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2017年を振り返って [このブログについて]


さて、2017年も過ぎ去ろうとしております。

ここはいちおう「本」(読書)がテーマのブログなんですが
もう一つの大きな柱が「ヤマト」ですので、
この二つを中心に、今年を振り返ってみたいと思います。


<1月>:読了冊数6。案外読んでない。
2日
 本ブログはこの日で11周年を迎える。そして12年目に突入。

<2月>:読了冊数10。
7日
 総閲覧数が90万に到達。
25日
 「ヤマト2202 第一章」公開。
 かみさんが足に怪我をしたので1人で観に行く(T_T)。

<3月>:読了冊数6。やっぱ年度末で忙しかった?
4日
 「ヤマト2202 第一章」二回目(かみさんは一回目)鑑賞。
 追加舞台挨拶で、羽原監督と福井晴敏氏をナマで観る。
12~19日
 「ヤマト2202 第一章 感想・・・のようなもの」up。

<4月>:読了冊数12。これくらい読めるといいなあ、って思う数。

<5月>:読了冊数18。連休でずいぶん稼げたみたい。

<6月>:読了冊数9。ヤマトの記事で時間をとられた?
24日
 「ヤマト2202 第二章」公開。
 こんどははじめから2人で行けた(笑)。

<7月>:読了冊数13。
10~28日
 「ヤマト2202 第二章 感想・・・のようなもの」up。
26日
 So-net「本」ブログランキングでなんと8位。
 本ブログ12年の歴史上、ベスト8入りは初。
 とはいっても「本」といいつつ、ヤマトの記事のおかげ(^^;)。
20170726a.png
27日

 総閲覧数が100万に到達。

<8月>:読了冊数19。お盆休みもあったし。
 北海道へ2泊3日で旅行。移動時間にけっこう読めた。

<9月>:読了冊数11。法事の準備で忙しかったかな。
 父の一周忌。何回やっても親類一同の前での挨拶は慣れない。

<10月>:読了冊数10。これもヤマトの記事を書いてたせい?
14日
 「ヤマト2202 第三章」公開。
 新宿ピカデリーで桑島法子さんと中村繪里子さんを
 初めてナマで観る(笑)。
 ちなみに羽原氏&福井氏の2人を観るのは2回目。

<11月>:読了冊数21。 "読める読める妖怪" が憑依していた模様(笑)。
4~15日
 「ヤマト2202 第三章 感想・・・のようなもの」up。
9日
 So-net「本」ブログランキングでなんと7位。
 7月26日の記録をさらに更新。
 とはいっても、これもヤマトの記事のおかげ(^^;)。
20171109a.png
18日

 So-net「本」ブログランキングで再度7位へ浮上。

<12月>:読了冊数13。
5日
 総閲覧数が110万に到達。
23日
 So-net「本」ブログランキングで7月26日以来の再度の8位。
 これについては、原因不明。
 12月はがんばってほぼ毎日記事を上げてたから、そのご褒美かな。


まあ、上記の状況を見れば、
このブログから「ヤマト」関係の記事を抜いたら
ランキングで30位にも入らないでしょうねえ。
いつもながら「ヤマト」さまさま、です。

さて、いろいろ好き勝手なことを書き連ねた駄文を大量生産してきた
このブログですが、たぶんこのペースで来年も進むと思います(笑)。
よろしければ、またお付き合いください。

それでは皆様、よいお歳を m(_ _)m (ぺこり)。

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2017年 今年読んだ本 ベスト30 [読書全般]


すみません、年末はいろいろあって更新できませんでした。

28日まで遠出してて、29日は疲れてずっと寝てたり(笑)。
今日は午前中にPCで年賀状を作って、
午後はかみさんが年末年始の買い物に行くのにつき合って、
夕方からこの記事を書いたら一日が終わりました(おいおい)。

閑話休題。

さて、いよいよ今年も終わりということで、
年末恒例のランキング発表です。

 実は今読んでる本もあるんですが
 たぶん年内には読み終わらないと思うのでこれは来年回し(^^;)。

毎回書いてますが、私 mojo の独断と偏見で決めてます
皆さんの評価と一致しない場合もあるかと思いますが
私の好みの問題ですので、石を投げたりせずにご寛恕ください

対象は、原則としてオリジナルのフィクション作品のみです。
(ノンフィクションとノベライズは除いてあります。)

あと、挙げてある本の中にはまだ記事に書いてないものも含まれます。
それについては、なんとか1月中にはupできるように頑張ります(^^;)。


それではまずはトップテンから。
星の数で言うと、第1位が星4つ半。2位以下は星4つです。

第1位 槐 (月村了衛) 光文社文庫
第2位 鹿の王 全4巻 (上橋菜穂子) 角川文庫
第3位 黄金(きん)の烏 / 空棺の烏 (阿部智里) 文春文庫
第4位 機龍警察 [完全版] / 機龍警察 自爆条項 [完全版] 上下
                                         (月村了衛) ハヤカワ文庫JA
第5位 いとみち 三の糸 (越谷オサム) 新潮文庫
第6位 図書館の魔女 烏の伝言 上下 (高田大介) 講談社文庫
第7位 卒業のカノン 穂瑞沙羅華の課外活動 (機本伸司) ハルキ文庫
第8位 ぐるりよざ殺人事件 セーラー服と黙示録 (古野まほろ) 角川文庫
第9位 命に三つの鐘が鳴る 埼玉中央署 新任警部補・二条実房
                                          (古野まほろ) 光文社文庫
第10位  はるひのの、はる (加納朋子) 幻冬舎文庫


