衣は被害状況の調査を始めるが・・・

「第二話 化学探偵と奇跡の治療法」
舞衣の叔母が乳癌と診断される。しかし主治医の高河原は
通常の治療ではなく "ホメオパシー" を勧める。
叔父からそのことを聞いた舞衣は沖野に相談するが・・・
ちなみに "ホメオパシー" については、書き出すと長くなるので
興味のある人はwikiで(笑)。
ちなみに作中で沖野は「(医学ではなく)宗教だ」と断じている。

「第三話 化学探偵と人体発火の秘密」
四宮大学理学部が主催した講演会に主賓として呼ばれた松宮教授。
講演会後に開かれた懇親会の席上、挨拶を終えた松宮の頭部が
突然燃え上がるという事件が起こる。
テーブルの上にあったロウソクの炎が原因ではないかとの意見に、
舞衣は驚く。そのロウソクに点火したのは舞衣だったからだ。
舞衣は沖野とともに原因究明に立ち上がる。
うーん、ラストはちょっと身につまされる人もいるかな。

「第四話 化学探偵と悩める恋人たち」
文学部4年の浅沼浩介は、年上の恋人である
大学院生・聖澤(ひじりさわ)涼子と同棲することになった。
しかし涼子は、浩介との肉体的な接触を頑なに許そうとしない。
しかも、時折辛そうな表情を浮かべるようになったのだ。
庶務課へメンタルヘルス相談に訪れた浩介から事情を聞いた舞衣は
涼子の指導教官である沖野の元を訪れるが・・・
フィクションとしてはきれいな幕切れを迎えるが、
現実にこういうシチュエーションになったら、
なかなかハッピーに終わるのは難しそうな気もする。

「第五話 化学探偵と冤罪の顛末」
人気アイドル・美間坂剣也(みまさか・けんや)は自宅への帰路、
病気で倒れていた女性を介抱するが
数日後、剣也は婦女暴行をはたらいたとして脅迫を受ける。
高校時代の友人である剣也から相談を受けた舞衣は
沖野に助けを求めるのだが・・・


タイトルに "化学" とあるものの、そっち方面の知識は全く必要ない。
各話の扉ページに周期表や構造式やらが載ってるが、
それが何を意味しているのか分からなくても支障はない。
毎回、解決の直前になると沖野が猛然と反応式と構造式を書き出す
・・・なんてこともない(笑)。
謎や事件そのものは、ごく普通の常識の範囲内で解決されていく。

とは言っても、ストーリーのあちこちでいろいろな
科学的/化学的な蘊蓄が語られていて、それはそれで面白く読める。

沖野の変人振りや、毎回ヒロインが事件を持ち込んでくるところなど
東野圭吾の『ガリレオ』に似ている部分もあるが
あちらの湯川よりもこちらの沖野の方が
ちょっと子供っぽいところがあるかな。
第五話での、舞衣と剣也の仲に嫉妬してるような描写など
とても微笑ましくて、親しみがもてるのではないかと思う。

物語は、ヒロインの舞衣を中心に語られていくのだが、
明朗快活なお嬢さんで彼女の存在も本書の魅力の一つだろう。

このシリーズは人気があるみたいで、
なんと現在までに6巻も出ているらしい。
しばらく楽しめそうである。

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