第3位の2冊はシリーズ物の連作ですので一つにしました。
第4位の2冊は過去に読んだ作品でもあり、
時系列的にもストーリー的にも連続性が高いと思ったので
一つにまとめました。


次に第11~20位です。19位までが星4つ、20位は星3つ半です。

第11位 魔導の福音/魔導の系譜/魔導の矜持 (佐藤さくら) 創元推理文庫
第12位 天帝のみぎわなる鳳翔 (古野まほろ) 幻冬舎文庫
第13位 パダム・パダム 京都府警平安署 新任署長・二条実房
                                    (古野まほろ) 光文社文庫
第14位 天帝のつかわせる御矢 (古野まほろ) 幻冬舎文庫
第15位 天帝のはしたなき果実 (古野まほろ) 幻冬舎文庫
第16位 水族館の殺人 (青崎有吾) 創元推理文庫
第17位 ユダの窓 (カーター・ディクスン) 創元推理文庫
第18位 臨床真実士ユイカの論理 文渡家の一族
                                  (古野まほろ) 講談社タイガ
第19位 ウィンディ・ガール/ストーミー・ガール
              サキソフォンに棲むキツネⅠ・Ⅱ (田中啓文) 光文社文庫
第20位 ふわふわの泉 (野尻抱介) ハヤカワ文庫JA

11位の3冊は《真理の織り手》というシリーズもので
ストーリーも直接ではないけど、
ほぼ連続しているので一つにまとめました。
19位の2冊も、明らかにストーリーのつながった連作短編集なので
これも一つにまとめました。
『天帝』シリーズについても一つにまとめようか考えたのですが
それぞれ独立性の高い物語だと思ったので別にしました。
『二条実房』シリーズも同様です。


そして第21~30位。すべて星3つ半です。

第21位 南極点のピアピア動画 (野尻抱介) ハヤカワ文庫JA
第22位 英国空中学園譚 全4巻 (ゲイル・キャリガー) ハヤカワ文庫FT
第23位 九月の恋と出会うまで (松尾由美) 双葉文庫
第24位 貴婦人として死す (ジョン・ディクスン・カー) 創元推理文庫
第25位 妃は船を沈める (有栖川有栖) 光文社文庫
第26位 ひぐらしふる 有馬千夏の不思議なある夏の日
                                            (彩坂美月) 幻冬舎文庫 
第27位 ゴースト≠ノイズ(リダクション) (十市社) 創元推理文庫
第28位 闇に香る嘘 (下村敦史) 講談社文庫
第29位 アケルダマ (田中啓文) 新潮文庫
第30位 深紅の碑文 上下 (上田早夕里) ハヤカワ文庫JA


上位30作品は以上ですが、
星3つ半を獲得したものがこれ以外にも24作品あったので、
紹介しておきます。ちなみに読了順です。

<1月>
虚像の道化師 (東野圭吾) 文春文庫

<2月>
わたしのリミット (松尾由美) 創元推理文庫
東京ダンジョン (福田和代) PHP文芸文庫
禁断の魔術 (東野圭吾) 文春文庫

<4月>
曲がった蝶番 (ジョン・ディクスン・カー) 創元推理文庫
ニャン氏の事件簿 (松尾由美) 創元推理文庫

<5月>
恋するタイムマシン 穗瑞沙羅華の課外活動 (機本伸司) ハルキ文庫
人魚は空に還る (三木笙子) 創元推理文庫
緑のカプセルの謎 (ジョン・ディクスン・カー) 創元推理文庫
サザンクロスの翼 (高嶋哲夫) 文春文庫
影王の都 (羽角曜) 創元推理文庫
クラッシャージョウ13 ガブリエルの猟犬 (高千穂遙) ハヤカワ文庫JA

<7月>
旅猫リポート (有川浩) 講談社文庫
かくして殺人へ (カーター・ディクスン) 創元推理文庫
時をとめた少女 (ロバート・F・ヤング) ハヤカワ文庫SF
セーラー服と黙示録 (古野まほろ) 角川文庫
僕の光り輝く世界 (山本弘) 講談社文庫

<8月>
殺人者と恐喝者 (カーター・ディクスン) 創元推理文庫
荒神 (宮部みゆき) 新潮文庫

<9月>
皇帝のかぎ煙草入れ (ジョン・ディクスン・カー) 創元推理文庫

<10月>
神津恭介の復活 (高木彬光) 光文社文庫

<11月>
ラブ・ケミストリー (喜多喜久) 宝島社文庫
猫色ケミストリー (喜多喜久) 宝島社文庫
推定脅威 (未須本有生) 文春文庫


今年読んだ本は約150冊。文庫に換算して57000ページあまり。
(ノンフィクションとノベライズを入れたら160冊くらいになるかな)
1日あたり文庫160ページ弱くらい読んでいたことになります。
おお、けっこう頑張った気がしてきた(笑)。

さて、来年はどれくらい読めるかなあ。
寄る年波で視力が落ちてきているので、焦らずボチボチいきます。

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ゴースト≠ノイズ(リダクション) [読書・ミステリ]


ゴースト≠ノイズ(リダクション) (創元推理文庫)

ゴースト≠ノイズ(リダクション) (創元推理文庫)

  • 作者: 十市 社
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2016/05/29
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

巻末の解説によると、本書は最初、某社の新人賞に応募したが落選、
作者は電子書籍による自費出版KDP(Kindle Direct Pulishing)をした。
そしてそれを読んだミステリ好きの間で評判になり、
東京創元社から紙の書籍化のオファーがされたという。
確かに、出版されるに値するレベルの作品だと思う。


主人公かつ語り手となるのは一居士架(いちこじ・かける)。
高校に入学して直後、些細な失敗がきっかけとなって
クラスの中で孤立、やがてクラスメイトたちは彼のことを "いない者"、
つまり "幽霊" として扱うようになる。
要するに完全な無視、である。

そして7ヶ月が過ぎ、10月に行われた席替えで架の前の席になったのが
本書のヒロイン・玖波高町(くば・たかまち)。
彼女によって架の生活は激変する。

放課後に教室の中で二人きりになったとき、
彼女は突然、架に話しかけてきたのだ。
「そういえば、まだお礼をしてもらっていないような気がする」

やがて二人は誰もいない図書室で言葉を交わすようになるが
高町は次第に学校を欠席することが多くなり、
時折思い悩むような表情を見せるようになる。
そんなとき、高町を巡ってある噂が広まっていく・・・


本書の謎は、まずはヒロインの抱えた "事情" にある。
中盤では、彼女の複雑な境遇が明らかになり、
様々な行動に説明がつくのだが、架はそのなかに、
さらに "秘密" があるのではないか、と疑いを抱いていく。


ここから先はネタバレではないけれど、微妙な部分になるので、
これから本書を読もうという人は、以下の部分は読まないことを推奨する。


この物語はさらに意外な展開を見せる。
それは、読者もまた架に対してある "疑惑" を抱くようになるのだ。
いや、疑惑というよりは、読者が理解していた(と思っていた)
物語の前提そのものが間違っていたのではないか、
と思うようになるのだ。

 うーん、これではなんのことか分からないね(笑)。

高町の抱えた秘密、架に対して抱く疑惑。
読者にその二つの謎を抱えさせたまま、
物語はギリギリの緊張感に満ちたクライマックスへ突入していく。


ミステリではあるけれど、青春小説でもあり、
愛すること愛されることを含めた "人の想い" というものに対して
うまく振る舞うことができない、
不器用な少年と少女のラブストーリーでもあるかな。

一つ間違うと、とてつもない悲劇に終わりそうな予感の物語に
作者は意外な結末を用意している。

その中身まで書くのは許されないだろうけど、
「青春小説は苦手」って、このブログのあちこちで公言している私が
この作品につけた星の数で察してください(笑)。

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玉妖綺譚 / 玉妖綺譚2 異界の庭 [読書・ファンタジー]


玉妖綺譚 (創元推理文庫)

玉妖綺譚 (創元推理文庫)

  • 作者: 真園 めぐみ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2016/05/21
  • メディア: 文庫
玉妖綺譚2 (異界の庭) (創元推理文庫)

玉妖綺譚2 (異界の庭) (創元推理文庫)

  • 作者: 真園 めぐみ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2017/02/11
  • メディア: 文庫
評価:★★★

第1回創元ファンタジイ新人賞で優秀賞を受賞した作品とその続編。

舞台となるのは、パラレルワールドの日本と思しき世界。
我々の世界と異なっているのは"皇国大和"と称する国名だけでなく、
人の目に見えない "妖(あやかし)" が跋扈していること。

ちなみに皇国の首都は櫂都といい、
西にあった前首都から遷都されて24年めという設定。
技術レベルは、街中を馬車が走っていることから
明治時代くらいかなあと思われる。

この世界では異界と現実世界との間に
"竜卵石" と呼ばれる石が産出される。
この石は、持ち主の"気"を受けて、その中に"精霊"を宿す。
これがタイトルにある「玉妖」である。

石ごとに色やかたちが異なるように、玉妖も様々な性格の者がいる。
しかし総じて、類い希な容姿をもつ。要するに美男美女ばかりなんだね。

その玉妖と主従の契約を交わせば、
彼らを "使役" することもできるのだが
彼ら自身にも意思があり、時として主の命令に従わないこともある。
また、人間の気によって "育つ" ものでもあるため、
その性格や外見にも持ち主の影響を受けることになる。

また、竜卵石にも "格" というものが存在するようで
最高の竜卵石群は、コレクターである
難波俊之・さゆき夫妻が所持していた7個。
しかしさゆきが亡くなり、俊之が謎の失踪を遂げて
「難波コレクション」は散逸してしまう。

本書のヒロイン・高崎綾音とその姉・百合乃の姉妹は
俊之が失踪する直前に7個のうちの2個、
"くろがね" と "ほむら" を贈られていた。

しかし百合乃は玉妖であるほむらに恋してしまい(美男だからね)
現実世界に背を向けて玉妖の "郷" に閉じこもってしまう。

姉を救うために、綾音はくろがねと主従の契約を交わし
「驅妖師(くようし)」の修行を始める。
驅妖師とは、玉妖を含めて妖がらみのトラブル全般を解決する仕事だ。

長編ではあるが、実質的には
綾音とくろがねが出会う事件を描いた連作短編集だ。

俊之の甥で探偵事務所を経営する難波彬良は
コレクションの再収集を目指しており、
その共同経営者かつ驅妖師の伊上亮輔は、
やがて綾音と深く関わるようになる。

第1巻は、登場人物の紹介を兼ねながら、
"玉妖" に魅入られた人々の哀感を綴り、
綾音が百合乃を救出するまでが描かれる。

続巻では、前巻の終わりで "眠り" についてしまった
くろがねを目覚めさせるため、
綾音がその方法を探していく途中で
敵役となる驅妖師・佳奈屋、"妖" 一切に理解がない警官・皆川、
その同僚で謎めいた行動をとる女性・野田麻緒などが登場し、
俊之の失踪の理由、異界と現実世界の関係にも
何やら秘密がありそうなことが示唆され
物語はさらに続いていくことになる。


とまあ、いろいろ書いてきたんだが
今ひとつ私の好みではないかなあ。

何処がどう悪いということはないんだが
例えば美男の玉妖に恋してしまう人間の娘とか
亡くなった恋人を玉妖の姿で "再現" させようとする男とか
(玉妖は持ち主の "気" で育つから、そういうことも可能になる)
玉妖を巡る人間の姿が醜いとまではいかないけれど、
読んでいて辛いのは確か。

もちろん作者はそういう存在は否定しているし、
玉妖を "悪用" しようとする動きは
ヒロインたちによって阻止されていく。

でもねぇ、なんだろう。
つまらないわけではないんだけど心が躍らないというか。
私が求めるファンタジーの楽しさとは
ちょっと異なるテイストなんだろうなあ。

まあ、好みの問題だと思います。

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ひぐらしふる 有馬千夏の不思議なある夏の日 [読書・ミステリ]


ひぐらしふる 有馬千夏の不可思議なある夏の日 (幻冬舎文庫)

ひぐらしふる 有馬千夏の不可思議なある夏の日 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 彩坂 美月
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2016/04/12
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

主人公・有馬千夏は東京で図書館司書として働く24歳。
大学の元同級生で、いまは文化人類学専攻の大学院生である
高村という恋人がいる。

千夏はミステリ作家志望だが、最近執筆活動がうまくいかず、
高村との関係を含めて東京での生活にやや閉塞感を感じている様子。

そんなとき田舎の祖母が亡くなり、葬儀への参列を兼ねて
長めのお盆休暇を取って帰省することになる。

そんな千夏が出会う事件の数々を描いた "日常の謎" 系連作ミステリ。
ちなみに、彼女の故郷は山形県天童市がモデルだろう。


「第一章 ミツメル」
幼なじみの相葉成瀬(なるせ)と芥川莉緒(りお)に再会した千夏。
3人で故郷の町を巡るうち、高校2年の時に彼女らが出会った
"スカート切り裂き魔" 事件を想い出す。
ちょっと苦めな青春ミステリ、という感じか。

「第二章 素敵な休日」
莉緒とともに紅笠祭りへ出かけた千夏は、
高校の先輩である遠藤ハルと塔野みかげに出会う。
和人という人と婚約したというハル。
彼からもらったという指輪を見ていたみかげは、
ハルに対して驚くべき "賭け" を申し出る・・・
千夏は、もしかしたらかなり恐い真相へたどり着く。

「第三章 さかさま世界」
帰省中の千夏は、しばしば高村と電話で話を交わしている。
その日、話題に上がったのは大学時代の友人・草下圭一のこと。
学生時代に千夏の故郷近くの高原でアルバイトした草下は
そこで "誰も知らない犯罪を目撃した" と語ったという。
まさに "日常の謎" 的な真相、かな

「第四章 ボーイズ・ライフ」
千夏の高校時代の同級生・式部恵瑠(える、と読む。ちなみに男性)。
莉緒とともに彼と再会した千夏は、恵瑠が小学校時代に経験した
"UFOに連れ去れた友人" の話を聞く。
真相はかなり大胆かつスケールが大きく、ちょっと島田荘司を思わせる。

「最終章 八月に赤」
成瀬、莉緒とともにショッピングモールへやって来た千夏。
しかし莉緒が突然姿を消す。
どうやらストーカーらしき男に連れ去られたらしい。
莉緒を捜して街中を走り回る千夏だが・・・


「第一章」から「第四章」までは、
千夏が探偵役となって謎を解く連作ミステリなんだけれども
冒頭の「プロローグ」から「第四章」の間に、
残された謎がいくつかある。

その最たるものは、千夏がときおり見る "幻影" であり、
しばしば彼女の言動が "不穏" だったりすること。

そして「最終章」では、ある事実が明らかになり、
それまでの4つの物語も別の角度から解釈されていく。
残された謎にも、意外な解答が示されることになる。


ヒロインの千夏さんは、故郷の町で旧友たちとともに過ごすうちに、
仕事からも恋人からも離れてここで暮らすのもいいかな・・・
なんて思い始める。

社会人2年目ともなると、いろいろと人生について考え出して
悩んでしまう頃でもあるだろう。

 私自身、就職して2年目はやることなすこと失敗ばかりで
 かなり落ち込んだりしてたからねえ・・・

千夏さんも、ここで立ち止まってしまったわけだが
故郷で過去の自分と向き合ったことで、
自分をいままで支えてくれていた人たちの存在に気づき、
自らの望む未来に向かって再び歩き出していく決意をする。

ミステリではあるけれど、読後感が清々しい。
こういう作品は好きだ。

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水族館の殺人 [読書・ミステリ]


水族館の殺人 (創元推理文庫)

水族館の殺人 (創元推理文庫)

  • 作者: 青崎 有吾
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2016/07/28
  • メディア: 文庫
評価:★★★★

第22回鮎川哲也賞受賞作である前作「体育館の殺人」に続く第2作。

創元推理文庫恒例の英語での副題は
「THE YELLOW MOP MYSTERY」

前作は「THE BLACK UMBRELLA MYSTERY」だったので
「THE + 色 + 物体 + MYSTERY」というパターンか。

夏休み中の8月初旬。
風ヶ丘高校新聞部部長・向坂香織は2人の部員を引き連れて
横浜丸美水族館へ取材に訪れる。

館長・西ノ洲の案内で館内を巡る香織たち。
個性的な職員たちと触れあいながら見学を進めていくが
体長3メートル近いサメの展示室まで来たとき、
突如として水槽の中に男が一人飛び込んできた。
そして次の瞬間、サメは男の首筋に食らいついていた・・・

死んだのはサメ飼育員の雨宮。
水槽の上部にあるキーパースペースの状況から
何者かが雨宮をサメの前に突き落としたものと思われた。

事件の起きた時刻に水族館内にいた職員など
容疑者となり得る関係者は11名。
しかし警察が聴取を進めていくと
全員に強固なアリバイがあることが判明する。

捜査に行き詰まった刑事・袴田は、妹の柚乃へと連絡を取る。
前回の事件を見事に解決した高校生、裏染天馬を呼び出してもらうためだ。

風ヶ丘高校でトップクラスの秀才にも関わらず
なぜか自宅ではなく学校にある部室棟の一角に住み着き、
そこでアニメ三昧の生活を送っているダメ人間。
しかし類い希なる推理力を持つ。それが裏染天馬。

ヒロイン兼ワトソン役は前作と同じく、
風ヶ丘高校卓球部1年の袴田柚乃。
(たぶん表紙に描かれてるカワイイ子がそうだろう)
面倒くさがる天馬を引っ張り出して捜査に向かわせるのだが
その過程で彼にさんざん振り回されてしまうのは前回と同じ。
なんと今回はスクール水着まで着させられてしまうことになるのだが
どんな経緯でそうなるのかは読んでのお楽しみ。

中盤以降の天馬は何か新しい手がかりを得るたびに
「あと○人」「これで○人まで絞れた」とか推理の経過を呟くので
読者も彼と一緒に犯人あてに参加できるはず・・・なのだが
私にはさっぱり分からなかったよ(笑)。

そして犯人指摘のためのすべての情報開示が終了して
最終章の手前には「読者への挑戦」が挿入される。
これも前作と同じ趣向で、堂々の本格ミステリぶり。

解決編に入ると、関係者一同を前にして、
自らの推理を開陳して犯人を指摘する。

前回もそうだったが、このあたりの論理展開は見事。
英語名のタイトルにもなっている一本のモップも
重要なポイントになっている。
まさに "平成のエラリー・クイーン" なる称号が
伊達ではないことを証明している。

そして、エピローグで最後のダメ押し。
いやあたいしたもの。


そして、事件発生から解決までの途中経過も
個性的な高校生たちがたくさん登場して、読者を飽きさせない。

例えば、冒頭の水族館のシーンと交互に描かれるのが
柚乃が参加している4校合同の練習試合の様子。
ここだけ取り出してもキャラ小説としてよくできている。

上に書いたスクール水着を巡る一件もそうだが
文庫にして430ページ近い長編の本格ミステリを
ライトノベルの雰囲気で楽しく読ませる。
このあたりも前回と同様、実に達者だ。

本作で新しく登場したキャラもいて、
次作以降にどう絡んでくるのか、今後が楽しみなシリーズだ。

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オーブランの少女 [読書・ミステリ]


オーブランの少女 (創元推理文庫)

オーブランの少女 (創元推理文庫)

  • 作者: 深緑 野分
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2016/03/20
  • メディア: 文庫
評価:★★★

作者は、本書の表題作で
2010年第7回「ミステリーズ!」新人賞に佳作入選した。

さて、デビュー作となるこの短編集には、
場所も時間も雰囲気も異なる短編が5作が収録されている。


「オーブランの少女」
老いた姉妹が管理人を務める美しい庭園・オーブラン。
しかしある日、姉の方が異様な風体をした老婆に殺される。
精神に異常を来していた犯人は収容された病院で死亡、
そして妹の方もほぼ時を同じくして自殺してしまう。
残された手記には、第二次大戦中に病弱な少女ばかりを集めた
謎の施設で "姉妹" が過ごした日々が綴られていた・・・
登場する少女たちがみな個性的で、筆力は確か。
施設の目的、職員の思惑を巡るミステリなんだが
ラストはほとんどホラーです。

「仮面」
20世紀初頭のイギリス。
うだつの上がらない医師・アトキンソンは
キャバレー「ルナール・ブルー」のショーで、
わずか10歳ほどの踊り子・リリューシカに魅せられてしまう。
やがてキャバレーのオーナーが謎の死を遂げ、
リリューシカのことが忘れられないアトキンソンの前に
彼女の姉・アミラが現れ、意外なことを告げる。
オーナーの妻だったベツィは店を畳み、芸人たちは解雇、
そしてリリューシカは外国に売り飛ばされてしまうという。
リリューシカを救うために、アトキンソンがとった行動は・・・
終盤における物語が反転ぶりが見事。
独身でロリコンの三十男、その転落っぷりが哀れすぎる。

「大雨とトマト」
舞台は現代の日本と思われる。
暴風雨の日にも関わらず店を開けていた料理店。
そこに一人の少女が客として現れる。
何故かトマトのサラダだけを注文する彼女は、
店主との話の中で「父親を探している」と答える。
16年前、行きずりの女と関係を持ったことがある店主は・・・
わずか文庫で20ページほどだが、終盤になると二転三転、
最後のオチも鮮やかに決まる。

「片想い」
昭和初期の東京。岩本薫子(かおるこ)は高等女学校に通う16歳。
寄宿舎で同室の水野環(たまき)は、彼女の憧れの存在。
可憐な容姿で成績優秀、真面目にして誠実で、
父親は長野で銀行を経営しているという正真正銘のお嬢様だった。
しかしその環が、喫茶店で男と密会しているという噂が流れて・・・
お嬢様の "秘密" に気づいた薫子の "オトコマエ" っぷりが楽しい。

「氷の皇国」
舞台となるのは、架空の北の国。
北の大陸に春が訪れ、氷河も解けだした頃、
ある漁村近くの川の中から首のない死体が見つかる。
それははるか上流で投げ込まれ、
氷の中を長い年月をかけて流れてきたものと思われた。

村に滞在していた老吟遊詩人は、かつて川の上流にあり、
今は滅んでしまった国・ユヌースクの皇帝について語り出す・・・
ほぼ文庫で100ページと、本書中最長の中編。
ファンタジー風の設定ではあるが、内容は毒殺事件を巡るサスペンスで
かつ一種の法廷小説でもある。
真実が分かっても、正義が履行されるとは限らない苦さも描かれる。


5編とも、異なる舞台、異なる時代、さらには異なる作風を見せて
作家としての才能の豊かさを感じさせる人ではある。
ただ、今ひとつ私の好みとは合わないかなあ・・・とは思う。

まあ、まだ1作しか読んでないからね。判断を下すのは早計でしょう。
とりあえず、評判の高い次作を読んでから、ですかね。

第2作として発表した長編「戦場のコックたち」は
直木賞、大藪春彦賞、そして本屋大賞にそれぞれノミネートされるなど
大変な話題になったらしい。文庫になったら読みます(笑)。

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猫色ケミストリー [読書・ファンタジー]


猫色ケミストリー (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

猫色ケミストリー (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 喜多 喜久
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2013/05/10
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

計算科学を専攻する大学院生・菊池明斗(あきと)。
人付き合いが不得手だが、彼自身はそれでかまわない様子。
半年前、彼は学内で衰弱した猫を見つけ、
農学部棟裏の倉庫でこっそり飼いはじめた。

今ではすっかり元気になり、明斗と戯れるようになった。
そこへ通りかかったのは同級生の辻森スバル。
猫をきっかけに彼女と会話を始めた明斗だが、
コミュニケーション能力に難がある明斗は言葉選びに四苦八苦。

そこへ予期せぬゴロゴロという音が響き、そして突然の落雷が。

やがて意識を取り戻した2人の身には、驚きべき現象が。
明斗の意識はスバルの身体の中で目覚め、
ズバルの意識はなんと猫の中にあった。
どうやら "魂" が "移動" してしまったらしい・・・

では猫の "魂" は明斗の中? かと思ったが
明斗の肉体は意識を失って昏睡状態になってしまっていた。

 男女の意識が入れ替わる、なんてのはよくあるパターンではある。
 去年の「君の名は。」なんてまさにそうだったが
 本作は2012年の発表である。

男の意識が女の身体に入ってしまったわけで、
そのあたりでのお約束のドタバタシーンはしっかりとあります(笑)。
ちなみに人間の明斗と猫のスバルの間には
テレパシーがはたらくようで、意思の疎通は問題ない。

意識を失った明斗の身体は病院に収容され、
明斗はとりあえずスバルとして生活することに。
もちろん、スバルの "入った" 猫もいっしょに。

何とかもとの状態に戻す方法を探す2人だが、
スバルには差し迫った問題があった。
修士論文の締め切りが1ヶ月後に迫っており、
結果が出せなければ卒業させない、と担当教授から厳命されていたのだ。

彼女の専攻は有機化学。もちろん猫では実験は無理なので、
明斗がスバルとして研究室に入り、横にいる猫(スバル)から
指示を受けながら実験をすることに。

幸い、研究室のメンバーは猫を持ち込むことを快諾してくれた。
それはよかったものの、
実験室でキャットフードを食べたスバルの具合がおかしくなる。

そのことがきっかけで、2人はある疑いを持つ。
何者かが実験室で違法薬物の合成をしているのではないか?

そして、それを食べたスバルの症状から、
その薬物は2人の "入れ替わり" を解消できる可能性ももっていそうだ。

餌に薬物を混入したのは誰か? そしてその目的は?

おりしも入院中の明斗の身体は、バイタルサインが下降を始めており、
このままでは遠からず死亡することが明らかに。
それまでに、2人は犯人を見つけ出し、
そして元に戻ることはできるのか?


デビュー作「ラブ・ケミストリー」に続く第二作。
舞台は前作と同じ東大(たぶん)だが、
ストーリー的には全く関連はないので、本作から読んでも問題ない。

ミステリ要素は前作よりさらに薄いが、
ファンタジー仕立てのラブコメとしてはとてもおもしろい。

いままで全くといっていいほど接触のなかった2人が、
"魂" の入れ替わりをきっかけに
濃密な日々を過ごさざるを得なくなる。
想定外の事態に翻弄されっぱなしで、悩むばかりの明斗に対し、
スバルさんの明るさと思い切りの良さがストーリーを引っ張っていく。

ラストはコメディらしく、明るい未来を予感させるエンディング。
払った値段に見合うだけの、楽しい読書の時間を過ごせるだろう。

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神津恭介の予言 [読書・ミステリ]


神津恭介の予言 (光文社文庫)

神津恭介の予言 (光文社文庫)

  • 作者: 高木 彬光
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2012/07/12
  • メディア: 文庫
評価:★★★

平成の世に復活した名探偵・神津恭介。
その活躍を描いた "平成三部作" の最終作。

この平成シリーズにおいて、ヒロイン兼ワトソン役を務めるのは
東洋新聞社会部のうら若き女性記者・清水香織嬢。

深夜の新宿、公園でデートを楽しむ男女。
しかし突然、二人が座るベンチの前に空から女性が降ってくる。

彼女は瀕死の状態でただひと言「アクマ」と呟き、事切れる。
ベンチは公園の中央にあり、近くに高い建物はなく、
飛行機が飛んでいた記録もない。
いったい彼女はどこから現れたのか?

さらに、彼女は落下する前から腹部に傷を負っていたことが判明。

調査に乗り出した清水香織は、事件のあった時間帯に
新宿付近を1台のヘリコプターが飛んでいたことを突き止める。

ヘリを運行していたのはエアーサービス社。
乗っていたのはパイロットの水口秀夫、泉商事の社長・泉浩二郎、
その秘書・髙橋絵美、社員の刈谷順一。
ヘリは定員4名、もちろん髙橋絵美は墜落した女性とは別人だった。

やがて、墜落死したのが泉の妻・恵子であることが判明する。
恵子は泉より20歳近く離れた若妻だったが、夫婦仲は破綻していた。
しかしヘリに乗っていた泉のアリバイは完璧。

香織は、恵子の友人だった川原良江から、
かつて恵子の愛人だった男・工藤が自殺していたことを聞く・・・


このあと、ミステリ的なある "仕掛け" が登場するのだが
そこは大御所のことですから、一筋縄でいくわけがない。
どのように "ひねり" が加えてあるかは読んでのお楽しみかな。
"落下の謎" より力が入ってると思う(笑)。

もちろん本書最大の謎は、その "落下する被害者" なのだが
他の可能性を排除していけば、残ったものが "真相" のはずで
この "方法" にたどり着く人はけっこう多いのではないかな。

この手の物理トリックを社会派全盛の時代に使おうものなら
荒唐無稽とか言われて非難囂々な目に遭っただろうだが、
幸いにも本書の発表は1994年。
「十角館の殺人」の発表から既に7年経ち、
ミステリ界は「新本格」の時代に入っている。

作者もそのあたりのムードを読んで、「今なら大手を振って使える」と
この大がかりなトリックの使用を決断したのかも知れないなあ、
なぁんて思ったよ。

とは言ってもこの方法、異様に手間ヒマがかかるのは間違いない。
だから犯人がこの方法に拘る理由も最後にきちんと説明される。


巻末の解説によると、作者は清水香織嬢の登場はこの作品までとし、
次作には本当の「神津恭介最後の事件」を書く予定だった。
(というか、途中まで書いてたらしいんだけど)
でも作者が亡くなったことによって未完となってしまった。

未完の最終作を誰かが書き継ぐ、なんて企画はないのかなあ。
この作者だって坂口安吾の未完作品「復員殺人事件」の後半を書いて
「樹のごときもの歩く」という長編として完成させた人だしね。

あるいは、パスティーシュでもいいから神津恭介ものが読みたいなあ。
山田正紀の「僧正の子守唄」って作品は
若き日の金田一耕助がアメリカで解決した事件を描いた傑作だった。
神津恭介だって日本の本格ミステリ界を代表する名探偵の一人だし、
誰か「神津恭介の未発表事件」の一つでも書いてくれないかなぁ・・・

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月世界紳士録 [読書・ミステリ]


月世界紳士録 (集英社オレンジ文庫)

月世界紳士録 (集英社オレンジ文庫)

  • 作者: 三木 笙子
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2017/06/22
  • メディア: 文庫
評価:★★★

主人公・待宵澄雄(まつよい・すみお)の勤務するのは
宇宙技術振興推進株式会社、通称STeP。
とは言ってもハードを作る会社ではなく、射場や衛星の運営、
宇宙関連イベントの企画運営などを主な業務とする。

しかし、澄雄が異動した資料部は、「竹取班」との異名があった。
月にまつわる神話、伝承、はては都市伝説までを扱うなど
月に特化した部署だったからだ。しかも職員は彼以外にはただ一人。
"月狂い" と呼ばれる桂靖久という青年だけ。

靖久がホームズ、澄雄がワトソンという役回りで
この二人が出くわす事件を描く、"日常の謎" 系連作ミステリ。

「一、Cry for the Moon」
高名な実業家・斎木啓司から竹取班にランプが一台寄贈された。
『朧月夜』と名付けられたそれには不思議な力あるという。
そのランプを前にして嘘をつくと、灯火が消えるのだ。
しかし、竹取班を訪れた男・宗像は
『朧月夜』を譲って欲しいと申し出るが、
かねてより宗像を知っていたらしい靖久はけんもほろろに断るが・・・
ランプの "謎解き" はちょっと呆気ないが、それよりも
一台のランプの入手を巡っての駆け引きが読みどころか。

「二、心変わりの羽衣」
歌劇の男役スター・澤邑志信はファンから惜しまれつつ退団した。
そして、退団した卒業生による記念公演「竹取物語」において
澤邑はかねてから交際中で婚約寸前だった男性との関係を
白紙に戻すことを宣言する。それ以来、SNSではある噂が広がる。
澤邑がこのとき衣装として着ていた羽衣は、竹を原料とした新素材
CNF(セルロースナノファイバー)で作られていた。
そのCNFのせいで、彼女は「愛おしい」という感情を失ったのだと。
CNFを開発した鳴海製紙はJAXAにも関係があり、その伝手で
STePの「竹取班」に澤邑志信の "心変わりの真相" 調査の依頼が入る。
ミステリとしては他愛もないオチだが、それよりも
一人のスター女優を巡る周囲の葛藤のほうがメインなのだろう。

「三、月光の秘薬」
月のサイクルを利用した農業を研究している須賀植物園。
そこの職員・小花は愛想がなくて野暮ったい。
しかしその彼が、最近急に女性にモテだしたという。
"惚れ薬" を開発したのではないかという噂もあるらしい。
園を訪れた澄雄は、さっそく3人の女性が
小花を巡って火花を散らす光景を目撃するが・・・
靖久の推理は、三者三様の意外な理由を暴き出す。
本書の中ではいちばん日常の謎ミステリっぽいかな。
私は今までの人生でモテたことが皆無に近いので
(「皆無」ではない・・・と思いたいwww)よく分からないが
モテすぎる男というのも大変なのだそうだ(棒)。

「四、ルナパーク同盟」
金(きん)を扱う金融業者のもとへ
髙橋という男が1本の金の延べ棒を持ち込んでくる。
調べたところ純金100%。髙橋はその意外な出所を明かす。
一方、第一話のキャラ・斎木が再び登場し、
「竹取班」の二人に風変わりな遊園地の話をする。
ある高級住宅地にある公園に、突如として出現したその遊園地は、
二週間限定ながら、なかなか盛況であるという。
しかしその公園の近くで、不可思議な事件が起こっていた・・・
宝探しの物語と思わせて、さらにひとひねり。
靖久の推理は大がかりな "はかりごと" の存在を明らかにする。


ここで完結でもいいし、続けようと思えばずっと続けられる終わり方。
うーん、もう一冊くらいは読んでみたいかなあ。

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